ポケモン現代入り   作:ささみ

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 少し書き方を変えてみました。


第56話

 

 

 

 

「ここなら昨日よりはマシか」

 

 山の中をさらに奥へ進み、周囲に木の少ない場所まで来ていた。

 

 昨日訓練に使った場所より広く、家や畑からもかなり離れている。バンギラスがどこまで暴れるか分からない以上、近くに壊されて困るものがない方がいい。

 

 連れてきたのはポリゴン2、バタフリー、ゲンガー、リザードン、リングマの5匹。

 

 残った1枠には、さっきボックスから戻したバンギラスのモンスターボールが入っている。

 

 今日は訓練じゃない。

 

 そのボールを手の中で転がしながら、もう一度周囲を見る。

 

「最初は何もしないからな。向こうが大人しくしてるなら、こっちも攻撃しない」

 

『ポリ』

 

「暴れたら止める。どうにもならなかったら戻す」

 

 ボールへ戻してしまえば、その場を終わらせるだけなら難しくない。ただ、それをやってまたボックスへ預けたら、結局今までと何も変わらない。

 

「最初から喧嘩する気で出すわけじゃないんだけど……」

 

「グマァ」

 

「お前は特に待てよ」

 

 少し離れたところにいたリングマが低く返事をした。

 

 捕まえる前にバンギラスと一番激しく殴り合っていたのはこいつだ。顔を合わせた途端にまた始められても困る。

 

「俺が呼ぶまで待ってて」

 

「グマ」

 

「よし」

 

 リングマがその場に残るのを確認して、他の4匹にも少し距離を取らせる。

 

 手の中のボールを見る。

 

「……出すか」

 

 モンスターボールを前へ投げた。

 

 赤い光が地面へ広がり、巨大な身体が形を取る。

 

「グルルルル……」

 

 太い脚が土を踏んだ。

 

 久しぶりに見るバンギラスは、やっぱりでかい。

 

 レベル58。今でも俺のポケモンの中では一番レベルが高い。

 

「…………ん?」

 

 身体を見て、少し引っかかった。

 

 脇腹と肩、それ以外にも何ヶ所か傷が残っている。

 

「お前、それ――」

 

 見覚えがあった。

 

 こいつを捕まえた時には、もうリングマとの戦いでかなり傷ついていた。そこへ俺たちまで加わって、そのまま捕獲してボックスへ送った。

 

「そっか。ずっと放置してたから――」

 

「グォォォォッ!」

 

 最後まで言わせる気はないらしい。

 

「うわっ!」

 

 バンギラスが首を巡らせる。

 

 ポリゴン2、バタフリー、リザードン。俺の影から半分だけ顔を出しているゲンガーまで見たあと、少し離れたリングマで視線が止まった。

 

「グルルルル……」

 

「グマァ……」

 

「リングマ、待て」

 

 前へ出かけたリングマが踏みとどまる。

 

 偉い、こっちはちゃんと話を聞く。

 

 問題はもう片方だ。

 

 バンギラスはリングマを睨んだまま身体を低くした。傷が残っているせいか動きは少し重い。それでも、どう見ても大人しく傷を見せてくれる雰囲気じゃない。

 

「いや待て待て。別にまた戦いに来たわけじゃないから。まず傷見せてくれって」

 

「グルルル……」

 

「……聞いてないな?」

 

 バンギラスが一歩近づく。

 

 バタフリーが少し高度を上げ、リザードンも低く唸りながら前へ出ようとした。ポリゴン2は俺の横へ移動し、ゲンガーも影から顔を出さなくなる。

 

「まだいい。こっちからはやらなくていいよ」

 

「グォ……」

 

 リザードンが踏みとどまった。

 

 このまま落ち着いてくれれば一番楽なんだけど。

 

 バンギラスがもう一歩進み、太い右脚を持ち上げる。

 

「あ、駄目だこれ。避けろ!」

 

 脚が地面へ叩きつけられ、足元が大きく跳ねた。

 

「うぉっ……!」

 

 亀裂が走り、俺は近くの岩へ手をついて揺れに耐える。

 

 ポケモンたちはもう動いていた。

 

 バタフリーは一気に高度を取り、ポリゴン2も揺れる地面から離れる。リザードンは翼を広げて空へ逃れ、ゲンガーは完全に影へ沈んだ。

 

 リングマだけは地面に残ったが、低く腰を落として揺れに耐えている。

 

 誰にどう避けろとまで言う必要はない。

 

「昨日やっといてよかったな!」

 

『ポリ!』

 

 バンギラスは自分で起こした揺れなど気にもせず、こちらへ歩いてくる。

 

「傷あるのに元気だなお前!」

 

「グォォッ!」

 

 ここまでされたら、もう様子を見る必要もない。

 

「分かった分かった。先に倒すぞ!」

 

 治療するにしても、まず近づける状態にしないと始まらない。

 

「バタフリー、ねむりごな!」

 

「フリィ!」

 

 上空から粉が降り注ぐ。

 

 バンギラスはすぐに腕を振り回し、身体へ届く前に大半を散らした。

 

「前の覚えてるか」

 

 さすがに同じ手を素直に食らってはくれない。

 

「ポリ2、あやしいひかり!」

 

『ポリ!』

 

 横から飛んだ不規則な光へ、バンギラスが顔を逸らす。

 

「ゲンガー!」

 

「ゲンッ!」

 

 足元の影からゲンガーが飛び出した。

 

「さいみんじゅつ!」

 

 バンギラスはすぐに振り返る。

 

 爪が振り下ろされるより早く、ゲンガーの身体がまた影へ沈んだ。

 

「ゲンゲン」

 

 少し離れたところから顔だけ出して笑っている。

 

「遊ぶなよ!」

 

 まあ、注意がそっちへ向いてくれるなら助かるけど。

 

「リザードン!」

 

「グォォッ!」

 

 上空から青白い息が降り、バンギラスの背中へまともに入った。

 

「グォッ!」

 

 巨体が前へよろめく。

 

「……やっぱ効いてるな」

 

 もっとも、それだけで俺たちがレベル58を普通に押せるようになったと思うのは早い。

 

 こいつは最初から傷ついている。

 

「グルルル……!」

 

 バンギラスが身体を起こす。

 

 戦う気は全くなくしていないらしい。

 

 狙いをリザードンへ変え、口元へ眩しい光が集まり始めた。

 

「破壊光線来るぞ! リザードン、距離取れ!」

 

「グォッ!」

 

 リザードンが翼を打って離れる。

 

 バンギラスの顔も空を飛ぶ身体を追っていく。

 

「そのまま引きつけろ!」

 

 白い光が一直線に伸びた。

 

 リザードンが身体を横へ倒して避け、破壊光線が後ろの地面を抉る。轟音と一緒に大量の土が舞い上がった。

 

「やっぱ危なっ!」

 

 傷が残っててもこれなのか。

 

 ただ、撃ち終えたバンギラスの動きは明らかに鈍っている。

 

「バタフリー、もう一回!」

 

「フリィ!」

 

 高い位置からねむりごなが広がった。

 

 バンギラスが腕を振るが、さっきほど素早くない。払われなかった粉が肩や頭へ降りかかる。

 

「ポリ2、あやしいひかり!」

 

『ポリ!』

 

 横から光が飛び込む。

 

「グ……ォ……」

 

 バンギラスが頭を振り、足取りが僅かに乱れた。

 

 それでも倒れない。

 

「どんだけ元気なんだよ……リングマ!」

 

「グマァァッ!」

 

 待っていたリングマが走り出す。

 

 バンギラスがポリゴン2へ顔を向けた横から、一気に距離を詰めた。

 

「じゃれつく!」

 

 光を纏った巨体が脇腹へぶつかる。

 

「グォッ!」

 

 バンギラスの身体が大きく傾いた。

 

 振り下ろされた腕をリングマが身を引いてかわし、そのまま殴り返そうとする。

 

「リングマ、下がれ!」

 

「グマ!」

 

 追撃せず、すぐに距離を取った。

 

「よし!」

 

 前なら絶対そのまま殴り合ってた。

 

 呼べば来て、止めれば下がる。それだけで戦わせやすさが全然違う。

 

「グォォォッ!」

 

 バンギラスが吠え、リングマを追おうと身体を向ける。

 

 空が空いた。

 

「リザードン、りゅうのいぶき!」

 

「グォォォッ!」

 

 青白い息が正面から浴びせられる。

 

 バンギラスは腕を上げて耐えながらも、足が一歩後ろへ滑った。

 

「ゲンガー!」

 

「ゲンッ!」

 

 足元から黒い身体が伸び上がる。

 

「さいみんじゅつ!」

 

 バンギラスがゲンガーへ顔を向ける。

 

 さっきならすぐに爪が飛んできた。

 

 今は遅い。

 

「グ……ル……」

 

 巨体が揺れる。

 

 眠りきってはいないが、明らかに反応が鈍っていた。

 

「リングマ、もう一回!」

 

「グマァッ!」

 

 正面から走り込んだリングマが身体をぶつける。

 

 バンギラスも腕を振り下ろし、リングマの肩を掠めた。

 

「グマッ!」

 

「リングマ!」

 

 倒れてはいない。

 

 そのまま踏ん張り、押し返す。

 

「じゃれつく!」

 

「グマァァッ!」

 

 バンギラスの身体が後ろへ傾いた。

 

「リザードン!」

 

「グォッ!」

 

 上空からりゅうのいぶきが重なる。

 

「グ……ォ……」

 

 耐えようとした脚から力が抜けた。

 

 巨大な身体が横へ倒れ、重い音と一緒に土が跳ねる。

 

「まだ近づくな」

 

 ポケモンたちを止めたまま様子を見る。

 

 呼吸はしている。

 

 腕が僅かに動いたが、起き上がる気配はない。

 

「ひんしになったか」

 

『ポリ』

 

「よし」

 

 これでようやく近づける。

 

「リングマ、ゲンガー。一緒に来て」

 

「グマ」

 

「ゲン」

 

 2匹を連れてバンギラスのそばまで歩く。

 

 近くで見ると、最初に気づいた傷がもっとはっきり分かった。

 

「……やっぱこれ、前の傷だな」

 

 今日増えたものとは違う。

 

 リングマと戦った時についた傷も、その後俺たちと戦った時についたものも残っている。

 

「そりゃそうか。ボックスでずっと寝てたんだから……」

 

 安全に置いておけるから、それで問題ないと思っていた。

 

 でも、安全に保管できるのと治療されるのは全然別だ。

 

「ずっとこのままだったのか」

 

 傷ついた状態で眠って、久しぶりに起きたと思ったら、目の前にいたのが自分を捕まえた連中。

 

「……そりゃ機嫌も悪いか」

 

「ゲン」

 

「いや、元気でも多分暴れてたとは思うけど」

 

 ゲンガーが笑った。

 

「ごめんな。そこ完全に抜けてたわ」

 

 返事はない。

 

 ひんしになったバンギラスは、横たわったまま静かに呼吸している。

 

「ポリ2、荷物お願い」

 

『ポリ!』

 

 少し離れた場所に置いていた治療道具へ、ポリゴン2が飛んでいく。

 

 ひんしのままモンスターボールへ戻せば、また冬眠に近い状態にはできる。でも今の技術では、ボールの中にいるポケモンをそのまま治療できない。

 

 ここで戻したら、また傷を残したまま眠らせるだけだ。

 

 ポリゴン2が持ってきた治療道具からキズぐすりを取る。

 

「まず古い方から見るか」

 

 傷の位置を確かめながら処置していく。

 

 バンギラスほど身体が大きいと、いつもの感覚で使っていたら全然足りない。リングマとの戦いで深く傷ついていた場所を優先しながら、今日増えた傷にも順番に使っていく。

 

「しかし……傷残った状態でこれかよ」

 

「グマァ」

 

「お前も前よく殴り合ったな」

 

「グマ?」

 

「褒めてるよ」

 

 リングマが鼻を鳴らす。

 

 今日の戦いは、前よりかなり余裕があった。

 

 俺たちが強くなったのは間違いない。ただ、バンギラスが最初から万全じゃなかったのも間違いない。

 

「元気な状態でも同じようにいけるかは、まだ分かんないな」

 

『ポリ』

 

「だよな」

 

 必要な処置を終え、傷の状態をもう一度確認する。

 

 ひんしから回復するまでは休ませた方がいい。

 

「今日はここまでだな」

 

 モンスターボールを取り出す。

 

「戻って休んでろ。次はちゃんと治してから出すから」

 

 赤い光がバンギラスを包み、巨大な身体がボールへ収まった。

 

 ひんしの状態で戻した以上、中では冬眠に近い状態になる。

 

 今度はこのまま長く放置しない。状態を見ながら外へ出して、必要なら追加で治療すればいい。

 

「……次に出す時は元気になってるわけか」

 

『ポリ』

 

「絶対今日よりめんどくさいよな」

 

 手の中のボールを見る。

 

 当然、返事はない。

 

「まあ、そっちの方がいいけど」

 

 傷ついたままの相手を倒して、それで終わりというのも何か違う。

 

 まず治す。

 

 元気になってから、改めて相手をすればいい。

 

「帰るか。お前らもお疲れ」

 

「グォ」

 

「フリィ」

 

 ポケモンたちを連れて山を戻りながら、バンギラスの入ったボールをしまう。

 

 次に外へ出した時まで大人しくしてくれるとは、やっぱり思えなかった。

今後の展開として伝説ポケモンのサイズどうしよっかなって思ってるんですよね〜

  • 図鑑通りのサイズ
  • 図鑑よりかなりデカくしてもいい
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