願いの物語シリーズ【河合風香】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
適当に司会者に話を振られて、調理法の話とかをしながら時間を潰し、料理が完成する度に順番に評価するという流れになった。
まぁ、正直やりたくは無いけど。師匠にも頼まれたし、真面目にやろう。
「では最初の料理は加藤さん! お願いします!」
「じゃあ、そんな大したモノじゃ無いですけど。私から紹介しますね。まぁ普通のオムライスです。アイドルらしくね? 萌え萌えキューン!」
「百点」
一口くらい食ってから言え、アイドル。
「もう優勝では?」
だから一口くらい食ってから言え、芸人!
「私、これ以上のオムライスに出会った事がありません」
一口くらい食ってから言えって言ってんだろ!? 自称料理研究家ァ!!
と、他人に文句ばかり言っても仕方ない。とりあえず食べるか。
うん。なるほど。そういう感じか。
プロじゃ無いけど、日常的に料理は作ってるって感じかな。さて、どうするべきか。
『河合風香と立花光佑だけクッソ真面目に食ってんな』
『いや、まぁ、そういう番組だからね?』
『普通に考えれば及第点すら貰えないだろうが、一応アイドルだしな』
そう、アイドルなんだよね。なら、答えは決まってるか。
「うん。美味しいと思いますよ。ただ先ほどお店を開くという話がありましたので、少しばかりアドバイスをさせていただいても良いですか?」
「は、はい。お願いします」
『ゴクリ』
『緊張』
「萌え萌えキューンの角度がもう少しこう! ですね。そして更に言うのであれば、あまり勢いを出すとお客さんもビックリしてしまいますので、もう少し可愛さをアピールする方が良いかと。こう首をクイっとしてキューンみたいな感じに。まぁ詳しくは陽菜ちゃんに聞くのがベストです」
『ズサー!!』
『何の話やねーん!!』
『オムライスの話をするのかと思ったら、可愛さの指示出しでござった』
『まぁでもアイドルの喫茶店だって言うのなら、飯のうまさよりアイドルの可愛さの方が重要なのは分かる』
『いや、でも今ここで聞きたいのはソレじゃねぇだろ。加藤沙也加もこれにはキレるのでは?』
「なるほど。勉強になります」
『なんでや!!』
『これって何の番組だっけ?』
『まるで分らん』
「ちなみに料理については何かありますか?」
「うーん。そうですねぇ。特に言う事は無いですよ。お客さんが食べたいのは加藤さんの料理であって、世界一美味しいオムライスでは無いですからね。だから加藤さんが実際にお店を始めたらお客さんの声を聞きながら味を調整していただければ良いかと」
「ありがとうございます!! 料理長」
「はい……って!? 料理長!? いや、まだ私、話受けてないですからね!?」
「分かってますよ。ふふっ、私がそう呼びたかっただけなので。気にしないでください」
気になるわ!!
こ、この女! なし崩し的に私の事を巻き込むつもりじゃないだろうな!?
おそろしい。なんて恐ろしい女なんだ。
「よーし。じゃあ料理長のオッケーも貰ったし。店員さん。どうかな?」
「まだ決まって無いけどね。俺は美味しいと思うよ」
「やった。ふふ。私もやるもんでしょ? あれからさ。ひかりと一緒に練習したんだから」
「そっか」
『なんだてぇてぇ話か?』
『ひかりちゃん殆ど表に出てこないから、たまに話を聞くと嬉しい』
『ヒナちゃんねるのレギュラーになってくれんかなぁ』
『いっそスターレインが配信者になれば良いのでは?』
『それは確かに』
何のかんの人気なんだなぁなんて思いながら、私はボーっと他の料理メンバーを眺める。
そして、おそらく次に仕上げてくるであろうカワイ子ちゃんの料理をターゲットにインサイトしてアウトプットをアウトソーシングするぞ。
「で、出来ました!」
「お。山瀬さんも完成したとの事です。ではお願いします!」
「はい! お味噌汁作りましたー!」
うーん。可愛い。優勝。
今までに出会ってきた美少女たちとはまた違った可愛さがあるね。
ベロむしゃあ。
「はい。河合さん。どうぞ」
「うむ」
デレデレとした表情を奥底に封印! して、厳かな雰囲気で器を受け取る。
ふむ。これは良い器ですな?
知らんけど。
「では、いただきましょう……ふむ……よい器ですね……ふむ」
『はよ飲め』
『さっさと食え』
いや、この味噌汁熱いねん!!
近づくだけで分かる温度! これどう考えても沸騰してるよね!?
何か表面ぐつぐついってるし!! やっべぇけど!?
「あ、やっぱり駄目でしたか?」
美少女が悲しそうな顔をしている!!
ここで逃げて何が河合だ! 何が風香だ!! 俺は行くぞ!!
折角だからこの熱い味噌汁を飲ませてもらうぜ!!
なんだか分らんが、ヨシッ!
「あっつ! いや、無理! 申し訳ないですけど! もう少し待たせてください!!」
「ふぇ!?」
「あなた。山瀬佳織さんって言いましたか? 味噌汁が熱すぎるんですよ。料理と言うのは相手の事を気遣って」
「そうそう。ただ作れば良いってモンじゃ無くてさ!」
「さくらー、こんなあつーいお味噌汁のめなーい」
うぜっ! 黙ってろよゴミ共!!
まだ飲めないなら飲んでから言えば良いだろ!?
早く! 早く飲めるようになってくれ!! あのゴミ共を黙らせたい!!
はよはよ! バンバンバン!
ハリーハリー!!
ほれ、急がないとマイスウィートエンジェーの佳織ちゃんが泣きそうやないか!!
「こんなもんじゃ食べたいって思える人なんて……」
「うん。俺は嫌いじゃないよ」
「え?」
「た、立花さん?」
立花ァァアア!!
さすが立花! 俺たちにできない事を平然とやってのけるッ!
そこにシビれる! あこがれるゥ!
だが、勝敗は別だぞ……!
風香ちゃん流、急速冷却法により、飲みやすい温度にしたこの味噌汁を! 飲む!!
ディ・モールト! ディ・モールトだ!
「そうですね。私もとても美味しいと思います。確かに温度や濃さの問題はありますが、挑戦するという事は何よりも難しい事。それを成し遂げた事に比べればその程度は容易い問題でしょう。ね? 山瀬佳織さん」
ディ・モールトベネ!
完璧だ。これ以上ない程に。
だが、河合風香はこれで終わらない。まだ進む!
フウカの言葉は二歩先を行く言葉!! 刻め! フウカの魂の叫びを!
「ただ、先ほど別の方も仰っていましたが、料理とは食べる他人を思い作るもの。出来れば作って誰かに渡す前に味見をしてみるというのも大事だと私は考えますね」
「な、なるほど!」
「もし分からない事があればいつでも連絡してください。私は努力する人間を否定しません。例えどの様な状況であろうとも」
ニコッと意識して笑う。
するとどうだろう! すると、どうだろうか!? ふふふ。好感度爆上がりって訳よ。
ふははは。我が心と行動に一点の曇りなし! 全てが、正義だ!
我を崇めよ! 我を称えよ!
『河合風香が、まともな事を言っている!?』
『いや昔から素人相手にはプラスな事しか言わんから』
『この温度差があるから色々な人が勘違いするけど、基本河合風香は自分の立ち位置をちゃんと分かっている人には優しいぞ』
『まぁ、そうな。料理人が出て来ても、修行中です。みたいな事を言っている人には、修行頑張ってますね。とか言うもんな』
『後はガチで完成している人か。そういう人はかなり敬意を持って、発言しているのが分かる』
『あれ!? もしかして、河合風香って実はかなりまとも!?』
『世間で言われているよりはずっとまとも。ただ』
『一部の界隈には、蛇蝎のごとく嫌われてるけどな』
『へび……なんて?』
『だかつ。ヘビとかサソリみたいに人から嫌われてますよって話』
『いや、俺蛇もサソリも可愛いと思うんだけど』
『お前の個人的な感想は聞いてねぇのよ。そういう言葉がありますよって話なんだって』
『そうやって勝手に嫌ってるのマジで許せねぇんだけど。彼らの魅力を誰も分かってねぇよ』
『お前の蛇サソリへの愛は分かったから。魅力を伝えたいなら好きにやれば良いよ』
『いや、マジでコイツ話通じねぇな』
『河合風香かよ』
おい!! なんでだよ!!
おかしいだろ!!