変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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ハヤテ、タツマキ、ツムジ、千恵と合流する

 

ハヤテは忍び装束から囚人服に着替えさせられ、剣も取り上げられた状態で、早川城地下の牢に入れられた。

 

といっても、実のところハヤテからみれば、いつでもそんな牢からは抜け出せるような緩やかな警備しかされていなかったのだが‥

 

この程度の牢を破るのはハヤテにとってなら生身でもさほど難しくないし、見張りも二人しかいない。

 

それよりも今、ハヤテが気になっているのは、別なところに連れていかれたこずえの事であった。

 

まさか彼女が拷問などはされてはいないと思うのだが‥

 

ふいに『予感』がした。

 

近くでカスミが危機を訴えている‥‥

 

手元に剣こそないものの、涼風から発せられたシグナルは『予感』という形でハヤテにはちゃんと伝わってくるのだ。

 

やはり、多少手荒なことをしてでも、ここから直ぐに出るしかない。

 

ハヤテがそう思った矢先である。

 

ふいに人影が現れたかと思うと、二人の見張りが難なく倒される。

 

「ハヤテさん、ご無事でしたか?」

 

ハヤテの目の前には黒装束の千恵が立っていた。

 

そして、その千恵が手を上げて合図することにより、それぞれの忍び装束を身につけたタツマキとツムジも牢の前に姿を現す。

 

「いや、面目ない」

 

ハヤテは結果的には千恵たち三人に助けられたことで、少し気恥ずかしくなった。

 

やはり、直ぐにでも自力でここから抜け出すべきだったと思いながら‥‥

 

そこへ、ハヤテの目の前に現れたタツマキが

 

「ハヤテ殿、見なされ」

 

と、その場で気を失って倒れている看守二人の首もとを指さす。

 

二人の首もとには小さいながら、明らかな噛み傷があった。

 

「やはり、昨晩の吸血鬼たちと同じか‥‥」

 

『吸血鬼』の影響が、この城内にまで及んでいる明白な証拠である。

 

「カスミは?」

 

とタツマキに尋ねるハヤテ。

 

「カスミは今、一人で備中守様のところへ行っておりましてな‥」

 

気難しい顔のタツマキ。

 

またか、とハヤテは思った。

 

カスミの無鉄砲と単独行動は今にはじまったことではないとはいえ‥

 

恐らくカスミは、阿部備中守の部屋を訪れたところで血車党の罠にかかったのだろう。

 

「すみません‥、私も一緒にいくと言ったんですけど、カスミさんが『一人の方が備中守様も警戒しないはずだから』と強く言うので‥‥」

 

と、横から千恵が申し訳なさそうにいう。

 

それを聞いたハヤテはタツマキとツムジに言った。

 

「千恵さんから昨晩のうちに話を聞いていると思うが、こずえさんがここで人質にとられている。そして、それとは別に、恐らくカスミも今、なんらかの危機に‥‥」

 

そこまで言いかけたところで、千恵が

 

「ハヤテさん、こずえさんのことですけど‥‥」

 

と言いづらそうに切り出す。

 

「千恵さん、どうしたんだ?」

 

と、胸騒ぎをおぼえたハヤテが千恵の方を振り向く。

 

千恵は躊躇いながら

 

「タツマキさん、カスミさん、ツムジさんには昨晩のうちにお話ししましたけど‥‥」

 

しかし、少しの間の後に、キッパリと言った。

 

「昨晩、私がお会いした『こずえさん』は、恐らく、化身忍者です。会った瞬間に、同じ化身忍者である私はその気配を感じました」

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

衝撃を受け、ハヤテは一瞬言葉を失った。

 

千恵がこのようなことで嘘をつくとは考えられないし、見ると、タツマキも、ツムジも、それについては既に了解はしているようだ。

 

千恵の、この発言に対して、少しも驚きを見せていない。

 

気を取り直したハヤテは、千恵に問いかける。

 

「千恵さん、それは本当のことなのか?」

 

「はい」

 

小声で、しかし、しっかりと千恵は返事をする。

 

たとえ、これを言ったことで、私はハヤテさんから嫌われても構わない。

 

それでも、ハヤテさんには、本当のことを知ってほしい!

 

「昨晩のうちは、まだ、私の勘違いということも考えていましたけど、ここに来るまでの城内の様子を見て、ハッキリと確信しました。そのことは、タツマキさん、ツムジさんにも、もう、お伝えしてあります」

 

静かに千恵は断言した。

 

「昨晩、私がお会いした『こずえさん』は化身忍者です。私は、そう確信しました」

 

それを聞いたハヤテの頭の中で、まるで走馬灯のように、幼い頃からのこずえ、そして親友だった山彦小次郎との数多い思い出が一度に甦ってきた。

 

泣き虫だったこずえ、努力家だった小次郎

 

ある時は小次郎と喧嘩したこともあり、こずえが泣きながら止めに入ったこともあった。

 

家族ぐるみで苦楽を共にした時期もあった。

 

そして、紆余曲折のすえ、自分が血車党を相手に戦うこととなったとき

 

血車党の化身忍者として、自分の前に立ちはだかった小次郎

 

そして、その小次郎と、自分との死闘を、命懸けで止めようとしたこずえ

 

小次郎の死の後、彼を弔っていきたいと言ったこずえ

 

恐らく、心の中で、どこかでわかっていた

 

ただ、自分が認めたくなかっただけだ!

 

ハヤテの表情が凄まじい苦渋に満ちたものになっていることに、千恵は気づいた。

 

カスミさんが言っていたのは、この表情に違いない!

 

千恵はハッキリと、それを確信する。

 

が、それは一瞬の事であった。

 

ハヤテはキッパリと断言した。 

 

「今から直ぐにカスミを助けに行く!、すべてはそれからだ」

 

それを見て、千恵、タツマキ、ツムジは顔を見合わせ、そしてニッコリと微笑みながら頷く。

 

それでこそハヤテだ!

 

恐らく、カスミが侵入した阿部備中守の私室、そこで異変が起こっている。

 

なら、目的地はそこだ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「おのれ、妖怪変化!」

 

こずえと、目の前の『吸血鬼』と化した人々に対して、阿部備中守は剣を抜く。

 

とは言え、多勢に無勢。

 

家老の阿部外記を含む、ざっと見て三十人以上の武士を相手に、真剣勝負としても、普通に考えて備中守一人で戦えるものではないだろう。

 

勿論、備中守自身、そんなことはわかっている。

 

彼は、自分の側にいるカスミに声をかけた。

 

「カスミ殿、この場はわし一人で食い止める、その間に逃げられよ!」

 

カスミはさすがに無茶だと思い

 

「備中守様、この場は私も戦います!、持ちこたえていれば、きっとハヤテさんが‥‥」

 

だが、備中守は首を横に振った。

 

「もう一度言う、カスミ殿、この場から逃げられよ。この場はわし一人で食い止める!」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

「[[rb:女子 > おなご]]を全力で守るは男児の本懐、守られるは[[rb:女子 > おなご]]の名誉ぞ」

 

「でも‥‥」

 

私だって『お役目』のために命くらい懸けています

 

そう言おうとするカスミを、備中守は目で制した。

 

そして優しく諭す。

 

「そなたには松丸のことを頼む。家中がこのような有り様では松丸のことが心配じゃ、この場から逃げるのではなく、松丸を助けるために行くのだと思ってくれ!、そして上様に顛末を報告してくれ!」

 

それでもカスミは躊躇った。

 

そんな二人の様子を見て、こずえが冷笑する。

 

「二人とも逃しはしないさ!、ここの人数が全部じゃない、階段も封鎖しているし、今頃は松丸の方にも‥」

 

こずえがそこまで言いかけたところで

 

「吸血鬼!、[[rb:松丸君 > まつまるぎみ]]はこちらだぞ!」

 

という声が高らかに響き渡る。

 

「ハヤテさん!」

 

歓喜に満ちたカスミの声。

 

押し寄せる吸血鬼たちの反対側の襖が開く。

 

そこには若君である松丸と、何人かの奥女中、そして、それを守るようにして囲む、ハヤテ、タツマキ、ツムジ、千恵の四人の姿があった。

 

「生憎だったな、吸血鬼。とっくに[[rb:松丸君 > まつまるぎみ]]は救いだしたぞ!」

 

と、あえて『こずえ』を前にして宣言するハヤテ。

 

牙を生やし、まさに備中守とカスミの生き血を啜らんとする吸血鬼としての本性をハヤテに見られてしまったこずえはワナワナと怒りに震える。

 

もはや、言い逃れなど出来る状態ではない。

 

「おのれ!、ならば、この吸血鬼の大群と戦ってみよ!、こいつらは本来は普通の人間であること忘れるな!」

 

そう言い放った『こずえ』は、自分の傀儡人形として動く吸血鬼たちに号令をかけた。

 

「かかれっ!!」

 

いつの間に人数も増えた吸血鬼の大群が、今度はハヤテたちに、じりっ、じりっ、と迫ってくる。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

が、もはやハヤテは動じない。

 

そして、カスミに声をかけた。

 

「カスミ、『涼風』だ!」

 

「えっ?」

 

とカスミ。

 

「涼風は催眠を解く曲を流すことができる、カスミなら、それを吹けるはずだ!」

 

涼風をハヤテから貰った時に、いくつかの曲を教えてもらった。

 

そのうちのあれだろうか?

 

そのカスミを備中守は庇うようにして、前に立つ。

 

 

備中守に守られながら、カスミは無心に、自分の思う曲を涼風で吹いた。

 

この場に、心が不思議な安心感に包まれる音色が流れる。

 

すると、みるみるうちに吸血鬼と化したはずの人々が、力を失ったかのように、その場に崩れ落ちるように倒れていき、そして眠った。

 

あっという間に、吸血鬼と化したはずの群衆は、その場に眠る人たちに早変わりし、その場に残ったのは『こずえ』だけとなった。

 

「お、おのれ!」

 

歯噛みする『こずえ』。

 

ここでハヤテは彼女に対して声をかける。

 

「こずえさん、もう止めるんだ!、なぜ、貴女のような人が、こんなことをする?」

 

ふいに『こずえ』はクックックッと笑った。

 

「お前たちの出番だ、出ておいで!」

 

眠っている人たちを押し退けるように、血車党の下忍たちが何処からか姿を現す。

 

十人ほどだろうか?

 

「ハヤテ!」

 

もはや、『こずえ』の口調はガラリと変わっている。 

 

そして彼女は、こう宣言した。

 

「山彦こずえ、今の名は血車党化身忍者『血吸いコウモリ』!」

 

そして『こずえ』は、その両手をクロスしたかと思うと、両腕を上に大きくまわす。

 

「化身!、血吸いコウモリ!!」

 

たちまち『こずえ』の姿と、大きな黒い翼を広げ、ウサギのように少し立った感のある黒い耳、子犬を思わせるひだのある鼻を持つコウモリの化物のような姿が入れ替わり、立ち替わりとなり交互に現れたと思うと

 

「キー、キキィィィー!!」

 

まるで地獄から響いてくるような、陰鬱な、しかし甲高い女性の声が聞こえてくる。

 

『こずえ』の姿は外側は漆黒の、しかし内側は血のように赤い翼を持つ、吸血コウモリの姿をかたどった化身忍者の、まるで悪魔のような姿に変貌していた。

 

[かつての愛くるしい外見をしたこずえの姿を知るカスミとツムジは

 

それぞれ、余りにも惨たらしい変貌ぶりを見るのに耐え兼ね、思わず両手で顔を覆った。

 

化身忍者血吸いコウモリの、その姿である。

 

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