ナブーでの穏やかな結婚式から一年後。
連邦と新体制帝国の停戦協定は期限を迎え、銀河は再び二つの巨大勢力による総力戦へと突入した。
しかし、その泥沼の戦乱は、二年で終結を迎えることになる。
理由は至極単純であった。共和国末期の動乱を経て帝国の圧政からの一年の停戦時代。豊かで平和だった停戦時代の味を占めてしまった両陣営の民衆たちが、「停戦時代は経済も安定していて良かった」「もう戦争はいいや」「連邦(帝国)の連中は戦時条約をちゃんと守る」「中立地域では何で俺たち殺しあってんだって話ばっかり」「お偉いさんが言っているように『現状維持こそが名誉ある講和』だ。もうそれで良い」「再戦してから意味がない戦いばっかり」と、戦争に飽いてしまったからである。
最初からこの不毛な総力戦を「一刻も早く終わらせたい」と待ち望んでいた両陣営のトップや政治家たちは、この機を逃さなかった。
彼らは限界を突破した民衆の厭戦気分を「待ってました!」とばかりに最高の大義名分として掲げ、電光石火の早業で本格的な和平条約を締結してしまったのである。
終戦の成立を見届けた二年後。
アナキン・スカイウォーカーは──二代目代表に選ばれたオビ=ワンに「よろしくお願いしますマスター」「中々驚きだよ友よ。何故、君よりも遥かに(※超強調)老いた老人を代表に。連邦の有権者には常識がないのではないかな」「交渉人が必要。そういう事でしょう。連邦の有権者はよく見ていますよ」とスタスタと逃げることで──連邦代表の座を退き、政治の表舞台から完全に引退した。
引退した彼が余生を過ごす場所に選んだのは、やはり美しく静謐なナブーの湖水地方だった。
穏やかな陽光が降り注ぐテラス。
幼き頃より動乱の日々を過ごした英雄は、今はゆったりとした椅子に腰掛け、静かな時間を過ごしている。
「あー、あー」
「きゃっきゃっ」
彼の足元、そして膝の上には、銀河の新しい時代を象徴する三つの小さな命があった。
ルークとマラの間に生まれた息子、ベン。
そしてハンとレイアの間に生まれた双子の息子と娘、ジェイセンとジェイナ。
よちよち歩きの三人の孫たちは、祖父の生命維持装置や無機質な機械音に恐れを抱くこともなく、無邪気にじゃれついている。
やがて三人の幼子は、アナキンの足元にすがりつくと、彼がそっと差し出した分厚い機械の義手を、小さな小さな両手でぎゅっと握りしめた。
「……」
かつて、多くのものを奪い、傷つけ、己を責め続けた黒い手。
しかし今は、愛する者たちを守り抜き、新しい命たちから無条件の愛と信頼を寄せられる温かい手となっていた。
コホー、コホーという規則的な呼吸音が、ナブーの穏やかな風に溶けていく。
透明なマスクの奥で、アナキン・スカイウォーカーは、自らの義手を握りしめる二人の孫へ向けて──ただひたすらに優しく、幸福に満ちた微笑みを浮かべていた。
それから、千年の時が流れた。
かつて銀河を二分し、数百億もの命を奪った戦争も、今では遠い歴史の一頁となっていた。
帝国と連邦は、あの戦争を最後に互いの存在を認め合い、幾度もの衝突と和解を繰り返しながら、やがて安定した二つの国家として銀河に根を下ろした。
そして、あれほど銀河を蝕んだダークサイドもまた、時代と共にその力を失っていった。
怒りや憎悪、恐怖に身を委ねる者は、今なお存在する。
だが、それらに支配される者は、もはや銀河の歴史を動かすほどの力を持たなかった。
シスは、変わった。
かつて銀河を支配しようとした彼らは、帝国において自由と愛の守護者となった。
己の意志で生きる自由を尊び、他者の自由を奪わず、愛する者を守るために力を振るう。
それが、千年をかけてシスが辿り着いた新たな道だった。
そしてジェダイもまた、変わった。
かつて銀河の秩序を守ることを至上とした彼らは、連邦において調和と愛の守護者となった。
調和のために、秩序を守りながらも個人の自由を尊重する。
愛を否定するのではなく、それと向き合い、愛する者を愛することを恐れない。
かつて「自由」と「秩序」を巡って対立した二つの道は、長い年月を経て、それぞれの過ちを乗り越えた。
シスは、自由だけではなく愛を知った。
ジェダイは、秩序だけではなく愛を知った。
だから、銀河からかつてほどのダークサイドの影は消えていった。
誰もが、ダークサイドを使う必要がなくなったからだ。
自由を尊ぶ者と、調和を守る者。
そのどちらもまた、愛する者たちのためにフォースと調和して生きている。
それが、千年後の銀河だった。
フォースは、今日も生命が創り出す自然なエネルギーとして銀河を繋ぎ、愛と調和のバランスを保っている。