私は親友のままでいたくない   作:さぶろー

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第10話 初めてのキャンプ

 二番道路に入ると、ブラッシータウンの町並みが少しずつ後ろへ遠ざかっていった。

 

 道の両側には草むらが広がっている。風が吹くたびに草が揺れ、その奥から野生ポケモンの鳴き声が聞こえた。

 

 ホップはスマホロトムを取り出して、ポケモン図鑑を開いた。

 

 まだ空白の多い画面。

 

 けれど、そこにはもうヒバニーの情報が入っている。隣を歩くマサルの図鑑には、メッソンが入っているはずだった。

 

「この辺、ポケモン多そうだね」

 

「そうだね」

 

 マサルも草むらを見る。

 

「ボールは足りる?」

 

「うん。さっき多めに買ったよ」

 

「準備いいね」

 

「忘れたら困るし」

 

「確かに」

 

 ホップは鞄の中を軽く確認した。

 

 自分のボールも、ちゃんとある。

 

 足元ではヒバニーが元気よく跳ねていた。マサルの近くでは、メッソンが少し周りを気にしながら歩いている。

 

 まだ博士の家までは距離がある。

 

 けれど、もう旅は始まっていた。

 

 ホップはそう思いながら、二番道路を進んだ。

 

 道中、何度も野生ポケモンと出会った。

 

 ホップはウールーを捕まえた。

 

 続けて、草むらの近くで出てきたココガラも捕まえた。

 

 マサルも、道中で出会ったガーディをメッソンと一緒に相手取り、ボールに収めた。

 

 捕まえたポケモンの情報が、図鑑に増えていく。

 

 朝にはほとんど空白だった図鑑に、少しずつ記録が埋まっていく。鞄の中のボールも増えた。

 

 それは嬉しかった。

 

 けれど、二番道路は思っていたより忙しかった。

 

 草むらを抜ければ野生ポケモンが出る。

 

 道を進めば、トレーナーに声をかけられる。

 

 バトルをして、倒して、また進む。

 

 その繰り返しだった。

 

 ヒバニーはよく動いた。

 

 捕まえたばかりのウールーとココガラも、何度かバトルに出た。

 

 マサルのメッソンも、少しずつバトルに慣れていく。ガーディは元気に前へ出たがることが多く、マサルがそのたびに落ち着かせていた。

 

 楽しい。

 

 でも、楽しいだけではない。

 

 ポケモンたちは、思っていたよりも疲れる。

 

 博士の家へ向かう坂が遠くに見え始めた頃、ホップは足を止めた。

 

 ヒバニーはまだ元気そうだったが、朝のように跳ね続けてはいなかった。

 

 ウールーとココガラも、捕まえたばかりでバトルをした。

 

 マサルのメッソンも少し疲れているように見える。ガーディはまだ元気そうだったが、それでも連戦したことに変わりはない。

 

「ねえ、マサル」

 

「何?」

 

「一回、休ませない?」

 

 マサルはメッソンを見た。

 

 それから、ガーディの入ったボールを見る。

 

「うん。そうしよう」

 

「キャンプできそうな場所、あるかな」

 

「あそこなら大丈夫そうだよ」

 

 マサルが道の脇を指した。

 

 草むらから少し離れた、開けた場所がある。休むにはちょうどよさそうだった。

 

「じゃあ、あそこで」

 

「うん」

 

 二人は道の脇へ移動した。

 

 初めてのキャンプだった。

 

 道具は持ってきている。

 

 けれど、実際に広げてみると、思っていたより部品が多かった。

 

 ホップは説明書を開く。

 

 マサルは布と支柱を持って、地面に並べた。

 

「まず支柱だね」

 

「こっち?」

 

「えっと……待って。絵だと、こっちが上かな」

 

「これでいい?」

 

「うん。たぶん合ってる」

 

「たぶんなんだ」

 

「説明書の絵が小さいんだよ」

 

「本当だ。小さいね」

 

 マサルは少し顔を近づけて説明書を見た。

 

 それから支柱を持ち直す。

 

「じゃあ、こっちでやってみようか」

 

「うん」

 

 二人で布を広げる。

 

 風で端が少しめくれた。

 

「マサル、そっち押さえてくれる?」

 

「分かった。ここ?」

 

「もう少し端」

 

「ここだね」

 

「うん、ありがとう」

 

 ホップが留め具を刺そうとすると、少し斜めになった。

 

 うまく入らない。

 

「これ、固いね」

 

「代わる?」

 

「もう少しやってみる」

 

「分かった」

 

 何度かやって、ようやく留め具が入った。

 

 ホップは息を吐く。

 

「できた」

 

「うん。入ったね」

 

「キャンプって、もっと簡単だと思ってた」

 

「俺も。張ってあるところを見るのと、実際にやるのは違うね」

 

「本当だね」

 

 少し時間はかかったが、どうにかテントは立った。

 

 形は少し歪んでいる。

 

 けれど倒れそうではない。

 

 ホップは一歩下がって見た。

 

「……ちょっと曲がってる?」

 

「少し曲がってるね」

 

「やっぱり?」

 

「でも、ちゃんと立ってるよ」

 

「ならいいかな」

 

「うん。休むには大丈夫だと思う」

 

 マサルがそう言って、支柱の部分を軽く確認した。

 

 それを見て、ホップは少しだけ笑った。

 

「マサル、結構ちゃんと見るね」

 

「倒れたら困るからね」

 

「それは困るね」

 

「カレー作ってる途中で倒れたら嫌だよ」

 

「それはかなり嫌だね」

 

 二人で軽く片付けてから、ポケモンたちを外に出した。

 

 ヒバニーは真っ先に辺りを見回し、すぐにホップの足元へ戻ってきた。

 

 ウールーは少し戸惑ったようにその場に立っている。

 

 ココガラは近くの低い枝にとまった。

 

 メッソンはマサルのそばへ寄り、ガーディは地面の匂いを嗅いでから顔を上げた。

 

 急に賑やかになった。

 

 今朝、ハロンタウンを出た時はヒバニーだけだった。

 

 それが今は、ウールーとココガラもいる。

 

 マサルの方にも、メッソンとガーディがいる。

 

 手持ちが増えるというのは、こういうことなのだと、ホップは少し遅れて実感した。

 

「みんな、今日はお疲れさま」

 

 ホップはしゃがんで、ヒバニーたちを見る。

 

「まだ途中だけど、いっぱい頑張ってくれたね」

 

 ヒバニーが元気よく鳴く。

 

 ウールーは少しだけ近づいてきた。

 

 ココガラは枝の上からこちらを見ている。

 

 捕まえたばかりだから、まだ距離はある。

 

 それでもよかった。

 

 これから一緒に歩いていくのだから、少しずつ近づけばいい。

 

 マサルも、メッソンとガーディの前にしゃがんでいた。

 

「メッソン、大丈夫?」

 

 メッソンは小さく頷いた。

 

「疲れたよね。少し休もう」

 

 マサルがそう言うと、メッソンはマサルの足元に寄った。

 

 ガーディはその横で元気に鳴く。

 

「ガーディは元気そうだね」

 

 ホップが言う。

 

「うん。かなり元気だよ」

 

「さっきから動きたそう」

 

「そうなんだよね。休ませるつもりで出したんだけど」

 

 マサルがガーディを見る。

 

「少しだけ待って。カレー作るから」

 

 ガーディは尻尾を振った。

 

 分かっているのか、いないのか。

 

 でも、嬉しそうではあった。

 

「カレー、作ろうか」

 

 ホップが言う。

 

「うん。作ろう」

 

 二人でカレーの道具を広げた。

 

 鍋を置いて、火を起こす。

 

 袋に入れていたきのみを出すと、ヒバニーがすぐに反応した。ホップの手元を見上げ、今にも近づいてきそうになる。

 

「ヒバニー、まだだよ」

 

 ホップが言うと、ヒバニーは少し不満そうに鳴いた。

 

 ガーディも鍋の近くへ来ようとする。

 

「ガーディも、まだだよ」

 

 マサルが声をかける。

 

 ガーディは座った。

 

 けれど視線は鍋に向いたままだ。

 

「すごく見てる」

 

「早く食べたいんだと思う」

 

「分かりやすいね」

 

「うん。分かりやすい」

 

 マサルが少し笑った。

 

 ホップは並べたきのみを見る。

 

 甘そうなもの、少し辛そうなもの、酸っぱそうなもの。

 

 どれを入れればいいのか、まだ感覚が分からない。

 

「どれ入れる?」

 

「ヒバニーは元気だから、辛いの好きそう」

 

「見た目で決めてない?」

 

「バレた?」

 

「バレバレだよ」

 

 ホップは笑って、辛そうなきのみを一つ手に取った。

 

「メッソンは?」

 

「甘いのがいいかも」

 

「それも見た目?」

 

「うん」

 

「じゃあ、甘いのも入れよう」

 

 二人できのみを選び、鍋に入れていく。

 

 バターライスも用意する。

 

 湯気が上がり始めると、カレーの匂いが少しずつ広がった。

 

 ヒバニーはそわそわし、ガーディは座ったまま尻尾を振っている。

 

 ウールーは匂いにつられたように近づき、ココガラも枝の上から下りてきた。

 

 メッソンは少し離れたところから鍋を見ていた。

 

「火、強いかな」

 

 ホップが聞く。

 

「少し強いと思うよ」

 

「弱められる?」

 

「うん。弱めるね」

 

 マサルが火を調整する。

 

 ホップは鍋を混ぜた。

 

「焦げてない?」

 

「まだ大丈夫だと思う」

 

「本当?」

 

「匂いはまだ大丈夫」

 

「匂いで分かるの?」

 

「少しは」

 

「すごいね」

 

「焦げたら分かるだけだよ」

 

「それは分かるか」

 

 ホップは少し笑って、鍋を混ぜ続けた。

 

 マサルが横からきのみを足す。

 

「それ、全部入れる?」

 

「多いかな」

 

「少し多いかも」

 

「じゃあ半分にするね」

 

「うん」

 

 初めてのカレー作りは、思っていたより慌ただしかった。

 

 きのみの量も、火加減も、混ぜるタイミングも、正しいのか分からない。

 

 けれど、二人で鍋を見て、少しずつ調整していくのは楽しかった。

 

 出来上がったカレーは、少しだけ焦げた匂いがした。

 

 それでも、ちゃんとカレーだった。

 

 ホップはバターライスを器によそい、その上からカレーをかける。

 

 ポケモンたちの分も用意した。

 

 最初にヒバニーが食べ始めた。

 

 ウールーも続く。

 

 ココガラは少し警戒していたが、ヒバニーが食べているのを見て近づいた。

 

 メッソンはマサルの近くで静かに食べる。

 

 ガーディは勢いよく食べ始め、途中で少しむせた。

 

「ガーディ、ゆっくり」

 

 マサルが言う。

 

 ガーディは一度顔を上げ、今度は少しだけゆっくり食べ始めた。

 

「ちゃんと聞いたね」

 

「うん。偉いね」

 

 マサルがそう言うと、ガーディは嬉しそうに尻尾を振った。

 

 ホップはその様子を見て、小さく笑う。

 

 捕まえたばかりのポケモンたちが、同じ場所で同じカレーを食べている。

 

 それだけで、少し距離が縮まった気がした。

 

 二人もカレーを食べる。

 

 熱い。

 

 少しだけ焦げた味もする。

 

 きのみの甘さと辛さが混ざっていて、思っていたより複雑な味だった。

 

 けれど、悪くなかった。

 

「どう?」

 

 ホップが聞く。

 

「おいしいよ」

 

「本当?」

 

「本当だよ」

 

「ちょっと焦げてるよね」

 

「少し焦げてるね」

 

「そこは正直だね」

 

「でも、おいしいよ」

 

 マサルは普通にそう言って、もう一口食べた。

 

 ホップは少しだけ視線を落とす。

 

「……そっか」

 

「うん」

 

「ならよかった」

 

 カレーが上手くできたかどうかは、正直分からない。

 

 少し焦げたし、きのみの組み合わせも合っていたのか怪しい。

 

 けれど、マサルが普通に食べている。

 

 ポケモンたちも食べている。

 

 それだけで、ホップは少し安心した。

 

「次はもう少し上手く作れるかな」

 

「作れると思うよ」

 

「本当?」

 

「火を少し弱めれば、焦げにくいと思う」

 

「次は最初からそうしよう」

 

「うん。あと、きのみは少し少なめでいいかも」

 

「それはマサルも途中で気づいたやつだね」

 

「うん。入れる前に気づいてよかった」

 

「入れてからだったら大変だったね」

 

「鍋から戻すことになったかも」

 

「それは嫌だな」

 

 二人でそんな話をしながら、カレーを食べる。

 

 大きな話ではない。

 

 兄のことでも、ジムチャレンジのことでもない。

 

 火が強かったとか、きのみが多かったとか、ガーディが食べるのが早いとか、そんな話ばかりだった。

 

 けれど、ホップにはそれが楽しかった。

 

 旅に出るというのは、ジムを巡って、強い相手と戦って、兄に挑むことだと思っていた。

 

 もちろん、それは間違っていない。

 

 でも、それだけではなかった。

 

 ポケモンたちが疲れたら休む。

 

 捕まえたばかりの子たちと一緒にご飯を食べる。

 

 少し失敗したカレーを、マサルと並んで食べる。

 

 そういう時間も、旅の中にある。

 

 ヒバニーは食べ終わると、満足そうに座り込んだ。

 

 ウールーは眠そうにしている。

 

 ココガラは羽を整えている。

 

 メッソンはマサルの近くで落ち着いていた。

 

 ガーディは空になった器をまだ見ている。

 

「ガーディ、もうないよ」

 

 マサルが言う。

 

 ガーディは少し残念そうに鳴いた。

 

「次も作るから」

 

 マサルがそう言うと、ガーディは尻尾を振った。

 

「次も食べる気だね」

 

 ホップが言う。

 

「うん。たぶん楽しみにしてる」

 

「次は焦がさないようにしないとね」

 

「そうだね」

 

 マサルが頷く。

 

「ガーディに期待されてるし」

 

「ヒバニーにもね」

 

 ホップがヒバニーを見ると、ヒバニーは元気よく鳴いた。

 

 その声に、ホップは笑った。

 

 少しの間、二人はそのまま休んだ。

 

 ポケモンたちも、それぞれ好きな場所で休んでいる。

 

 捕まえたばかりで、まだ完全に慣れたわけではない。

 

 それでも、同じ場所で休んで、同じご飯を食べた。

 

 その分だけ、少し近づいた気がする。

 

「キャンプしてよかったね」

 

 ホップはぽつりと言った。

 

「うん」

 

「みんな、少し休めたみたい」

 

「ホップも休めた?」

 

「私?」

 

「うん。朝からずっと動いてたから」

 

 ホップは少しだけ瞬きをした。

 

 ポケモンたちのことばかり考えていた。

 

 けれど、言われてみれば、自分も少し疲れていた。

 

 旅立って、相棒を選んで、バトルして、図鑑をもらって、二番道路を進んで。

 

 楽しいから気づきにくかっただけで、身体も心も動き続けていた。

 

「……休めたと思う」

 

「ならよかった」

 

 マサルはそう言って、自分の器を片付けた。

 

 ホップは少しだけ胸の奥が温かくなるのを感じた。

 

 マサルはいつも、そういうところに気づく。

 

 大げさには言わない。

 

 けれど、見ていないわけではない。

 

「マサルも休めた?」

 

「うん。休めたよ」

 

「ならよかった」

 

「カレーも食べたし」

 

「少し焦げてたけど」

 

「でも、おいしかったよ」

 

 またそう言われて、ホップは少しだけ視線を逸らした。

 

「……次はもっと上手く作るよ」

 

「俺も手伝う」

 

「うん」

 

 それが、当たり前みたいに聞こえた。

 

 次も一緒に作る。

 

 次も一緒に休む。

 

 次も一緒に進む。

 

 そう思うと、ホップの胸の奥にまた温かいものが広がった。

 

 しばらく休んでから、ホップは空を見上げた。

 

 昼間より、少し色が濃くなっている。

 

 カレーを作って、食べて、ポケモンたちを休ませているうちに、思っていたより時間が経っていた。

 

「……もう夕方だね」

 

 ホップが言うと、マサルも空を見た。

 

「本当だね」

 

「博士の家、見えてはいるんだけど」

 

「うん」

 

 坂の先には、マグノリア博士の家が見えていた。

 

 行こうと思えば、まだ行ける距離ではある。

 

 けれど、初めての道を歩いて、バトルをして、ポケモンを捕まえて、キャンプをして、カレーまで作った。

 

 ポケモンたちは休めたようだが、今日一日が長かったことに変わりはない。

 

「今日は、ここで泊まろうか」

 

 ホップが言った。

 

 マサルは少しだけテントを見る。

 

「うん。その方がいいと思う」

 

「明日の朝、博士の家に行けばいいよね」

 

「うん。遅くに行くより、その方がいいよ」

 

「じゃあ、今日はここまで」

 

「そうしよう」

 

 決めてしまうと、少し身体の力が抜けた。

 

 旅に出た一日目。

 

 もっと先へ進まなければいけない気がしていた。

 

 けれど、急がなくてもいい。

 

 ポケモンたちが疲れたら休む。

 

 日が暮れたら、泊まる場所を決める。

 

 そうやって進むことも、旅なのだと思った。

 

 ヒバニーは少し眠そうにしていた。

 

 ウールーはホップのそばで丸くなりかけている。

 

 ココガラは低い枝の上で羽を整えていた。

 

 メッソンはマサルの足元にいて、ガーディはまだ周りを気にしている。

 

「ガーディ、見張りする気かな」

 

 ホップが言う。

 

「そうかも」

 

「頼もしいね」

 

「うん。でも、ちゃんと寝てほしいね」

 

 マサルがそう言うと、ガーディは元気よく鳴いた。

 

「寝る気なさそう」

 

「あとで寝ると思うよ」

 

「本当?」

 

「たぶん」

 

「そこはちょっと怪しいね」

 

 ホップが笑うと、マサルも少し笑った。

 

 二人は改めてキャンプの周りを整えた。

 

 倒れないように支柱を確認し、荷物を濡れない場所へ寄せる。

 

 張る時よりは、少しだけ手際がよかった。

 

「これ、ちゃんと一晩持つかな」

 

「持つと思うよ」

 

「本当?」

 

「ちゃんと立ってるし」

 

「少し曲がってるけど」

 

「少し曲がってるだけだよ」

 

「それは大丈夫ってことでいいのかな」

 

「大丈夫だと思う」

 

 マサルが支柱を軽く押さえる。

 

 テントは少し揺れたが、倒れはしなかった。

 

「ほら」

 

「うん。大丈夫そう」

 

 ホップは頷いた。

 

 ポケモンたちも、少しずつ落ち着いていった。

 

 ヒバニーはホップの近くに座り、ウールーはその隣で丸くなる。

 

 ココガラは枝の上からこちらを見ている。

 

 メッソンはマサルのそばで目を細め、ガーディはしばらく周りを歩いたあと、ようやくマサルの近くに腰を下ろした。

 

「ガーディ、寝るみたいだね」

 

「うん。よかった」

 

「見張りは?」

 

「明日からでいいよ」

 

「明日からなんだ」

 

「今日は疲れてると思うし」

 

「優しいね」

 

「普通だよ」

 

 マサルはそう言って、ガーディの頭を軽く撫でた。

 

 ガーディは気持ちよさそうに目を細める。

 

 その様子を見て、ホップは少しだけ胸の奥が温かくなった。

 

 朝よりも、手持ちが増えた。

 

 図鑑の記録も増えた。

 

 初めてキャンプをして、初めて二人でカレーを作った。

 

 少し焦げたけれど、ポケモンたちは食べてくれた。

 

 マグノリア博士の家は、もう見えている。

 

 けれど、今日はここで止まる。

 

 それも悪くなかった。

 

 ホップはヒバニーを見て、それからマサルを見る。

 

「明日、行こう」

 

「うん」

 

 マサルが頷く。

 

「明日、博士の家に行こう」

 

 空はゆっくり暗くなっていく。

 

 旅に出た一日目の夜が、二番道路に降りてきていた。

 

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