変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来 作:shpfive03
あくまでも二次創作小説における設定であるということは念のためにお断りしておきます。
なお、このカスミの亡くなった母については裏設定がありますが、それは旧作pixiv版でも、まだ語られていません。
風呂から上がり、着替え終わった千恵とカスミに対して、タツマキが声をかける。
まず千恵に対しては
「千恵殿は、今宵は早めに休みなされ。今晩は我々男どもは別な部屋で寝るゆえ、女子(おなご)同士カスミと一緒に寝るとよろしかろう」
と言ったあと
「今晩は、まず休養を第一に考えなされ。万一、ここを血車党の連中が襲ってきたとしても、我ら全員で千恵殿のことはお守りする所存」
と、自分達の決意を伝える。
ハヤテも
「千恵さん、今晩は体調の回復を優先させてくれ、まだ私が傷つけた右腕と右足の痛みだって治まってはいないはずだ。今は無理はしてほしくない、江戸に行くまでには体力もいる」
と千恵をいたわる。
ツムジも
「千恵お姉ちゃんが回復したら、江戸まで行こう!、そのためにも今晩はゆっくり休んで」
と千恵に声をかける。
千恵は
「皆さん、ありがとうございます。今はゆっくり休みますので」
と頭を下げ、礼をのべた。
タツマキが
「カスミ、千恵殿を頼むぞ」
と娘に対して声をかける。
「大丈夫よ、お父さん、それより三人で早くお風呂に行ってきて」
とカスミ。
そうやって男ども三人を風呂に送り出すと、カスミは千恵に
「さあ、二人で床の準備をしましょう。寝る準備!!」
と声をかける。
千恵は微笑みながら頷く。
「贅沢なことをいいますけど、カスミさんは、私を病人扱いしないから嬉しいです」
こういうところがツムジに千恵お姉ちゃんは意地っ張りと言われるのだろうが‥‥
早速二人で寝床の準備をし、横になる。
薄暗いながらも、部屋には角柱型の角行灯があり、灯油 (ともしあぶら)がつき、ほんのりとくらいは明るい。
恐らくは魚油を使っているのだろう、少しの魚臭さがある。
横になったカスミは、やはり隣で横になっている千恵に声をかけた。
「千恵さん」
千恵も答える。
「はい」
「千恵さんが江戸に着いたら、当分は私たちの江戸での家に住んでもらうことになるけど、いっぱい手伝ってもらいますから、覚悟しておいてね」
クスクス笑いながら、カスミは言った。
「私でもお手伝いできることがあるなら、是非なんでも」
そのくらいは当然と思って、千恵は真面目に答える。
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「助かったー!」
なおもカスミはクスクス笑う。
「お父さんもツムジも家事は全然ダメなのよ。んで、私が家事の方は一人で全部やってるの、忍び装束の洗濯も、食事の支度も、掃除、片付けも、本当に大変なのよ!」
「はいっ?」
千恵は急に不安を感じた。
「私、もうずっと家事らしい家事って、やったことがないんですよ。大助と二人で生活していた時だってそうですし、血車党にいたときは、雑用は係りのものが黙っていてもやってくれましたし‥‥」
その千恵の不安そうな声を聞いて
「やっぱりね!」
とカスミは
「やることは私がどしどし教えてあげるから心配しないで。千恵さんもこれからは花嫁修業くらいはしないと」
あっけらかんと言う。
「花嫁修業?、私が、ですか‥‥」
千恵は考えてもいなかったことを言われて絶句した。
「当然よ!」
とカスミ。
「千恵さんは私よりも歳上なんだし、もう、とっくに結婚していてもおかしくないのよ」
千恵は困惑した。
「いえ、私に手伝えることがあるなら、それはなんでもやりますけど、でも‥‥」
戸惑いを隠せない千恵は
「あの‥‥、私って化身忍者なんですよ。そんな私が結婚だなんて‥‥」
とカスミにいう。
「あら、変身忍者と結婚したい女の子だっているのよ」
こともなげにカスミは答えた。
「家事は大切なお仕事、何でも出来てこそ一流のくノ一よ。お客様が食べて『美味しい!』と褒めてくれるような料理を作れるようになるのだって『お役目』のうち」
ここで『一流の忍者』とはカスミは言わなかった。
当然、父タツマキや、ハヤテのことを意識しているのだろう。
「少なくとも私は忍術も、医術も、家事も、全部こなせるようになりたいし、それだけのことはやっているつもり。だから千恵さんも私と一緒に頑張りましょう!」
千恵は考え込んでしまった。
自分にそれだけのことか出来るのだろうか‥‥
そして、ふと気づく。
「カスミさん、お母様は?」
カスミは、それまでの冗談めかした口調から、急にトーンを下げ、沈んだ口調となる。
「母は、少し前に亡くなりました‥‥」
それを聞いた千恵は、カスミたちと出会った最初の晩のことを思い出した。
あの時はカスミの方から
『弟さん、どうしたの?』
と尋ねてきたのだった。
その時の千恵は
『崖から落ちて死んだの‥‥』
と答え、そして大助のことを思いだし、千恵の中で忘れていた何かが甦ってきたのを、今さらのように思い出す。
そう、あの晩から血車党の化身忍者たった自分の中で何かが変わったのだ。
それではカスミも(ということはツムジも)、母を亡くしたという悲しみを背負っていたのか‥‥
「お母様はどうして?」
ある種の怖さを感じながら、千恵はカスミに尋ねる。
カスミの答えは、千恵にとって衝撃的なものだった。
「母は‥‥、血車党によって殺されました」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
千恵はショックを受けていた。
では、カスミだけではなく、ツムジも、そしてタツマキも
母、妻を殺した血車党の一味だったことがハッキリとわかっている自分を
いくら、その血車党から失敗による死の制裁を加えられそうになっていたとはいえ
危険を承知で助け、庇い、さらには自分たちの家に迎え入れようとまでしているということなのだろうか?
特にツムジなどは、血車党の化身忍者であるガマドクロに対して、危険を承知で、文字通り命懸けで自分を守ろうとしてくれたのだ。
そんな千恵の内心の動揺をよそに、カスミは淡々と話を続ける。
「母は伊賀忍者ではありません。徳川宗家に仕える『奥医師』であり、今の上様(徳川秀忠)の御近習医師という立場にありました」
では、カスミとツムジの母は伊賀忍ではなかったのか‥‥
これも千恵にとっては驚きであった。
「当時から父は上様の元に様々な報告をあげていましたが、あるお役目の際に敵に襲われて大怪我をし、それを気遣った上様が、御近習医師である母に父の治療をさせることにしました。それが二人の出会いだったといいます」
「父は、たちまち母に一目惚れし、母も父のことを好きになりました。上様からも直接お聞きしたことがありますけど、当時若かった二人の大恋愛だったといいます」
聞いている千恵も、当時の二人を思って、思わず胸が熱くなるのを感じる。
「母は当時、権現様(徳川家康)に外交顧問として仕えていた英国人から直接西洋医学を学んでおり、権現様のお気に入りでもありました。一方でお役目により、いつ命を落とすかもしれない父は、その引け目から、なかなか母に気持ちを伝えることができなかったといいます‥‥」
「そんな二人でしたけど、今の上様が、当時は隠居前だった権現様にとりなしてくださり、父と母は結ばれました。そして、まもなく私が生まれました」
ここで千恵は
「じゃ、カスミさんの医術の知識は元々はお母様から学んだものなんですね?」
と聞いてみる。
「はい」
とカスミ。
「少し遅れてツムジが生まれ、私が物心ついた頃から、母は『名張の家はゆくゆくはこの子が嫡男として継ぎます。だからカスミは医術を学び、世に出なさい』と言って、まだ幼かった私に早くから勉強をさせました。母は私を父のような忍者にする気はなかったんです」
それを聞いた千恵はカスミに
「でも、カスミさんは十分以上に忍術も身につけていますよね?」
と言った。
決してお世辞ではない。
化身忍者相手ならともかく、人間相手であれば、カスミの忍術は十分以上にレベルは高い。
「父から学びました」
とカスミ。
「父も最初は反対しましたが、私が強く希望して、ついに『ついていけないようなら直ぐに止めさせる』ことを条件に少しずつ教えてくれるようになりました。だから、私は止めさせられたくなかったので本当に頑張りましたよ!」
当時のことを思い出したのか、カスミはクスクス笑いをする。
「母は、なぜか、そんな私を止めませんでした。そのうちにツムジが物心つくようになると、今度は姉としてツムジには忍術で絶対負けていられない、という気持ちも加わりましたけど」
カスミは当時を振り返る。
「当時の父は、未だ大阪城に拠り、太閤恩顧の有力大名にも影響力のあった豊臣家の動静を探るのを主なお役目としていました。なので私たち一家も大阪に住んでいたことがありますし、必要ならあちらの言葉も喋れます。江戸に戻ったのは、わりと最近なんですよ、そして江戸に戻ってから間もなく権現様が亡くなられ、今の上様が名実ともに『後見人なしの天下様』となりました。そして、あの事件が起こりました‥‥」
千恵はショックを受けていた。
では、カスミだけではなく、ツムジも、そしてタツマキも
母、妻を殺した血車党の一味だったことがハッキリとわかっている自分を
いくら、その血車党から失敗による死の制裁を加えられそうになっていたとはいえ
危険を承知で助け、庇い、さらには自分たちの家に迎え入れようとまでしているということなのだろうか?
特にツムジなどは、血車党の化身忍者であるガマドクロに対して、危険を承知で、文字通り命懸けで自分を守ろうとしてくれたのだ。
そんな千恵の内心の動揺をよそに、カスミは淡々と話を続ける。
「母は伊賀忍者ではありません。徳川宗家に仕える『奥医師』であり、今の上様(徳川秀忠)の御近習医師という立場にありました」
では、カスミとツムジの母は伊賀忍ではなかったのか‥‥
これも千恵にとっては驚きであった。
「当時から父は上様の元に様々な報告をあげていましたが、あるお役目の際に敵に襲われて大怪我をし、それを気遣った上様が、御近習医師である母に父の治療をさせることにしました。それが二人の出会いだったといいます」
「父は、たちまち母に一目惚れし、母も父のことを好きになりました。上様からも直接お聞きしたことがありますけど、当時若かった二人の大恋愛だったといいます」
聞いている千恵も、当時の二人を思って、思わず胸が熱くなるのを感じる。
「母は当時、権現様(徳川家康)に外交顧問として仕えていた英国人から直接西洋医学を学んでおり、権現様のお気に入りでもありました。一方でお役目により、いつ命を落とすかもしれない父は、その引け目から、なかなか母に気持ちを伝えることができなかったといいます‥‥」
「そんな二人でしたけど、今の上様が、当時は隠居前だった権現様にとりなしてくださり、父と母は結ばれました。そして、まもなく私が生まれました」
ここで千恵は
「じゃ、カスミさんの医術の知識は元々はお母様から学んだものなんですね?」
と聞いてみる。
「はい」
とカスミ。
「少し遅れてツムジが生まれ、私が物心ついた頃から、母は『名張の家はゆくゆくはこの子が嫡男として継ぎます。だからカスミは医術を学び、世に出なさい』と言って、まだ幼かった私に早くから勉強をさせました。母は私を父のような忍者にする気はなかったんです」
それを聞いた千恵はカスミに
「でも、カスミさんは十分以上に忍術も身につけていますよね?」
と言った。
決してお世辞ではない。
化身忍者相手ならともかく、人間相手であれば、カスミの忍術は十分以上にレベルは高い。
「父から学びました」
とカスミ。
「父も最初は反対しましたが、私が強く希望して、ついに『ついていけないようなら直ぐに止めさせる』ことを条件に少しずつ教えてくれるようになりました。だから、私は止めさせられたくなかったので本当に頑張りましたよ!」
当時のことを思い出したのか、カスミはクスクス笑いをする。
「母は、なぜか、そんな私を止めませんでした。そのうちにツムジが物心つくようになると、今度は姉としてツムジには忍術で絶対負けていられない、という気持ちも加わりましたけど」
カスミは当時を振り返る。
「当時の父は、未だ大阪城に拠り、太閤恩顧の有力大名にも影響力のあった豊臣家の動静を探るのを主なお役目としていました。なので私たち一家も大阪に住んでいたことがありますし、必要ならあちらの言葉も喋れます。江戸に戻ったのは、わりと最近なんですよ、そして江戸に戻ってから間もなく権現様が亡くなられ、今の上様が名実ともに『後見人なしの天下様』となりました。そして、あの事件が起こりました‥‥」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「あの事件?」
千恵は聞き返す。
「上様が親藩、譜代、外様にかかわることなく、有力諸大名に『これからは自分の時代』であることを強調するために大規模な鷹狩りを富士近くの専用の鷹場で行い、そこに有力大名を招きました。そこを、よりにもよって血車党の骸骨丸と、その指揮する三人の化身忍者が下忍たちと共に襲ってきたんです」
千恵は驚いた。
他ならない血車党につい最近までいた自分の知らない話だ。
「それで‥、どうなったんですか?‥」
千恵は声を震わせる。
「勿論、その場は大混乱、その場にいた武士たちも化身忍者にはなすずべもなく、自分たちの主君を守るので精一杯」
「あれで血車党の存在と、その凶悪さをを知った人も多いと思います。まあ、私たちは、その以前から知っていましたけど」
とカスミ。
「当時、医師として上様の側にいた母は、直接襲いかかってきた化身忍者から上様を庇って、そこで命を落としました‥‥」
その化身忍者が、もし自分だったら?
千恵は思わず、そんなことを考えてしまった。
「私は直ぐに涼風を吹いたんですけど、とても間に合いませんでした。でも、ハヤテさんは『変身忍者嵐』として、ハヤブサオーに乗って、ちゃんとやって来てくれました」
二代将軍である徳川秀忠が、ハヤテこと『変身忍者嵐』の存在を知ったのは、この時がはじめてである。
「嵐はたちまち化身忍者たちを斬り、骸骨丸は捨て台詞を吐いて逃走しました。本当に、あの男はいつもそう」
当然ながらカスミは骸骨丸のことは大嫌いであり、それを千恵の前でも隠さない。
何よりも嫌いなのは、あの男がこの時に自分の指揮下にあった化身忍者が手にかけた自分の母のことを覚えてすらいなかったことだ‥‥
「嵐は変身を解き、ハヤテさんの姿で上様に『ご無事でなによりです!』と何も飾ることなく声をかけました。上様はそんなハヤテさんのことが気に入ったようです」
「その時、カスミさんは?」
と千恵。
「私は本当に大変でした」
とカスミ。
「母の死を目の前にしながら、混乱し、なすずべもなく狼狽える大人たちに、若輩者の私が思わず大きな声で怒鳴ってしまいました」
その時のカスミは気迫のこもった声で
『みんな、何してるの!!、こんなに怪我人が出ているのに!!、急いで手当てが必要です。早くしてください!!』
その場にいる医師たちを怒鳴っていた。
「気がついたら、私は母の死を悲しむ間もなく、その場の医療を一人で仕切っていました。私よりもずっと歳上の医師の人たちを叱咤しながら!、母だったらきっとこうするに違いないと感じる自分を信じて、必死でした。後でその場にいた人たちから話を聞いても、その指示の一つ一つが適切だったようで、とにかく、その場はおさまりました」
ここでカスミは、その時のことを思い出したのか「ウッ」と泣き出す。
「その混乱がおさまったところで、私たち一家はようやく、命を落とした母のために涙を流して泣くことができました、その時はハヤテさんも私たちと一緒に‥‥」
聞いている千恵も涙が出てくるのを我慢することが出来なかった。
まだ少女といってもいいカスミが、大の大人でも茫然自失するような状況下で、しかも、自分の母の死を目の前にしながら、必死で『戦っている』様子が目に見えるようにすら感じた。
「何日かして母の葬儀も終わり、御公儀の方でも『血車党対策』に向けて動き出すことになって、ハヤテさんと父、そして私が上様に呼ばれることになりました。この時、上様はハヤテさんに徳川家の旗本、あるいは御家人となってみてはどうかとハヤテさんに声をかけてきましたけど、ハヤテさんの方でそれを断りました」
「ハヤテさんは、なぜ断ったんですか?」
千恵はカスミに聞く。
「いずれは血車の郷に帰りたい、と言っていました。たた、上様の方でそれでは困るからということで、今のような『お父さんの客分』という名目で行動するようになったんです。多分、千恵さんも今後はそうなるはず」
このカスミの言葉に千恵は
「そうでしょうか?」
と率直な疑問を口にする。
「それは、まあ、これからのこととして」
カスミは話をそらした。
今、千恵とその話をしても、直ぐには納得してもらえないだろうから。
「千恵さん、長話をしてごめんなさい。もう寝ましょう。千恵さんがちゃんと休養して、回復してくれないと、私たち、いつまでも出発できなくなるし」
千恵も、確かに今はそうした話はしない方がいいと思いつつ
「そうですね、私も休むことにします、ただ、その前に、出来れば私にもお母様のお名前を教えてください」
と返事をする。
「母は恵といいます。お父さんはずっと『お恵』と呼んでいました」
カスミはそう答えた。
「カスミさん、ありがとうございます」
と千恵は礼をいう。
その心の中には恵の名前をしっかりと刻みながら。
カスミはそれに答えず
「行灯消しますよ」といい、行灯の灯を消す。
部屋は真っ暗になった。
「じゃ、千恵さんお休みなさい」
とカスミ。
「お休みなさい、カスミさん」
千恵も返事をする。
二人ともそれぞれ、すぐに寝付けるかどうか疑問を持ちながら、今は寝ることに専念することにした。