俺の幼馴染がTS転生聖女候補だそうで 作:デデデ
翌日。
ダスティンは学校を休んでいた。
色目を使わないだけがそんなに嫌なのかよ……!
かと言ってハーレムの二人はちゃっかり来てるし。
そういうところはなんか淡白なんだな。
しかしこれ俺はともかく、シェルは気まずくないかとかあいつの席を横目で見る。
……うん、クラスメイトのひとりにエグいぐらいくっつかれてるな。
背中からぎゅ~っとハグされている。
一見すれば微笑ましいような光景。
まぁ、ガッツリ乳を揉まれてなければの話なんだけどな。
シャツの中に手を突っ込まれてるな。
ガチめのセクハラに見える。
「おい、なにしてる」
「なにって……ただのセクハラだけど……」
平然とそう宣う赤髪ショートの女……クリス・ディール。
大きすぎず、小さすぎずのスタイル良しで女にしては背もデカい方。
顔立ちが整っているから王子様なんて言われることもあるほどだ。
しかしまぁ、なんと言ったら良いか……。
同性に対して明らかに欲情してる、この女。
「おい、シェル。セクハラを受けてるぞ」
「ええ!? お、女の子同士のスキンシップとか言ってたじゃん……!!」
「シェルフィット、そんなたわごとを信じてたの!? アタシが男だったらもうずっぷしぱっくりいただかれちゃてるところよ!? はぁ、はぁ、シェルフィット、シェル、シェル……」
ないはずのモノを打ち付けるような腰の動きまで入れ始めたクリス。
見るに耐えないのでどついた。
女を殴るなと教えられてきたが、こいつは別だ。
まぁ殴ったと言うより机に置いてあった教科書で思っきりはたいただけだが。
「はぅ……相変わらずボディガードしてますね、レイモンドさまはよ~~」
「オメーがガチ目に危険人物なだけだろうが。そのノリで何人、女食ってきたんだよ」
「失敬な。食ってないわよ。裸の付き合いが多いだけよ」
「シェル、こいつ半径20m以内に近づけさせるな」
頭を数回しばいても腰を打ち付けてたので、背中の襟を掴んで子猫のように引きずり離した。
シェルはなんか腰抜かしてるし……セクハラが気持ちよかったのか、こいつ。
「20mは……一緒の教室にもいられないんじゃない?」
「じゃあこいつ校舎裏に埋めてこい」
「シェルは優しいからそんなことしないもんね~~?」
まだベタベタくっつこうとしているので、しっかりと襟を掴む。
シェルも多少は自衛してほしい。
同性のスキンシップで許せるラインはるかに超えてないか?
クリスはついに諦めたのか、シェルの前の席に戻っていった。
あそこがアイツの席なので流石にどけとは言えないな。
「そういえば昨日ダスティンとシェルのとりあいしてたじゃない」
「ああ、勝った」
「アンタって態度がデカい割には、努力家で実力ともなってるわよね……」
「褒めてもシェルは渡さんぞ」
別にオレも昔から努力家だったわけじゃない。
シェルが思いの外、魔法には勤勉なのだ。
魔力も多く、一般魔法の範疇ならそうそう負けはしないぐらい。
そしてこいつはオレに勝つと盛大に煽ってくる。
それが悔しいので、いつも鍛えてきた。
それだけである。
「で、ダスティンくんは休みですかぁ~? ちょっとやりすぎたんじゃない?」
「知らねぇよ、アイツの彼女らに聞いてこい」
チラリ、と振り向いて二人を見るクリス。
一人はネイルを塗るのに夢中で、もう一人はひらひらとこちらに手を振っていた。
てっきりそちらに向かうのかと思ったら、席から離れるつもりはなさそうだ。
「そりゃあアタシは人の女だろうがねんごろになる女だけど」
「おっ、選り好みしてんの?」
「あの二人、ちょっと怖いんだよね」
まぁ、盛大に乳を揉まれようと大して気にしないシェルに比べれば……。
誰でもちょっとぐらいは怖かろうという感じだ。
キンコンカンコーン
────なんて事を話していると、チャイムが鳴った。
「平均的なスキンシップに留めるように。シェルも乳揉まれて感じるぐらいなら揉ますな」
「かっ、感じてなんかないよぉ!?」
声がデケェな。
やっぱりほっといたら全身ひん剥かれそうだ、こいつは……。
急いで席に戻ると、やってきたのは担任のタマキ先生。
ウェーブかかった茶髪に緑のカーディガンが似合うお人だ。
黒縁眼鏡で地味な印象がなければ、彼氏の2~3人はいたっておかしくない。
「今日は校外学習ですよ~~。皆さん、そのままグラウンドに集まってくださいね~」
あれ、急だな。
校外学習となると、普段は事前に通達されるのに。
ともあれ珍しいことじゃない。
教師陣が忙しいからな。
予定が空いたり埋まったりすれば、授業内容が変わることなどよくあることだ。
現代魔法師は大変である。
言われて体操服にも着替えずグラウンドへと向かう。
廊下を歩いていると、シェルがとたとたと駆けつけてきた。
耳元で囁いてきたので、オレもしっかりと聞いてやることにする。
「まずい……」
「何がまずいんだ?」
「今日は校外学習で魔物を倒す授業のはずなんだ」
「へぇ……」
つまり原作とやらに関係しているのか。
しかしこの章はオレの闇落ちぐらいしか危険がないと言ってなかったか?
「でも、魔物が想定より数が多くて……クラスメイトが危険になる」
「原作だとどうなるんだよ」
「当然、主人公のダスティンが倒してしまうんだよ。でも今日彼は……」
「ああ……」
つまり、オレが勝ったせいでダスティンはショックで休んだ。
その次の日、つまり今日の校外学習に出ることが無くなったのだ。
校外学習の魔物退治は授業というより学徒動員だ。
下手したら怪我をする生徒が────いや最悪死傷者が出かねない。
「ちなみにオレは何してんだよ?」
「負けたから本来キミが休んでるんだよ」
「へっ、だったらオレがダスティンの代わりになれば良いだけだろ」
「そういうことだね。頼むよ、レイ」
ポンポン、と背中を叩いてくるシェル。
なんというか、まぁ人たらしな奴めと思っている。
人に頼るのが自然体なんだよな、こいつ。
グズ子だから。
ともあれ、グラウンドにたどり着くと、タマキ先生がゲートを開いた。
人間界に繋がるもやもやとした黒い霧みたいなやつだ。
「今日の授業は人間界にある駅に発生した魔物の討伐です」
「普通の人間さんとかいるんですか~~?」
人間マニアの生徒が挙手して質問する。
隙あらば人間界から勝手にアイテムを持ち帰りそうな子だ。
……っていうかそういう実績のある子だ。
「いえ、駅は封鎖済み。しかし人間界においては重要な交通機関なのは確かです。速やかに魔物を処理してください。言っておきますが、訓練ではありません。時が戻るなんて思わないように」
ざわざわとざわめく生徒たち。
まぁ、いきなりこんな事言われて怯えないやつはいない。
オレは先陣を切り、ゲートに飛び込むことにした。
「ギャハハ!! 安心しろよ、テメェら。オレが全員潰してやるからよぉ!!」
「あ、レイモンドくん!!」
ゲートに飛び込むと、ちょっとした浮遊感と共に人間界の駅へと出た。
白い壁と床に、様々なポスターが並んでいる。
だだっ広い空間だと言うのに、人はたしかに誰もいない。
……などと周囲の様子をうかがってたら頭上からシェルが落ちてきた。
とっさにオレはシェルを抱きかかえる。
……重い!!
体重結構あるんだよ、こいつ!!
「えへへ、さっさと行くから着いてきちゃった」
「へっ、そうかよ。サポートよろしく」
下ろしてやると、今度はもう一人転移してきた。
きらびやかな赤髪────おっと、クリスだ。
なんだかんだシェルが気になってコイツも飛び込んできたのか。
仕方ないので受け止めようとしてやると、蹴飛ばしてきやがった。
とっさに【無敵】化したので痛くないが、なにすんだこいつ!!
オレを蹴って華麗に着地するし……!!
「なんだよッ」
「男に抱かれるぐらいなら死んだほうがマシ!!」
「生粋の女好きめ……!」
しかしそんな態度に少々むっとしたのか。
シェルが頬を膨らませて口を出してきた。
「異性に触られるのが嫌のはわかるけど、レイはキミが怪我しないように……」
「避けるためには蹴るしかなかったのよ。まぁ、心意気だけは買ってあげる」
「土下座しろ土下座」
「ああん!?」
オレが茶々を入れると、げしげし蹴ってくる。
やはりカスみたいな態度である。
本気で土下座を求めたわけじゃねぇけどな。
さて、気を取り直して────。
この駅に魔物がいるはずだが。
「他の奴らが来る前にとっとと片付けちまうか」
「しかしよほど緊急なんでしょうね。学徒動員に、教師のサポートもほとんどないなんて」
「結界の維持が大変なんだろ」
上級生にやらせる、という手もあるが二年に上がると、もう個別のゼミに入ってしまう。
教師のお付きみたいな形になるので、人員を配備するならば一年を導入するのが一番いいのだ。
つまるところ……魔物の質は悪いが数は多いってところだな。
シェルの予言とも噛み合っている。
幸いにして、クリスは学園でも結構な武闘派だ。
シェルだって固有魔法はないものの、魔力は多く一般魔法を習熟している。
悪くない面子と言って良い。
などと言っていると────。
曲がり角からオレたちの気配を感じたのか、複数の魔物がやってきた。
なんていうか、魑魅魍魎というか。
子供に思い思いのモンスターを描かせて。
それを皮むき器で切り取ったような。
そんなペラペラで細長いバケモノたちだ。
「あれは”ゴースト”だったかしら?」
「雑魚だな」
言っちゃなんだが最低級の魔物に当たる。
どこにでも発生する、人間の感情の塊だ。
ぶつかっても少しばかり体調を悪くするだけ。
一般人には見えない。
まぁ、あの濃度はちょっと珍しいけど。
オレは【無敵】を指の先端に注ぎ込み、そのままぱちんと鳴らした。
星十字のエフェクトが光り輝き、近づいてきたゴーストが吹き飛ぶ。
今のは【無敵】の圧縮。
反発力を撃ち出す、オレの通常技だ。
「ひゅ~~」
「相変わらず綺麗だねぇ」
それを見て、二人が思い思いの発言をする。
まぁ、当然この程度なわけがない。
先に進むとするか。
オレが歩き始めると、シェルが影に手を突っ込み両手剣を引き出してきた。
これは一般魔法の【収納】だな。
便利だけど、収納している容量に応じて魔力の最大量が減ってしまう。
固有魔法を持たず、魔力が有り余っているシェルだから有効に使える魔法だ。
……まぁ、武器なんて普通に持っとけばいい話なんだけど。
「はい、レイ。あったほうがいいでしょ?」
「いらねぇと思って持ってこなかっただけだよ。まぁ、一応受け取っとくが。おまえは?」
「フフン、レイピアだよ。いつも通り! レイのレイピア。ふふふっ」
そう言いながら細剣を俊敏に振るうシェル。
オレが入学のときにプレゼントしてやったやつだ。
もっとも、金を出しただけで選んだのはコイツなんだが。
そんなやり取りをしながら、「むむぅ……」などと唸っているやつがいる。
クリスである。
「アタシもなんか武器貸してよ」
「いいよー。何が良い?」
「…………おっぱい」
「おっぱいは武器じゃないよ!!」
ほざいているクリス。ふにゃふにゃ応対するシェル。
けっきょくクリスにはナイフを二本貸してやることになったようだ。
さて、じゃあゆるりとハック&スラッシュしていきますか。
【クリス・ディール】
大きすぎず、小さすぎずのスタイル抜群赤髪女。
女の子が三度の飯より好き。一応は魔法貴族の出だったはずだが……。
【タマキ先生】
ウェーブがかった茶髪の眼鏡美人。緑の服を愛用する。
ゲートを行使したり、魔法の腕は確か。
【魔法師】魔法が使える人間の総称。魔法界の人間の多くはそう。
【門】 ゲート。一般魔法だが難易度が高く、扱える人間は限られている。
【収納】 影にモノを入れられるが容量分、常に魔力を食う。皆、あまり使いたがらない。
【魔族】 人類の敵対種。人型で強い。
【魔物】 人々の想念から生まれる。いろんな魔物がいる。一般人には基本見えない。
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