「おっはよ~、ブリッジちゃん!」
サルサちゃんに励まされ、胸に復讐の炎を宿した翌朝。
一刻も早く新しいトレーナーを見つけたい焦りはあったが、私はいつも通り授業に出席していた。ちなみに私とサルサちゃんは、トレセン学園中等部2年のクラスメイトだ。
教室に入るなり、真っ先にきらきらとした笑顔で声をかけてくれたのは、同じクラスのカレンチャンだった。
彼女は学園きっての超人気ウマ娘。SNS『ウマスタグラム』のフォロワー数は驚異の300万人を超え、その愛くるしさでファンを虜にしているカリスマだ。
私はカレンちゃんが『ウマスタ』によく投稿している、彼女のトレーナーとの仲睦まじい日常を思い出し、思い切って尋ねてみた。
「ねえ、カレンちゃん。どうしたらトレーナーさんと、そんなに深く信頼し合える関係になれるのかな?」
するとカレンチャンは、人差し指を顎に当てて可愛らしく小首をかしげた。
「うーん、そうだね……。カレンはね、自分をまるごと肯定してくれることが一番大事だと思うな。どんなカレンも信じて、受け止めてくれること。それがお兄ちゃんとの出会いだったの」
そう言って、カレンちゃんはお兄ちゃんトレーナーと最初に出会った時の運命的なエピソードを、少し照れくさそうに語ってくれた。その話を聞きながら、私は「自分を信じてくれる存在」の大切さを改めて強く噛み締めていた。
けれど、放課後の現実は甘くなかった。
「あの……! 私の担当トレーナーになってくれませんか?」
「ごめんね。今、別の担当の子のメニュー構築で手一杯なんだ」
「悪いな、私のチームは今、定員がいっぱいで……」
放課後のトレーナー棟で必死に頭を下げて回るものの、返ってくるのは断りの言葉ばかり。デビュー戦最下位という結果が重くのしかかり、誰も見向きもしない。
(やっぱり、この時期にフリーのウマ娘を拾ってくれる人なんていないのかな……)
すっかりしょんぼりして、俯きながら廊下を歩いていた、その時だった。
「っと、危ない!」
「きゃっ!?」
角を曲がった拍子に、前方から歩いてきた一人の男性トレーナーと、正面衝突しそうになって立ち止まる。
(あぁ、またやってしまった……。どうせこの人も、私のことなんて断るんだろうな)
半ば諦めに似た自嘲気味な気持ちが湧き上がり、それでもダメ元で声を絞り出そうとした。
そして、私と彼が同時に口を開いた瞬間。
「「私(俺)の担当になってくれませんか?」」
廊下に、二人の声がぴったりと重なって響いた。
え……?
今、この人、なんて言ったの?
私は目を丸くして、目の前に立つその男性トレーナーの顔をまじまじと見つめた。