令和のモリアーティ   作:オッパッピー

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本日はここまでとなります


File.15 完成された設計図

十月下旬。

 

休日の午後。

 

米花商店街は買い物客で賑わっていた。

 

「待てよ、元太!」

 

「コナン君、早く!」

 

少年探偵団と阿笠博士は買い物へ来ていた。

 

その時だった。

 

「きゃあああっ!」

 

突然の悲鳴に、人々が一斉に振り返る。

 

一人の男性が歩道へ倒れ込んでいた。

 

「人が倒れた!」

 

「救急車を!」

 

コナンは真っ先に駆け寄る。

 

脈を確認する。

 

――もう遅かった。

 

(殺人事件……)

 

しばらくして警察が到着する。

 

コナンは静かに現場を見渡した。

 

遺体。

 

買い物袋。

 

目撃者。

 

規制線を張る警察官。

 

現場保存が始まる。

 

その様子を見た瞬間、コナンの表情が変わる。

 

(……またか)

 

(この事件も、設計者が関わっている)

 

決定的な証拠はまだない。

 

事件の全容も見えていない。

 

それでも分かった。

 

今まで遭遇した"設計された事件"と同じ違和感。

 

一見すると自然なのに、どこか不自然。

 

そんな嫌な感覚だけが胸に残った。

 

---

 

十分後。

 

警察による現場検証が始まる。

 

聞き込み。

 

鑑識。

 

防犯カメラ。

 

被害者の交友関係。

 

考えられる捜査は次々と進められていく。

 

しかし——。

 

「目暮警部」

 

高木刑事が資料を抱えて駆け寄る。

 

「目撃証言は集まりましたが、決定打がありません」

 

「全員に犯行の可能性はあります」

 

「ですが、誰が犯人でもおかしくない状況です」

 

佐藤刑事も首を横に振った。

 

「防犯カメラも確認しました」

 

「怪しい人物は映っています」

 

「ですが、犯人と断定できる証拠にはなりません」

 

目暮警部は腕を組み、唸る。

 

「これだけ調べても進展なしか……」

 

捜査開始から数時間。

 

事件は早くも膠着状態へ陥っていた。

 

---

 

コナンも現場を歩き回る。

 

証拠を拾う。

 

仮説を立てる。

 

矛盾に気付く。

 

もう一度組み立て直す。

 

それでも答えは見えない。

 

(やっぱりだ……)

 

(この事件も同じだ)

 

(証拠はある)

 

(でも、決定的な一枚だけが見つからない)

 

偶然とは思えない。

 

しかし、それを証明する材料もない。

 

事件はその日のうちに解決しなかった。

 

---

 

翌日。

 

阿笠博士の家。

 

机いっぱいに事件資料を広げ、コナンは腕を組んでいた。

 

新聞記事。

 

現場写真。

 

警察から聞いた情報。

 

何度も整理し直す。

 

阿笠博士がコーヒーを置いた。

 

「まだ考えとるのか」

 

「ああ」

 

コナンは資料を見つめたまま答える。

 

「現場を見た瞬間に分かった」

 

「また設計者の事件だ」

 

博士は静かに頷く。

 

「じゃが、それだけでは足りんのじゃろ」

 

「ああ」

 

コナンは悔しそうに息を吐く。

 

「設計者が関わってることは分かる」

 

「でも、それを証明する証拠がない」

 

「結局、俺は犯人を追うことしかできない」

 

その表情には、もどかしさが滲んでいた。

 

---

 

さらに数日後。

 

コナンは執念の末、犯人へ辿り着いた。

 

目暮警部たちは犯人を逮捕する。

 

取り調べでも供述は変わらない。

 

「犯行は私一人で考えました」

 

「誰にも相談していません」

 

「私自身が決めたことです」

 

それ以上は何も語らなかった。

 

事件は解決した。

 

しかし。

 

コナンの胸には、達成感はなかった。

 

(違う……)

 

(この人は実行犯だ)

 

(事件を組み立てた人間は、別にいる)

 

---

 

警察署。

 

事件を終えた目暮警部は深く息を吐いた。

 

「今回は本当に難事件だった」

 

高木刑事も苦笑する。

 

「江戸川君がいなかったら、もっと長引いていました」

 

その時、見舞いに来ていた蘭が思い出したように言った。

 

「そういえば」

 

「帝丹高校の小西先生なら、こういう事件でもすぐ解決しそうですよね」

 

高木刑事は笑顔で頷く。

 

「ああ、スーパーの事件で助けていただいた先生ですね」

 

「本当に鋭い観察眼でした」

 

目暮警部も懐かしそうに笑う。

 

「また偶然現場に居合わせてくだされば、心強いんだがね」

 

その言葉を聞き、コナンは静かに考え込む。

 

(小西先生……)

 

(警察がそこまで頼りにする人なのか)

 

(一度、本気で推理するところを見てみたい)

 

だが、その願いが叶うことは決してない。

 

小西浩平は、自ら設計した事件の現場へ姿を現すことはないのだから。

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