変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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化身忍者ガマドクロの襲撃

 

ハヤテが急ぎ出発した後、ツムジは千恵といろいろ話をしていた。

 

勿論、ツムジは姉であるカスミのことは心配なのだが

 

「ハヤテさんが助けに行った以上、カスミ姉ちゃんは大丈夫、それよりも今は千恵お姉ちゃんを見てあげないと」

 

と自分に言い聞かせてもいた。

 

千恵は打ち解けたように、ツムジにこれまでの身の上話などもしてくれた。

 

自分が元々の血車党の忍者ではなく、父、母の大阪の陣での戦死、その少し後の弟の崖からの転落死などをきっかけに、徳川の世に復讐するために血車党の誘いにのったのだということ

 

父の名は佐助、母の名は蛍、弟は大助という名だったということも聞いた。

 

でも、今は

 

「徳川の世に復讐などといいながら、やったことといえば血車党に囚われていた罪もない人たちを毒粉で狂い死にさせ、無用の殺し合いをしただけ‥」

 

千恵は項垂れる。

 

「ハヤテさんの二段斬りに敗北した時、本当に殺されてもいいと思っていました‥」

 

そして

 

「でも、ハヤテさんは生きろといいます」

 

千恵は顔をあげた。

 

「ツムジさんは‥」

 

恐らく千恵は、私のことをどう思うのか?

 

とツムジに問いかけたかったのかもしれない。

 

だが、それは出来なかった。

 

 

「グェッ!、グェッ!、グェッグェ」

 

突然、ツムジと千恵の目の前に煙が立ち込めたかと思うと、その煙の中から異形のものが姿をあらわした。

 

「俺は血車党の化身忍者、ガマドクロ」

 

異形のものはダミ声で、そう名乗った。

 

ガマガエルの頭部に、茶色の皮膚で全身を覆われ、ただ腹部は白くなっている。

 

まさにガマガエルの怪物と呼ぶのにふさわしい、その姿だった。

 

「出来損ないの毒蛾くノ一!、骸骨丸様の命により、貴様を始末する」

 

気色の悪いダミ声で、ガマドクロはそう宣言する。

 

「化け物!」とツムジ。

 

「化け物だって」とニヤニヤするガマドクロ。

 

そいつだって「蛾の化け物そのものだろ、お前だって知っているだろう」

 

と、千恵を指差すガマドクロ。

 

そして、その背後から五人くらいの血車党下忍が姿をあらわし、ガマドクロと同じく、「グェッグェッ」と声をあげる、

 

「お前たちは、そこの小僧を取り押さえろ!、なあに、ハヤテが出発してから時間もたっている。奴がすぐに戻ってくることはない」

 

ガマドクロの指示で下忍たちは「グェッグェッ!」と喚きながら、抵抗するツムジをたちまち取り押さえる。

 

「くそお!、離せってば!」

 

なおも抵抗するツムジ。

 

が、ガマドクロは冷ややかにそちらを一瞥すると、千恵の前に向かう。

 

「毒蛾くノ一、そういえばお前は以前から俺達下忍を見下し、お高くとまっていたよなあ?」

 

千恵はガマドクロの気色の悪さに吐き気さえ感じながら、それでも気丈にキッと睨み付ける。

 

ガマドクロは下忍から、つい最近に化身忍者に昇格したばかりであり、下忍時代には短い間だが、毒蛾くノ一の下にいたこともある。

 

「お前を俺の思う通りにしてやるよ!」

 

ガマドクロは千恵に飛びかかり、押し倒すと、千恵の細い首を、その両手で締め上げた。

 

「く、苦しい!、ううっ!」

 

千恵の顔は真っ赤になる。

 

「ほうら、ほうら、お前はなんにも抵抗できない。これからお前を俺の思い通りにしてやるよ。始末するのはそれからだ」

 

ニヤニヤしながら千恵の首を締め続けるガマドクロ。

 

その様子をツムジを取り押さえている下忍たちが思わず見ている、そこにチャンスが生まれた。

 

「ちっくしょう!」

 

ツムジは自分を直接取り押さえていた下忍の金的を思いっきり蹴りあげた.

 

「グェッエエエエ!」

 

特大の悲鳴をあげる下忍、そして隙ができたのを見逃さず、ツムジは素早く下忍たちを振りほどくと、そのままガマドクロに体当たりをした。

 

ツムジの全身の体重をかけた体当たりに、思わずガマドクロもふっ飛ぶ。

 

「小僧!」

 

転倒したことで、怒りをあらわにしたガマドクロ。

 

「おいら、約束したんだ、千恵お姉ちゃんを守るって」 

 

ツムジは背後に咳をする千恵を庇うようにして立った。

 

いくらなんでも相手は血車党の化身忍者である。

 

ツムジだって怖くないはずがない。

 

それは、精一杯のやせ我慢、いや勇気だった。

 

「ツムジさん」

 

咳がおさまったのか、千恵はツムジに声をかける。

 

「こいつは私が決着をつけます、貴方は下忍たちをお願いします」

 

そういって、ツムジを手で制し、その前に立った。

 

「化身!」

 

千恵は両手をクロスすると、そう宣言し、そして両手を上に挙げて回した。

 

瞬間的に千恵の姿と、毒蛾くノ一の姿が、入れ替わり、立ち代わり、点滅するように交互に現れたと思うと

 

「イーッ!、ヨーウゥゥー」

 

高い女性の、しかし不気味さを感じさせる声を挙げて

 

千恵の姿は、ツムジも知る、長い金髪の毒蛾の化け物そのもののような毒蛾くノ一に「化身」していた。

 

「見ろ、小僧!、俺が化け物なら、こいつだって化け物そのものだろ」

 

と笑うガマドクロ。

 

が、ツムジは

 

「千恵お姉ちゃんは化け物なんかじゃない。」

 

キッパリとガマドクロに向かって言い切った。

 

「千恵お姉ちゃんと本当にいろんな話をした。だから千恵お姉ちゃんが」

 

声をふるわせるツムジ。

 

「例え化身忍者に変身するんだとしても、本当は心の優しい女性なんだと、おいらは知っているんだ」

 

「だから怖くなんかない!」

 

ツムジはそう言い切ると

 

「千恵お姉ちゃん」、毒蛾くノ一の姿をした千恵に声をかけ

 

「下忍たちはおいらに任せて、思う存分やって!」

 

といい、あらためて刀を抜く。

 

「バカか、こいつは?」

 

呆れたようにガマドクロは言うと

 

「やれ!」

 

と下忍たちに命じる。

 

「グェッ!グェッ!」とツムジに襲いかかる下忍たち。

 

が、毒蛾くノ一の姿になった千恵はガマドクロの前に立つ。

 

「お前の相手は、この私だ!」

 

「何を!、この出来損ない!」

 

とガマドクロ。

 

こうして毒蛾くノ一の姿となった千恵とガマドクロの一騎討ちが始まった。

 

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千恵とガマドクロは下忍たちと戦うツムジをよそに外に出た。

 

勿論、双方とも屋内での戦闘は不利とみての判断である。

 

 

が、毒蛾くノ一の姿となった千恵は、やはり、右腕と右足に嵐との交戦中に受けた傷のダメージが残り、ズキッ!、と痛みも走る。

 

何よりも「彼女」は剣を持っていない。

 

その様子を、勿論、ガマドクロは見逃さない。

 

「グェッ、グェッ、毒蛾くノ一、そんなフラフラな様子で、この俺様に勝てると思っているのか」

 

せせら笑うガマドクロ。

 

だが毒蛾くノ一の姿となった千恵は

 

「イーッ!、ヨーウゥゥ」

 

と叫んだ後に

 

「さっきは床で休んでいたから不覚をとったが」

 

と冷静沈着な声で応えると

 

「お前など、素手でも十分戦える」

 

と言い放ち、戦闘態勢をとり身構える。

 

「その強がりも、あっという間にお仕舞いにしてやるよ」

 

ガマドクロは叫んだ。

 

「血車忍法ガマの油!」

 

次の瞬間、ガマドクロの口から大量の黒い油が吐き出され、その油は千恵をめがけて飛びかかっていく。

 

が、千恵はフワリ、と羽を広げると、軽やかに宙に舞った。

 

ガマの油は、千恵の立っていた場所に空しく落ちていく。

 

油臭い異臭と、黒いベトベトした液体だけが水溜まりのように、そこに残っただけだ。

 

「忘れたかい?」と千恵はガマドクロを笑う。

 

「私は飛べるんだよ!」

 

そして華麗に宙を舞う。

 

ガマドクロは「うるさい!、出来損ないめ」

 

と、睨み付けると、今度は口から長い舌を飛ばし、千恵を捕まえようとする。

 

そう、まるでカメレオンが長い舌を使って昆虫を補食するように。

 

ガマドクロの長い舌は鞭のようにしなり、千恵を捕まえようとするのだが

 

千恵はヒラリ、ヒラリとかわし、ガマドクロの長舌を寄せ付けない。

 

「卑怯だぞ!、毒蛾くノ一」

 

諦めたのか、ガマドクロは長舌を引っ込め、こう叫んだ。

 

「俺様のこの剣と堂々と勝負しろ!」

 

というガマドクロは業物の剛剣を手に持ち、振り回す。

 

「イーッ!ヨーウゥゥ」

 

千恵は笑う。

 

「ガマドクロ、それは剣を持たない相手にいうことか?」

 

と千恵は返したが、あえて空を舞うのをやめて地上に降り立った。

 

「いいだろう!、お前にこの私が斬れるというなら、やってみな!」

 

わざと千恵はガマドクロを挑発する。

 

「なにおう!」

 

剣を振り回し、千恵を斬ろうとするガマドクロ。

 

だが、それこそが千恵の思惑通りだったのだ。

 

ガマドクロの剛剣が、まさに千恵を頭上から真っ二つに斬ろうとする、その時

 

「戸隠流、真剣白刃取り!」

 

と叫ぶ千恵。

 

 

ガマドクロによって千恵の頭上に振り下ろされた剣を、千恵は両手のひらを合わせ、力強く両手で挟んで受け止めた。

 

ガマドクロは千恵に白刃取りされた剣を動かすことが出来ない。

 

「お、おのれ!」言いながらガマドクロは剣を動かそうとするが、千恵はピタリと両手を挟んだまま、微動だにしない。

 

「かかったね、ガマドクロ」。

 

千恵は笑う。

 

「私が欲しかったのは、お前の、この剣だったのさ」

 

言うなり、非力なはずの千恵が、両手で挟んだ剣をガマドクロから奪い取り、大男のはずのガマドクロを放り投げる。

 

ガマドクロは転倒した。

 

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