董白を拾ったら三国志が壊れ始めた 〜にわか知識の下級書吏と、死んだことになった董卓の孫娘~   作:ねじぇまる

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第9話 イカサマの代償

 

「手伝いではない。わたしの仕事じゃ!」

 

朝の荷を送り出すなり、董白の声が宿の庭へ響いた。

 

言われた客は笑っている。布の袋を確かめたのも、運び手を呼んだのも董白だというのに、礼を言う時には俺の方を向く。最後に付け足したのが、お嬢ちゃんもよく手伝ったね、だった。

 

「そうかそうか。しっかりした姪御だねえ」

 

それも俺に言って、男は行ってしまった。

 

董白が口を開きかけたので、先に声をかける。

 

「俺からも言ったんだがな。白がやったって」

 

「聞いておらなんだ!」

 

「ああ。あれは聞いてなかった」

 

そこで笑うと俺まで怒られそうだった。

 

昨日の八袋は、これで全て宿からなくなった。夕方に渡した三袋と今朝の五袋。庭にはまだ水たまりが残っているが、荷車の覆いを外して出ていく客もいる。

 

雨は上がった。約束どおり、今日は町へ出られる。

 

女将から二人分の十枚を受け取り、買い物に行きたいと頼むと、昼までには戻るよう言われた。

 

「裏の薪も頼むよ。昨日は荷物で忙しかったから、そのままなんだ」

 

「分かりました。戻ったら運びます」

 

董白はもう仕事の袖紐を解いている。機嫌が悪くても出かける気はあるらしい。

 

「白、行くぞ」

 

「うむ」

 

門を出る足は、俺より少し速かった。

 

 

向かいの井戸に寄ると、阿慶が釣瓶の縄を巻いていた。

 

「今日は桶、持ってないの?」

 

「買い物じゃ。針を売っておる所を知らぬか?」

 

「それなら辻の先。布も置いてるおじさんの店だよ」

 

礼を言いかけた董白の横から、俺も訊いた。

 

「あと、菓子を売ってる所も」

 

「菓子? 朝から?」

 

悪いことをするわけでもないのに、少し気恥ずかしい。

 

阿慶はすぐに笑って、もう一軒教えてくれた。董白はそちらの道も確かめてから歩き出す。

 

針の店では、思っていたより長く待つことになった。

 

董白は女将に借りた針を見本にして、店の男が出す物を一本ずつ見ている。糸を通してみたかと思えば、首を傾げて返す。俺には違いが分からない。

 

「その針に近いのなら、こっちだな。糸を通してみるか?」

 

男が別の一本を差し出すと、董白は借り物と並べてから糸を通した。

 

「これがよい。糸も、この針に通る物が欲しい」

 

さっきの客とは違って、男はちゃんと董白の顔を見て答えていた。こちらへ判断を求めたりもしない。

 

包んでもらう頃には、寄っていた眉も元へ戻っている。

 

「待たせたのう」

 

「気にするな。俺が選んでも、どれがいいか分からないしな」

 

「そなたの上着も縫うのじゃぞ。少しは見ておれ」

 

そう言われて袖口を見る。ほつれた糸が垂れていた。

 

「それも頼んでいいのか?」

 

「放っておけば、もっとほどけるであろうが」

 

「助かる。じゃあ、後で頼む」

 

董白はうなずき、針を入れた小さな包みを懐へしまった。

 

次の店には、粟を飴で固めた菓子が並んでいた。

 

一つ買って割ってもらい、半分を董白へ渡す。齧るとぱきりと歯ごたえがあって、その後から甘さが広がる。

 

ああ、うまい。

 

元の世界なら袋いっぱいに入った菓子を、何も考えず食べていた。今は口の中に残った飴まで惜しくて、すぐには飲み込めない。

 

隣を見ると董白も黙って齧っている。

 

「どうだ?」

 

「小さいのう」

 

味の話をしたつもりだった。

 

「半分だからな」

 

「知っておる。うまいから言うておるのじゃ」

 

もう一つ買おうかと思ったが、針と糸を買ったばかりだ。今日もらった銭まで、ここで使い切るわけにはいかない。

 

「次は一つずつ買おう。今日はそれで勘弁してくれ」

 

「忘れるでないぞ」

 

董白の口元に粟の粒が付いていた。指摘すると自分で拭き、それから俺の顎を指す。

 

「そなたもじゃ」

 

拭った指に同じ粒が付いたので、二人で笑った。

 

針を選ぶのに待たされたことも、菓子が小さいと言われたことも、別に嫌ではなかった。飯を買うか寝場所に払うかで迷うのとは違う。こんなことで言い合えるくらいには、暮らしがましになったのだ。

 

董白は残りを食べ終えると包みを畳んだ。俺も最後の一口を惜しみながら宿へ戻った。

 

 

「ほら、当たり! 見てる奴はちゃんと見てるねえ」

 

広間に人の輪ができていた。

 

卓に伏せた椀が三つ。その前に座る細身の男が、向かいの若者へ銭を渡している。若者は隣の客と肩を叩き合って喜んだ。

 

「何をしてるんです?」

 

近くの男に訊くと、卓を指された。

 

「豆がどの椀に入ってるか当てるんだ。当たれば倍になる」

 

細身の男が黒い豆を卓へ置いた。

 

「豆はここだ。よく見てな!」

 

一つの椀をかぶせ、三つを滑らせて入れ替える。動きは速いが、目で追えないほどではない。

 

(これ、知ってるぞ)

 

元の世界で見たことがある。たいてい何か仕掛けがあって、簡単には勝たせてもらえない遊びだ。

 

それでも椀が動くと、つい目で追ってしまう。

 

右から真ん中。そこから左へ来て、もう一度真ん中。

 

止まった。

 

「さあ、どこだ?」

 

賭けていた客が真ん中を指す。俺も同じだと思った。

 

男が持ち上げると、椀の下は空だった。

 

「惜しかったね。こっちだ」

 

右から豆が出てくる。

 

(……いつ移った?)

 

「そんな顔をするくらいなら、見るのをやめればよかろう」

 

董白に言われて顔を戻した。

 

「今の、途中までは追えたんだがな」

 

「途中まで追えた者なら、周りにいくらでもおるぞ」

 

皆、似たようなことを言っていた。分かっていたのに、最後だけ見失った、と。

 

俺もその一人だと思うと少し悔しい。

 

「あと少し見てから、薪を運ぼう」

 

「見るだけじゃぞ」

 

「分かってる。菓子を半分にしたばかりだろ」

 

董白は鼻で笑い、隣へ並んだ。

 

一枚賭けて当てる者もいれば、外す者もいる。洗ったばかりの椀らしく、卓には薄く水の跡が残っていた。

 

三枚を賭ける客が出た時、男は椀を並べ終えてから濡れた指を服の裾で拭った。その勝負も外れだった。客は大きく息を吐いて席を立つ。

 

次に座ったのは見覚えのある荷運び人だった。昨日の雨の中、俺が引き受けてしまった大きな袋を運んでくれた男だ。

 

「八枚。これで頼む」

 

思わず懐の銭を意識した。半日働いて、俺たちは二人で十枚なのだ。

 

「八枚も? やめといた方がよくないですか」

 

「当たれば十六だぞ。さっきから見てたんだ、今度こそ分かる」

 

俺と同じことを言っている。

 

もう一度止めようとした時には、男が豆へ椀をかぶせていた。

 

董白は笑っていた。

 

いつからそんな顔をしていたのか分からない。俺が荷運び人を見ている間も、細身の男から目を離さない。

 

何がおかしいのか訊こうとして、やめた。

 

菓子を齧っていた時とは違う、意地の悪い笑い方だ。何を見つけたのか知らないが、隣の娘も「見るだけ」では済まなさそうだった。

 

 

荷運び人は左の椀を選んだ。

 

「左だな? じゃあ開けるぞ」

 

「待ってほしい。その椀は、この者が開けてもよいか?」

 

董白が卓へ寄ると、細身の男は手を止めた。

 

「誰が開けたって同じだろ?」

 

「ならば構わぬであろう」

 

董白は荷運び人へ顔を向けた。

 

「せっかく八枚も出したのじゃ。自分で確かめたいと思わぬか?」

 

荷運び人が笑って椀に手をかけた。

 

「それもそうだな」

 

男は一瞬黙り、それから肩をすくめる。

 

「いいとも。外れてたって文句なしだぞ」

 

持ち上がった椀の下には何もない。

 

荷運び人が呻いた。董白は空の場所を覗き、細身の男へ顔を向ける。

 

「どちらが当たりじゃ?」

 

「こっちだよ。惜しかったな」

 

男の右手が動いた。

 

「その椀も、この者に開けさせてほしい」

 

指が止まる。

 

「勝負は済んだだろう。もういいじゃないか」

 

「当たりを見るのは駄目なのか?」

 

「見せてやるから手を出すな」

 

「先ほどは触らせたではないか。当たりの椀だけは駄目なのか?」

 

董白の声は明るい。分からないことを教えてほしいという顔までしている。

 

しかし男は笑わなかった。

 

俺も残った二つを見た。どちらにも豆が入っていないなら、男が触らせたくない理由になる。

 

さっきまで自分の目を疑っていたのに、急に卓の上が怪しく見え始めた。

 

「いいから退け。子どもが口を挟む遊びじゃねえ」

 

「では、そなたが開ければよい。ただし先に両手を見せてほしい」

 

「何だと?」

 

「何も持っておらぬのであろう? ならば、すぐ済むではないか」

 

荷運び人が卓へ身を寄せた。ほかの客も黙り、男の手元を見ている。

 

男は左手を開いた。

 

「これでいいかよ」

 

「右もじゃ」

 

「しつこいな!」

 

「開けば済むのに、なぜ怒る?」

 

閉じたままの右手が服の裾へ動いた。その手首を荷運び人が掴む。

 

「今ここで開けろよ。八枚も出したんだ、見せてもらっていいだろ」

 

「離せ!」

 

椅子が鳴った。

 

俺は董白の腕を引いて下がらせた。何じゃ、と振り返られたが、手を離す気にはならない。あの男が腕を振り回したら、この距離では当たる。

 

荷運び人は掴んだ手首を離さなかった。周りからも声が飛ぶ。

 

「持ってないなら見せりゃいいだろ!」

 

「残りも見せろ。上げるぞ!」

 

客が二つの椀を持ち上げた。

 

どちらも空だった。

 

細身の男の指が緩むと、黒い豆が卓へ落ちた。

 

ころりと転がる。誰も拾わない。

 

(……そりゃ、当たらないわけだ)

 

荷運び人が低い声で訊いた。

 

「俺は何を選ばされてたんだ?」

 

董白が俺の隣から口を挟む。

 

「次は右手も選ばせてやれ。それなら一つは当たりじゃ」

 

笑い声が上がった。

 

男が睨むほど笑う者が増える。董白はその顔を眺め、いかにも満足そうに目を細めた。

 

 

「こいつ、俺からも取ったぞ!」

 

笑い声はすぐ怒鳴り声に変わった。若者が男の襟を掴んだところへ、女将が駆けつける。

 

「手を離しな! 銭を返させたいなら、まず座らせるんだよ!」

 

厨房の女も後ろにいた。椀が空だと騒ぎ始めた時、呼びに行ってくれたらしい。

 

男は椅子へ押し戻されても、まだ董白を睨んでいた。

 

「あのガキが余計なことを――」

 

「豆を隠してたのはあんただろ!」

 

自分の声に俺が驚いた。

 

男の目がこちらを向く。怖かったが、もう言ってしまった。董白の腕から手を離し、続ける。

 

「白のせいにするな。椀の下には何もなかったじゃないか」

 

「そうだよ。うちの椀を貸したら、とんでもないことをしてくれたね」

 

女将が男の前へ立ったので、ようやく息がつけた。

 

男は何か言いかけ、結局、卓の銭を押し出した。

 

「返しゃいいんだろ。ほらよ」

 

何人もの手が伸びる。その中で董白の声が通った。

 

「懐に入れた五枚も出せ。先ほど仕舞うのを見ておったぞ」

 

「俺の元手だ!」

 

「ならば、皆に返してから残りを持っていけばよい」

 

男は舌打ちし、懐からも銭を出した。

 

「俺は三枚だ!」

 

「こっちは六枚!」

 

声が重なり、男もそんなに取っていないと怒鳴り返す。誰かが銭を掴んだら、今度は客同士で揉めそうだった。

 

「待ってください。一人ずつ確かめましょう!」

 

入口の卓へ筆を取りに戻ると、手が震えているのが分かった。怒鳴った勢いはもう残っていない。俺は木片も抱えて戻り、女将が押さえている銭の横へ置いた。

 

まず八枚を置いた荷運び人に自分の分を取ってもらい、次に若者の話を聞く。

 

「六枚というのは、何度やった分ですか?」

 

「三度だよ。二枚ずつ」

 

「お前は一度当てたろうが!」

 

細身の男が噛みついた。

 

若者が言い返すより先に、俺は訊いた。

 

「その時は何枚受け取りました?」

 

「……四枚」

 

「それなら、なくなったのは二枚ですね。そこを返してもらいましょう」

 

若者は口を開きかけたが、卓を見てうなずいた。

 

「ああ。そうか。二枚だな」

 

董白が俺の横で木片を覗いている。

 

「腹が立つのは分かるが、元より増やして帰ろうとするでないぞ」

 

「分かってるよ。頭に血が上ってたんだ」

 

一人が受け取って下がると、次の客は自分から出した分と当てた分を話した。俺は書き留め、女将が銭を渡す。記憶の食い違う所では周りの客にも訊いた。

 

細身の男まで口を出した。自分の銭が減るとなると、いくらでも覚えているらしい。

 

最後の客が受け取る頃には、俺の手の震えも止まっていた。

 

女将が残った銭を男へ寄せる。

 

「持って出ていきな。もううちでは遊ばせないよ」

 

男は銭を懐へ入れ、董白の前で足を止めた。

 

「覚えてろよ」

 

「皆、よう覚えたであろうな。その顔も、椀の遊びも」

 

董白が周りを見回した。

 

「ほかの宿でも教えてやるとよい。次は椀を並べただけで笑ってもらえるぞ」

 

乱暴に戸が閉まった。

 

俺はすぐには目を離せなかった。董白はまだ笑っている。

 

「白。あそこまで言わなくてもいいだろ」

 

「外した者を笑うのは好きなくせに、自分が笑われるのは嫌と見える」

 

「面白がってる場合か。戻ってきたらどうする」

 

「その時はあたしを呼びな」

 

女将が椀を集めながら言った。

 

「白も、次は先に知らせとくれ。ああいうのは、すぐ手が出るんだから」

 

董白は少しだけ唇を尖らせた。

 

「……分かった」

 

まるで怖がっていない。その横で、俺ばかりが戸の音を気にしていた。

 

 

昼飯を済ませてから、裏の薪を運んだ。

 

董白は自分の分を抱えてさっさと歩く。俺も後を追い、ようやく訊きたかったことを口にした。

 

「いつ気づいたんだ? 豆を手に隠してるって」

 

「銭が増えると、椀を動かした後で手を拭いておった。それから右手を開かぬのでな」

 

「椀が濡れてたから拭いてたんじゃないのか?」

 

「それなら、一枚で遊ぶ時も同じであろう。八枚の時も握ったままじゃったゆえ、怪しいと思うた」

 

厨房へ薪を下ろすと董白が振り返った。

 

「客が外した後は、必ず自分で当たりの椀を上げる。あの時に豆を戻しておったのであろうな」

 

「……俺は、椀ばかり見てた」

 

「見ておれと言われたからのう」

 

何でもないように返され、少し黙った。

 

仕掛けがあるかもしれないとは思っていた。それなのに男が見ていろと言った物を、素直に追っていたのだ。

 

「銭を出さなくてよかった」

 

「出すつもりじゃったのか?」

 

「いや。ただ、今度なら当てられるとは思ってた。あの人と同じだな」

 

董白は俺を見てから、ふっと笑った。

 

「思うたところで、銭を出さねば取られぬ。違っておるではないか」

 

そんなふうに言われるとは思わなかった。

 

「……そうか」

 

「それに、銭を返す時も助かった。そなたが話を聞き始めたら、皆ようやく黙ったであろう」

 

薪を取りに戻る途中で、当たり前のように言う。褒めたつもりなのか確かめたくなったが、やめておいた。

 

(そこは素直に喜んでおこう)

 

俺は薪を抱え、隣へ並んだ。

 

「手を開けって言ってた時は、楽しそうだったな」

 

「うむ」

 

「否定しないのか」

 

「子どもには分からぬ遊びだそうじゃ。どれほど難しいのか、最後まで教えてもらわねばな」

 

口元がまた緩んでいる。

 

銭を取り戻してもらった者たちは助かった。だが、それだけであんなに楽しそうな顔をする娘でもない。

 

「朝の客にも、あれくらい言い返したかったんだろ」

 

「あの者は、話を聞かずに行ってしまったからのう」

 

朝の不機嫌はもうすっかり消えていた。

 

 

夕方、荷運び人が俺たちの卓へ五枚の銭を置いた。

 

「みんなからだ。取っといてくれ」

 

「わたしたちにか?」

 

「ああ。そっちの兄ちゃんにも分けてくれな。銭までちゃんと返させてくれて、助かった」

 

俺も顔を上げた。礼を言うと、男は照れたように鼻を擦る。

 

「ただ、できれば八枚出す前に止めてほしかったけどな」

 

「柳誠が止めたであろう」

 

「……ああ。止めたな」

 

男が俺を見たので、困って笑った。

 

「次は聞くよ。悪かったな」

 

男は俺たち二人に礼を言って広間へ戻った。董白もその礼には素直にうなずいていた。

 

董白は残った銭を見ていたが、やがて俺の方へ寄せた。

 

「しまっておいてほしい。二人の分じゃ」

 

「ああ。なくしたら大変だ」

 

書具箱を開ける。ほかの銭に五枚を足したところで、董白が身を寄せて声を落とした。

 

「……妾が、あの男に言い返せぬと思うたか?」

 

「思ってない。むしろ言いすぎる方が心配だ」

 

「では、なぜそなたが怒った?」

 

手を止めて顔を向ける。

 

「お前のせいにしたからだろ。聞いてて腹が立ったんだ」

 

董白は黙った。

 

自分で言い返せるかどうかは関係なかった。悪いことをしたのは向こうなのに、董白が余計なことをしたからなどと言われたくなかった。

 

やがて董白が、畳んだ菓子の包みを卓へ置く。

 

「ついでに、これも頼む」

 

「捨てないのか?」

 

「次に買う時に使える。そなた、一つずつ買うと言うたであろう」

 

「覚えてる。今度は半分にしなくていいな」

 

「うむ」

 

包みを受け取ろうとすると、董白は重なった所を丁寧に伸ばしてから渡した。

 

頬が少し緩んでいる。菓子の約束だけで、そういう顔になったのではない気がした。

 

俺もそれ以上は訊かず、銭のそばへ包みをしまった。

 

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