変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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最初の衝突、毒蛾くノ一 VS 変身忍者千恵

 

これまでの激動の展開に、うっかり言葉をはさめないまま沈黙していた松丸が、ここで旧知でもあるカスミに問いかける。

 

「カスミ殿、あの化身忍者が構えている特別製の短筒は一体?」

 

事態がただ事でないことは、無論、松丸も理解していた。

 

カスミは答える。

 

「あの木製の短筒の中には、人を発狂させ、殺し合いをさせ、最終的には狂い死に至らしめる悪魔の毒粉が詰まっており、あの者は、それを私たちに向けて発射しようとしているんです」

 

松丸はそれを聞くなり言った。

 

「ならば、ここで手をこまねいているのではなく、我ら全員で飛びかかるべきではないのか?」

 

カスミは首を横に振る。

 

「その瞬間に、あれを発射されてしまったら、どうにもなりません」

 

そのやり取りを見て

 

「イーッ!、ヨーウゥゥー」

 

『化身忍者、毒蛾くノ一』が笑う。

 

「ハハハ、カスミ、よく分かっているようね」

 

そして特別製の木製短筒を構える。

 

「これで終わりさ!」

 

カスミはなぜか、この『化身忍者、毒蛾くノ一』の仕草に既視感を感じた。

 

以前の千恵で見慣れてる?

 

いえ、何かが違ってる‥‥

 

そんなカスミの思いは一瞬だったかもしれない。

 

『化身忍者、毒蛾くノ一』が木製の短筒を構え、『七色の狂い毒粉』を発射しようとした次の瞬間である。

 

千恵が叫んだ。

 

「忍法!、乱れ髪呪縛!!」

 

その言葉が発せられるや否や、千恵の金色に輝く髪の毛が、まるで生き物であるかのように逆立ったかと思うと、それは大きく伸び上がり、そして、目の前の『化身忍者、毒蛾くノ一』に向かって、わさわさと襲いかかっていく。

 

「な、なんなの、これは?」

 

『化身忍者、毒蛾くノ一』は驚く。

 

が、次の瞬間には、千恵の金色の髪の毛は『化身忍者、毒蛾くノ一』の持つ木製の短筒に、まるで生き物であるかのように向かっていき、そして、それを縛り上げるかのようにして巻きつき、その上で、それを奪い取った。

 

そして金色の髪の毛は木製の短筒を縛り上げた状態のまま、スルスルと千恵のもとに戻っていく。

 

千恵は自らの髪の毛を使って奪い取った木製の短筒を手にし、逆に目の前の『化身忍者、毒蛾くノ一』と骸骨丸、そして血車党の下忍たちに向けて、わざとらしく構えて見せる。

 

旧、毒蛾くノ一に、そんな技があるなどという話は、私は聞いていない‥‥

 

歯噛みしながら『化身忍者、毒蛾くノ一』は、傍らの骸骨丸を見る。

 

いや、骸骨丸もこれには驚いていたのだ。

 

「なぜだ!」

 

骸骨丸は目の前の千恵を指差し、叫ぶ。

 

「お前にそんな術があるという話は、この私すら知らなかったぞ!」

 

千恵は「フフフッ」と笑いながら答える。

 

「この技は、私が今は亡き母上から直接伝授されたもので、千恵の人間体の時には元々使えたもの」

 

その上で、骸骨丸をキッ!、と睨み付ける。

 

「ただ、今までは使う機会がなかっただけさ!」

 

それを聞くなり、『化身忍者、毒蛾くノ一』も叫ぶ。

 

「その短筒を向けられたところで、私に『七色の狂い毒粉』は効かないぞ!」

 

千恵もあっさりと答える。

 

「ああ、そうね」

 

そして

 

「タツマキさん!、これを」

 

と言ったかと思うと、次の瞬間には奪い取ったばかりの『七色の狂い毒粉』が詰まった木製の短筒を、背後にいるタツマキに向かって投げる。

 

タツマキは心得たとばかりに、それを素早く受け取った。

 

「その毒粉は火で燃やせば浄化されます、処分してください!」

 

千恵は、その短筒の処理をタツマキにお願いする。

 

タツマキは

 

「承知した!」

 

と大きな声で千恵に答える。

 

「フフフ、さて、毒蛾くノ一さん」

 

千恵は軽く笑いながら、目の前の『化身忍者、毒蛾くノ一』に向けて、大きく振りかぶって剣を構える。

 

「あなたの『剣の腕前』は、どんなものかしらね?、言っておきますけど」

 

そして、こよみがしれに剣を大きく振ってみせる。

 

「私は強いですよ!」

 

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骸骨丸は『形勢不利』と判断した。

 

剣を使っての白兵戦なら、これは素体となる人間の『剣の技量』が大きくものをいう話であって、そのような『無駄な消耗戦』をするメリットは感じられない。

 

どのみち『早川乗っ取り』は、もはや無理な状況でもあり、この場での戦いに固執するより

 

『新たな毒蛾作戦』に向けて動き出した方が得策てあると判断した。

 

「毒蛾くノ一、この場は引き上げるぞ!」

 

骸骨丸は見極めをつけると決断は早い。

 

「イーッ!、ヨーウゥゥー」

 

『化身忍者、毒蛾くノ一』は悔しそうに目の前の千恵を睨み付ける。

 

「『出来損ないの裏切者』!、この次は決着をつけるからね!!」

 

千恵は笑う。

 

「フッ、『出来損ないの裏切者』ねえ」

 

そして言った。

 

「お前たちからそう言ってもらえるなら光栄よ!」

 

が、骸骨丸の方は、そんな千恵の言葉には耳を貸さず、無視をする。

 

「下忍たちは、これより血吸いコウモリから、新たに毒蛾くノ一の指揮下に入る。この場より撤収する。我と毒蛾くノ一のもとに集まれ!」

 

たちまち集まる血車党下忍たち。

 

 

次の瞬間、骸骨丸、『化身忍者、毒蛾くノ一』、そして血車党下忍たちは大きな煙と共に、この場から姿を消した。

 

それを確認した千恵はニッコリと微笑み、そして背後の人たちに向かって振り返る。

 

「皆様、もう大丈夫です」

 

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城の主としての責任感から、阿部備中守が真っ先に返事をした。

 

「貴女は千恵殿と申すのですな、この度は忝ない」

 

備中守は千恵に向かって、素直に礼を言うと頭を下げる。

 

千恵は当惑する。

 

「あの‥、備中守様、私のこの姿が気にならないんですか?」

 

千恵の姿は今までの毒蛾くノ一のものとは多少異なってはいるものの、それでも『人ならざるもの』の姿形であることに違いはない。

 

貴女(あなた)が我らの恩人であることに違いはない」

 

備中守はいささかも躊躇うことなく言った。

 

「恐らくは貴女(あなた)もハヤテ殿と同じ『変身忍者』ではないかと推察する。実は拙者は、ここにいる松丸や、家老の外記などもそうだが、以前、『変身忍者嵐』には助けられましてな」

 

それは恐らく、以前にカスミから話を聞いた『鷹狩りの件』の時の話なのだろうと、すぐ千恵には理解できた。

 

そんな父の様子を見た松丸も

 

「千恵殿、本当にありがとうございます」

 

とお辞儀をした。

 

その場にいた家老の外記など家中の武士たちも、それぞれに千恵に向かって次々とお辞儀をする。

 

「あの‥‥、皆様‥‥」

 

千恵はむしろ困惑していた。

 

ここでタツマキが千恵に目配せする。

 

「そう、千恵殿は血車党のやり方に反発して、きゃつらと手を切り、今は血車党と戦う『変身忍者』の一人」

 

そうだっけ?

 

千恵は少し気恥ずかしくなった。

 

自ら能動的に『血車党の抜け忍』となり、変身忍者となって血車党と戦うハヤテとは異なり

 

任務失敗と、血車党の秘密を喋ろうとしたことで、危うく魔神斎から処刑されそうになったところを間一髪、そのハヤテに救われ、その後、成り行きで同行している自分とは

 

立場も随分違うような気もするのだが‥‥

 

そんな千恵の内心を知ってか知らずか、ツムジが

 

「これで千恵お姉ちゃんも『変身忍者』、皆が認めてるんだから、それでいいじゃん!」

 

と千恵に声をかける。

 

「‥‥‥‥‥‥」

 

そしてタツマキが

 

「それよりもだ!、変身忍者嵐と先ほどの化身忍者が、いずれも戻ってこないところを見ると、恐らくは双方の戦いも、まだ決着はついておらぬ模様、ここは我らも」

 

そう言って、先に変身忍者嵐と血吸いコウモリが向かった山の方を指差し

 

「急ぎ、あそこに向かった方がよい。千恵殿も、それでよろしいかな?」

 

と千恵に、あらためて問いかける。

 

これについては千恵に迷いはなかった。

 

「はいっ!」

 

カスミが少し険しい表情をする。

 

「恐らく、さっきの骸骨丸の下忍たちに対する言い方から見て、血車党はこずえさんを切り捨てるつもりだと思います」

 

その上で千恵の目を見る。

 

「だから私たちはこずえさんを助けるためにも急がないといけないと思いますけど」

 

そこで言葉を切ると

 

「千恵さんはそれでいいの?」

 

と、カスミは千恵に問いかけた。

 

千恵はすぐに理解した。

 

カスミさんは、前のあざみの時のことを念頭に言っているのだな、と。

 

『こずえ』が自分に敵意を持っていることを、勿論、千恵は知っている。

 

が、それでも千恵に迷いはなかった。

 

「はい、こずえさんとならわかり会うことはできると思います」

 

カスミは大きく頷く。

 

タツマキがこの場を代表して備中守に向かって言った。

 

「備中守様、この場はお願いいたします。我らはハヤテ殿のところへ急ぎ駆けつけたく思いますので!」

 

備中守はタツマキに向かって大きく頷く。

 

「そのようなことは城主のつとめとして当然のこと!、本来なら我らが解決すべき問題。タツマキ殿、早く行きなされ!」

 

「備中守様、忝ない!!」

 

タツマキはそう答えると、カスミ、ツムジと共に千恵のところへ集まった。

 

「千恵殿、大丈夫ですかな?」

 

「はい!」

 

と千恵。

 

「あの山は昨晩、私がハヤテさん、こずえさんのお二人とお会いした時と同じ山。場所は多少違っていても行くことは出来ます!」

 

そして、それに対する返事を待たずに印を結んだ。

 

「忍法、転移!!」

 

次の瞬間には

 

千恵、タツマキ、カスミ、ツムジの四人の姿は煙と共に、その場から姿を消した。

 

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