大友克洋先生のアニメ映画『AKIRA』の二次創作です。

『力』を制御できず、膨張しつづける肉の怪物と化してしまった少年、島 鉄雄。
そして鉄雄を見守りながらも肉塊に巻き込まれ、悲惨な最期を迎えてしまう少女、カオリ。

二人が救済されるIfルートとなります。

文章・プロット作成の一部に生成AI「Google Gemini」を使用しています。

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もう一つの終幕 —— 光の揺りかご

ネオ東京・オリンピックメインスタジアム。

地を這う無数のパイプと、崩壊したコンクリートの瓦礫の真ん中で、島鉄雄の肉体は奇怪な膨張を続けていた。

内臓とも、肉壁ともつかぬ巨大な肉の濁流。それは周囲のあらゆる物質を巻き込み、肥大化していく。

 

「鉄雄……くん……?」

 

鉄雄をずっとそばで見守っていた少女……カオリはその肉の津波に足をすくわれ、その内側へと呑み込まれていく。

 

「きゃ……!」

(うあああああ! カオリ! カオリィィィ!!)

 

カオリの脳を直接かきむしるような鉄雄の絶叫。

肉塊の奥深く閉じ込められようとしたその瞬間……彼女は目をギュッと瞑り、ありったけの声を絞り出して叫んだ。

 

「鉄雄くんッ!!!!」

 

その叫びが、肉の壁を、細胞の一つひとつを激しく震わせた。

 

(ドクン……!)

 

突如として、スタジアム全体を揺るがしていた肉塊の悍ましい脈動が、ピタリと停止する。

 

激しい地鳴りが止み、静寂が訪れる。

 

---

 

カオリはゆっくりと目を開く。暗い。

そこは肉の壁に包まれた小さな空間だった。

苦痛はない。ただ、彼女の胸の奥に、言葉にならない膨大な「奔流」が流れ込んできた。

 

それは、鉄雄の心そのものだった。

 

金田の背中を追いかけ続けていた頃の、やり場のない劣等感。

突然手に入れてしまった、自分でも制御できない強大すぎる力への恐怖。

誰も自分を見てくれないという、底なしの孤独。

そして、「助けてくれ」と泣き叫ぶ、一人の傷ついた少年の震え。

 

鉄雄の抱えるすべての哀しみ、苦しみ、そして困惑が、ダイレクトにカオリの心へと伝わっていく。

 

「あ……あ……」

 

鉄雄の心の痛みが、カオリの胸を締め付ける。

冷たい世界のなかで、どれほどこの男の子が一人で泣いていたのかを、彼女は知った。

カオリの目から、大粒の涙が溢れ、ぽろぽろと肉の床へ落ちていく。

 

その瞬間、周囲の赤黒い肉壁が淡い光を放ち始めた。

 

グズグズと形を崩し、再構成されていく肉の障壁。

カオリの目の前で、ひとつの塊が赤ん坊のような姿へと形を変えた。

 

消え入りそうな、途切れ途切れの声が響く。

 

「か……お……り……」

 

それは、世界を滅ぼす超能力者などではない。

ただ、ぬくもりを求めて泣いている、小さな子供の姿だった。

 

カオリは涙の流れるままに両手を伸ばし、迷いなく『それ』を胸へと抱き寄せた。

 

「鉄雄くん! 大丈夫……! 大丈夫だから……もう、一人じゃないよ」

 

泣きながら、精一杯微笑むカオリ。

その優しい声が、鉄雄の凍りついた心を包み込む。

赤ん坊の姿をした肉塊は、カオリの胸のなかで安心したように、小さく、温かく脈打った。

 

---

 

スタジアムの中心に鎮座していた、巨大な肉の怪物が、内側から純白の光に満たされていく。

その光はネオ東京の夜空を照らし、やがて波紋のように広がって、一切の衝撃波も破壊の轟音も立てずに、ただ静かに消滅した。

 

後に残されたのは、ぽっかりと空いたクレーターと、穏やかな夜風だけだった。

 

「鉄雄……?」

 

金田は夜空を見上げる。そこにはもう、怪物の気配も、荒々しいエネルギーも残っていない。

ただ、どこか懐かしい、温かい余韻だけが世界を満たしていた。

 

鉄雄とカオリが、あの光の向こうでどこへ消えたのか。

それが新たな宇宙の誕生だったのか、あるいは別の静かな世界だったのかは、誰にもわからない。

 

生き残った金田たちは、静かに歩き出す。

ネオ東京の崩壊した景色。しかし、その向こうからは、新しい時代の朝焼けが静かに昇り始めていた。

 

(願わくば、その新しい世界で、二人が永遠に幸せでありますように)

 

—了—


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