「んー、とりあえずはこの道を行けばなんとかなるかもなあ……うん、なんとかなる……かも?」
『おいおいおいぃ!随分と適当だな!大丈夫なのかァ?もう燃料が無いぜ、せいぜい2㌔走れるかどうかってところだぜぇ?』
「いちいちうるせえなあ、何とかなるっつてんだろうが」
森の中にある、一本道を一台の車が走っていました。その車の名前は、ラリー。そしてそのラリーを運転するのが長い黒髪に小柄なからだが特徴の女の子のような容姿の少年、名をソラといいます。
この一人と一台はなんのあてもない旅をしています。ですが、旅に出るのは初めてで、旅のことを教えてくれる人もいなかったため、この一人と一台は現在ピンチな状況に立たされていました。食料は尽き、ラリーを動かす燃料も後わずかといった状況です。
いくらソラが高い身体能力を持っていたとしても、銃火器を自在に出せる能力を持っていたとしても、開発能力を持っていたとしても、現在はなんの役にもたっていません。このままラリーの燃料が尽きれば、ラリーは動くことができなくなってしまいます。
そうなったら当然、移動するのにも不便になってしまいます。ソラがラリーを引きずって行くという案もありますが、ソラは身体能力が高い分、消費が激しいようなのでその内体力がなくなり、空腹になって倒れてしまう可能性もあります。森の動物や植物を食べるということもできますが、現在彼らにはその発想はありません。……というか、今の状況をピンチとも認識していませんでした。
この一人と一台は基本呑気なため、今の状況を楽観しているのです。
「お!見てみろよ、ラリー」
『アァ?なんだよ?」
ふと、ソラが指さした先には、森の中に開けた広場があり、その中心にはログハウスが建っていました。
「あそこの人から食料と燃料を譲ってもらおうぜ」
『……あの家、人が住んでいるのかよ?壁につたが這っているし、周りの草もぼうぼうだぜ?』
そう、その家は、ラリーの言ったとおり、ボロボロで、誰も住んでいない廃屋のようです。壁一面にはビッシリと蔦が這っており、周りの草も伸び放題で、かなりの高さまで伸びていました。
「いいや、よく見てみろ、煙突から煙が出ているし、周りの草も何度か踏み潰された跡がある。間違いなく、今現在誰かがあの家にいる」
『へえ!?ああ、ホントだな、しっかし、よく気付くなあ』
「まあ、ゴミ捨て場じゃあ、人をぶち殺すためのトラップなんてものもあるし、俺を騙そうと甘い言葉をかけてくるやつも居たしなあ、目は肥えている方だぜ?__まあ、とにかくはあの家に食料と燃料があり、かつ、それをおとなしく分けてくれる親切な人かどうかだ」
『“親切な人”じゃあなかったらどうすんだ?』
ラリーの疑問にソラは口を歪め、言い放った。
「__勿論、皆殺し」
『……そうか、まあ頑張れや』
「ま、勿論最初は媚に媚びるさ、癪だけれどな」
ソラはそういい、ラリーから降りて家の扉をノックした、そして暫くして出てきたのは白い髪のお婆さんだった。
「何用ですか?子供がこんな森に来るなんて、昆虫採集なら、さっさと帰ったほうがいいですよ?」
「……あー、いやいや、俺は昆虫採集とかそんなんじゃあなくってだな、旅人なんだよ」
「成程、その年で旅とは大変ですね」
「まーそうなんでよなあ、今も食料と燃料がないしよ、__だからまあ、死んでくれや、アンタの遺品は俺が有効活用してやっからよ」
「………………」
ソラがそう言って手元に召喚した銃は、とても巨大で、彼の手では握れきれないほどだ。だが、握力のみで手に固定しているため、引き金を引いても撃った時の反動で手から飛ぶこともないだろう。
その銃の名前はS&W M500という名前の超大型拳銃である。全長は381mmという普通のハンドガンよりも100mmほど大きく、重さは2.05kg普通のハンドガンよりも遥かに重いまさに超大型拳銃の名にふさわしいものである。ちなみにこの銃よりも威力の劣るマグナム44がグリズリーからの護身用という用途である。
そんなものを突きつけられた老婆は、なんの反応も示さない。ただただそこに立っているだけだ。
「あぁん?ビビってなんにも言えねぇかぁ?んじゃまあ、遺言なんざ聞く気もねーしとっとと死ねや」
ソラはそういい、銃の引き金を引いた__が、引き金を引くことは出来なかった。なぜならば老婆の姿が一瞬ブレて消えたからである。
(後ろッ!?)
ソラが老婆がなぜ消えたか、それを思考している途中、後ろから極わずかな殺気を感じてしゃがんだ。そして、ソラの首があった位置を足が過ぎてゆく。今のけりが決まったら、ソラの首は間違いなく空を跳ねていただろう。そう思わせる程の威力の蹴りであった。
老婆のやった事は言葉にすれば至極簡単なことである。ソラが銃の引き金を引く寸前、高速でソラの背後に回りこみ、ケリをソラの首を跳ね飛ばすつもりで放った。ただそれだけもことである。
「……躱しましたか、私もだいぶ鈍ったものです」
「糞が!」
ソラは片足が上がった状態の老婆の軸となっているもう片方の方の足目掛けて足払いを仕掛ける__が、老婆は
片足のみの脚力のみで跳んだ。その高さ1.5mだろうか、有り得ないものであった。
そして、屋根の端を掴み、鉄棒で逆上がりをするかのように屋根の上にあがった。そして、懐から小型の銃、パースエイダーを取り出し、構えた。
だが、老婆が見たとき、そこにソラの姿はなかった。
「家の中に入りましかね?まあ、別段荒らされても困るわけではありませんが……」
「その読みは外れだぜ!このクソボケが!」
「ッ!?」
老婆の言葉とともに、老婆の立っていた屋根が崩れ、足元からソラのアッパーが老婆の鼻を掠める。
ソラは老婆が屋根にあがる途中、雨よけの為だろうか、玄関の屋根は少し出っ張ている。その出っ張り、屋根の裏に張り付いて老婆の視界から逃れたのである。あとはそのままアッパーを繰り出したのである。完全な不意打ち、流石の老婆とはいえ、反応が遅れてしまったが、バックステップで屋根の中心地に下がった。ソラもまた、屋根に登っていた。
「やりますね、年齢の割に経験も豊富なようです。貴方は一体どのような育て方をされてきたのか気になりますね」
「ハッ!俺を育てたやつなんていねえよ!ゴミ山の中で生き残るために戦ってきた。それだけだ!」
ソラは懐からナイフを取り出し、老婆の頭をかち割らんと振り落とす。が、よけられる。勿論ソラもこれまでの戦いによってそのくらいは想定していた。
(本命はコッチだ!)
(____な)
ソラは片手、それも
(……彼は見たところ右利き、ミスでしょうか?何しろ、ここまでです)
老婆もこれまでの戦いにより、それは分かっていた。
老婆は左側に避け、死角となるその位置から攻撃を加えようとしたが、老婆は信じられないものを見た。
ソラの右手に
「
そして、引き金が引かれ、弾丸が発射された。
その弾丸は老婆の額に当たるかと思いきや、またもや老婆の姿が消えた。最初にソラの背後に回った時とは比べようのないスピードでだ。
そして、ソラの首に手刀を当て、意識を刈り取った。
「……私が本気を出すとは……一体何年ぶりなんでしょうかね?彼には先程の技についてお聞きしたいですし、とりあえずは生かしておきますか」
そういい、老婆はソラを抱え家の中に入っていった。
『アレ?今回俺何もしてねえ……というかさっきの戦いって何なんだよ!ソラもババアもめちゃくちゃだなオイ!』
……アレ?今回バトルシーン?この世界ってほのぼのな世界だよね?
次回は明日別の作品……あ、もう0時だから今日か。を投稿します。