変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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カスミと血吸いコウモリ、そして変身忍者嵐は死なず

タツマキとカスミは目の前の血吸いコウモリと向き合うと、キッと睨みつける。

 

そして、ツムジを介抱していたタツマキは、気を失ったままのツムジの体を、傍にいたカスミに委ねる。

 

そしてタツマキはスックと立ち上がった。

 

「カスミ、ツムジを頼む」

 

カスミは涙を流しながら、コクッと頷くと、早速ツムジの手当てをはじめる。

 

こんな時でも、カスミのツムジへの手当てはテキパキと、手際よく進められている。

 

 

タツマキは大きな声で血吸いコウモリに向かって言った。

 

「化身忍者!、この名張のタツマキが相手をさせてもらう!」

 

そして剣を構える。

 

血吸いコウモリは笑った。

 

「クククッ、タツマキよ、人の身で変身忍者嵐すら勝つことができなかった、化身忍者である、この私と戦うというのかい?」

 

タツマキは動じない。

 

「勿論だ、何ならこちらから行くぞ!」

 

 

が、血吸いコウモリは

 

「私は斬り合いをするつもりはない」

 

と剣を構え、血吸いコウモリに斬りかかろうとするタツマキに向かって、両手に持った剣をクロスさせる。

 

そしてタツマキに向かって言い放つ。

 

「タツマキ!、お前が斬りかかってくるなら、私はすぐに『呪い笛』を使わせてもらうまで。お前がそれを避ければ、『呪い笛』は、お前の後ろにいるカスミとツムジを直撃するだけの話だぞ!」

 

タツマキは、血吸いコウモリにうっかり斬りかかることが出来なくなったことを自覚した。

 

「ううむ‥‥‥‥、、」

 

血吸いコウモリは、動くに動けなくなったタツマキのすぐ後ろで一生懸命ツムジの手当てをしているカスミに対して声をかけた。

 

「カスミ!」

 

カスミは血吸いコウモリのその声を無視する。

 

が、血吸いコウモリは、さらに言った。

 

「血車党に来い!、私は裏切者のハヤテと毒蛾くノ一については殺せと骸骨丸様から言われているが、お前たち三人については、そのようなことは言われていない。そして、お前については血車党まで連れてくるようにいわれている」

 

カスミは、なおも血吸いコウモリのいうことをを無視して、ツムジの手当てに専念する。

 

「お前たち三人が血車党に来てくれるなら、私がお前だけではなく、タツマキとツムジの助命も約束する。どうだ?」

 

カスミは煩いと思いながら、それについては返事をした。

 

「つい、この間、骸骨丸から同じようなお誘いを受けたけど、お断りさせていただきました。私、化身忍者になりたくなんかないから!」

 

これには血吸いコウモリもカチンと来て、怒りに声を震わせる。

 

「カスミ!、お前!!」

 

だが、カスミは笑って見せる。

 

「フフッ、でも、変身忍者だったら、なってみたい気持ちもありますけどね」

 

カスミは血吸いコウモリを、わざと挑発することにした。

 

ハヤテさんと千恵さんが戻ってくるまで『時間稼ぎ』が出来るかもしれないと

 

タツマキも、そんな娘の意図に気づいたのか、あくまでも血吸いコウモリとの対峙の姿勢は崩さぬまま、様子見に入った。

 

そして、血吸いコウモリは、カスミの挑発に乗ってしまった。

 

「どこが違うんだ!、ハヤテも、あの裏切者の女も、一皮向けば『人ならざる化物』なのは同じじゃないか!!、ましてや、あの裏切者の女は、私と同じ血車党によって作られた化身忍者だぞ!」

 

カスミは、どこまでもツムジの手当てを休めることなく、しかし、キッパリと答える。

 

「変身忍者は『人の心』を持っています。化身忍者、少なくとも、こずえさんのお兄さまだった小次郎さんは『人の心』を完全に失い、本物の『化物』になっていました。その場にいた私はそれを実際に見ています!」

 

「言うな!」

 

血吸いコウモリは怒気を強く発するが、内心では動揺していた。

 

あの時の小次郎は、実の妹であるこずえにすら冷酷そのものではなかったのか?

 

殺そうとさえした。

 

カスミは更に

 

「ハヤテさんは勿論そうですけど、千恵さんも『人の心』をちゃんと持っています。私は千恵さんとこの数日間一緒に旅をし、寝食を共にしてきました」

 

と言い、その上で

 

「私は一人の『人』として、千恵さんのことが好きです。そして千恵さんには『一人の人として』幸せになってほしいと、心から思っています。だから私にとって」

 

カスミは、ここであえて血吸いコウモリの目を真っ直ぐに見る。

 

「千恵さんは『化身忍者』ではありません!」

 

血吸いコウモリは両手に持った剣をあらためてクロスさせる、

 

「言いたいことはそれだけか!!」

 

カスミは動じない。

 

そして皮肉っぽく言い返す。

 

「えっ?、私のことは血車党まで連れて帰るよう、骸骨丸から命令されているんじゃなかったんですか?」

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

血吸いコウモリは押し黙る。

 

カスミはここで、あえて

 

「こずえさん!」

 

と、あえて血吸いコウモリのことを、そう呼んだ。

 

「私はこずえさんは、その姿になっても、まだ『人の心』を失っていないと思っています。いえ、あの時の小次郎さんに比べたら、十分すぎるくらい『人の心』を持っていますし、だから、こうやって話も出来ます」

 

カスミは、血吸いコウモリに対して、あえて呼びかける。

 

「こずえさん、やり直しましょうよ、まだ後戻りすることは出来ます。ここに来る前に千恵さんにこずえさんのことを聞きました」

 

血吸いコウモリを見るカスミの瞳は優しげなものに変わる。

 

「千恵さんは、こずえさんとならわかり会うことが出来ると言っていましたよ!」

 

血吸いコウモリは激しく動揺する。

 

「うるさい!!、黙れ!、黙れ!、今さら後戻りなど出来るものか!!!」

 

カスミは手を緩めない。

 

「こずえさんは、本当はハヤテさんのことが大好きなんでしょ?、私もハヤテさんのことは大好きだから、それがわかります」

 

図星を挿された血吸いコウモリは、しかし、それに反発する。

 

「ええい!!、煩いカスミめ!、ハヤテは我が兄、小次郎の仇、それに違いはない。そしてハヤテが、私の兄を躊躇なく斬り捨てておきながら、あの裏切者の女を助けたのも事実だろうが!」

 

そこで血吸いコウモリは冷笑して見せる。

 

「フッ、あの女、一体ハヤテに対して、どのような命乞いをしたのやら?」

 

カスミはそれに対して淡々と答える。

 

「私の聞いている話では、嵐の二段斬りに敗れた千恵さんは、嵐に向かって何回も『殺せ!、殺せ!』と叫び続けていたそうですよ。千恵さんを、あえて斬らなかったのは」

 

そこでカスミは一旦言葉を切り、あえてだめ押しをするように血吸いコウモリに向かって言いきった。

 

「嵐、いえ、ハヤテさんの意思です!」

 

ここまでが血吸いコウモリにとっての限界だった。

 

 

「言うな!!!、キー、キキィィィー!!」

 

そして

 

「構うものか、お前ら全員、私の呪い笛攻撃を受けるがいい!」

 

と言い、血吸いコウモリは両手の剣をクロスさせる。

 

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血吸いコウモリの『呪い笛』による音波攻撃を、いったんは秘剣影うつしにより跳ね返したものの、それを血吸いコウモリの技である『木霊(こだま)返し』によって再度跳ね返され

 

音波攻撃と、影うつしによる光攻撃を同時に受けた変身忍者嵐は、そのまま崖から転落していったが、咄嗟に忍法空駆けの術を使い、なんとか崖下に軟着陸することに成功した。

 

然り、変身忍者嵐もまた空を飛べるのである。

 

勿論、いくら嵐でも、そのまま崖下に普通に転落していたら無事ではすまなかったろう。

 

とは言うものの、さすがに『こずえの呪い笛』を受けたことによるダメージは大きく、軟着陸に成功したことによる気の緩みもあったのか、そのまま立ちくらみをおぼえると、変身忍者嵐の姿からハヤテの姿に戻ってしまい、そして、その場に倒れてしまった。

 

ちょうど、その時に崖上から翅を広げた千恵が舞い降りてきたのだ。

 

 

 

千恵はフワリと着地すると、すぐに倒れているハヤテを抱き起こす。

 

「ハヤテさん!!」

 

ハヤテはすぐに気がつき、自分を抱きかかえている千恵の姿が以前のものと変わっていることに気づく。

 

やはり大きな違いは、顔の下半分にそれまであった毒蛾の特徴をあらわす細長く伸びた口吻がなくなり、変身前の千恵と同じ、人間的な鼻、口があり、ハッキリと表情も分かるようになっているところだろう。

 

ハヤテはおそるおそる聞いた。

 

「千恵さん‥‥、なのか?」

 

千恵はハヤテの返事を聞き、彼が無事であることを知った。

 

そのまま、ハヤテを強く抱き締める。

 

「よかったあー!!!」

 

千恵は思わず泣きじゃくっていた。

 

以前の毒蛾くノ一の時とは異なり、今の千恵の表情は豊かであり、喜怒哀楽もハッキリしている。

 

両目の青色の複眼から涙が滲んでいる。

 

「やっぱり千恵さんなんだね」

 

納得したようにハヤテが言った。

 

「タツマキたちは?」

 

千恵はハッとしたように答える。

 

「タツマキさん、カスミさん、ツムジさんの三人で、あの化身忍者と戦っています。ハヤテさんの無事が確認できた今、私もすぐに戻って一緒に戦うつもりです!」

 

そうだ、すぐに戻らないといけない!

 

千恵は、血吸いコウモリの足に懸命にしがみついていたツムジのことを思い、いてもたってもいられなくなった。

 

だが、それを聞いたハヤテは苦痛を堪えながら立ち上がった。

 

「私にやらせてくれ!」

 

それに対して千恵は焦る気持ちを抑えながらも、率直に言った。

 

「ハヤテさん、速風がなくて変身できるんですか?」

 

ハヤテはハッとした。

 

どうやら崖から落ちた時にどこかに落としてしまったらしい。

 

速風は今、ハヤテの手元にはなかった。

 

ハヤテが『変身忍者嵐』に変身する方法は、背中に差した速風の鍔を鳴らし、その特殊な振動により脳神経の活動を強引に促進し、自らの体の細胞配列を変えるというものであり、背中の速風なしにハヤテが変身出来るのだろうか?

 

という疑問は千恵ならずとも感じるところであろう。

 

が、ハヤテの答えは明快であった。

 

「やったことはないが、出来るはずだ!」

 

精神力さえ集中させれば、速風がなくとも変身は出来るはず!

 

そう思ったハヤテは両手をクロスさせ、右手を上に挙げる。

 

「吹けよ嵐、嵐、嵐」

 

そして強く念じた。

 

「変身!」

 

たちまちハヤテの周囲を大量の羽毛が囲んだかと思うと、次の瞬間には「変身忍者嵐」が、その場に出現した。

 

「千恵さん、私は最後まで戦う!、それは私のこずえさんに対する果たさなければならない責任なんだ!」

 

 

嵐に変身したところで、肉体的に大きなダメージを受けている現実が変わるわけではない。

 

それでも変身忍者嵐として、逃げるわけにはいかない。

 

そして変身した嵐の手にはいつのまにか速風が戻って来ている。

 

たとえ変身前に敵に折られても、変身すると再生する速風。

 

自ら、嵐のところへ戻ってきたのだろうか?

 

 

「千恵さん、行くぞ!」

 

嵐は大きく跳躍する。

 

千恵も深く頷くと、フワリと宙に舞い上がった。

 

目指すは崖上、タツマキたちと戦う血吸いコウモリとの再度の対決である。

 

 

変身忍者嵐は、このくらいのことでは死なない。

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