王様は猫を可愛がる
※小説家になろうとnoteにも投稿しています

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くっころ王国之猛猫軍団

くっころおうこくのもうびょうぐんだん

 

「にゃんにゃんにゃーん」

 

クッコロ王国の王、クッコロ4世は両手首をちょこんと曲げ膝立ちで

猫にすり寄っていく、茶色と白の(ぶち)である

ごろにゃーんと寝そべりぐるりんと回って王を見上げる

 

クッコロ4世はそれを抱き上げ抱きかかえ、にまーと笑みを浮かべて

 

「おーよしよしそちは大丞相じゃぞ、丞相とはな

国で一番えらーい者なのじゃぞ、大丞相とはな

国で一番えらーい者よりえらーい者なのじゃぞ

つまりな、そちは国で一番えらーい私よりもえらーいのじゃぞ

ぬふふ」

 

「ニャーン」

猫は興味無さそうにそっぽを向く

 

別の白い猫がクッコロ4世の足元に来て漢服の裾を引く

 

「これはこれは上将軍殿、すまなかったのう」

 

クッコロ4世は手に抱えた大丞相を床に置き、上将軍を抱え上げる

その時である

 

庭園の扉が開き、衣冠束帯を着けたむさ苦しい男が入ってきた

猫たちはびくりとして縮こまり花や岩の影に隠れる

 

クッコロ4世は男を怒鳴りつける

「貴様!、王の庭園に押し入るとは何事か!

猫様たちが怯えているだろうが!、出ていけッ!」

 

「恐れながら申し上げます

珍国より(かつお)500匹の代金が遅れているとのお達しでございます

黄州太守、寒門無才(かんもんむさい)どのは激怒のご様子にて」

 

「だから何だっ!、たかが(かつお)ごときで私を(わずら)わせるな!」

 

クッコロ4世はそいつを叩き出すと猫たちに向かい

 

「すまぬのう、すまぬのう、あんな臣下を持ってしまったわしの責任じゃ

あやつは後で晒し首にしてやるから、もう心配はいらぬぞよ」

 

「ニャーン」

 

右近衛大将(うこのえのたいしょう)と|大政大臣がクッコロ4世の前を通り過ぎる

 

「ほーれ、(かつお)だじょー」

クッコロ4世が袖から鰹節(かつおぶし)を取り出してひらひらすると

|大政大臣と外務大臣が寄ってきてぺろぺろと嘗め始める

 

突如、庭園の扉が開き

衣冠束帯を着けた貧相な男が泡を食った様子で駆け込んできた

 

「陛下!、珍国が攻守同盟の破棄を申し渡してきましたっ!」

 

「だから何だと言っているっ!

わしはいま外務大臣殿とのわくわくふれあいタイムの真っ最中じゃ!

見てわからんのかッ!」

 

クッコロ4世は(てい)に向かって駆けると槍架(そうか)

差してある槍を引っこ抜き、その貧相な臣に向かいて突進する

そいつは「ち、珍国がっ」などと(わめ)き散らしながら

逃げ回り、ほうほうの(てい)で門から飛び出していく

 

クッコロ4世が振り返ると、宇宙大将軍が花々の合間に縮こまり

「にゃーん」と細い声を上げている

 

クッコロ4世はそれを抱き寄せると

 

「もーう怖くないぞよ

あんな奴は()のクッコロ4世が追い払ってやったからのう

よーしよーし」

 

救国大総統と国家安全保障局長がクッコロ4世の足元に寄って

「にゃーん」と鳴く

 

「これは困ったのう」

 

クッコロ4世はにんまりと笑みを浮かべると小さく屈みこむ

救国大総統が腕から宇宙大将軍から左肩へとよじ登り

国家安全保障局長が小さくジャンプして右肩と

宇宙大将軍との隙間におさまる

 

「ドーン」

 

庭園の扉が開け放たれた

 

衣冠束帯を着けたむさ苦しい男が、貧相な男が

甲冑を着込み剣を佩いた武官が

粗末な槍を持った数十の兵士が雪崩れ込んできた

 

「今度は何だッ!」

 

武官が進み出て言った

 

「コーサラ国が侵攻して来ました、珍国の介入は無いとみて

我が国を亡ぼすつもりです」

 

「ぐぬぬ、小癪な!、今すぐ出撃しろっ!

思いあがった小国矮民(しょうこくわいみん)どもなど皆殺しにしてしまえ!」

 

武官が固まっている

 

「何だッ!、きびきび動く事も出来ないのかっ!」

 

列の中ほどより粗末な服を着た1兵卒が前に出ていく

文官も武官をギョッとして()れを見る

 

「何だ貴様!、ド田舎の土百姓の分際で!

我は大王クッコロ4世であるぞ(ひざまず)けッ!」

 

その男はひどく訛った言葉でしゃべり始めた

「あっしは民ちゅうもんは王の恩を受け()れに応えるべく

体を砕いて働くもんだと聞きましたあ

 

しっかし、おらもおらん村んもんも

大王どんから恩を受けた覚えはねえだす

おらん村にはなーんもねえ食うもんも着るもんもねえ

あるんは洞穴と()ん体だけでさあ

 

大王どんはいっつも猫をかわいがり禄をさずけているうんでしょう

恩を受けているのは猫なんだから猫に甲冑を着せて槍を持たせて

コーサラの奴等と戦わせればいいじゃありませんか」

 

「フヒュッww、フヒュフフフフッwwww」

「ギャハハハハーーーーーーーwwwwwww」

 

話の途中で武官が吹き出し文官も()れに続き

最後には誰もが腹を抱えて笑い転げた

王だけが顔を真っ赤にして突っ立っていた

 

「き、き、貴様!」

 

王の声を遮ってむさ苦しい男が声を上げた

「われら臣民は屯田兵として珍国の領内に土地を得ました

では御免!」

 

人々は去っていく、王は後ろから追いかける

 

「貴様らっ!、王を見捨てるとは何事だ!

忠は、忠は無いのかア!」

 

貧相な男の袖にとりすがる

 

「くどい!」

 

貧相な男は妙に力強く元王を振り払う

 

クッコロ4世はペタンと地面に投げ出された

 

「不忠ども、裏切者どもめぇ」

しくしくと泣きながら宮城に戻っていく

そこには誰もいなかった、庭園には猫もいなかった

宮城の外に列が出来ていた

猫の列であった、既に遠く宮城を離れつつあった

 

「おお、お前たち、お前たちまで余を見捨てるのか

いったい、余が何をしたというのじゃ」

 

やがて日は暮れ始めた

 

王は壺を覗き込んだり、鉢を持ち上げたり

櫃の蓋を開けたり閉めたりした

 

「余は偉いんじゃ、余は王なのじゃ、余は偉いんじゃ」

 

「ジャーン!ジャーン!ジャーン!」

 

突如、地平線の彼方より銅鑼を叩く音が聞こえてきた

続いて濛々たる土埃と共にドッドッと大地を揺るがす隊伍の行進が顕れた

一直線にこちらへ向かってくる

 

「あ、ああー、余はどうすればよいのじゃ、余は、余は」

 

クッコロ4世は右に走ったり左に走ったりした

隊列は宮城へと迫り庭園へと迫り、ついに扉は開かれた

 

クッコロ4世は呆然として()れを見た

整然たる戦列、その個々は隆々たる筋肉の塊である

鉄塊の如き槍を持ち大剣を腰に佩き、両の目は爛々と光り

その肉体のその全てが白の黒の銀の毛で覆われているのだ

猫であった、それは正しく猫をEnhanceして

人のShapeにTraneformせしめたものであるに違いなかった

 

その先頭、ひときわ抜きん出た巨体に金色(こんじき)の羅紗の外套を羽織る者

見るからに司令官と知れる、がクッコロ4世の前に進み出た

 

「吾輩は猫の国の王、猫猫阿骨打(ニャンニャンアグダ)と申す者」

「陛下は常に我が民を慈しみ珍味佳肴を与え遊び相手となり

日々の喜びと安寧に心を砕かれた

 

今宵こそ長年月(ちょうねんげつ)の恩に報いるとき

われら猫の国の民は必ずやコーサラ国を打ち果たし

固く陛下の国を護りなん」

 

石細工のように固まっていたクッコロ4世は何やらプルプルと震え始め

それから大声で(わめ)き始めた

 

「猫はごろにゃーんと寝転がって”みい”と小さく鳴き

くにゃーんと伸びをして耳を立てるから可愛いんじゃ!」

 

派手なジェスチャーを交えながら次第に声は(たかぶ)って

 

「にゃあにゃあと近寄って来たかと思えばプイとそっぽを向いて

香箱座りをして、かと思うと背を弓なりにして他の猫を威嚇し

いつの間にか鍋の中に丸まるように寝て

小さな手で餌をちょんちょんと弾きフサフサで流体の如くに柔らかく

愛しくて小さくてそれが猫なのじゃッ!

 

こんなむくつけきゴリゴリマッチョの野蛮人どもが!

こんなムキムキマッチョの変態野郎どもが猫などであるものかア!」

 

バーンと笏を地面に叩きつけるとほき捨てる

 

「人語を解する猫など気持ち悪いッ!」

 

その言葉が終わらないうちに

 

「キェアー!」

 

絶叫と共に猫猫阿骨打(ニャンニャンアグダ)がクッコロ4世に飛び掛かっていた

左右の爪で猛烈に引っ掻けば鮮血はほとばしり

たちまちの内に()れは無残なる肉塊と成り果てた

 

そして猫たちはどこかへ去っていった

コーサラ国の兵士が見たのは無人の王国であった

 


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