雨の匂いが近づく夜、老猫のトラは、裏通りで迷子の小さな女の子に出会った。

気まぐれと空腹で後をつけただけだったのに、気がつけばトラは、自分の縄張りを出て、危険な夜の街を歩き始めていた。

野良犬、冷たい雨、酔った大人たち――猫の嗅覚と記憶、そして長い野良暮らしで鍛えた嗅覚と耳だけが道しるべ。
言葉は通じない。それでもトラは、たったひとつの約束を自分に立てる。

「朝までに、この子を帰す」

これは、猫が猫のまま、人間の子どもを守り抜いた、たった一夜の物語。