ただし少年には板東武士ソウルと島津ソウルがインストール済だった
現代でもファンタジーでも、困難の大半は割と暴力で解決してしまうのだ
現代学校ものでもファンタジーでも、肉体能力的に高い男性をいびる女性は暴力を警戒していないのが気になって
転生者として記憶が戻った瞬間は特別だった。
前世を生きていた自分の意識や記憶、今世を生きている自分の思い出が入り混ざり。
前世の「自分」が崩れ、混ぜられていく喪失感と今世の自分に足りなかったものが埋められて「新しい自分」になっていく万能感と満足感。
だから―――
「ちょっと! 聞いているの!? まったく使えないクズなんだから!」
推定10代半ば。派手な色をしたレースが過剰についているドレスっぽいワンピースを着ている少女。
神秘的かつ可愛い造形をした顔は侮蔑と高慢に染まり、実に―――実に醜い。
なるほど、これが今世の幼なじみかつ婚約者。
今世の「僕」はそこそこの地位にいる貴族、彼女は多少離れた領地にいる貴族、その分家から取った養女だけど家族に色々吹き込まれていて、気弱な僕を操り人形にしようとしていると。
「あなたの子供を作れなんて言われてるけととんでもない! 私にはもう心に決めた人がいるから、その人との子供をあなたの子供として後継者にするのだけは許してあげるわよ!」
そして彼女は色々吹き込んだ家族の斜め上を行くお花畑。
いやぁ……どんな甘やかされた生活を送ればこうなるのだろう。
今世の僕は気弱そうな美少年だけど、貴族の跡取りとして訓練を受けているから肉体的な基礎はばっちりできていると。
つまりだ―――
「舐めるなメスブタぁ!」
足を広げて重心を落とし、拳を握り、鼻っ柱に拳をたたき込む。
グギャ!とかヘギュ!を混ぜたゴブリンの鳴き声みたいな声があがった。
転生したこの世界、回復魔法はあるらしい。
だが傷をふさぐとかくらいならともかく、破損したものを修復する回復魔法はとても高度かつコストが高い。
「だめだよ、豚なんだからきちんとブヒブヒ言わないと」
ガッ! ガッ! と音を立てて拳が彼女の顔に突き刺さる。
致命傷になる場所は避けているが、堅いものを砕いている感触はするから、鼻と頬、あごと目の周囲、後は歯が半分くらい逝ったかな。
ついでに両手の肘と膝を踏んで折っておく。
前世の医療技術でも、ここを直すのは難しいかった。きちんと介護されて貰おうね。
ドタバタと慌てた様子で近づいてくる使用人の気配を感じながら、僕は傷だらけになった拳に応急手当をするのだった。
後日の話。
僕の行動について父に問われた。
「お前は何故あんな事をした?」
「はぁ。彼女は我が家と血統を乗っ取ると。舐めていたので……まあ、女性なので再起できない半殺し程度に」
「そうか、そこまで舐められていたか。して、あちらの当主はお前の首を晒さなければ戦も辞さないと言っているが、それにはどう考える?」
「当主まで我が家を舐めているなら、親類縁者老人赤子に至るまで根絶して、見せしめにするのが妥当でしょう」
「良い。お前がそこまで仕上がっているなら文句はいわぬ。お前も従軍せよ。もし戦死するような事があれば弟の方に家督を投げる」
「承知しました。戦に勝った場合、占拠はいたしますか? 占拠するなら民草にはお行儀よい戦になりますが」
「いらぬ。飛び地は余計な軋轢しか生まん」
「なら『かるたご』のようにしあげましょう」
「かる……? まあよい。任せる」
捕虜を取らず降伏した徴募兵にいたるまで首を切り落とし、村落を全て焼いた上で畑に大量の塩を撒いて、貴族の領地だったものが不毛の土地にした。
首狩り将軍の初陣まで後4週間―――。