変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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血車党、血の掟

「血車忍法、こずえの呪い笛!」

 

血吸いコウモリが両手の剣をクロスさせ、今、まさに『呪い笛』を放とうとした、その時である。

 

「こずえさん!、私ならここにいるぞ!、勝負は、まだ、ついていない!!」

 

力強い嵐の声。

 

そして崖下から『変身忍者嵐』と、『変身忍者千恵』の二人が宙に舞いながら姿を現した。

 

早速千恵は意識を失って倒れ、カスミの手当てを受けているツムジの姿を目にする。

 

「ツムジさん!!」

 

千恵は思わず叫んだ。

 

そして

 

「お前、よくもツムジさんを!!」

 

と目の前の血吸いコウモリを強い敵意を持って睨み付ける。

 

「キー、キキィィィー!」

 

血吸いコウモリは笑った。

 

「裏切者同士、一人じゃ叶わないから、今度は二人ががりかい?、大したもんだねえ!」

 

それを聞き

 

「何をお!!」

 

千恵は激しい怒りを感じ、そのまま血吸いコウモリを攻撃しようと身構える。

 

が、その千恵を嵐が手で制した。

 

「千恵さん、気持ちはわかるが、ここは最後まで私にやらせてくれ!、貴女はツムジたちを頼む」

 

「でも!!」

 

納得できない千恵に向かって、地上からカスミが大きな声で伝える。

 

「千恵さん!、ツムジは大丈夫です。命に別状ありません!」

 

さらにカスミは

 

「ここは嵐、いえハヤテさんの納得のいくようにしてあげてください!、ツムジも、それを喜ぶはずです」

 

と千恵に言った。

 

千恵は納得したわけではないが、とにかく気持ちを静めることにした。

 

「嵐さん、今はお願いします」

 

そう言って千恵はカスミとツムジのもとへ舞い降りる。

 

そして、タツマキと共に、その前に立った。

 

血吸いコウモリはそれを見届けると

 

「嵐、お望み通り決着をつけてやる!」

 

と嵐の方に向き直った。

 

「望むところだ!」

 

嵐もまた、地上に降り立ち、血吸いコウモリと対峙する。

 

最後の一騎討ちである。

 

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血吸いコウモリはいきなり嵐に向かって

 

「血車忍法こずえの呪い笛!」

 

と両手の剣をクロスさせて得意の音波攻撃をはじめる。

 

「キキィィィー!!!!!!」

 

だが嵐は動じない。

 

「私の必殺技は『影うつし』だけではない!」

 

言うなり嵐は

 

「嵐旋風斬り!!」

 

と叫ぶと、速風を縦横無尽に旋風回転させる。

 

 

そして

 

「たあぁぁぁぁー!!」

 

と飛び上がる。

 

血吸いコウモリから発生される音波攻撃も、この嵐の旋風回転により跳ね返されてしまうのだ。

 

光により音波攻撃を跳ね返す「影うつし」とは異なり、嵐旋風斬りの場合には嵐自身が音波を跳ね返しつつ、一気に相手を斬りつけるわけだから、元々剣の実力には難点のある血吸いコウモリには防ぎようがない。

 

正確に言えば、直接音波を跳ね返す「影うつし」の場合とは異なり

 

旋風斬りの場合には嵐自身の肉体にも音波攻撃の威力に対するダメージがないわけではない。

 

が、嵐の精神力はそれを上回った。

 

そして嵐は急降下しながら

 

「こずえさん、ごめん!!」

 

と叫んだと思うと

 

「嵐旋風落としっ!!!」

 

と一気に血吸いコウモリの腕を斬りつける。

 

「キー!、キー!、キキィィィー!」

 

悲鳴をあげ、後ろにつんのめって倒れる血吸いコウモリ。

 

嵐は速風を血吸いコウモリに向ける。

 

「これで、もう両手に剣を持つことは出来ない!、それに、もし盲目滅法に音波を出そうとしても、今なら私の剣の方が早い」

 

血吸いコウモリは勝負がついたことを悟り、そして絶望した。

 

「なら、一思いに私を殺せ!!」

 

が、嵐は血吸いコウモリの、その叫び声を聞いた上で、あえてパチリと剣を鞘におさめた。

 

これは『貴女を斬らない』という意思表示である。

 

それを見た千恵は『毒蛾くノ一』だった時の自分が、嵐の二段斬りに敗れ、「殺せ!」と絶叫していた時のことを思い出していた。

 

が、血吸いコウモリの反応は少し違った。

 

「なら、自ら決着をつけるまで!」

 

といい、短刀を持つと、自らの喉元にそれを突き刺そうとする。

 

嵐はそれを止めようとしたが

 

それより早く、千恵は反射的に『伊賀の手裏剣』を投げた。

 

手裏剣は見事に血吸いコウモリが手に持った短刀を弾き飛ばす。

 

自害の方法を封じられた血吸いコウモリは、思わず千恵の方を振り返った。

 

「なぜ、お前は私が自ら死のうとするのを止める?」

 

千恵は答えた。

 

「今の貴女は、嵐に助けられる前の私とそっくりだからです」

 

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血吸いコウモリは自らの命を絶つつもりで使おうとした短剣を千恵の放った手裏剣により弾き飛ばされたことで動揺していた。

 

「お前のことなんかどうでもいい!」

 

血吸いコウモリの声は、ほとんど悲鳴のようだった。

 

が、千恵は今や落ち着きはらっていた。

 

「私は以前、ずっと、いつ死んでもいいと思って戦ってきました。けれども」

 

そう言って千恵は、血吸いコウモリの目を真っ直ぐに見つめる。

 

「今は生きるために戦っています。だから、私は自分から、自分の生命を絶つつもりはありません」

 

そして千恵はキッパリと言い切った。

 

「命を粗末にするのは血車党のやることです。そう思ったから、私はあなたを止めました」

 

それを聞き、理解できないと言わんばかりに

 

「キー、キキィィィー!!」

 

血吸いコウモリは叫びなから、激しく首を振る。

 

そこへ嵐が

 

「こずえさん」

 

と前置きし

 

「私は人ではないもの、もはや人ではなくなったものであるなら、何の躊躇いもなく斬れる。けれども、こずえさん、貴女(あなた)は今も『こずえさんの心』を持ち続けている。そのような女の子(・・・)を、私は斬り殺すことは、どうしても出来なかった!!」

 

と『彼女』に優しく声をかける。

 

血吸いコウモリは、もはや理性を保つことが出来ないまま、混乱していた。

 

そして

 

「キー、キイイー、キキィィィー!!」

 

という叫び声をあげると、もはや『化身』の状態を維持することが出来なくなり

 

緑屋で働いていた時のままの、着物を着たこずえの姿に戻ってしまった。

 

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嵐は、あらためて、こずえの姿に戻った彼女に声をかける。

 

「こずえさん、これからは私たちと一緒に行こう!、血車党なんかとは完全に手を切るんだ!」

 

こずえは迷ったように首を振る。

 

が、嵐は

 

「私も、ここにいる千恵さんも『人ならざるもの』に変身することについて、こずえさんと少しも違いはない!」

 

と言い切り

 

「どんな姿でもいい!、こずえさんがこずえさんらしくいてくれれば、それでいいんだ!」

 

と、彼女を励まし続ける。

 

そして嵐は、あえてハヤテの姿に戻った。

 

血吸いコウモリ、いや、こずえは、そのハヤテの姿をじっと見つめる。

 

その目には涙が溢れていた。

 

「ハヤテさん‥‥、わたし‥‥、、、」

 

 

一方で千恵は、二人の様子を注視しながらも、密かに地割れ攻撃を警戒していた。

 

魔神斎が、いつ、自分の時のように、こずえを裏切り者として地割れに落とし、「地獄の業火」で焼き尽くそうとするか知れたものではない。

 

だが、地割れの方を警戒していたのは間違いだったということを直ぐに思い知らされた。

 

ピュッ!

 

鋭い音が、突然聞こえてきたかと思うと、いきなり黄金色に輝く矢がその場に出現し、その矢はこずえの胸を貫いたのだ。

 

こずえの胸から飛び散る鮮血!

 

そして、黄金の矢に胸を貫かれたこずえは、その場に崩れ落ちるようにして倒れる。

 

そこへ

 

「血の掟だ!、血吸いコウモリ!!」

 

と、地の底から鳴り響くような陰鬱な魔神斎の声が聞こえてきた。

 

千恵はしまった、と歯軋りをする。

 

血車党、魔神斎の制裁方法は「地割れ攻撃」だけではなかったのだ。

 

直ぐに、それまでツムジを介抱していたカスミが飛んできて、こずえを抱き起こし、治療を試みたが、悔しそうに首を横に振る。

 

この場でただ一人医術の心得のあるカスミから見ても、もう、こずえは助からない、ということだ。

 

ハヤテは、この魔神斎の声に対して、これ以上ないほどの怒りを感じた。

 

「出でこーいっっっ!!!、魔神斎っっっっ!!!」 

 

それに対する魔神斎の声は冷静そのものだった。 

 

「ハッハッハッ」

 

魔神斎は高笑いすると

 

「無駄だよ、ハヤテ。わしは今、ここから遥かに離れた場所にいる。この『黄金の矢』は、異なる次元空間を通じて、その遥かに離れた場所から放ったもの、お前がいくらわしを探したところで、はじめから、この周囲にはいないのだから見つけられるはずもない」

 

と、まるでハヤテを嘲笑うかのように言った。

 

「貴様っっ!!、よくも、こずえさんを!」

 

怒りに震えるハヤテの声。

 

「ハハハッ、教えてやるが、そういうのを『ごまめの歯軋り』というのさ。それでは、また会おう、ハヤテ、それに伊賀忍たち、そして『出来損ないの裏切者』!」

 

そう言ったきり、魔神斎の声はその場から聞こえなくなった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ハヤテは、介抱のためにこずえを抱き起こしているカスミの肩に手をかけると、カスミに向かって言った。 

 

「せめて、ここからは私にこずえさんを看取らせてくれ‥‥」 

 

カスミは目にいっぱいの涙を浮かべながら、ハヤテに向かって、唇を噛み締めながらコクッと頷く。

 

千恵も、タツマキも、ただ、黙って見ていることしか出来ない。

 

二人はカスミからツムジの介抱を引き継いだような形になっていたが、そのツムジも、まだ気を失ったままだ。

 

ハヤテはゆっくりとこずえを抱き起こす。

 

「ハ、ヤ、テ、さ、ん、‥‥」

 

苦しそうにしているこずえが、息も絶え絶えながら、ハヤテに声をかけた。

 

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嵐は変身を解き、ハヤテの姿に戻っている。

 

そして

 

「こずえさん‥‥、私の考えが足りないばかりに、、、」

 

瀕死のこずえを、ハヤテは思わずギュッと抱き締める。

 

滅多に涙を見せないハヤテの目にも今は涙が浮かんでいた。

 

「すまない!!!」

 

こずえは、そんなハヤテを見ながらニッコリと微笑む。

 

「いいの‥‥、、わたし‥‥、今、こうやってハヤテさんに‥‥、抱いてもらえるだけでも‥‥」

 

魔神斎により放たれた黄金の矢は、こずえの胸を貫いており、普通なら即死でおかしくない。

 

彼女の何かを伝えたいという意思の力もあるにせよ、皮肉にも、今、こずえの命の灯が尽きずにいるのは、彼女が化身忍者となったことによる『生命力』のおかげでもあったのだ。

 

しかし、それも長くは持ちそうにない。

 

が、ハヤテはそれを認めたくなかった。

 

「こずえさん!、まだ諦めちゃだめだ。生きる気持ちさえあれば、きっと助かる!!」

 

「ハヤテさんから‥‥貰った‥‥、この鈴‥‥」

 

こずえは懐から、今朝ハヤテに貰ったばかりの鈴を取り出した。

 

カスミの持つ笛『涼風』の能力には遠く及ばないにしろ、独特の音色を鳴らすことが出来る、この鈴は、近い場所であれば、それを鳴らしたものの危機をハヤテに伝えることは出来た。

 

それでも、気休めに近いようなものではあるのだが‥‥

 

続いてこずえは、苦しそうにしながらも、自らの頭から髪飾りを外した。

 

こずえの髪がバサッと乱れる。

 

「ハヤテさん、、‥‥、お願い‥‥、この鈴と、私の髪飾りを一緒に‥‥、兄のいる‥‥清雲寺の‥‥お墓に葬ってください‥‥、」

 

息も絶え絶えに、こずえはハヤテに語りかける。

 

「そうすれば‥‥、わたし‥‥、気持ちだけでも‥‥、いつまでも‥‥、ハヤテさんと‥‥、一緒に‥‥、いることかできるから‥‥、、」

 

「わかった」

 

ハヤテは一度、そう答えると 

 

「でも、こずえさん、貴女はまだ死んでいない、頑張るんだ!」

 

と、再びこずえを励ます一方で、カスミの方をチラリと見る。

 

なんとかならないのか!!

 

ハヤテは目で、カスミにそれを訴えていた。

 

こんな目のハヤテを、カスミは、はじめて見る。

 

だが、カスミは泣き出しそうになりながら、それでも首を横に振る。

 

どうにもならないことというのは、やっぱりあるのだ。

 

「いいの‥‥、ハヤテさん‥‥、、」

 

こずえは微笑んだ。

 

「わかってます‥‥、、わたしは‥‥、、もう、、‥‥」

 

そして、ハヤテの聞きたくないであろうことを、ハッキリと告げた。

 

「小次郎兄さんと‥‥、、同じように‥‥、、わたしは‥‥、自爆します‥‥、、それが化身忍者の‥‥、運命」

 

そのこずえの声を聞いた千恵は戦慄した。

 

その『自爆』という運命は、もしかしたら明日の自分かもしれないのだ。

 

ハヤテとは異なり、自分はあくまでも血車党により『化身忍者として作られた』

 

そのことを千恵は忘れていない。

 

「だがら‥‥、この鈴と‥‥、、髪飾りだけでも‥‥、、清雲寺に‥‥」

 

こずえは苦しそうにいう。

 

「ハヤテさん‥‥、早く‥‥、わたしから‥‥、離れて‥‥、」

 

思わず千恵も叫んでいた。

 

「ハヤテさん!!、早く、こずえさんから」

 

だが、ハヤテは首を横に振った。

 

「皆は離れてくれ、私なら大丈夫だ!、仮に自爆が本当だとしても、私はこずえさんを最後まで看取る」

 

これにはタツマキも驚いた。

 

「ハヤテ殿!、いくらなんでも、それは!」

 

カスミも

 

「ハヤテさん!、無茶よ!」

 

と叫ぶ。

 

が、ハヤテはタツマキ、カスミ、千恵、そして、まだ気を失ったままのツムジを見て、確信ありげにニコッと微笑んだ。

 

「大丈夫だ!、私は死なない」

 

こずえは嬉しそうに涙を浮かべると

 

「ありがとう、、‥‥さようならハヤテさん、、‥‥わたしのこと‥‥忘れないでね‥‥」

 

と言い、そして目を閉じ、全身の力を失って、頭がガックリと傾いた。

 

こずえは息を引き取ったのだ。

 

だが、こずえの言っていた『自爆』は、いつまでたっても起きる様子もなかった。

 

「さようなら、こずえさん」

 

ハヤテはそう言うと、こずえの遺体をゆっくりと寝かせる。

 

最後の最後で、『人の心』を取り戻したこずえは化身忍者ではなくなり、化身忍者の運命であるはずの『自爆』をすることもなくなった。

 

あるいは、そういうことなのかもしれない。

 

ハヤテ、そしてタツマキ、カスミ、千恵の四人は思わずこずえの遺体を囲んで合掌した。

 

ここでツムジが意識を取り戻す。

 

「う、うーん」

 

が、こずえの遺体を囲んで合掌する四人を見て、直ぐに何があったのかを悟ったツムジは、ゆっくりと立ち上がると、自らも『こずえのことを思いながら』静かに目を閉じ、そして合掌した。

 

こずえはハヤテのみならず、その場の皆に看取られて亡くなったということになる。

 

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