変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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ガマドクロの最期、そしてツムジと千恵

千恵に投げ飛ばされ、転倒したガマドクロは、そのまま立ち上がろうとするが

 

既に千恵はガマドクロから奪った剣を持ち、スックと立ち上がっていた。

 

主客逆転

 

剛剣を持ち、今にもガマドクロに斬りかかろうとする千恵と

 

よくやく立ち上がったものの、丸腰でオロオロする様子のガマドクロ。

 

「なぜだ!」

 

ガマドクロが叫ぶ。

 

「お前は右腕を嵐に斬られ、満足に力を出すことも出来なかったはずだ。それなのに、なぜ、白刃取りだけでなく、俺様を投げ飛ばすようなことがてきる?」

 

ワナワナと指を震わせながら、目の前の千恵を指すガマドクロ。

 

「イーッ!ヨーウゥゥ」

 

千恵は笑った。

 

「この白刃取りは、私が、血車党とは無関係に父から学んだ忍法なのさ、力はそれほど必要ない」

 

そして、振りかぶって

 

「だから、この術はお前たちには真似は出来ないはず!」

 

と言い放ち、ガマドクロを斬ろうとする。

 

「ま、待て‥‥」

 

怯えたように、ガマドクロはいう。

 

「どうした、剣を持たない相手に正々堂々などと言ったお前が、私が剣を持ったら、途端に怯むのか?」

 

「う、うるせえ!」

 

 

ガマドクロはとにかくも千恵を押し倒そうと、反撃のため飛びかかった。

 

が、千恵は、何ら躊躇うことなく、ガマドクロの右腕と、両足をズバッ!、ズバッ!と斬りつけた。

 

その場にドウッ、と倒れるガマドクロ。

 

「イーッ!ヨーウゥゥ」

 

千恵は

 

「一度だけ、お前にも助かるチャンスをやる。大人しく、ここから立ち去れ!」

 

とガマドクロにいう。

 

「わ、わかった‥‥」

 

その場にうずくまり、命乞いをするガマドクロ。

 

「そうか」

 

千恵は剣をおろすと、ガマドクロに背を向け、立ち去ろうとする。

 

その千恵の後ろ姿を見て隙ありと見たか

 

「こんのアマァァァァー!」

 

と再度飛びかかるガマドクロ。

 

が、千恵は、その飛びかかってきたガマドクロに対して、振り返ったと思うと

 

素早く十字に斬って捨てた。

 

「ギャアアァァァァー!」

 

十字に斬られたガマドクロは気色の悪い、大きな悲鳴をあげると、その場に倒れる。

 

「イーッ!ヨーウゥゥ」

 

 

「お前がそうするだろうことは分かっていた、血の掟もあるしね」

 

と千恵。

 

「でも、ハヤテさんに救われた私が、お前を助けることもなく、そのまま斬るのは躊躇われただけだ!」

 

ガマドクロは既に瀕死である。

 

「だが、二度目はない!」

 

千恵は剣を下げる。

 

そして彼女がその場から離れると、ほどなくガマドクロは爆発した。

 

幸いなことに、先ほどガマドクロ自身が吐き出したガマの油からは場所は離れていたので、とりあえず大火事にはならずにすみそうだ。

 

「千恵お姉ちゃーん!」

 

ちょうどツムジが息を切らせながら走ってくる。

 

「ゴメン、五人の下忍をおいら一人で相手するのにてこずっちゃって‥‥」

 

ふうふう息をしながら、千恵に謝るツムジ。

 

「まだまだ、おいらも修行か足りないよな」

 

頭をかくツムジ。

 

本当は苦戦しているだろう千恵を少しでも助けたかったのに‥‥

 

「ツムジさん、私を守ってくれて本当にありがとう」

 

毒蛾くノ一の姿のままの千恵は、ツムジに向かって深く頭を下げた。

 

「あの時ツムジさんが命がけで私を助けてくれなかったら、多分、私は今、こうしていない」

 

「それどころか、きっと、あの男に蹂躙され、獣欲の犠牲になっていた‥‥」

 

「ツムジさんは、私の命の恩人です」

 

ツムジは照れながら

 

「どうだい!、おいらだって、やれば出来るのさ」

 

と笑う。

 

「それより‥」

 

と千恵は問いかける。

 

「ツムジさんは、この姿のままの私が本当に怖くないの?」

 

いうまでもなく、千恵は毒蛾くノ一の姿のままである。

 

「気にならないと言ったら、そりゃウソだけどさ‥‥」

 

とツムジ。

 

「でも、それは千恵お姉ちゃんが『変身』した姿だから」

 

そして

 

「それはハヤテさんだって変わらないよ」

 

と答えた。

 

千恵は思わず毒蛾くノ一の姿のままでツムジをギュッ!と抱きしめた。

 

「ちょっと、千恵お姉ちゃん、どうしたの?」

 

我にかえり、ツムジから離れる千恵。

 

「ごめんなさいね、それより、これからの事を考えないと」

 

さっきまで自分たちがいた家を指差し

 

「あそこは、もともと私がツムジさんたちをおびき寄せるために血車党が用意したものです。まあ、最低限のものがあったから助かったけど‥‥」

 

自分が先ほどまで寝ていた時に着ていた着衣も、その時の小道具であるということを、勿論、千恵は知っている。

 

「どっちにしても、もうあそこに隠れているわけにもいかないでしょう、それならいっそ、私たちもハヤテさんのところへ行き」

 

「カスミさんと、お父上のタツマキさんを助けに行った方がいいと思います」

 

ツムジは

 

「千恵お姉ちゃんは、もう大丈夫なの?」

 

と問い返す。

 

「私はちゃんと戦えます」

 

千恵は答えた。

 

「なら、おいらに異存はない」

 

ツムジはそう答えた。

 

「早く準備をしましょう、血車党もガマドクロの失敗に気づけば、すぐに動き出します」

 

二人は目の前の家に戻り、出掛ける準備をすることにした。

 

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二人は家の中に戻ると、ツムジに斬られて倒れている血車党下忍たちを見た。

 

生死を賭けた闘いに手加減などはあり得ないが、やはり見ていて気持ちのいいものではない。

 

下忍のうち一人は、恐らくは仲間に斬られた様子。

 

先ほどツムジに金的を蹴られて悲鳴を挙げ、悶絶した下忍が、仲間たちから「足手まとい」とばかりに斬られたのだろう。

 

当然、ツムジはその事を知っているはずだが、千恵には語ろうとしない。

 

生死を賭けた闘いで斬り捨てた下忍たちではあっても、ツムジなりに思うところはあるのだろう。

 

いずれにしても

 

そうした意味でも、この家には長居は無用ということなのだろう。

 

繰り返すが、やはり見ていて気持ちのいいものではない。

 

 

ひとまず千恵は「毒蛾くノ一」の姿から、先ほどまで床にいたときの白い寝巻きを着た「千恵の姿」に戻った。

 

それを見て、やっぱりツムジはホッとした表情を浮かべるし、千恵もまた、それを見逃さない。

 

千恵は箪笥を開けると

 

「よかった、私の忍び装束の予備がそのまま残ってて!」

 

と声をあげる。

 

「着替えるんだったら、ちょっと、おいらは外すよ」

 

とツムジは顔を少し赤くしながら外に出た。

 

少しの間をおいて

 

「ごめんなさいね、もう着替えたから」

 

と千恵の呼ぶ声を聞き、ツムジが戸を開けると

 

既に千恵は黒の忍び装束に着替えており、背中には先ほどガマドクロから奪った剛剣を背負っていた。

[pixivimage:118322642-4]

 

「本当は剣は背負っていると抜きにくいけど、毒蛾くノ一に化身するときに便利だから」

 

と千恵。

 

「戦うために化身するの?」

 

とツムジ。

 

「ええ、化身しないと使えない力もいろいろあるから。空を飛んだりとか‥‥」

 

そこで千恵は

 

「ツムジさんは私が化身しない方がいいの?」

 

と、さりげなく聞く。

 

「そりゃ、ハヤテさんに同じことは聞いたこともないし、考えたこともないけど‥‥」

 

ツムジはブツブツいう。

 

「でも、お父上のタツマキさんとカスミさんを助けに行くのには『毒蛾くノ一』の力が必要です」

 

千恵は言い切った。

 

「ハヤテさんはハヤブサオーに乗って出発したけど、私たちが徒歩で追いかけるのも大変でしょう?」

 

そんなことをしたら、一体どのくらい時間がかかるのやら。

 

タツマキとカスミが出発したのは「三日も前」であり、既にそれだけの距離を移動している。

 

俊足のハヤブサオーなら早く到着することも出来るだろうけど‥‥

 

「何か方法があるの?」

 

ピン!ときたツムジは千恵に問い返す。

 

「さっき、ガマドクロがいきなりどこかから下忍たちと現れたでしょ?」

 

千恵は説明する。

 

「血車の重要な忍法の一つに『転移』という技があります」

 

「転移?」

 

そういえば血車忍者がどこからともなくいきなり現れるのをツムジ自身、何回も目撃している。

 

「簡単にいうと、例えば離れたところから、この家がある場所に行きたいと思ったとき」

 

千恵はいったん言葉を切る。

 

「普通の人は歩くか、とても急ぐときには馬に乗って行きます」

 

「けれども日本支配を考え、広い範囲を直ぐに移動したい血車党はそんなことはしていられません」

 

「だから、今のこの世界と異なる空間を瞬時に通って、短い時間で離れた場所に移動する方法を血車党は編み出しました」

 

「それが『転移』という術であり、これは骸骨丸‥‥」

 

一瞬「骸骨丸さま」といいかけて、千恵はブンブンと首を左右に振った。

 

彼らはもはや自分にとって、その命を狙う「敵」なのだ。

 

「そう骸骨丸と化身忍者しか、その術は使えないことになっています」

 

実際は魔神斎も使えるはずだが、とにかく彼は表にあまり出てこない。

 

「じゃあ、下忍たちはどうするのかというと、化身忍者に掴まって一緒に移動するんです。だから一度に一人の化身忍者についてこれる下忍は、せいぜい五人くらい」

 

だからガマドクロには五人の下忍がついてきたのか、とツムジは納得した。

 

「じゃあ、ハヤテさんも入れて三人で、その術で移動した方が早いってこと?」

 

ツムジが千恵に質問する。

 

「その場合にはハヤブサオーが移動できません。ハヤブサオーが私に掴まるわけにもいかないでしょう?」

 

「それにハヤブサオーがいないとハヤテさんも困るでしょう?、特に嵐に変身したときとか」

 

ツムジは一応納得した。

 

「ハヤテさんは恐らく嵐に変身したとしても、この『転移』の術は使えないはずです。だからハヤブサオーで早く移動する必要がある」

 

千恵はここで言った。

 

「もし私とツムジさんが、お父上のタツマキさんと、お姉さんのカスミさんのところへ早く行こうと思ったら」

 

「私は『毒蛾くノ一』に『化身』する必要があります」

 

「そして、ツムジさんがそんな私と一緒に急いで行きたいと思うなら」

 

千恵はツムジに告げた。

 

「『毒蛾くノ一』に化身し、『転移の術』を使う私に、ツムジさんはしっかりと掴まって離さないようにしないと」

 

「異なる次元空間に落ちて、取り残される危険性があります」

 

「ツムジさんは、それでいい?」

 

千恵はツムジに問いかけた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「あったぼうよー!」

 

笑ってツムジは答えた。

 

「化身した千恵お姉ちゃんにしっかり掴まって離さないだけだよね、それだけで直ぐに親父とカスミ姉ちゃんのところへいけるんだったら大助かり!」

 

千恵は微笑んだ。

 

「ありがとう、ツムジさん」

 

「礼を言うのはおいらの方さ!」

 

とツムジ。

 

「だったら、これからは千恵お姉ちゃんがいれば、どんな場所にも直ぐに移動できるんだ!」

 

「どんな場所でもないわ」

 

と千恵。

 

「『転移』の術を使うのには条件があって、その最も重要なものが『本人が一度行ったことがある場所なら瞬時に移動できる』ということです」

 

「ガマドクロが下忍たちとここに『転移』で移動してくることができたのは」

 

「あいつが下忍時代にこの家に来たことがあったからです」

 

千恵は今さっき自分が斬り捨てたガマドクロのことを一瞬、思い出す。

 

「例えば、私が江戸城にいる「公方」(将軍)を暗殺しようと思ったとしても」

 

「行ったこともない江戸城内に『転移』で移動することは出来ないんです‥‥」

 

なぜ、自分はこんな話をするんだろう?

 

「私は、タツマキさんとカスミさんが行っているはずの、血車党の新しい髑髏館には前に行ったことがあります」

 

今の千恵にとって、それは辛い記憶だった。

 

「私はこの家でツムジさんとハヤテさんを上手くいけば相討ちにするか、そうならなくてもハヤテさんを始末した後で‥‥」

 

言いながら千恵は、ツムジの表情をうかがう。

 

「残ったカスミさんを、その新しい髑髏館に連れていくことになっていました」

 

「カスミさんを化身忍者にしたいという骸骨丸の命を受けて‥‥」

 

ツムジに嫌われたくないと思っていながら、なぜ、自分はこんな話をしてしまうんだろう?

 

千恵の内心の葛藤を察したツムジは、しかし、その話には乗らず

 

「千恵お姉ちゃん、見て!」

 

と声をかけると

 

「ベロベロバー!」

 

と、わざと変顔になって見せる。

 

意表をつかれた千恵は、思わず微笑んだ。

 

「まあ、ツムジさんったら!」

 

ツムジと最初に過ごしたあの晩のことを思い出した千恵。

 

あの晩は、少なくともツムジは千恵の正体を疑ってみるなどとは思いもせず、ただ、ただ千恵を励まそうとしていた。

 

今はそうではないはず。

 

さらにツムジは千恵の複雑な心理を見透かしたかのように

 

「上様(ここでは二代将軍秀忠)だったら、ハヤテさんの知り合いだよ」

 

と言ってみせた。

 

「えっ!」

 

と千恵。

 

「その話は今度、あらためてしようよ」

 

とツムジ。

 

「そうだよ、そのためにも一緒に江戸へ行こうよ!」

 

「千恵お姉ちゃんの未来のためにも」

 

 

戸惑う千恵に、ツムジは

 

「でも、とにかく今は一緒に親父とカスミ姉ちゃんのところへ行こう!」

 

とせかす。

 

「そうね。今は何よりそれを考えないと‥‥」

 

千恵は決心すると、両手を胸の前でクロスさせ

 

「化身!」

 

と叫び、それから両手を上に挙げ、大きく回した。

 

みるみるうちに千恵の姿が「毒蛾くノ一」に変わっていく。

 

「イーッ!ヨーウゥゥー」

 

甲高い、そして、やはり不気味さを感じさせる女性の声。

 

千恵は「毒蛾くノ一」に化身していた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ねえ、千恵お姉ちゃん?」

 

ツムジは質問する。

 

「千恵お姉ちゃんが、その姿に変身した時に発する『イーヨー』という声はなんなの?、ハヤテさんは嵐に変身しても、そういう声は出さないから気になって‥‥」

 

「‥‥‥‥」

 

千恵は押し黙る。

 

「気を悪くしたらゴメンね、ただ気になっただけだし、だからどうというわけてもないんだ」

 

ツムジは、慌てて付け足す。

 

「多分、だけど‥‥」

 

と千恵。

 

「これは、私と一体化した毒蛾の『魂』の声なんだと思う」

 

「毒蛾の魂?」

 

問い返すツムジ。

 

「ハヤテさんも猛禽と融合した化身忍者ということになるんでしょうけど、お父上の谷鬼十先生がどのような術をほどこしたかわからないので、多分、私たち血車党による化身忍者とは、どこか違うんだと思います」

 

と千恵は前置きし

 

「化身忍者は特定の動物と一体化することで、その動物の特性を最大限に引き出せるようになっています。そして、その動物にも『魂』はやっぱりあって‥‥」

 

「自分でも、その『魂』の声みたいなものが、何かの時に無意識に漏れてくるんだな、と感じます」

 

そして毒蛾くノ一の姿のままの千恵は言った。

 

「ツムジさんは、やっぱり気持ち悪く感じる?」

 

「ううん、全然」

 

ツムジは即座に首を横に振った。

 

勿論、否定の意味で。

 

「それも含めての千恵お姉ちゃんなんだから」

 

とツムジ。

 

「ハヤテさんとそこは違うってだけ」

 

そしてツムジは

 

「千恵お姉ちゃん、早く行こうよ!」

 

と言った。

 

「ありがとう、じゃ、私にしっかりと掴まって。離さないでね!」

 

と千恵。

 

「任せといてよ!」

 

とツムジ。

 

「血車党の下忍に出来ることが、オイラに出来ないわけないだろ!」

 

それを聞いて千恵は一瞬、ツムジの「鈍感」さを恨めしく思った。

 

自分が思っているのは、そんなことじゃなくて‥‥

 

私だって、ハヤテさんよりは歳下だし、カスミさんと比べたって、そこまで歳上じゃないのに‥‥

 

そして、そのように考えている自分自身に千恵は驚く。

 

「千恵お姉ちゃん、どうかしたの?」

 

様子がおかしいと思ったツムジが問う。

 

「いいえ」

 

千恵は違うことを言った。

 

「私は大助を亡くしています。もし、ここで転移の時に間違いがあってツムジさんと離ればなれになってしまったら‥‥」

 

「私は死んでも死にきれません」

 

ツムジは、この少し前に千恵から聞いた大助が亡くなった時の話を思い出した。

 

それは雨の日だった。

 

崖から転落した大助を、千恵は慌てて助けに行ったが、時遅く大助は酷い有り様で転落死していた。

 

何ヵ所も体を打ったのか、傷だらけ、血まみれであり、骨は砕け、内蔵ははみ出しており、鬼の弱いものなら見た瞬間にショックで気を失いかねないほどの状態。

 

千恵一人では今さら大助の遺体を崖の上に運ぶなど、到底できないし、だいいち、この姉弟を助けてくれるものなどいない。

 

 

千恵は雨の中で大声で泣きながら、たった一人で懸命に、ほとんど一日かけて穴を堀り、そこに大助を埋葬した。

 

せめてもと、比較的大きな木の枝を、大助を埋葬したその上に立てて、墓標の代わりとした。

 

父や母の死とともに住んでいたところも逐われ、まだ年少の姉弟が力を合わせて、それでも何とか生きてきたし、両親の残した忍術の修行も二人で続けてきた。

 

が、大助を亡くしたあと、千恵の中で絶望とともに何がが変わり、ほどなく天下を覆すことを目的とする血車党を知り、千恵は望んで、それに加わった。

 

ツムジは、そんな話をついさっき千恵から聞いたばかりである。

 

今、千恵はそこから、さらに変わろうとしている。

 

それを守るのはおいらにとっても義務だ!

 

「千恵お姉ちゃん、おいらを信じて!」

 

ツムジは優しく声をかける。

 

「それに命懸けというなら、血車党の下忍たちだって同じだよ」

 

「えっ!」

 

と千恵。

 

「敵味方だし、こちらも戦うときは必死だけど」

 

とツムジ。

 

「血車党の下忍たちだって、お役目のために命を懸けているんじゃないの?」

 

千恵はガマドクロの言ったことを思い出していた。

 

確かに自分自身も下忍たちを心のどこかで見下していたのかもしれない。

 

血車党の敵であるツムジこそが、逆に彼らのことをちゃんと見ている。

 

千恵は自分を恥じた。

 

「ツムジさん、ごめんなさいね」

 

と千恵。

 

「迷いは捨てました、一緒に行きましょう」

 

「うん!」

 

ツムジは力強く答え、そして毒蛾くノ一の姿をした千恵にしっかりとしがみついた。

 

「千恵お姉ちゃん、いいというまで絶対に離さないからね!」

 

「はい!」

 

千恵も力強く答え、そして両手を胸の前でクロスして、こう叫んだ。

 

「忍法、転移!」

 

そして両手を大きく挙げて回す。

 

本当は「血車忍法『転移』」というのが正しい呼び方のはず。

 

だが、千恵はあえて「忍法『転移』」とだけ叫んだ。

 

そして、一瞬の後に

 

千恵とツムジの姿は煙とともに、その場から消えた。

 

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