変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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江戸に向けて、出発!

 

次の日の朝には、千恵は直ぐに出発することを強く希望したが

 

カスミの診断により、まだ右足の方に不安があり、長距離を歩くのは厳しいと指摘されたこと

 

タツマキの方からは、道中に必要となる千恵用の「途中手形」を用意するのは、特に運用が厳しい「女手形」であるだけに時間がかかると説明を受けたことで

 

千恵としても直ぐの出発は断念せざるを得なかった。

 

「転移の術さえ使えれば‥‥」

 

と悔しがる千恵。

 

そんな千恵をツムジが

 

「道なら、これからの道中で覚えれば大丈夫だよ、そうしたら次に転移の術も使えるから」

 

と慰める一幕もあったりした。

 

前にいた「家」のある場所、ないし血車党の毒蛾くノ一だった時にいた『狂い毒粉』の実験を行った、以前の髑髏館の場所になら直ぐにでも転移の術で移動できるのだが、千恵にとっては残念なことに、どちらも江戸に向かうには方角違いである。

 

後は信州の真田と上田、そこから紀州の九度山までの道、あるいは血車の郷への道なら過去に通ったことはあるものの、いずれにしても江戸に行くための役には立たない。

 

あと、千恵がこれから使うための旅装も準備する必要があった。

 

これらの件について、代官の江川が好意的に尽力してくれたおかげで、三日目には、どうやら出発出来るようになり、今日が、その当日である。

 

さすがに化身忍者である千恵の回復力は常人を超えたものがあり、この日までには足の方も十分に回復しており、これには千恵を診たカスミも驚いていた。

 

その間に、この先の相州早川の城下町では、既に血車党の化身忍者である血吸いコウモリが、その吸血により『僕』たちを増やし続けていたのだが、それは、まだ千恵たちの知るところではない。

 

「やっと出発出来るんですね」

 

ハヤブサオーに乗るハヤテを見上げながら千恵は笑顔で言った。

 

「ああ、千恵さんにとっても、すべてはこれからだな。それにしても血車党の動きは気になるが‥」

 

ハヤテは千恵に対して、そう答える。

 

この二日の間、落ち着かなかった千恵は何度もハヤブサオーのところへ遊びに行き、ハヤブサオーも、それを喜んでいた。

 

が、今日からはいよいよ江戸に向けての出発であり、気のせいか、ハヤブサオーも本来の主であるハヤテを乗せてから意気込んでいるように見える。

 

予期に反して血車党が襲ってくることもなく、このまま順調に出発できるのは喜ばしいことであった。

 

ただし、その間に血車党は着々とこの先の早川城下を支配しようと暗躍していたのであり、この先にハヤテたちが、それと衝突するのは確実であったのだが。

 

「いずれにしても、この先で江戸に行くまでに血車党と衝突するのは避けられないだろう」

 

とハヤテ。

 

「覚悟は出来ています」

 

と千恵は決意を口にする。

 

一方で

 

「江川殿、この度は大変な尽力をいただき、本当に忝ない」

 

タツマキが、代官の江川に対して頭を深々と下げる。

 

今日、江川は千恵のための「女手形」を用意しており、それを今、タツマキに渡しているところであった。

 

これがなければ千恵は、このすぐ先である箱根の関すらも通ることすら出来ない。

 

「いや、礼を申し上げるのはこちらの方」

 

江川は笑ったあと

 

「それにしても、上様の鷹狩の件などは役人の端くれとして存じておりましたが、血車党というのは実に恐ろしい連中ということがタツマキ殿のお話でわかりもうした、我らも気を引き閉め、警戒は怠らないようにする所存」

 

と、あらためて決意を口にする。

 

「お気をつけられよ」

 

タツマキがくれぐれも念を押す。

 

そして

 

「千恵殿、これが江川殿が用意してくださった『途中手形』じゃ、お受け取りくだされ」

 

と、千恵に江川が用意した書状を手渡す。

 

「タツマキさん、ありがとうございます」

 

と千恵は頭を下げる。

 

「礼なら、こちらの江川殿に申し上げた方がよいですぞ」

 

とタツマキは江川に視線を向ける。

 

千恵はあらためて江川の方にも

 

「江川様、この度はご尽力いただきまして、本当にありがとうございました」

 

と深々と一礼した。

 

「いや、なに」

 

既に馬上の江川は千恵に向かって、軽く手を振る。

 

そして

 

「千恵殿、お気をつけられよ。血車党というのは実に恐ろしい連中。道中のご無事を祈念しておりますぞ」

 

と千恵のことを案じて、声をかけた。

 

血車党が恐ろしい連中だというのは、無論、千恵も十分以上に知っていることだが、そのようなことは言わない。

 

「はい、ありがとうございます」

 

と千恵は再度、江川に対して礼をのべる。

 

そしてハヤブサオーに乗るハヤテを囲むようにして、タツマキ、カスミ、ツムジ、そして千恵の五人は江戸に向けて歩み始めた。

 

「皆さん、お気をつけられよ!」

 

代官の江川は大きく手を振る。

 

そして数人の供回りの者とともに、一行を見送ると、一礼をした。

 

こうして、千恵はハヤテたちと共に江戸に向けて出発したのである。

 

まずは箱根の関が当面の目標。

 

早川城下で暗躍する血車党の化身忍者血吸いコウモリとの対決は間もなくであった。

 

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