猫又おかゆ読切短編集   作:夏目陽光

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城山から見る世界の終わり 【鹿児島県】

八月の太陽の光が、剥き出しのアスファルトを白く焼き尽くしていた。世界はまだ終わっていない。それは徹底的に退屈な事実だった。

 

科学館の古びた案内図を指先でなぞる彼女の横顔を、僕はただ眺めていた。猫又おかゆは、真夏のプールに投げ込まれた氷の塊が輪郭を失っていくような、ひどく曖昧な足取りで歩く。その髪は、日本の古い衣装にある古代紫、どこか湿った夜の底を思わせる色彩を帯びていた。そして彼女の瞳は、さらに捉えどころがない。灰色が強く混ざった、くすんだ紫。伝統的な表現を借りるなら藤鼠と呼ぶべきその双眸は、蛍光灯の光を吸い込むと、ただ冷ややかに僕の視線を跳ね返した。1980年代のガレージバンドの連中がステージでナイフを入れたような破れ方をしたダメージジーンズに、薄い夏服のシャツを羽織っている。その姿は、世界の終わりをやり過ごすための間に合わせの衣装のように見えた。彼女はポケットの中で小さく喉を鳴らし、こちらの出方を窺うように薄く笑った。

 

「ねえ、宇宙ってさ、きっとすごく静かで、すごく寒いんだろうね」

 

彼女の声は、低く、鼻にかかった独特の甘さを含んでいた。言葉を喉から送り出す前に、口の中でその響きを一度確認するような、一拍の奇妙な間がある。

 

「冷たいプラスチックの模型の方が、本物の星よりも僕たちに優しいのかもしれないよ。少なくとも、僕たちを拒絶しやしないからね」

 

僕はポケットのタバコに手を伸ばしたが、それをやめた。指先が触れたのは、ただの渇いたナイロンの裏地だけだった。3階の展示室に置かれたスペースシャトルの巨大な模型を見上げながら、彼女は爪先立ちで床を滑るように移動した。まるで、この重力だらけの世界に自分の足跡を1ミリも残したくないとでも言うように。彼女の身体からは、微かに、おにぎりの海苔のような、あるいは古い木箱のような、奇妙に生活感のある匂いが漂っていた。それはこの冷徹な人工物の空間の中で、ひどく不調和に、しかし確実に僕の鼻腔を突いた。

 

4階のプラネタリウムの重い扉を開けると、そこには完全な暗闇が待っていた。人工の星々がドームの天井にまたたき始める。冷却ファンの低く震えるロータリーノイズだけが、静寂の身代わりとして空間を支配していた。

 

上映中の3分間、僕たちの間に完全な沈黙が流れた。

 

彼女は何も言わず、ただ座席のプラスチックのシートの肌触りの中に溶けていくようだった。僕は彼女の気配を感じようと暗闇に目を凝らしたが、そこにはただ、数万年前に命を終えた星の最後の光のような、冷淡な紫の瞳が人工の星空を映し出しているだけだった。彼女はあくびを噛み殺すようにして、前足を伸ばすような仕草で細い手を宙に泳がせ、それから僕のシャツの袖口を、指先でほんの少しだけつまんだ。微かな、しかし逃れようのない体温がそこにあった。ただその存在のすべてをこの網膜に焼き付けたいという狂おしいほどの渇きが、乾いた喉をせり上がってくる。僕は彼女をどうしようもなく求めていた。ただそれだけのことだったが、悪くない気分だった。

 

「ねえ、お腹すかない?」

 

上映が終わり、ロビーへ出た瞬間に彼女が言った。

首を縦に振ると、彼女は満足そうに目を細め、熱気の中へ歩き出した。窓の外では、強固な城山の緑の向こうで桜島がドカンと一発、大きな煙を上げるのが見えた。隣の熊本の連中が、どれだけ綺麗に舗装された合理的な街並みの中で、スマートで洗練された未来を語ろうとも、この灰の降る不格好な街の、二度と戻らない古びた郷愁を愛さずにはいられない。肥後のスマートさを見下す傲慢さを捨てきれずに生きている、進歩という名の味気ない未来と、二度と戻らない古びた郷愁の狭間で、僕たちは生きている。すべてを洗い流してまた始めればいいという、妙に投げやりで頑固な楽観主義が、この胸の底には居座り続けている。それはどこまでも土着的な、この土地の重力に縛られた諦念と、容易には引き剥がせない血のような執着の混ざり合った感情だった。八月の太陽がアスファルトを焼いていた。その熱量だけが、足元を確かに世界に繋ぎ止めていた。誰もいない歩道には、僕たちの影だけが長く伸びていた。

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