十月下旬。
休日の午後。
米花商店街は買い物客で賑わっていた。
「待てよ、元太!」
「コナン君、早く!」
少年探偵団と阿笠博士は買い物へ来ていた。
その時だった。
「きゃあああっ!」
突然の悲鳴に、人々が一斉に振り返る。
一人の男性が歩道へ倒れ込んでいた。
「人が倒れた!」
「救急車を!」
コナンは真っ先に駆け寄る。
脈を確認する。
――もう遅かった。
(殺人事件……)
しばらくして警察が到着する。
コナンは静かに現場を見渡した。
遺体。
買い物袋。
目撃者。
規制線を張る警察官。
現場保存が始まる。
その様子を見た瞬間、コナンの表情が変わる。
(……またか)
(この事件も、設計者が関わっている)
決定的な証拠はまだない。
事件の全容も見えていない。
それでも分かった。
今まで遭遇した"設計された事件"と同じ違和感。
一見すると自然なのに、どこか不自然。
そんな嫌な感覚だけが胸に残った。
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十分後。
警察による現場検証が始まる。
聞き込み。
鑑識。
防犯カメラ。
被害者の交友関係。
考えられる捜査は次々と進められていく。
しかし——。
「目暮警部」
高木刑事が資料を抱えて駆け寄る。
「目撃証言は集まりましたが、決定打がありません」
「全員に犯行の可能性はあります」
「ですが、誰が犯人でもおかしくない状況です」
佐藤刑事も首を横に振った。
「防犯カメラも確認しました」
「怪しい人物は映っています」
「ですが、犯人と断定できる証拠にはなりません」
目暮警部は腕を組み、唸る。
「これだけ調べても進展なしか……」
捜査開始から数時間。
事件は早くも膠着状態へ陥っていた。
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コナンも現場を歩き回る。
証拠を拾う。
仮説を立てる。
矛盾に気付く。
もう一度組み立て直す。
それでも答えは見えない。
(やっぱりだ……)
(この事件も同じだ)
(証拠はある)
(でも、決定的な一枚だけが見つからない)
偶然とは思えない。
しかし、それを証明する材料もない。
事件はその日のうちに解決しなかった。
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翌日。
阿笠博士の家。
机いっぱいに事件資料を広げ、コナンは腕を組んでいた。
新聞記事。
現場写真。
警察から聞いた情報。
何度も整理し直す。
阿笠博士がコーヒーを置いた。
「まだ考えとるのか」
「ああ」
コナンは資料を見つめたまま答える。
「現場を見た瞬間に分かった」
「また設計者の事件だ」
博士は静かに頷く。
「じゃが、それだけでは足りんのじゃろ」
「ああ」
コナンは悔しそうに息を吐く。
「設計者が関わってることは分かる」
「でも、それを証明する証拠がない」
「結局、俺は犯人を追うことしかできない」
その表情には、もどかしさが滲んでいた。
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さらに数日後。
コナンは執念の末、犯人へ辿り着いた。
目暮警部たちは犯人を逮捕する。
取り調べでも供述は変わらない。
「犯行は私一人で考えました」
「誰にも相談していません」
「私自身が決めたことです」
それ以上は何も語らなかった。
事件は解決した。
しかし。
コナンの胸には、達成感はなかった。
(違う……)
(この人は実行犯だ)
(事件を組み立てた人間は、別にいる)
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警察署。
事件を終えた目暮警部は深く息を吐いた。
「今回は本当に難事件だった」
高木刑事も苦笑する。
「江戸川君がいなかったら、もっと長引いていました」
その時、見舞いに来ていた蘭が思い出したように言った。
「そういえば」
「帝丹高校の小西先生なら、こういう事件でもすぐ解決しそうですよね」
高木刑事は笑顔で頷く。
「ああ、スーパーの事件で助けていただいた先生ですね」
「本当に鋭い観察眼でした」
目暮警部も懐かしそうに笑う。
「また偶然現場に居合わせてくだされば、心強いんだがね」
その言葉を聞き、コナンは静かに考え込む。
(小西先生……)
(警察がそこまで頼りにする人なのか)
(一度、本気で推理するところを見てみたい)
だが、その願いが叶うことは決してない。
小西浩平は、自ら設計した事件の現場へ姿を現すことはないのだから。