変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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一方でハヤテは

 

一方でハヤテは、先行してタツマキとカスミが現地に向かうキッカケともなった、あの使者からの書状に書かれていた街道沿いの宿場町に到着し、そこでいったんハヤブサオーから降り、『彼』を解放した。

 

ハヤブサオーを怪しげな場所につなぎ止めておきたくなかったし、『彼』は状況を察した上で、適当な場所に待機し、ひとたび嵐が呼べば戻ってくるという、まるで『人の心が読めるような神馬』なので、ハヤテも、それに甘えている部分があるとも言えるかもしれない。

 

ハヤブサオーが煙のように姿を消すと、ハヤテは周囲の気配を肌で探りながら、静まり返った宿場町へと足を進めた。

 

妙齢の女性たちが次々と消える「神隠し」。

 

その噂が真実であることを物語るように、本来なら往来で賑わうはずの街道には、どす黒く淀んだ空気が満ちている。

 

たまにすれ違う住民も、ハヤテと視線が合いそうになると怯えたように目を背け、足早に去っていく。

 

町全体が、見えない巨大な恐怖に息を潜めているかのようだった。

 

その時、路地裏の物陰から、わずかに衣服が擦れる微微たる音がハヤテの鼓膜を叩いた。

 

「そこだ!」

 

ハヤテの右腕が、目にも留まらぬ速さで閃く。放たれた手裏剣が空気を切り裂いた。

 

「シャーッ……! ぐ、あ……ッ!」

 

潜んでいた血車党の下忍は、防戦の暇さえ与えられず、心臓を深く穿たれて崩れ落ちた。肉体が地面に叩きつけられる鈍い音が、静まり返った町に不気味に響き渡る。

 

ハヤテは倒れた死体を見下ろすことなく、周囲の闇へと視線を走らせた。

 

「そろそろ、隠れていないで出てきたらどうだ?」

 

あえて隙を見せるようなハヤテの挑発に応じるように、周囲の屋根裏や物陰から、音もなく四、五人の下忍が飛び出してきた。

 

黒い網目の覆面の奥から、ギラついた殺意がハヤテに注がれる。

 

が、化身忍者のような強大な妖気は周囲からは感じられない。

 

「シャーッ!」

 

先頭の一人が狂ったように抜刀し、ハヤテの脳天めがけて斬りかかってきた。 

 

それを合図に、残りの下忍たちも一斉に刃を向け、四方から同時に襲いかかる。

 

キィィン! と鋭い金属音が連続して炸裂した。

 

だが、ハヤテの敵ではなかった。

 

疾風のごとき身のこなしで刃の嵐を紙一重でかわすと、すれ違いざまに数人の胴を鮮やかに一閃。返り血が舞う暇もなく、下忍たちが次々と地面に転がっていく。

 

最後の一人が恐怖に目を見張り、必死に刀を振り下ろす。

 

ハヤテはその刃を容赦なく弾き飛ばすと、無防備になった下忍の背後に一瞬で回り込んだ。

 

逃がさぬよう、その腕でがっしりと羽交い締めにする。

 

間髪入れず、丸太のような腕を下忍の首元へと食い込ませ、一気に締め上げた。

 

「答えてもらおうか!」

 

骨が軋む音が聞こえるほどの強い力で締め上げながらも、ハヤテの口調は冷徹なほどに穏やかだった。

 

それが逆に、圧倒的な実力差を見せつけられた下忍に強烈な恐怖を植え付ける。

 

「ここには、先行したタツマキとカスミが来ているはずだ。二人は今、どこにいる!」

 

「し、知らん……! ゲホッ、離せ……!」

 

網目の覆面越しでも、下忍の顔が苦痛に歪み、顔が充血して真っ赤になっているのが手に取るように分かった。

 

ハヤテの腕は、わずかな慈悲も感じさせないほど強固に首を圧迫している。

 

「私は急いでいる!」

 

ハヤテはさらに腕の力を込め、下忍の気道を容赦なく圧迫した。

 

「まともに答えれば、命だけは助けてやる。……早くしろ、時間が惜しい」

 

「が……っ、あ……ッ!!」

 

下忍の身体が激しく痙攣し、限界を迎える。窒息の恐怖に耐えかね、下忍はついに掠れた声を絞り出した。

 

「わ、分かった……! 話す、話すから……腕を、緩めてくれ……!」

 

ハヤテがわずかに腕の力を抜くと、下忍は膝から崩れ落ちそうになりながら、激しく咳き込んだ。

 

生きるために口を割る――その絶望的な決意が、男の双眸に浮かんでいた。

 

 

「あの二人は……この先の、寺を装った……髑髏(どくろ)館に……」

 

だが、それ以上の言葉が紡がれることはなかった。

 

シュッ――!!

 

乾いた風切り音と共に、どこからか飛来した苦無(くない)が、下忍の心臓を狂いなく貫いたのだ。

 

「シャー、……あ……が……」

 

下忍は血反吐を吐きながら絶命し、ハヤテの腕から力が抜けた肉体が、泥人形のようにボロ切れとなって地面にへたり込んだ。

 

血車党による、容赦のない口封じと制裁。

 

ハヤテは瞬時に周囲を警戒したが、刺客の気配は既に消えていた。

 

しかし、ハヤテの目は鋭く光っていた。

 

「寺、か……」

 

それだけ分かれば、追跡には十分だった。ここからさほど遠くない場所に、目印となる不審な寺があるはずだ。

 

ハヤテは下忍の死体を一瞥することなく翻ると、タツマキとカスミを救出するべく、動き始めた。

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