願いの物語シリーズ【河合風香】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
「さぁ、いよいよ始まりました! 料理の鉄人対決! 本日はどの様な」
さて、いよいよ始まってしまった番組に、私は指定された席に座りながら両腕を机の上に立て、指を口元の前で組みながら眉間に皺を寄せていた。
ちゃんとサングラスも掛けている。
視線が分からない様に気を付けながら、渡された手元の端末で生配信されている番組の、動画サイト上のコメントを追っていた。
『おー。中々豪華なメンバーだな』
『豪華なメンバー(炎上回数的な意味で)』
『豪華っていうか業火なメンバーっていうか』
『てか、さっきから河合風香のポーズ、クッソ笑うんだが、ふざけすぎだろ!』
『これから人型決戦兵器でも出てくるのか……?』
『横でミチプロがチラチラ見てるの笑う』
『もう戦いは始まってるからね。しょうがないね』
『何の戦いだよ』
「では、料理人を順に紹介してゆきましょう! まずはこの人! 人気俳優! 山瀬佳織だ!!」
とりあえず紹介された人間を私はチラっとサングラスごしに確認するが、なるほど可愛い。
この可愛さで俳優は無理やろ!! ヒロインしか出来ないゾ!
しかし、鉄人……? 料理出来るのかな。
「あ、よろしくお願いします! 山瀬佳織です! 料理はあんまり得意じゃないですけどっ! 頑張ります!」
んー。可愛い。優勝。もう貴女で優勝だからオネーサンと一緒に帰ろうか。うん。
しかし、料理あんまり得意じゃ無いんだな。鉄人とは……? うごごごご。
『佳織ちゃん可愛いヤッター』
『可愛いのは良いが、料理の鉄人になんで出たんや? 審査員側ならまだ分かるけど』
『いつもの鉄人(適当)では?』
『酷すぎる』
まぁまぁコメントは良い感じね。しかし、審査員の反応は最悪(私ともう一人を除いて)。
いや、むしろその一名の反応が良いからこそ、悪い説。あると思います。
露骨に睨みつけててヤバイっぴ! プロデューサー! これでえぇんか!?
ニッコリ笑ってるわ。終わった。人の心とか無いんか……?
まぁ良いわ。私だけはべた褒めしよう。どんな料理が出て来ても褒めて好感度上げて一緒に放課後帰ろう。
噂されちゃうと困るとか言われない様に好感度上げはしっかりやろうネッ!
「さて、次のメンバーは! 人気アイドルグループ、スターレインのリーダー! 加藤沙也加! ですっ!」
「どうもはじめまして。加藤沙也加です」
「きゃぁああああ!!!」
「カッコイイぃぃぃ!!!」
キガ ツク トワ タシ ノミ ミハ コワ レテ イタ
すぐ横で叫ぶなオバサン。鼓膜ないなったわ。
この人、いかにもな見た目してたが、アイドルの追っかけなのか。
観客席のテンションも壊れているし。相当人気なのはわかる。まぁふうかちゃん何も分からんが。
「流石は加藤さん。凄い人気ですね」
「いえいえ。立花君には負けますよ。昔、サッカー対決でも勝てませんでしたし」
「え!? 加藤さんと、立花さんは同じ学校の出身なのですか!?」
「はい。小学校と中学の少しだけですが」
「えぇええええええ!!!?」
『マジか』
『こんなイケメンが二人も居る学校か。他の男に人権無さそう』
『確かに』
「立花さん! 今の話は!」
「えぇ、まぁ真実ですけど。サッカー対決に関しては別に俺が勝ったわけじゃないですね」
「でも、君の勝ち越しだっただろう?」
「偶然ね。次の試合があれば加藤さんが勝ったと思うよ」
「うぁぁああああ!!!」
うっせぇ。
うっせぇ。
うっせぇわ。
主に横のおばさんがうるせぇ。ハンカチ取り出して涙拭ってないで、よだれ拭えよ。
風香は死ぬほど疲れてるんだ。早く先に進めてくれ。
「同じ学校といえば、河合さんも立花さんと同じ学校の出身でしたね」
ドボヂデワタシニワダイヲフルノォー!!
適当すぎるフリにフウカーの体はボドボドだ!
「まぁ、同じ学校と言っても私は中学からでしたから、加藤さんの事はそれほど覚えていませんが、格好いい人が居たという事は覚えていますよ」
『おぉ、河合風香にしては珍しくまともなコメント』
『やれば出来るやん』
いや、お前ら何様なんだよ。
てか、流石にこのメンツじゃ私は普通にコメントするよ。ってぇ!! プロデューサーァ!! 面白くねぇなって顔してんじゃねぇぞ!!
「河合……河合? 河合風香。あぁ! 河合風香さん!! 思い出しました」
「ん?」
「どうしました? 加藤さん?」
「いえ。どこかで聞いたことある名前だなと思っていたんですが。思い出しましたよ! 昔、屋台をやってましたよね?」
屋台……? あっ!
「ナンノコトヤラ」
『屋台ってなんだ』
『河合風香の事だからどうせろくでもない事だぞ』
「屋台……?」
「た、立花君。思い出さなくて良いから。加藤さんも記憶の遥か彼方に追いやってくれて構わないからね!?」
「あぁ、河合が燃やした奴か」
「おうっ」
「あぁ、結局あの屋台燃えたんですね」
「そう。まぁ木材で作ってたし。中で色々燃やしてたからね。当然と言えば当然」
「うっ」
「アハハ。でも私も一度食べたけど、忘れられない味だったなぁ。凄く美味しかったですよ。河合さん!」
「ソレハドーモ」
「でも、屋台を燃やしてからは近所で河合さん家の屋台を燃やした方なんて言われる様になって、いつしか河合風香ならぬ河合放火なんて言われる様に」
「そろそろ次に行こうか!!? 司会者さん!!!」
「は、はい。そうですね」
『流石河合風香。ガキの頃から燃やしていたのか』
『適当に飛び出してきたエピソードが強過ぎんのよ』
『伝説と料理しか作れない女』
コメントもうるせぇー!!
「さて、色々と危ない話題がありましたが、次の人を紹介しましょう! 次はこの方! 有川弘松! 繊細な味付けと食べた人の記憶と心に深く刻まれる奥深い味わいが特徴の天才料理人だー!!」
さんを付けろこのデコ助野郎!!
お前が五万年修行してもたどり着けない極地に居られる方だぞ!!
てか、なんでこんな低俗な番組に出てるんだろ。まずっ、顔見られるとマズイから顔隠そ。
私は貰った台本で顔を隠しながら、身を屈めた。
『か、わ、い! 何やってんの』
『腹が痛い。どうしたの、この人』
『さっきから奇行は大抵河合風香で笑うんだが』
「本日はご出演いただきありがとうございます」
「いやいや、構わないよ。本当は出る気無かったんだけどね。鳴村の奴と賭けしちゃったからさ」
『ナリムラ?』
『鳴村清だろ。国内トップクラスの料理人』
『そんで河合風香の師匠な』
『はえー』
「賭けですか。ちなみにその内容をお聞きしても?」
「あぁ、構わないよ。ね。風香ちゃん!」
「っ!」
「そんなに怖がられちゃうと寂しくなっちゃうけどね。まぁいいや。賭けの内容は簡単。僕の料理と鳴村の料理を食べ比べて、僕の方がより魅力的だって思ったら、風香ちゃんを貰うよ。って話」
「え!?」
『貰うって?』
『弟子としてって事だろ』
『え? マジ? 実はこれサラっと言ってるけど、大事件なんじゃねぇの!?』
『まぁ鳴村清は安くて一般人でも食べられる様なレストランを開いてくれてるけど、有川弘松はガチガチの高級懐石料理だからな。もう河合風香の飯が食えなくなるよ』
『ふぁっ!?』
『いやいやいやいや待ってくれよ! ウチの子、誕生日に夕焼けの里で河合風香の飯食うの楽しみにしてんだからさ。マジで勘弁してくれ』
『でも、有川弘松が技術を伝えられる弟子が居ないって嘆いてるのも事実だしな。伝統的な国産料理の危機と言えば危機』
『分裂してくれ! 河合風香! お前なら出来る』
『無茶苦茶言ってる奴が出て来て笑う』
「いや、しかし、その勝負だと実質河合さんが好みの方を選ぶという話になるのでは? 味とかではなく、立場とか給与とか」
「いやいや。それは違うよ。司会者さん。風香ちゃんは料理に関して嘘は言わない。例え、鳴村の店を離れがたく感じていても、嘘は吐けない。そうだよね?」
「……まぁ、そうかもしれないですね」
「口を挟むべきじゃないかもしれないですが、私からも良いですか?」
「ん? 構わないよ。確か。野球やってた子だよね?」
「はい。立花光佑です。河合の友人として言わせて欲しい。河合の気持ちを無視して、物事を進めてゆくのはおかしいのではないですか? 少なくとも私が見ている限り、河合はこの状況を喜んでいない。嫌がっています。その気持ちを無視して、進めるのはどうなんですか?」
「まぁ確かにね。風香ちゃんには悪いと思ってるよ。でもさ。これも僕達の業界の未来を守るために仕方のない事なんだよ。だから僕としては風香ちゃんの心残りが無いように、徹底的に惚れこませる。僕の全身全霊を掛けて。それだけの覚悟があって僕はここに立ってるんだ。君はどうなのかな。立花光佑クン。君はどれだけの覚悟を持って発言をしているんだい?」
「私は、ただの友人です。でもね。私にとっては、貴方達の業界だ、未来だより。河合風香の方が大事なんですよ。もし、河合が嫌がっているのなら、どんな手段を使ってでも俺はその賭けとやらを潰しますよ」
「ふははははは!! 面白い小僧だ! なるほど鳴村の奴が気にする訳だな。良いだろう。じゃあ君に免じて僕が折れようじゃないか。もし僕が勝っても風香ちゃんには交渉しかしない。無論脅しとかもなしだ。まぁ精一杯魅力は伝えるし。給料も相談するけどね」
「……」
「でもね。君は駄目だ。立花光佑。僕と鳴村の賭けに口を出してしまったんだから。その責任は当然とるんだよね?」
「構わないですよ」
「よし。決まりだ。じゃあ僕が勝ったら、君は僕の店で働いてもらうよ」
「は!?」
「良いですよ」
「はぁ!?」
な、なにが起きてるんだ。
なんで師匠と有川さんの賭けに立花君が絡んでるんだ!?
「面白いね。賭けとは関係ないけど、ウチの娘とお見合いしないかい? 僕の奥さんに似て結構美人なんだけど」
「それはお断りさせて貰いますね」
「アハハハ!! そうかいそうかい。じゃあ君を使って風香ちゃんを引き入れるとしよう。楽しみになってきたな!」
『と、とんでもない事になってきたな』
『いや、マジでどうなるんだこれ』
『河合風香の炎上劇場を見に来たと思っていたら、河合風香が愛され系ヒロインみたいになってた。何を言ってるか分からねぇが俺にもサッパリ分からねぇ。超次元ストーリーを見ている様な気持ちだった!!』
ほんとだよ!!