不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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ダークソウル編はこれにて完結と相成ります。

三ヶ月で完結だなんて、まるで打ち切り漫画見たいだね(白目)


正直途中で”此奴いつか失踪するんじゃね?”って思った人。


もれなくこのダークソウル世界への(強制)永住権が授与されます、やったね。


………………一足先にこの世界に逝ってきます。



不死の英雄伝 完

最終話 不死の英雄伝

 

 

大量の出血や重度の骨折によって俺の身体には限界が来ている。

それは不死人だった頃には味わった事の無い感覚だった。

 

意識だけが空回りし、身体が付いてこないような、思考と行動が噛み合わないような、そんな気分だった。

 

 

剣はもう何度も振るえないだろう、刃を振り下ろしたならきっと持ち上げられ無い。

 

一撃、そう馬鹿の一つ覚えだが、全てを込めた捨て身の一撃を入れるしか無い。

 

 

大王グウィンは此方に向かってくる様子は無い、胸の傷が思ったより深かったのだろうか?

 

それとも俺を誘っているのか。

 

 

いや、詮索はよそう。

 

今の俺では考えるだけ無駄だ。

 

来ないのなら、此方から向かうまで。

 

 

深く深呼吸をし、無理やり呼吸を整えながら彼に向かって走り出す。

 

踏み込みの瞬間に息を吐き、肺の中の空気を空にして一直線に向かう。

 

その際に、俺の中に残っている魔力の全てを月明かりの大剣に込めて行く。

 

俺の精神の高揚に呼応し、聖剣の力が限界以上に引き出され、その存在感が爆発的に跳ね上がり、周囲に散在する魔力をも収束し始めた。

 

全身から力が抜けて行くが、構うものか。

 

これが通らなければどの道勝ち目は無いのだから。

 

 

 

馬鹿正直に真っ正面から向かって行く俺に向かって、此処で漸く大王が動き出す。

 

彼が動かなかった理由は、その胸を見れば直ぐに分かった。

 

 

炎を押し付けて傷を塞いだのだろう、彼の胸には火傷の跡がくっきりと残っている。

 

ああ言う荒療治は後を引くため、本当に応急処置にしかならないが、今この瞬間においては最善の手。

 

身体が動けば何とでも出来るから、彼は立ち止まって傷を塞いで居たのだろう。

 

彼の表情は先ほどとは打って変わって、真剣その物。

 

 

 

それもそうだろう、こいつは聖剣の中の聖剣、唯一無二の代物だ。

 

タダでさえ凄まじい性能を誇っているのに、今の此奴はその限界を優に超える力を放っているのだ、いくら神格を持った者と言えど、掠っただけで惨事となる。

 

 

それを警戒するなと言う方が無理があると言うものだ。

 

 

大王が光波の射程範囲に入るが、まだ動かない。

 

手首を僅かに動かして光波の存在をチラつかせながら、更に間合いを詰めて行く。

 

 

彼はこの動きで光波の事も警戒し始めたのか、その場で立ち止まり剣に太陽のような黄金の雷を纏わせながら、俺を迎え討つ事にしたようだ。

 

 

炎と雷によって表現のしようの無い光景が目に移り、その剣の神具としての威圧感に潰されそうになる。

 

 

この男と対峙している最中で最も厄介なのが神と人間の格の違い。

 

一々何かの仕草を取っただけでも威圧されてしまうのだ。

 

膝を屈しそうになったのを気力で乗り越え、一気に踏み込む。

 

 

ーほう?懐かしい、それは正にかの深淵歩きを彷彿とさせる動きだー

 

ーだがな人間ー

 

ーその速さでは余を討てんー

 

ーやはり、人間では天に届かぬのよー

 

 

完全に目視され、且つタイミングも完璧なカウンター。

 

大王の持つ大剣が俺の生命を刈り取ろうと振り下ろされる。

 

 

 

 

見切られるのは分かっていた、満身創痍の身体では、まともに打ち合えば彼を討つ事も出来ない事も。

 

しかし、俺が狙っている物は聖剣の力に頼った玉砕では無い。

 

最後の奇策、全てを賭け金にした大博打。

 

俺は握っていた月明かりの大剣を、大王の顔に向けて軽く”放り投げる”。

 

 

本当に軽く投げただけなので、この剣では彼を討つ事は出来ないが、代わりに此れで俺の勝敗が決まる。

 

 

散々その存在を見せ付けていた聖剣を投げ捨てる暴挙、いよいよ己の命の火が燃え尽きようとする刹那の愚行。

 

 

眼前に現れた聖剣に、大王は明らかに思考が追い付いていない。

 

 

それはそうだろう。

 

 

一撃でこの状況をひっくり返す一縷の望みを、逆転の一手を自ら手放すなんてのは馬鹿でもしないだろう。

 

しかし、それでも前向きに考えるとするならば、それは即ち誰もが夢想だにしない行為と言う事となる。

 

 

この危機的状況で命綱を自ら捨てるなど、誰も想像出来ないさ。

 

例えそれが、神であってもね。

 

 

彼の思考の乱れに乗じて太陽の直剣を引き抜き、後数ミリと言った所まで迫った大剣を潰れた左腕で払い除ける。

 

そのお陰で、大剣に接触した部分が目出度く塵も残さず消滅したが、引き換えに彼の胴を大きく晒け出させる事が出来た。

 

体勢を崩されても尚、彼は左腕を伸ばしてきたが、その手が俺の顔を握り潰す前に、心臓を潰す事が出来た。

 

胸を貫かれ、力が入っていない彼の左腕を払いのけ、背中に背負っていたアルトリウスの大剣で首を叩き落とし、トドメを刺す。

 

 

ーどうだ、どうだ大王よ‼︎ー

 

ーこれが、これこそが‼︎ー

 

ー人間の力だ‼︎ー

 

 

 

こうして太陽の神は没し、その座と始まりの火は不死の英雄に委ねられた。

 

 

彼は火を継がず、火を消さず、世界を一から創世し直した。

 

 

神は天上へと押し上げられ、何不自由の無い天界に住まうように。

 

 

魔物は地下へと押し込められ、魔界にて闘争に明け暮れるように。

 

 

かくして地上に残るは人間のみとなった。

 

 

そして、この三つの世界の境界には生命の炎が敷かれ、互いに干渉の出来ないように分け隔てられた。

 

 

これが今日までの我々人の世が産まれた過程である。

 

 

神々は口にする。

 

 

不死の英雄の事を薄汚い簒奪者と、許されざる裏切り者と。

 

 

魔物達は口にする。

 

 

不死の英雄は化け物だと、神や悪魔以上に恐ろしく、悍ましい存在だと。

 

 

ならば我々人間にとっては、彼は一体どのような存在なのだろうか?

 

 

その答えは、誰にも分からない。

 




リリカル編は2、3日お休み下さい(T_T)


ダークソウルだけ読みたいと言うお方は此処まで有難うございました。m(_ _)m


リリカル編も読んで頂けるお方はそちらでお会い致しましょう。

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