忠誠は獅子座の影に   作:ぼくの友達

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第六章 湖底の影が呼ぶ

洞窟の入口は、海の風に削られた黒い口のように見えた。

レギュラス様とクリーチャーが足を踏み入れた瞬間、

外の世界の光は完全に遮断された。

 

中は、冷たく湿った空気が肌にまとわりつき、

まるで影そのものが形を持っているようだった。

 

レギュラス様は杖を掲げ、

小さな光を灯した。

 

だが、その光は弱く、

洞窟の闇を追い払うにはあまりにも頼りなかった。

 

「……ここだな、クリーチャー」

 

クリーチャーは震えながらうなずいた。

 

「……はい……レギュラス様……

 この先に……入口が……あります……」

 

二人はゆっくりと進んだ。

洞窟の壁には、古い魔法の痕跡が残っている。

ヴォルデモートが施した“血の結界”だ。

 

壁には、血をこすりつけた跡が生々しく残っていた。

クリーチャーがここで血を捧げたのだ。

 

レギュラス様は壁に手を触れ、

静かに血をこすりつけた。

 

その瞬間、洞窟全体が低く唸り、

岩の裂け目がゆっくりと開いた。

 

冷たい風が吹き抜け、

奥の闇が姿を現した。

 

「……これが、入口か」

 

クリーチャーは震える声で答えた。

 

「はい……レギュラス様……

 この先に……湖が……あります……」

 

レギュラス様は頷き、

闇の奥へと進んだ。

 

やがて、洞窟の奥に広がる湖が姿を現した。

 

黒い水面は、光を拒むように静まり返っていた。

その下に何が潜んでいるのか――

クリーチャーは知っている。

 

そして、レギュラス様も知っている。

 

湖の中央には、

小さな島があった。

 

その島へ渡るための道は――

水の中に隠されている。

 

レギュラス様は杖を振り、

水面を探った。

 

すると、黒い水の下から、

古い小舟がゆっくりと浮かび上がった。

 

「……これが、ヴォルデモートの小舟か」

 

クリーチャーは震えながらうなずいた。

 

「水に触れると……亡者が……

 クリーチャーを……引きずり込みます……」

 

レギュラス様は湖を見つめた。

その水面は静かだが、

その下には“何か”が潜んでいる。

 

影が、息をしている。

 

「行くぞ、クリーチャー」

 

二人は小舟に乗り込んだ。

舟は音もなく進み始めた。

 

湖の中央へ向かう道中――

水面の下で、何かが動いた。

 

クリーチャーが息を呑んだ。

 

「……レギュラス様……

 亡者が……見ています……」

 

レギュラス様は静かに答えた。

 

「見ているだけだ。

 私は……お前を守る」

 

その言葉は、

影の中で光る星のようだった。

 

舟が島に着くと、

そこには石盆があった。

 

石盆の上には、

毒薬が満たされた水盆。

 

その毒薬は、

クリーチャーを地獄へ落としたもの。

 

レギュラス様はその前に立ち、

静かに言った。

 

「クリーチャー。

 これは……私が飲む」

 

クリーチャーは叫んだ。

 

「だめです……レギュラス様……!

 クリーチャーが……代わりに……!」

 

「だめだ」

 

レギュラス様は首を振った。

 

「お前は……もう十分苦しんだ。

 これ以上……お前を傷つけたくない」

 

その声は、

優しさと痛みが混じっていた。

 

クリーチャーは涙を流しながら膝をついた。

 

「……レギュラス様……

 クリーチャーは……ご主人様を……守れません……」

 

「守らなくていい」

 

レギュラス様は静かに言った。

 

「これは……私の役目だ」

 

その言葉は、

影の中で光る星のようだった。

 

レギュラス様は水盆に手を伸ばし、

毒薬をすくった。

 

その瞬間、洞窟の空気が震えた。

 

クリーチャーは叫んだ。

 

「レギュラス様――!」

 

だが、レギュラス様は振り返らなかった。

 

「クリーチャー。

 最後の命令だ」

 

その声は、静かで、強くて、優しかった。

 

「私が毒薬を飲み干したら……

 本物のロケットを取り、

 偽物とすり替えろ。

 そして――帰れ」

 

クリーチャーは泣き叫んだ。

 

「いやです……レギュラス様……!

 クリーチャーは……ご主人様を置いて帰れません……!」

 

レギュラス様は微笑んだ。

 

その微笑みは、影をまといながらも、

どこか光を宿していた。

 

「帰れ。

 それが……お前の忠誠だ」

 

そして――

レギュラス様は毒薬を口に運んだ。

 

洞窟の闇が、静かに揺れた。

 

影が、湖底へ沈んでいく。

 

忠誠は獅子座の影に沈む。

その影は――

確かに、終わりへ続いていた。

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