TS特級呪術師 秋山凛子   作:オッパッピー

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本日の投稿はここまでです。


第十話 違和感

入学から一か月半。

 

凛子と歌姫は基礎訓練と任務を繰り返し、少しずつ術師として経験を積み始めていた。

 

この日も二人は補助監督に同行し、地方都市で発生した四級呪霊の討伐任務へ向かっていた。

 

 

---

 

人気のない廃ビル。

 

帳が下ろされる。

 

凛子は静かに周囲を見渡した。

 

「三階だな」

 

歌姫も頷く。

 

「私も同じ気配を感じるわ」

 

二人は慎重に階段を上がっていく。

 

三階へ着くと、黒い靄がゆっくりと人型を作り始めた。

 

四級呪霊。

 

こちらへ気付くと、奇声を上げながら一直線に飛び掛かってくる。

 

「来る!」

 

歌姫が木刀を構える。

 

凛子は半歩だけ前へ出た。

 

呪霊の爪を受け流し、体勢が崩れた隙へ木刀を振り抜く。

 

一撃。

 

呪霊は黒い霧となって消滅した。

 

戦闘時間は十秒も掛からなかった。

 

 

---

 

「終わったわね」

 

歌姫は肩の力を抜く。

 

補助監督も周囲を確認する。

 

「他に反応はありません。任務完了です」

 

凛子は黙ったまま、呪霊が消えた場所を見つめていた。

 

「秋山?」

 

歌姫が声を掛ける。

 

「ああ。少し考え事をしていた」

 

 

---

 

帰りの車内。

 

窓の外を流れる景色を眺めながら、凛子は一人考えていた。

 

(……やはり)

 

(何かがおかしい)

 

この世界へ来てから何体もの呪霊を祓った。

 

どれもが人を襲う異形の存在だった。

 

だが、違う。

 

攻撃が単純だった。

 

殴る。

 

噛み付く。

 

爪で裂く。

 

呪力をぶつける。

 

術式に違いはあれど、どの呪霊も、それ以上のことはしてこない。

 

(妙だ)

 

前世の知識と比べると、あまりにも単純だった。

 

対魔忍世界の魔族なら、もっと狡猾な個体がいても不思議ではない。

 

人の精神を揺さぶるとか。

 

恐怖を利用するとか。

 

相手を追い詰めるための搦め手を使うとか。

 

そういう存在がいてもおかしくないはずだ。

 

だが、この世界で出会った呪霊は違う。

 

どれもが、本能のままに暴れるだけだった。

 

凛子は腕を組み、しばらく考えた末に、一つの結論へ辿り着く。

 

(……なるほど)

 

(そういうことか)

 

(この世界は)

 

(全年齢向けの対魔忍世界なんだ)

 

(主人公は多分、歌姫だな)

 

(秋山凛子の相棒なんだ。間違いない)

 

(シリーズの傾向から作品タイトルは、恐らく “呪術師ウタヒメ“)

 

一人で納得したように小さく頷く。

 

(全年齢向けだから、R指定作品と分ける為に魔族も“呪霊“と呼び方が変わり、そういう行動はしない)

 

(いいや、したくても原作者()の意思によりできない)

 

(だから、表現の方向性が違う。敵の行動に違いが出るんだ)

 

隣の歌姫が不思議そうに凛子を見る。

 

「秋山」

 

「ああ、なんだ?」

 

「さっきから何か考え込んでいるようだけれど」

 

凛子は静かに首を横へ振る。

 

「大したことじゃない」

 

「この世界の呪霊にも特徴があるんだと思ってな」

 

歌姫は少し首を傾げる。

 

「特徴?」

 

「ああ。戦い方にも傾向がある」

 

歌姫は納得したように頷いた。

 

「そういうことなら、私ももっと観察してみるわ」

 

「その方が任務にも役立ちそうだもの」

 

凛子も頷く。

 

「ああ」

 

(観察は大事だ)

 

(世界が違えば、戦い方も違う)

 

(なら、それに合わせればいいだけだ)

 

凛子は完全に納得していた。

 

その結論は少しだけズレていたが、本人は最後まで気付くことはなかった。

 

 

---

 

高専へ戻ると、夜蛾が二人を迎えた。

 

「任務はどうだった」

 

歌姫が報告する。

 

「問題なく終了しました」

 

「そうか」

 

夜蛾は頷く。

 

「経験を積むことも修行の一つだ」

 

「一つ一つの任務から学べ」

 

「はい」

 

凛子も静かに頷いた。

 

今日の任務は、呪霊を祓っただけではない。

 

この世界の呪霊について、自分なりの"結論"も得た。

 

もっとも、その結論が正しいかどうかは――

 

神のみぞ知ることである。

 

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