缶詰ちゃんはかばんにいっぱい缶詰をつめてヨタヨタと歩く

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貯食

長編小説「みょんと鬼(いつか書く予定)」エピソード2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「缶詰、一週間分もらっていいですか?」

「一週間後にまた来ます」

 

「ああ、いいよ」

「でも、ここで調理したものを食べていっていんじゃない?」

 

「ありがとうございます、でも、お部屋で勉強がしたいのです」

 

「ああ、うん、本当に缶詰ちゃんなんだね」

 

「はい、わたし缶詰ちゃんです」

「ありがとうございます」

 

おじぎをして食堂から出ていく、かばんの中には缶詰がいっぱい

かばんは大きくて私は小さい、かばんは重くて私は軽い

よたよた、よたよた揺れながら廊下を歩いていく

 

船に乗る事が決まった日、わたしは缶詰ちゃんになった

缶詰と共に一日中へやにいて勉強し続けた

ときどき缶詰の中身をつまみながら

その噂が周りに広がっていくようにした、友達や偉い人を使ってそうした

 

戸を開けて自分の部屋に入る、かばんを下す

缶詰の一つを開ける、食べる、必要最低限

缶詰の油、スポイトで吸いだす

部屋の戸の可動部に油を塗っていく、開閉時に音が鳴らないように

 

壁に本棚がある、船に乗るとき王様にお願いして乗せてもらった本棚

本の1つを手前に引く、本棚が手前に動く、本棚の後ろに空間ができる

 

壁に吊るされた(ほうき)を手に取る、掃き穂の部分を外す

手の骨のような(つか)みが現れる、掃き穂の反対側の端をくるくる回せば

(つか)みが閉じたり開いたりする、(つか)みで缶詰を(つか)

本棚の後ろに置いていく、本棚を戻し、掃き穂を戻す

 

壁にもたれかかる、エネルギーを消費してはいけない

体は動かさない、頭も動かさない

部屋の隅になって、時の流れに身をまかせる

 

週に1度、缶詰をもらいに行く、部屋に戻り

壁にもたれかかる、エネルギーを消費してはいけない

体は動かさない、頭も動かさない

部屋の隅になって、時の流れに身をまかせる

 

 

 

 

 

 

 

 

「缶詰一週間分、もらっていいですか?」

 

「いいよ」

 

「いつもありがとうございます」

 

缶詰は既に用意されている、おじぎをして、かばんの中に入れて

食堂の外に出る、かばんは大きくて私は小さい、かばんは重くて私は軽い

よたよた、よたよた揺れながら廊下を歩いていく

 

自分の部屋の戸を開ける、中に入ってかばんを下す

缶詰の一つを開ける、食べる、必要最低限

 

2週間前に第3特設燃料タンクは空になったはずだ

1週間前に気化したレジン燃料は完全に抜けたはずだ

 

棚に本がある、船に乗るとき王様にお願いして乗せてもらった本

1つを取る、開く、中身はくりぬかれている

分解された塗布装置が入っている、取り出して組み立てる

もう1つ本を取る、開く、中身はくりぬかれている

四角い容器が入っている、中身は接着剤、これは慎重に使わないといけない

 

容器を取り出す、下に何かある、紙がある、お母さんからの手紙

内容は一瞬で脳裏に焼き付く

 

壁にもたれかかる、エネルギーを消費してはいけない

体は動かさない、頭も動かさない、部屋の隅になって、夜を待つ

お母さんの姿が瞳の上を流れていく、手紙の言葉が心の上を流れていく

 

 

 

 

 

 

真夜中

 

動き出す、持ち出すのは缶詰1個、欲張ってはいけない

接着剤を充填した塗布装置、ノートから切り取った紙、黒く塗ってある

部屋を出て戸を閉める、廊下、この時間には誰もいない

耳を立て、ひょこひょこと左右に動かしながら

一番後ろの部屋にしてもらった、それでも乗員室は機関部からは遠い

 

階段にたどり着く、上る、甲板に出る、帆は高く上がり風に膨らんでいる

大きなロープの間に隠れる、船首の方角に見える小さな赤の光は煙草の炎

ウコク侯爵、いつも()の時刻に甲板に出て煙草を吸っている

海の向こうを見ているはずだ

 

音を立てないように後甲板に向かう、後部昇降口が見える

ハッチには油を塗ってある、開くとき音を立てないように

開いて梯子を下りる、第1層、昇降口、ハッチを開く、第2層

第3層・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

壁伝いに歩いていく、明りは無い、制御装置に細工をしてある

この時間には光が落ちるように、船の構造・寸法は全て頭に入っている

建造中に見学した時と構造に違いはない

 

第3特設燃料タンク、隅に隠した箱を開け()の中の服に着替える

上部メンテナンスハッチを開けて入る

塗布装置を取り出し、ノートの紙で偽装した缶詰に接着剤を塗る

タンクの内側、天井に張り付ける、黒い、四角いもの

簡単には何かわからない、空間に溶け込んでいる

 

2年後に燃料は尽きる、3年後に食料は尽きる

自分の部屋の壁にもたれかかる、エネルギーを消費してはいけない

体は動かさない、頭も動かさない、部屋の隅になって、次の夜を待つ

お母さんの姿が瞳の上を流れていく、手紙の言葉が心の上を流れていく


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