英雄憧憬の少年 作:チョコラテ
第九章 魔剣、ああマッチ棒の代わりね
「ベルは武器とか使わないの?」
そんなアイズのひと言から始まった会議。ベルは恩恵を持たずにLV.1程度なら余裕でしばき回せる為、そんな子供に武器を持たせるのはアカンくね?と言うロキやフィン。いやでも今のオラリオは危ないから武器ぐらい帯刀していた方が良いのでは?というリヴェリアとガレス。武器を持つなら絶対に長剣にしてほしいアイズの三つ巴は、母親のひと言で締め括られた。
「ふむ、じゃあベル、取り敢えずこれで
アルフィアはそう言ってベルに小袋?にしてはかなり重い袋を渡した、中身はなんと1000万ヴァリス!子供の武器にしてはやや高いが、まあ隣のアイズの《デスペレート》に比べれば安い方であるのでフィンやリヴェリアは何も言えない。
「けど、なんで
「どうせオラリオからは出ていく、そしてあっちでも鍛錬は欠かす気はない。壊れない武器の方が都合が良いだろう?」
「あ…はい、ソウデスネ(帰っても鍛錬、少し休憩したい…っと言ったら次の日は偉いことになるんだろうなあ)」
アルフィアに渡された小袋を片手に、ベルとアイズとリヴェリアはオラリオの二大鍛冶派閥の片割れである【ゴブニュ・ファミリア】へと赴いていた。
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▽
アルフィアお義母さんはなんでも「アストレアの所が工場に行くらしくてな、私もたまにはオラリオの治安貢献をしようと思ってな」と言ってアリーゼさん達と一緒に行ってしまった。
「ベルは、どんな武器を…使うの?」
「う〜ん、やっぱり剣かな。お義母さんには素手の戦い方しか習ってないし、後は叔父さんに剣術を教わったくらいだし、やっぱり剣だね」
「…そっか」
「うん…」
「(なんだこの二人の会話、全く続いてない。というかアイズ、お前が振ったんだから会話を続ける努力をしろ!!)はぁ…、それでベル、どういう剣にするのだ?長剣か?短剣か?それとも大剣か?」
ベルはガラスケースに入っている武器に目を輝かせており、アイズはなんとか会話を続けようとして失敗。仕方なしにリヴェリアがベルに会話を振る。
「やっぱり長剣?普通の長剣が良いかな」
「そうか、ならその旨をあの老神に伝えろ」
「…あれ、神様?」
リヴェリアが指を差した方角いた鍛冶師は、真っ白な白髪と白い髭が特徴のThe・気難しい鍛冶師の象徴だった。
ベルはゴクリと固唾を飲み、少し臆しながらもその神へと話しかける。
「えっと、長剣をお願いします。長さはパルゥム用よりやや長いのでお願いします。えっと後は
「…フム、分かった。良かろう」
「珍しいな神ゴブニュ、貴方があっさりと武器を打つなんて。それもこんな子供相手に不壊属性の武器なんて…、私はてっきり拒否されると思っていたのだが」
「お前は儂をなんだと思っとるじゃ。それにそこの坊主、お主
「エウロ…ギア…?なんですかそれ」
「…すまぬ、まあ神々用語で《特別な子供》という意味なんじゃ。まあお主はどうにもそうらしい、まあ憐憫と言うわけではないが、必要ではあるだろうしな」
だから作ると?ベルはそう言う。その言葉にゴブニュは静かに頷いて槌を取る。もうそれ以上話すことはないと言わんばかりに鉄を選び、そしてゴブニュは完全に一人の時間へと没頭した。
ゴブニュの隣いた眷属兼補佐の男が出来上がりの時間を予測、そしてリヴェリアに伝えると、そそくさと三人はその場を後にした。料金は出来上がってから頂くらしい、ベルは手に持つ1000万ヴァリスと言う大金の使い道が減った事に何とも言えない気分になりつつも、大金を落とさぬように慎重にポケットに入れた。
ゴォォォオン
鳴り響く大鐘楼の鐘、まだ正午を知らせるには早く今の時間は十時、であれば答えは一つ。
「アルフィアお義母さんだ…」
ベルはそう呟く、どうやらアリーゼ達と同行していたアルフィアが鳴らしたであろう鐘の音を聞き、ベルはそう断定した。
恐らくリューと輝夜が喧嘩をし、アルフィアのお気に召さなかったのだろう、二人仲良くぶっ飛ばされたらしい。
「火が…燃え上がってた…?」
「の跡だろうな、もう消化されただろう。【
「最近多いですね、工場を狙った襲撃が」
「そうだな、直近だけでももう三度は襲撃されている。何かしらの作為があるのだろうな、私ももうすぐ出張ることになるだろうな」
「危険…ですか?」
「あぁ、だがアルフィアの特訓程じゃない。まだ
リヴェリアは苦笑混じりにそう言う。その言葉にベルは無言で頷く、アルフィアの訓練に比べれば、
何故自分達の味方の方が敵より恐ろしいのか?歯止めの効かない
「では次は【ヘファイストス・ファミリア】に行ってみるか。久しぶりの外出だしな、色々見て回ったほうがお前のためだろう」
「ありがとうございます、リヴェリアさん」
「いや、良いんだよ(はぁ、アイズもこのくらい良い子なら楽なんだかな)」
「…ベル、早く行こう」
「あ!待ってよアイズちゃん」
アイズはベルの手を引いて石畳の上を走る、手を引かれて、つられるようにベルはアイズの後を追う。
それを見て、リヴェリアは優しい笑みを浮かべながらアイズの変化を喜ぶ。
ベルが来てからの一週間、アイズは本当に変わった。笑みを浮かべる回数が増えた、剣を握る時間は変わらないが、ダンジョンに行くのではなくベルと共にアルフィアに稽古をつけてもらっている。アイズ自身ベルとの残り僅かな時間楽しみたいのだろう、そうリヴェリアは内心考えながら二人の後をゆっくりと追う。
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▽
鉄の匂い、焔の燃ゆる音、灰の匂い、槌の響き、鉄を打つ音、鳴り響く様々な音は決して雑音などでは無く、ましてや不協和音などでは無く、とてもリズム良く響く音を頼りにアイズとベルは【ヘファイストス・ファミリア】の工房へと赴いた。
ガチャリとアイズは戸を開けると、そこには和服を着た一人の鍛冶師が居た。
上半身の和服は脱ぎ下ろされ、晒しのみが纏われた状態、室内はとても熱く、アイズとベルは入って早々に汗をかいた。
むさ苦しい熱を帯びた室内には、様々な工具、そして並べられた作品が置かれていた。
何故かアイズは一瞬「ゲッ?!」と苦手な物を観る目を向けた。かつての因縁など知る由もないベルはアイズの反応に驚き、頭にハテナを浮かべる。
「うむ、お主達が主神様の言っていた客人か?…【剣姫】にそっちの少年は…みない顔だな、何処のファミリアの者だ?」
「えっと…僕はベル・クラネルです、ファミリアには所属してなくて…強いて言うなら【ゼウス・ファミリア】…かな?」
「フム、…嘘を言っているようには見えんな。まあどちらでもよい、客か?それとも主神様に用があるのか?」
片目は漆黒の眼帯で覆われた
当然アイズはそんな事知らない、取り敢えずヘファイストス・ファミリアに行くことだけは分かっていたからここに来た、そしてアイズは「マズい、リヴェリアが居ないと分からない」と内心焦る。
再度扉がガチャリと音を立てて開き、熱が外へと逃げる。なかに入ってきたのは純白のマントを纏ったハイエルフ、リヴェリアは目の前の褐色の女性を一瞥、「なる程」とひと言漏らして目の前の職人に言葉を投げる。
「すまない椿、神ヘファイストスの所へ案内してもらえるか?」
「うむ、了解した。なら着いて来い」
目の前の褐色の肌を持つ女性、【ヘファイストス・ファミリア】の団長、
彼女はズカズカと音を立てて歩みを進め、アイズはさも当たり前かのようにベルの手を握って手を引く。
椿の案内によりヘファイストス・ファミリアの執務室前へと案内される、椿はリヴェリアに「主神様への挨拶は要るか?」と問うと「流石にそこまでは良い、すまないな椿」と返す。流石に長い付き合いの二人、椿の気遣いにリヴェリアは感謝しながらも断る。流石にこれ以上面倒を掛ける訳にもいかず、そして今は暗黒期、とにかく武器が足らない現状で鍛冶師を引き止めるのはどうかと思ったリヴェリアは椿に感謝を伝えて自らヘファイストス・ファミリアの執務室の戸を叩く。
コンコンコンと三度軽快な音を鳴らす、すると中から女性の声が聞こえ、「入っていいわ」と入室の許可を頂く。
リヴェリアは片手で戸を開き足元のアイズとベルを先に入室させ、その後を自身も執務室へと入った。
「あら、【
「いいや、違う。今日はこの少年の武器を見繕ってほしくてな。パルゥム用の武器で良い、取り敢えず」
そう言うとリヴェリアは足元にいるベルに視線を移す、赫灼の短髪の女神ヘファイストスはリヴェリアの視線を辿ってベルを見る。
なる程、と小さく零して席を立つと、ヘファイストスは「案内するわ」と言ってリヴェリアたちと共に執務室を出た。
「にしても、随分と肩入れしているみたいね。その少年はそんなに特別?」
「まあな。この子も…そしてその親も、っと言った所だ」
「へぇ~、ウチにもいるのよね。
「ほう?それは有望そうだな。新人の鍛冶師か」
「えぇ、まあその子は
曰く、ラキア王国の鍛冶貴族だった少年は、魔剣を打つことを強要する周りの大人に辟易し、主神の手助けを借りながらラキアを出たらしい。
その後オラリオに来てヘファイストス・ファミリアの門を叩き、無事神ヘファイストスのお眼鏡に叶い入団を認められたらしい。
名をヴェルフ・クロッゾ、かつて
「その人、凄い人なんですか?リヴェリアさん」
「あぁ、凄いだろうな。何せ同胞の里を焼いたあの魔剣の威力は、魔法以上だったと聞いている。もしその者のお眼鏡に叶えば、お前も剣を打ってもらえるかもな」
「あら、驚いたわ。貴方はてっきり怪訝な顔をすると思っていたのだけど?」
「別に、そのような事は考えていない。もとは同胞がラキアを挑発したのだ、それに憤慨したラキアが魔剣を使って森を焼いた。結果的にクロッゾの魔剣は打てなくなったと聞くが…、その者は打てるのだろう?」
「えぇ、まあ打てるだけで、打とうとは中々しないのよね。今試しに1本打ってもらってるけど、まああの子自身はかなり自分の魔剣を毛嫌いしているみたいなのよね」
ヘファイストスは勿体ないと言わんばかりな態度を示す、リヴェリアはそれを見てやや苦笑いし浮かべる。
ベルは通路に並ぶ剣等の武器に目を輝かせ、アイズもガラスケースに並んだ剣をまじまじとみながら歩みを進める。
「ベル…だったかしら?貴方はヴェルフに剣を打ってもらいたい?」
「僕は…その人がいい人…?だったら打って貰いたいかもです」
「いい人…それってかなり抽象的ね」
「えぇっと、気持ちが籠もってる?って言うんですかね。叔父さんが言ってたんですけど、自分の事を考えて、武器を真剣に打ってくれる奴に武器を打ってもらえって言われて」
「へぇ、随分としっかりした人ね。その人の名前は?」
「えっと、『ザルド』って言います」
………。
「…え、ザルド…?」
ヘファイストスはその名前を聞いて目を見張った。そしてリヴェリアがベルの出生を触りだけ説明。彼の大神の義理の孫にして最強のファミリアの生き残りである事をリヴェリアの口から説明されたヘファイストスは眉間に指を当てて唸り声を上げた。
「…そう、確かに特別扱いも理解できるわ。最近物凄く強い冒険者が二名、オラリオに来たと言うことは聞いていたけど、それがあの二人だったなんてね」
「ヘファイストス様は知ってるんですか?お義母さんと叔父さんの事」
「えぇ、知っているわ。っと言っても触りだけよ、ゼウスとはそこそこ関わりがあったし、ヘラともね。でも…貴方があの時に見た子の息子だったなんてね」
「…あの、お母さんの事も知ってるんですか」
「遠目から一度だけね」
ヘファイストスが見たのは、白髪の少女が車椅子に乗せられ、あの傍若無人なヘラが優しい笑みを浮かべて自ら車椅子椅子を押していた光景。蒼色の瞳が特徴的であり、その汚れを一切孕まない白髪は、見るもの全ての心を洗う程だったと。
「そう考えると、貴方は似ているわね。その髪、大切にする事ね。…瞳の色は父親譲りって事?」
「…うんと、そういうわけではなくて…最初は
「そうなのね、でも珍しいわね。後天的に瞳の色が変わるなんて」
「そのおかげで、お義母さんにも…ヘラお祖―――ゲフンゲフン――ヘラお姉様にも目を抉られずに済んだので、良かったです…はい」
「そ…そう、それは、、良かったわね(ヘラの奴、子供相手に何をしたのよ。それにお姉様って、エグいわね)」
ベルは酷く怯えていた。かつて一度だけあった事があり、その時のトラウマを思い返してベルは身を激しく震わせた。その怯え具合にアイズはビクッと驚き、リヴェリアは何かを察したかのようにベルの頭を撫でた。
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▽
暫く雑談を交えながら、ヘファイストスの案内で一つの工房に着いた。辺りは暗く、その工房の壁に立てかけられた木の板には『ヴェルフ・クロッゾ』と書かれており、ここが彼の工房である事を指していた。
「ヴェルフ、入るわよ」
ヘファイストスはそう一言投げかけ、木造の扉を開いて中に入る、ベル達もその後に続く。
中に居たのは、蒼のバンダナを頭で巻いた少年だった。黒の着流しを着ており、その額からは滝のような汗が流れていた。
たった今研磨し終わった剣を赫灼の短髪の少年――ヴェルフは品定めするように見据える。
「ヘファイストス様?…あぁ、たった今出来ましたよ。これで良いんですか?」
「…えぇ、にしても凄いわね。私にでもそれの凄さが分かるわよ」
「…ヘファイストス様が言うと、少し嫌味に聞こえますね」
「あら?そうかしら。私は称賛の意味で言ったのだけど」
ヘファイストスは含みのある笑みを浮かべてヴェルフに言う。ヴェルフは少し苦笑しながらも言葉を返す。
そんな中、ベルはヴェルフの持つ魔剣を興味津々で見る。その視線に気付いたヴェルフは若干眉間に皺を寄せる。
「どうしたお前、
「…えっと、はい!魔剣ってもっと小さいと思ってて、だから実物を見て驚きました!」
「…ベル、お前はアルフィア達に『魔剣』についてどう教わっている?」
リヴェリアの問いに、ベルは若干困りながら言葉を選ぶように言う。
「えっと…マッチ棒?って言ってました。金の無駄、薪に火を付ける時以外使った事がないって…。何より魔剣は使い手を腐らせるから使うなって言われたした」
「…そうか、にしてもマッチ棒か…。彼奴なら言いそうだな」
「あ!言ったのはザルド叔父さんですよ。アルフィアお義母さんはそもそも触ったこともないって」
その言葉にリヴェリアは苦笑し、ヘファイストスもクスクスと笑いを零す。
そんな中、ヴェルフは真剣な眼差しでベルに問いかける。
「お前は、どう思う?」
「魔剣、ですか?」
「……。」
「えっと、そもそも魔剣は武器じゃなくて消耗品なので、普通の武器とは違うと思いますし…えっと…、あったら良い、無くても良い、みたいな? 感じですね」
「──クククッ、そうか、お前もそう思うか」
ヴェルフの言葉にベルは頭に疑問符を浮かべる。
そしてヴェルフは目の前の少年に向かって問いかける。
「お前、名前は?」
「ベル、ベル・クラネル!」
「そうか、ベルか。俺はヴェルフ・クロッゾ、家名で呼ばれんのはあんま好きじゃねぇんだ、名前で呼んでくれ」
「…ヴェルフ…さん?宜しくお願いします!」
「フッ、あぁ、宜しくな」
これが、僕とヴェルフ・クロッゾとの出会い。 まるで何かに導かれるように…或いは何かの因果をなぞるように、僕はヴェルフの武器を手に取った。
なかなかモチベが上がらず…なんか駄作になっちゃいました…。すいません。
これからもちょくちょく投稿するので…確認お願いします。
短い上にあまり面白いものを作れず申し訳ありません。