変身忍者嵐より 千恵(毒蛾くノ一)の異なる未来   作:shpfive03

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タツマキとカスミ、髑髏館へ

 

下忍たちに縄で捕縛され、毒蛇くノ一の先導のもと、寺の中へと連行されるタツマキとカスミ。

 

もっとも、タツマキもカスミも、このくらいの修羅場なら、過去に何回もくぐってはいるのだが。

 

中に入ってみれば、寺というのが外見だけの見せ掛けであり、中身は過去に何度も見た血車党の髑髏館そのものであることは、あらためて実感できる。

 

 

「くそっ!、放せ!」

 

怒鳴りながらもタツマキは、内心では自らの拠点に血車党自身がわざわざ案内してくれるなら、それはそれで悪くないとも強かに考えていた。

 

その上で脱出するタイミングを掴めばよい。

 

一方のカスミは、先導する毒蛇くノ一に向かって

 

「やっぱり毎度お馴染みの血車党の罠だったのね!」

 

と、きつい口調でいう。

 

けれども毒蛇くノ一は

 

 

「ハハハッ」

 

と笑うと

 

「罠というのは『引っ掛かるバカ』がいれば、同じ手でも何回も有効なのさ」

 

と返す。

 

カスミはムッ!としたが、毒蛇くノ一とそんなことで言い争いをしてもバカバカしいと思い直し、黙っていることにした。

 

毒蛇くノ一は、突き当たりにある扉の前で立ち止まる。

 

下忍たち、そして連行されているタツマキとカスミも、それにあわせて立ち止まった。

 

毒蛇くノ一は

 

「骸骨丸様、タツマキとカスミをつれてきました」

 

と声をかけ、部屋の扉を開けて、そこに入る。

 

下忍たち、そしてタツマキとカスミもそれに続く。

 

そこにはタツマキとカスミたちにとってもお馴染みの顔、骸骨丸がニヤニヤしながら待っていた。

 

「伊賀忍の二人、ようこそ」

 

骸骨丸の様子は楽しげですらあった。

 

タツマキとカスミは部屋の中を見渡すが、どうやら、ここは何らかの施術室らしい。

 

寝台が置かれ、薬品の匂いとおぼしきものももプンと漂う。

 

下忍と同じ黒覆面を被ってこそいるものの、医師と思われる様子の者も何名かいる。

 

「まずは、そこの伊賀娘」

 

骸骨丸はカスミを指差した。

 

「一応聞くが、自らの意思で、我が血車党に入る気持ちはないか?」

 

答えがわかりきっている問いを、わざと骸骨丸はした。

 

それを聞くなり

 

「そんなはずないでしょ!、あなたは何を言ってるの?」

 

問いの内容に怒ったようなカスミの返事。

 

「ふん、まあ予想通りの答えだが、そんな気持ちをいつまで保てるかな?」

 

ニヤニヤしながら骸骨丸。

 

「我が血車党は、今までは化身忍者一人に作戦の隊長をまかせ、様々な工作をしてきた」

 

「だが、それでは効率も悪く、裏切者のハヤテに計画も次々阻止されている」

 

ちょっと苦々しくいう骸骨丸。

 

「が、だが」

 

そこで骸骨丸は再びニヤリとした。

 

「そこの伊賀娘、カスミといったな」

 

と、何やら楽しげにカスミを見る骸骨丸。

 

「ええ!」

 

カスミは思いっきり敵意を込めて骸骨丸を睨み付ける。

 

が、骸骨丸は意に介さず

 

「お前が我が血車党の化身忍者として加わってくれれば話は別」

 

カスミはそれを聞いて吃驚した。

 

骸骨丸は楽しそうに

 

「赤の他人である毒蛾くノ一に対してさえ必殺の剣を振るえないハヤテなら、ましてや、今までの仲間であったお前が化身忍者としてあいつと戦うとなれば」

 

と言い、そこで言葉を切ると、こう続けた。

 

「ハヤテは化身忍者であるお前に対しては、おそらく剣を振るうことも出来ず、結果として我が方に敗北することとなる」

 

それを聞いたカスミは、わなわなと震えると

 

「ふざけないで!」

 

顔を真っ赤にして怒り、いきなり自分を捕縛している下忍たちを振りほどき、剣を抜き、戦闘体勢をとった。

 

「縄脱けくらい、忍術の基本!」

 

カスミは言うと

 

「お父さん!」

 

とタツマキにも声をかける。

 

「おう!」

 

タツマキもあっという間に捕縛していた下忍たちを振りぼどくと、縄脱けをし、カスミ同様に剣を抜いて戦闘体勢をとった。

 

「ふん、やはりな」

 

骸骨丸は驚いた様子もない。

 

「たが、自分たちの足下くらいは見た方がいいぞ!」

 

次の瞬間、下忍たちが飛び退いたかと思うと

 

タツマキとカスミが立っていた場所に突然地割れが起き

 

次の瞬間に二人は地下牢のような場所に転落していた。

 

ドスン!

 

タツマキとカスミは重なりあうように尻餅をついた。

 

転落した二人を上から見下ろし、哄笑する骸骨丸。

 

「ハッハッハッ、お楽しみはこれからさ」

 

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「くそっ!、こんなところへ落としてどうするつもりだ!」

 

タツマキがはるか上にいる骸骨丸を見ながら抗議する。

 

地下室は意外に深いところにあり、仮に血車党の連中がいなくても、そう簡単によじ登って外に出ることなど出来そうにない。

 

骸骨丸はそれをニヤニヤしながら見下ろすと

 

「おい準備しろ!」

 

と、傍らの下忍に指示を出した。

 

ほどなく下忍は木製の短筒のようなものを持ってくる。

 

それを見てカスミは

 

「それは!!」

 

と、思わず声をあげた。

 

カスミはそれにハッキリと見覚えがあった。

 

他ならぬ毒蛾くノ一が「人々を発狂させ、狂い死に至らしめる」、あの毒粉を発射するのに使っていた木製の短筒。

 

「ほう、これがなんだかわかるようなら話が早い」

 

やや、カスミをからかうように骸骨丸は言った。

 

「これは、言わずと知れた『七色の狂い毒粉』を発射するための短筒」

 

下忍がその短筒を、下のカスミたちがいる地下牢に向けるのを確認すると、骸骨丸は言った。

 

「別に毒蛾くノ一でなくても、これを使うだけなら血車党のものなら誰でも出来るんでな」

 

フフと笑う骸骨丸。

 

「逆にあやつのような裏切者には二度と使わせる気もないが」

 

そこで骸骨丸はあらためてカスミに問いかけた。

 

「カスミよ、もう一度たずねる。我が血車党に自分の意思で入る気持ちはないのか?」

 

言いながら骸骨丸は、下忍にこよみがしれに毒粉発車用の短筒を地下牢の中の二人に向けさせる。

 

「この狂い粉には、人を狂わせ、互いに殺しあわせて、最後には死に至らしめる強烈な毒が備わっている、お前も知っているだろう?」

 

カスミは無言のまま、その短筒を見上げる。

 

彼女は汗をびっしょりとかいていた。

 

勿論、骸骨丸の言っていることの意味がわからないカスミではない。

 

「この狂い毒粉がそこに撒かれれば、お前と言えども狂い、そこにいる父のタツマキと殺し合うことになる」

 

そのわかりきったことを、骸骨丸はあらためてカスミに言った。

 

「勿論、我々はお前を殺したりはしない」

 

とニヤリとする骸骨丸。

 

「仮に殺し合いで、そこにいるタツマキが勝ちそうなら、我々がタツマキを始末し、お前を救いだすから安心するがいい」

 

そんなことを聞いて、勿論、カスミが安心できるはずもない。

 

怒りと、やはり恐怖にワナワナと体を震わせながら、唇をかんだ。

 

「やい!、貴様らふざけるな!」

 

とタツマキ。

 

「そう簡単にやられるわしらではない」

 

タツマキはそう強がってはみたものの、さすがに、この状態を打開する知恵はとっさには出てこない。

 

絶体絶命といっていい。

 

「逆にお前が勝って、父であるタツマキを殺せば、いずれにせよ、もう後はなかろう」

 

余裕綽々で骸骨丸は、なおもカスミに問いかける。

 

「ここで取引だ」

 

と骸骨丸。

 

「お前が自らの意思で、我が血車党に入ると宣言し、忠誠を誓うのであれば、そこにいる父のタツマキも含めて助けてやる」

 

一瞬、カスミはその誘いに乗ったふりをして、とにかくここから出れば、隙をついて父のタツマキ共々、ここから逃げ出すことも可能では?

 

と考えた。

 

が、骸骨丸は、そんな小娘の考えなどお見通しとばかりに

 

「言っておくが、お前が血車党に入ると今言ったところで、我々はそれを確かめるし、誓約書に署名さえさせれば、お前をその意思にかかわりなく言霊の力で呪縛することもできる」

 

とカスミに向かって告げた。

 

「具体的には、お前が化身忍者になるまでタツマキは解放しない。」

 

「そして、お前が完全に心から、我が血車党の一員になったことを確認するまで、タツマキの方は解放しないし、いつでも毒粉を発射する準備はしたままにしておく」

 

骸骨丸はカスミに問いかける。

 

「さあ、どうする?」

 

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「少し時間をもらえませんか?」

 

カスミは言葉を選びながら、冷静沈着に答えた。

 

カスミはとにかく時間を稼ぐことだと思った。

 

それにしても

 

ハヤテさんとツムジが、「あの人」の介護をほとほどにして、こちらに駆けつけてくれれば‥‥

 

やはり彼女としては、そう思わずにはいられない。

 

千恵の手当てと着衣の着替えを行ったのは、他ならないカスミなのだが、彼女自身は千恵に必ずしもいい感情は持っていなかった。

 

何よりも「あの人」が、それこそ今、自分たちに向けられている、あの狂い毒粉を使って、血車党に囚われていた罪もない人たちを狂い死にさせた事実は消えはしない。

 

ハヤテさんは甘すぎる!

 

とさえカスミは口にこそ出さなくても、そう思っていた。

 

ああ、涼風‥‥

 

あの笛さえあれば、ハヤテさんは直ぐにでも私たちのもとに駆けつけてくれるはずなのに‥‥

 

「あいにくと、それほどの時間を与えるほどの余裕も我々にはない」

 

と骸骨丸。

 

「だが、多少の疑問なら答えてやるぞ。何か聞きたいことはあるのか?」

 

カスミは悪戯っぽく笑う。

 

「私が血車党に入ることで、私にとって、どんないいことがあるの?」

 

骸骨丸は少し考えると

 

「我らの最終目的は、言わずと知れたこの天下を支配することだが」

 

骸骨丸はカスミの真意をはかりかねていた。

 

「お前も、その幹部として愚民どもを支配し、使役する特権を思いのままに行使できるぞ!」

 

タツマキは娘が「時間稼ぎ」をしようとしていることに気づいた。

 

なぜかは分からないが、カスミは恐らく、ハヤテが助けてきてくれるということを信じている。

 

なら、自分も娘を信じるまで。

 

「あんまり楽しくなさそう」

 

カスミは、わざとつまらなさそうに返事をした。

 

ムッとする骸骨丸。

 

「私は死ぬことを恐れていません。もし狂い粉で本当に狂ってしまい、どうにもならなくなるというなら、その前に」

 

とタツマキを指さし

 

「ここにいる父のタツマキにその場で刺し殺してもらいます」

 

キッパリと言った。

 

「だから、その方法であなたたちは私を血車党に入れることはできません」

 

これには流石のタツマキも驚いたが、あえて何も言わない。

 

「でも、そんな私でも」

 

骸骨丸の様子をうかがいながら、カスミは慎重に言葉を選ぶ。

 

「もし、血車党に入ることで何か自分にとって有意義なことがあるというなら考えは変えます」

 

そしてカスミは

 

「もう少し楽しそうな話はありませんか?」

 

と、わざと骸骨丸にたずねてみせる。

 

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「我々は徳川よりもお前のことを高く評価しているし、その実力も今よりも発揮できる環境も用意できる」

 

考えた末に骸骨丸は言った。

 

「先にも言ったが、一人の化身忍者に一つの工作を行わせる方法では日本支配は遅々として進まないし、魔神斎様も苛立っておいでだ」

 

「だが、化身忍者を一人育成するのも時間がかかるし、化身忍者になれるだけの心技体を備えたものも、特に女子には少ない」

 

ここで骸骨丸は、そばにいる毒蛇くノ一をチラリと見る。

 

彼女は代々の血車党の家系であり、また、元々は自分の「愛人」でもあった。

 

 

骸骨丸が谷鬼十から引き継いだ(強奪した)化身忍者の秘法は、まだまだ対象者に対する危険を伴うことを、彼自身はよく知っており

 

その意味で本当は彼女を化身忍者にしたくなかった。

 

ただし、彼女は本来は血車党にとって「外様」であるはずの千恵が自分より先に化身忍者になったことを知って怒り、自ら懇願して化身忍者となったのである。

 

彼女は千恵に激しい敵意を以前から持っており、その千恵が自分より先に化身忍者になったという事実そのものが、彼女を化身忍者に変えたとも言える。

 

彼女の以前の名は「あざみ」と言った。

 

が、毒蛇くノ一はカスミとやり取りする骸骨丸に対して、無言のままである。

 

骸骨丸は毒蛇くノ一に視線を向けたものの、直ぐにまた、カスミに問いかける。 

 

「お前は化身忍者になるだけの素質と体力を持っていることも疑いないが」

 

と骸骨丸はカスミに言う。

 

「女子でありながら、西洋医学についての知識もあると聞き及んでいる」

 

やはり、とカスミは思った。

 

自分の西洋医学の知識は元々は母から伝授されたものである。

 

母はタツマキが頭領をつとめる名張の家について、カスミにはこう言っていた。

 

「名張の家はゆくゆくはツムジが継ぎます。これは嫡男だから決まっていること」

 

母はその後で

 

「だからカスミは、ゆくゆくは医術で世に出なさい、それが出来るだけの知識は私が伝えることができます」

 

と幼い頃からカスミには猛勉強をさせた母だった。

 

一方でカスミは尊敬する父から忍術を学ぶことにも意欲を示し、その上達も早く

 

今や年少の身でありながら、特例としてであるとはいえ、父であるタツマキと同じく将軍への御目見えの資格まで持つ御公儀の直参としての身分のある彼女である。

 

実際に彼女は二代将軍秀忠と実面識もある。

 

当時としては、これは極めて異例のことであった。

 

血車党からのお誘いなど、そんな彼女の誇りが許すはずもない。

 

 

「私の西洋医学の知見など知れたもの」

 

わざとカスミはぶっきらぼうに言う。

 

 

「血車党にとって必要かしら?」

 

それに対し、骸骨丸は

 

「必要だ」

 

と即座に答える。

 

「先にも言ったが、一人の化身忍者で一つの工作を行う今までのやり方では日本支配は遅々として進まない」

 

骸骨丸は少し苛立った様子を見せた。

 

「だが、化身忍者が十人いて十の工作を行うことが出来れば話は違ってくるだろう。ハヤテ一人で妨害してもたかが知れてくる」

 

骸骨丸は続ける。

 

「それに化身忍者への秘法が向上すれば、心技体著しく備わったものでなくとも化身忍者にすることが出来る」

 

カスミはわざと

 

「化身忍者って、血車党の技術じゃ一度に何人もなることが出来ないの?」

 

と意地悪く聞いた。

 

「それに耐えられるだけの心技体の備わったものを育成するのは簡単ではない」

 

と苦々しく骸骨丸。

 

「今までに倒れた化身忍者の霊体のようなものを呼び寄せ、それを人間の死体と融合させることで擬似的な再生をさせることならできる」

 

「だが、そのようにして『再生化身忍者』を『作った』としても所詮は傀儡人形のようなもの、元の力の十分の一も出せはしない。やはり意思のある人間が化身忍者にならなければ、その力は発揮できないのだ」

 

そうでないなら、とっくにそうしていると言わんばかりの骸骨丸。

 

「我々はそのために西洋からそのためのノウハウを持つ魔力ある道人を呼び寄せることにした。道人は魔神斎様の知己でもあり、我々に力を貸してくれそうだ」

 

どうやら骸骨丸は、その道人に対する警戒心も持っているようである。

 

カスミは敏感にそれを察した。

 

「だが、今の血車党には西洋医学に通じたものがいない」

 

骸骨丸はあらためてカスミに言う。

 

「お前には、その道人の補佐をしてもらいたい」

 

「私が?」

 

わざとカスミは言った。

 

次第に苛々してきたのか、骸骨丸は

 

「お前を狂い粉で狂わせてしまっては、そのために必要な知識、技術を損なう恐れがある」

 

とカスミに告げる。

 

「だから、こうやって『お願い』をしているのだ」

 

お願いするには、随分非礼なやり方だろうとカスミは思う。

 

もっとも血車党から礼を尽くされてこんなお願いをされても、カスミが受ける気がないのは同じなのだが。

 

だいたい骸骨丸の意図はわかったとカスミは思った。

 

自分にその道人の「補佐」をさせることでお目付け役とし、あわせて道人から自分の血車党における権勢を奪われまいとするということなのだろう。

 

だが、その会話が途切れるときが来た。

 

「申し上げます、」

 

下忍の一人が慌てて飛び込んでくる。

 

「ハヤテがこの近くに現れました!、どうやらここに向かっている様子」

 

「なあにい!」

 

と骸骨丸。

 

「なぜ、そんなに早くここに来ることが出来る?」

 

「ハヤテさん!」

 

思わずカスミも叫んでいた。

 

ハヤテなら、必ずここに来てくれる。

 

タツマキの表情にも、やはり安堵の様子が見える。

 

「ええい!」

 

と骸骨丸。

 

「とりあえずカスミとタツマキを眠らせてしまえ!」

 

そして

 

「その上でハヤテを迎え撃つ準備をしろ」

 

とそばにいる毒蛇くノ一、そして下忍たちに指示をした。

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