変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来 作:shpfive03
変身忍者嵐と血吸いコウモリは、それぞれに早川城の向かい側にある山に降り立った。
ここは、先にハヤテとこずえ、そして千恵が早川の城下町より転移し、ハヤブサオーと再会した丘の上とも同じ場所である。
降り立つなり、血吸いコウモリは
「嵐!、ここで決着をつけるぞ!!、羽根隠れの術などで逃げるな!」
と、その漆黒の翼を大きく広げ、大きな声でいった。
嵐は、かつての小次郎、いや化身忍者死人ふくろうとの最初の対決の時、不利と判断して『羽根隠れの術』を使って一時退却したことを思い出した。
その後、『吸血鬼たちに襲われていたこずえ』を救い出すつもりでこの術を使ったが
その吸血鬼たちを操っていたのは、当の『こずえ』だった‥
あの時、『こずえ』は内心で私のことをどう思っていたのだろう‥‥
嵐は
「私は逃げも隠れもしない!!!」
と堂々と宣言する。
そして剣を持ち、立ち向かおうとする。
血吸いコウモリは、それを見て
「よく言った!!」
と言うなり、その両手に持った刀をクロスさせる。
「血車忍法、こずえの呪い笛!!」
いきなり
「キキィィィー!!!!!!」
という高い音による攻撃。
「うわっ!」
いきなりの『呪い笛』による音波攻撃に、嵐は素早く避け、直撃はまぬがれたものの、その破壊力に思わず吹き飛ばされる。
周囲にあった大木がバキバキと大きな音を立てながら、次々と倒れていく。
血吸いコウモリは攻撃の手を緩めない。
「キキィィィー!!!!!!」
さしもの嵐も、この続けざまの音波攻撃には手も足も出ない。
直撃を避けるため、身をかわし続けるのが精一杯であった。
血吸いコウモリは自分を客観視していた。
彼女の素体である『こずえ』は、元々忍法がお世辞にも得意とは言えず、反射神経も鈍かった。
その分、女性らしい繊細さと細やかさは十分以上に持ち合わせていたのだが‥‥
化身忍者となり、以前と比べて力は大幅に向上したといっても、嵐とまともに斬り合いなどしたら、絶対に勝てないことは、よく分かっている。
嵐が以前対戦した血車党の女性化身忍者である毒蛾くノ一(千恵)や毒蛇くノ一(あざみ)などの場合には、なまじ本人たちも剣の技量に自信があった分、結果的に嵐の方から直接的な斬り合いに持ち込めた部分もあるが
血吸いコウモリは、そのようなことをするつもりはなかった。
斬り合いをすれば、絶対に嵐には勝てない。
あくまでも『呪い笛』攻撃で、嵐を徹底的に追い詰め、弱らせ、十分に弱らせてから勝負をつければいい。
更に彼女にはもう一つの計算もあった。
一方で嵐も苦渋の決断をしようとしていた。
この『呪い笛』による音波攻撃に対抗するには、やはり「影うつし」をもって、その音を跳ね返すしかない。
しかし、跳ね返された音波攻撃がこずえを直撃したら‥
ということも考えないわけではなかったが、まずはやってみるしかない。
嵐は構えた。
「秘剣!影うつし!」
影うつしは言わずと知れた嵐の必殺技であり、愛刀「速風(はやかぜ)」の刀身に敵の影を映し、間合いをはかって敵に光を浴びせ、タイミングを狂わせて斬る技である。
刀身に映せるのは「敵の影」だけではない。
かつて、化身忍者死人ふくろうの「音波攻撃」をも、その刀身に反射させ、実際に跳ね返したことがある。
が、「影うつし」の体勢に入った嵐を見て、血吸いコウモリはニヤリと笑った.
まさに私の計算通り!
血吸いコウモリはあらためてその両手に持った刀をクロスさせ
「血車忍法、こずえの呪い笛!!」
と叫ぶ。
またまた
「キキィィィー!!!!!!」
という高い音による音波攻撃。
嵐は、速風の刀身を血吸いコウモリに向けて、これに応じる。
血吸いコウモリから発せられた音波攻撃は、たちまち影うつしによって跳ね返され、その光と共に血吸いコウモリに向けて襲いかかった。
が、血吸いコウモリは動じない。
そして、両手の剣をいきなり投げ捨てると、その漆黒の翼を大きく広げ、羽ばたいた。
血吸いコウモリは叫ぶ。
「血車忍法、『
なんと跳ね返ってきたはずの音波攻撃と、影うつしにより発せられた光攻撃は、血吸いコウモリの翼による羽ばたきで再び跳ね返され、それは嵐に向かって襲いかかっていったのだ。
今度こそ、音波と光の攻撃が嵐を正面から直撃する。
「どうだ嵐!、自分自身が影うつしを、それも呪い笛と共にくらう気持ちは!」
血吸いコウモリが勝ち誇る。
「我が兄、小次郎と同じ苦痛を、お前自身で味わうがいい!!」
さすがの嵐も、これは堪らない。
「うわあぁぁぁぁ!!!」
嵐は文字通り、全身を吹っ飛ばされ、そのままかなり離れていたはずの崖まで凄い勢いで飛ばされていき、そして、そのまま崖から転落していく。
いくら低い山とは言え、この高さから真っ逆さまに転落すれば、さすがの嵐も、少なくとも無事では済まないはずである。
「勝った、私は嵐に勝った‥‥」
そう呟く血吸いコウモリ。
しかし、その心の中は空洞でも空いたかのように虚無感に包まれている。
ちょうど、その時
千恵、タツマキ、カスミ、ツムジの四人がその場に現れた。
それを見て血吸いコウモリはどこか寂しげに、しかし、ニヤリと笑う。
「伊賀忍の皆さん、それに『裏切者』、来ましたね!」
ちょうど崖から転落していく嵐を見た四人はショックを受けていた。
あの不敗を誇る変身忍者嵐が、目の前にいる血車党の化身忍者に敗れた?
特に千恵は崖から転落していく嵐を見て
思わず亡き弟、大助の最期を思い出さざるを得なかった。
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変身忍者嵐は崖から転落していった。
その崖の下に向かって
「嵐どの!!」
「ハヤテさーん!!!」
「嵐さーんっ!!」
タツマキ、カスミ、ツムジの三人が、そこから転落した変身忍者嵐の名を、それぞれの呼び方で、大声で叫ぶ。
三人のその様子を見た血吸いコウモリが笑う。
「ハハハ、いくら変身忍者嵐とて、自らの影うつしと、私の呪い笛を同時にくらった上で、ここから転落すれば、少なくとも無事ではいられないだろうさ」
そして両手に持った二本の剣を、あらためて構える。
「ここで一気にお前らも片付けてやるよ!」
その血吸いコウモリに対して
「待ちなさい!、お前の相手は、この私です」
と叫んだ者がいる。
今までもなく声の主は『蛾の変身忍者である千恵』であった。
千恵だとて、崖から転落していった嵐のことが心配でないはずがない。
いや、むしろ、今すぐ飛んでいって嵐を探しに行き、その無事を一刻でも早く確認したいくらいなのだ。
が、ここでは、今、この場で化身忍者である血吸いコウモリと、ともかくも戦えるのは自分しかいないという使命感の方がまさった。
タツマキ、カスミ、そしてツムジを、この化身忍者の魔の手から守れるのは自分しかいない!
千恵は剣を構える。
「やる気だね、裏切者!」
血吸いコウモリも、千恵と向かい合った。
が、意外なことに、まずタツマキが千恵に対して声をかける。
「千恵殿、お気持ちは嬉しいが、この場はわしら三人に任せてもらえぬかな?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
千恵にとっては意外なタツマキの発言。
そして、そのすぐ後にカスミが言った。
「千恵さん、ハヤテさんの無事の確認を急いでお願いします!、私たちは空を飛べません。この場でそれが出来るのは千恵さんだけなんです!!」
千恵は首を振る。
「でも‥‥」
タツマキ、カスミ、ツムジの三人で、変身忍者嵐を崖から落とすほどの化身忍者と戦えるのだろうか?
が、そこでツムジが言った。
「千恵お姉ちゃん!、嵐さんは大ケガをしているかもしれないし、今すぐの助けを必要としているかもしれないんだよ!、ここは親父、カスミ姉ちゃんと、おいらの三人が頑張って支えるから。とにかく、早く、嵐さんの力になってあげてよ!!」
そのツムジの真摯な表情を見て、千恵は決心した。
「わかりました!、嵐さんの無事を確認したら、すぐ戻ってきます。それまで頑張ってください!!」
千恵は羽を広げ、フワリと宙に浮く。
「逃がしやしないよ、裏切者!!」
血吸いコウモリも、その漆黒の翼を広げ、飛び立とうとした。
が、そこで意外なことが起こった。
ツムジが勢いよくダッシュをかけると、飛び立とうとした血吸いコウモリの足に向かって飛びかかり、それに全身でしがみついたのだ。
「くそ!、離せ!、ツムジめ!!」
血吸いコウモリの激しい抵抗にもかかわらず、ツムジはその足にしがみつき、離れようとしない。
「くそ!、血車忍法こずえの呪い笛、うわっ!!」
呪い笛を放とうとする血吸いコウモリの足を、ツムジが大きく揺らした。
これでは呪い笛を放つのも難しい。
ツムジは血吸いコウモリの足に必死でしがみつきながら叫んだ。
「千恵お姉ちゃん!、早く!!」
千恵はツムジのことが心配で仕方がないのだが、今はこのツムジの気持ちに応えないといけないと、心を鬼にしたつもりになり、嵐が転落していった崖の下方向に向かって勢いよく飛びたっていった。
一刻の時間が惜しかった。
一方、血吸いコウモリの足に武者ぶりついたツムジの頑張りを見て、タツマキとカスミも飛びかかろうとする。
もしかしたら血吸いコウモリを取り押さえることができるかもしれない。
が、やはり血吸いコウモリは、そこまで甘くはなかった。
いきなり
「キキィィィー!!!!!!」
という悲鳴のような高い叫び声をあげる。
照準を合わせることができない高い声が響き渡り、思わずタツマキ、カスミも耳を押さえながら、その場に伏せるしかなかった。
当然、血吸いコウモリの足を捕まえているツムジもこれには堪らず、思わず手を緩めてしまう。
「邪魔だ、どけっ!!」
血吸いコウモリはツムジを振りほどくと、その体に目一杯の蹴りを入れる。
ツムジは吹っ飛ばされた!
化身忍者からの強烈な蹴りを喰らわされたツムジはタツマキ、カスミのそばまで吹っ飛ばされると、その場にドカッ!、と倒れた。
「ツムジっ!!」
カスミが悲鳴をあげる。
「ツムジっ! おいっ、しっかりしろ!!」
タツマキが目の前に吹っ飛ばされてきたツムジを抱き起こす。
ツムジは
「親父‥‥、カスミ姉ちゃん‥‥、、」
か細げな声でいうと、そこで意識を失った。