家に天使が来た話   作:ナニワのおっちゃん

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迎え

俺は布団から起き上がり、伸びをする。

 

隣では、あの天使が寝ている。

 

あの後、結局一晩中帰りたくないだのなんだの泣きながら縋りついてきた。

 

俺が寝ようとしても、まだ話したいだと言い出したから、とりあえず泣き疲れるまで待ち、寝かせた。

...子供か。

 

あの隕石の中にある手紙によると、どうやら、今日。天界からメシティスを連れ帰るための迎えが来るらしい。

やっとか、という気持ちと、残念だ、という気持ちがある。

比率がどうなのかは、俺にはよくわからない。

 

スヤスヤと心地よさそうな寝息を立てて寝てる当事者は、頬に涙の痕がくっきりわかるぐらい残っている。

 

今日の何時なんだろう?

 

「おい。起きろ。」

 

「...ムニャ」

 

「引っ叩くぞ。」

 

「...はっ、今日...今日かぁ......」

 

物凄くでかいため息を吐き、布団に閉じこもる。

 

「出ろ、せめて。迎え来るんだろ?お前、あの白い変な服着なきゃだろ。」

 

「嫌です。私は地球人です、天使じゃないです。」

 

「今更無理があるだろ、隕石受け止めておいて。...ってか、迎え、いつ来るかわからないって言ってたのに早かったな」

 

「...早すぎです。天使心がわかってません、うちの神様たちは。」

 

「ちなみになんでだ?」

 

「大方、神様が虱潰しに探してたら見つけたとかじゃないですかね。」

「...話の分かる人だったら、なんとかなるかな...」

 

「なあ、なんでお前そんなにここに残りたがるんだよ。」

 

「退屈だからです。」

 

「なら、娯楽品持ってけばいいんじゃねえの。もしくは、ちょくちょく降りてくるとかさ。」

 

「降りるの、かなーり複雑な手順が必要で...過干渉しすぎないようにって、面倒なんです...」

 

「...あー。納得ではあるな。」

 

「そういうわけで、もうちょっと残らせてください。」

 

「俺に言われてもな...じゃあ、逃げればいいんじゃね?他の国とかさ。」

 

「...................」

 

「...なんだよ、その目は。」

 

「貴方も、天使心がわかってないです。」

 

プイとそっぽを向き、メシティスは布団に潜る。

 

「えぇ...?」

 

 

「ああ、そうだ。迎えなんだが、隕石はやめてくれよ。俺の家が壊れたら嫌だ。」

 

「..........」

「神様が出張ってくるなら、多分問題ないです。でも、私は暴れるので家が壊れたらごめんなさい。」

 

「そんなにか??」

「なら、俺が天界に行けばよくね。」

 

「そういう問題じゃないです...酸素、ありませんよ?」

 

「じゃあ死ぬな。」

 

「はい...はぁ.......」

 

 

 

バァン、と大きな破裂音がした。

 

 

 

「おい、なんだ、今の音。爆竹か何かか?」

 

「...来たんでしょうね。窓から外、見てみてください。」

「...嫌だなぁ...ずっとイチャイチャしてたいなぁ...」ボソボソ

 

 

 

言われた通りに見れば。

 

オーロラ...というわけでもないが、光のカーテンのような物が、上空に差し込めていた。

 

「...おお...」

 

感動したような、そうでもないような。

そこから、空間が歪んだ。

 

ぐにゃり、と。

 

その空間に、穴が開くように。

 

そこから何かが出てくる。

 

目玉のような物が出現し、それが絶え間なく広がる。

 

「...なんだ、あれ。気持ち悪いな...」

 

「ああ、お出まし...あ、」

 

「どうした。」

 

ちょっと嫌な光景に目を背け、代わりに隣の人型の方の天使を見やる。

顔は少し希望が差し込んだように明るくなっており、俺の方を見る。

 

「あれ、天使です!神様じゃないなら、ワンチャンあります!...どなたかな...」

 

「居座る気満々だな。まあ、家事手伝いが残るなら嬉しいが。」

 

目玉の周りに、何対かの純白の翼が広がる。数えた所、3対で、6枚だ。

 

...3対で、6枚?

 

「なあ。3対、6枚の翼って、大天使じゃなかったか?」

 

「そうですね。熾天使の方です。」

 

「.......めっちゃえらい人じゃなかったか。」

 

「えーと、神様を除けば、一番上ですね。」

 

「なんでお前そんな楽そうにできんの?」

 

「私にも色々あって...業務秘密です。あ、私の直属の上司ですね。」

 

その目玉と翼の塊は、突然消えて。

 

窓の近くに、突然、また現れた。

 

瞬間移動って物なんだろう。天使っていうのは、なんでもありだ。

 

「うおっ?!でっか!!」

 

何m、とかそういう尺度では測れない。大きすぎて、距離感が掴めない。

 

メシティスはといえば、手を振っている。

目玉の一つと目が合った。

 

あ、なんか、やばい。そう感じた時には遅かった。

 

頭痛がする。同時に、何かが聞こえる。

 

それは、声だった。

 

『!”#$%&’「あ、翻訳かけますね。」めまして、人間の子よ。』

 

「お前マジで最高だな。」

 

「それほどでも...へへ...」

 

「ってか、頭の中に声が響く感じなんだけどさ、どうやってんの?これ。」

 

「ああ、それは普通に話してますよ。音波のせいです。」

 

「よくわからんが、とりあえずいいんだな。」

 

「ええ。気にしなくていいです。」

 

『貴方の隣の...メシティスの、迎えです。速やかに、引き渡しなさい。』

 

「お前指名手配でもされてるような言われ方だぞ。」

 

「すいませ~~ん!お話したいので、降りてきてもらえませんか!」

 

「お前、気楽すぎだろ。話しかけ方が。」

 

『あ、まぢ?そう。そっちお邪魔していい感じ?』

 

「多分大丈夫です!お世話になっているので!」

 

 

 

...........??????????????????????

 

 

尊大な話し方だった、目玉の塊が、またも消えた。

 

直前に、意味の分からない話し方をした瞬間に。

 

俺は、頭を抱えた。

 

 

 

ドアから、ノックが聞こえる。

 

ああ、開けたくない。

 

「亮さん、すいません、開けてもらえませんか。多分、ガブリエルさんなので。」

 

「..............ちょっと待て。」

 

「はい?」

 

「ガブリエルって言った?お前?」

 

「はい。直属の上司さんです...お恥ずかしながら、近くで見るまでわかりませんでしたけど...」

「変な姿になってましたし...」

 

インターホンが鳴る。

 

『メーちゃん開けてよ。外寒みなんだけど。』

 

「......................ガブリエルって、確か、めちゃめちゃ偉い天使だよな。」

 

「?はい。熾天使さんですから!」

 

「こんな...こんな、話し方すんの?」

 

「昔はそうでもなかった気がします。ただ、私が降りる前は結構ラフな感じに,..」

 

「........」

 

俺はとてつもなく大きなため息を吐きながら、ドアを開ける。

 

「よろ~。ガブちゃんって呼んで。」

 

俺はドアを閉め「なんで締め出すん。メーちゃんに会いに来ただけだって。」足を間に挟まれた。

 

 

 

 

仕方なく、家にガブちゃん?を入れた。俺は、この人があのガブリエルだなんて信じたくない。

 

赤い髪で、メシティスと同じように長髪。人間の女性のような姿を取っている。

 

...あの目玉と翼はどこへ?

 

「お久しぶりです、ガブリエルさん。」

 

「ガブちゃんでいいよん。」

「で、どうする?帰る?」

 

「嫌です。」

 

「そ。おっけ~。」

 

「軽いな、おい。」

 

「本人の意向を尊重するスタイルなんよね、ウチ。」

 

「...あの尊大な話し方はどこへ...」

 

「あぁ、あれ?あれ、初対面の人にしかやらんのよね。威厳ってゆーか、そんな感じ。」

 

「来てくださったのがガブリエルさんでよかったです。」

「他の熾天使さん方は...」

 

「頭かったいからねアイツら!ウチが緩衝材になってあげてんだから!」

 

「...天使が天使の愚痴言ってる...」

 

「え、てかメーちゃんさ、なんでこんなとこいんの?下との連絡役じゃなかったっけ。」

 

「えーと...」

 

あ、仕事の話になったらしい。

言われた瞬間、身体が跳ねたのは俺は見逃してないぞ。

しかも、冷や汗が出てきてる。

 

「迷っちゃって...」

「後は、トンネルが壊れたみたいでこの時代のここに投げ出されちゃって...」

 

「あ、まぢ?そっか~。メーちゃん色々あったんだね。どうする?復職しとく?」

 

「...えーと。」

 

「嫌そ~。いいよん、他の人見つけとくわ。メーちゃん1000年くらい頑張ってくれたし、有給上げる!」

 

「...!いいんですか?!」

 

明らかに目が輝きだしたな。...よかったな?

 

「ウチらの可愛いメーちゃんだし、許してくれるっしょ。あ、あとそこの人間さんさ、お話大丈夫?」

 

「俺?もちろん。」

 

「ちょっと待っててね。」

 

ガブちゃん?が、俺の身体に触ると。

 

風景が一瞬で変わった。

 

周りは白く、何もない。

 

「...は?」

 

俺はどこかに飛ばされたらしい。

 

目の前には件のガブちゃんがいる。

 

「改めて初めまして~。堅苦しいのは好きじゃないからこのまんま聞くね。」

「あんた、何しでかしたの?」

 

「...何の事...?」

 

「すっとぼけてる?トンネル。」

 

「............ああ、メシティスが言ってた、ワープ装置みたいな物の話っすか。」

 

「そうそれ。」

 

「なんも知らないっす。ガチで。」

 

「...え、まぢ~?そこにいるってことは、多分、気づいたらメーちゃんがあのお家にいた感じでしょ?」

 

「...まあ、そうです。」

「ああ、でも、本人曰く、迷っちゃった、とか...」

 

「...うわ、マジか。じゃあ壊れてるやつわかんないじゃん...」

 

「その、ここどこっすか...?」

 

「ん?ああ、ウチの部屋みたいなもん。あんま気にしないで。」

「じゃあ、無関係って事でいいね?」

 

「何との、と聞きたいとこではあるんすけど...多分。」

 

「嘘ついてないしなあ...そっかあ。」

「あ、そうだ。」

 

「?」

 

「メーちゃんさ、多分今、飛べないんだよね。」

 

「ああ、本人から聞いてます。」

 

「あれね、多分原因その壊れたポータルなんよ。」

「元々あの子飛べたんだけど、見た感じ翼溶けちゃってる。」

 

「...翼が...溶ける...?」

 

「あの子、色々特殊な出自でね。苦労すると思うけど、まあ頑張って!」

「ウチも手伝うからさ!療養しないと治んなそうだし!」

 

「はあ...」

 

「ごめんね~連れてきちゃって!」

 

 

また目を開ければ、今度は自分の家だった。

 

まあ、色々やばそうなガブちゃんは目の前にいるが。

 

「それじゃーね!ご迷惑おかけしましたっと...」

 

「あ、ガブリエルさん!見てください、これ!」

 

メシティスが取り出したのは、タッパーだ。

 

「あ。それお前昨日のために作ってた飯じゃん。渡すのか?」

 

「はい。せっかく練習しましたし!」

 

メシティスが渡そうとしているのは、回鍋肉だ。

とはいっても、市販のやつだが、味付けは俺達なりに工夫してある。

 

「...ナニコレ?」

 

「料理です。」

 

メシティスがフフン、と自慢げに胸を張る。

 

「まあ御客人だしな...これにかけてもいいし、一緒に食ってもいい。」

 

俺が渡したのはただの白米。されど、白米だ。

 

「え~邪魔したのにいいの?!やった~!」

 

「まあ、メシティスが喜ぶ結果にしてくれたのはあんただしな...感謝の印だと思って。」

「それと、デザートにこれも。まあ余ったもんだけど、持って行ってくれ。」

 

ついでに、自作のクリスマスケーキ..もうクリスマスは終わったが。も手渡した。

中々甘く仕上がった、これも自慢の品だ。

 

「やった~!メーちゃんと...あ、名前聞いてない。」

 

「村仲 亮...て名前。」

 

「まあなんでもいいや。リョっちでいいか。ありがとね~」

「じゃーウチ天界帰るから~!」

 

「ありがとうございました~!」

 

 

 

 

 

 

 

「丸く収まったな。」

 

「本当によかったです...まだ居候できそうです」

 

「働け。」

 

「身分ないです。家事で勘弁してください。」

 

「しょうがねえな...あ」

 

「どうかしましたか?」

 

「隕石のメッセージはやめてくれって伝えるの忘れた。」

 

窓を突き破って、小石が入って来た。

 

今回はあれほど大きくないが。

 

中にはかなり折りたたまれた紙が入っていた。

 

『ケーキとあの料理まぢ美味い!また遊びに行く 親愛なるガブちゃんから メーちゃんへ』

 

窓弁償しろ。

 

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