ユカリ様の番犬   作:三笠みくら

9 / 9
ストーリークリアまで飛びます


番犬の恩返し

 

ある日の昼下がり。セイカがマチエールからの依頼を受けて花屋に向かうと……

 

 

「……カズミさん?」

 

「え……あ、セイカ」

 

 

そこには、花たちを睨むカズミがいた。

 

 

「もしかして…不審者ってカズミさんのこと?」

 

「……不審者?」

 

「今朝からずっと花屋さんの前で立ってる怪しい男がいるから調査してくれって……見た目も証言通りだし…」

 

「…そっか、そんなに時間経ってたんだ」

 

「なにかお悩みですか?悩み事ならわたしが聞きますよ!」

 

「…確かに、同じ性別だしわかるかも。あそこのカフェで話そう」

 

 

近くのカフェに移動し、席に着くと、早速カズミは真剣な顔で切り出した。

 

 

「……実は、今度ユカリさまの誕生日。何を渡せばいいのか、悩んでた」

 

「あー、そういえば招待状届いてたなぁ……」

 

・ユカリの招待状

『セイカさまへ 実は近日わたくしが誕生日を迎えます わたくしの誕生日を記念してシュールリッシュで盛大なパーティを行います セイカさまにはぜひとも参加していただきたく もちろんバトルもございますのでいらしてください 追伸 絶対にいらしてください』

 

「それで、オレもなにかプレゼントを渡したいって言った。そうしたら、ユカリさまが…」

 

『まぁ、それは嬉しいわ♡でもそうねぇ……だったら、ありきたりなプレゼントはイヤだわ?ジュエリーやバッグ、お洋服は普段から好きなだけ買えますし……カズミの思う、特別で唯一なプレゼントを頂戴?』

 

「……って」

 

「うわぁ、無理難題……」

 

 

実際、ユカリはほぼ全てを持っていると言っていい。どれだけ高価であろうと、金で買えるものはユカリにとっては「ありきたり」なのだろう。だからと言ってこんな無理難題を要求するものだろうか……セイカは改めて、ユカリのフリーダムさを噛み締めた。

 

 

「ユカリさまを失望させたくない、でも何を渡せばいいか分からない……花屋さんできれいな花を見たけど、なんだか違う気がして」

 

「そうですねぇ、お花もお金で買えちゃうし……」

 

「うぅ、困った……セイカは、なにかもらって嬉しいものはある?」

 

「わたし?うーん、でも相手がわたしのことを想って選んでくれたものなら嬉しいけどなぁ……ユカリさんもそこは違わないと思うんですけど」

 

「なるほど、ユカリさまのことを想って……」

 

 

うーんと頭を捻るカズミを見て、セイカは改めて彼の忠誠心を実感した。

 

 

「だったら、カズミさんとユカリさんについて詳しく教えてくれませんか?そうしたらなにか分かるかも!」

 

「オレと、ユカリさまについて?」

 

「はい!ずっと気になってはいたんですよ、なんでカズミさんはユカリさんに仕えているのかなって。それとは別に、カズミさんの見てきたユカリさんを思い出していけば、何で喜んでくれるか分かるはず!」

 

「なるほど……それはいい考え。」

 

 

若干考えつつ、カズミはぽつぽつと自分とユカリについて話し始めた。

 

 

「……もともと、オレは母親と一緒にミアレに来た。でもすぐに男を作って出ていって…お金も少ししか残ってなくて。家を追い出されて、路地裏とかで暮らすようになった。」

 

「そうだったんだ……」

 

「ZAロワイヤルのことはあまり知らなかったけど、勝負で勝ったらお金がもらえるから、お金を持ってそうなトレーナーを狙ってた。そうしたら…ユカリさまに見つかった」

 

「それから、どうして犬なんていう立ち位置になったんですか?」

 

「もともと、ユカリさまは犬が欲しかったんだって。素直で、忠実で、かわいい……。そのイメージにオレがぴったりだったって。……正直、オレも良く分かってないけど。でもユカリさまは、それからオレに色々教えてくれた。読み書きとか、食事の作法とか。今のオレがあるのは、ユカリさまのおかげ」

 

「………」

 

 

セイカは感動していた。ユカリにそのような一面があるとは。プリズムタワーの暴走時に見せたノブリス・オブリージュは口先だけのものではないのだと、実感させられた。……それでも犬発言は分からないが。

 

 

「だから、オレはユカリさまがスキ。ユカリさまに喜んで欲しい。ユカリさまにはいつも笑顔でいてほしい。」

 

「カズミさん……」

 

 

改めて話を聞いて、セイカの中にあったカズミへの憧れは形を変えた。もちろん無くなったわけではない。ただ、以前はカズミのことを王子様のように思っていた。だが、カズミの心はユカリのもので、そこに他者が入る余地はなかったのだ。今セイカの心にあるのは、カズミというひとりの健気な少年への優しい気持ちであった。

 

 

「……そうだ、思い出した!」

 

「何を!?」

 

「前に、オレがユカリさまの名前を書いて渡したとき。ユカリさま…すごく喜んでくれた。……うん、なにを渡せばいいか、分かった気がする…!!」

 

「本当ですか、よかった!」

 

「うん、ありがとう……セイカ。よし、今から早速書いてくる!これはお礼!」

 

 

ゴージャスボール10個とラブラブボールを置いて、カズミは走り去っていった。セイカはただ、カズミのプレゼントがうまくいくことを願うばかりであった。

 

 

 

 

 

ユカリの誕生日 当日

 

 

「みなさま!本日はわたくしのためにお集まりいただきありがとうございました!!たくさんのプレゼントにたくさんのバトル!わたくしとっても幸せでした!ではまた、次のユカリトーナメントでお会いしましょう〜〜!!」

 

 

ユカリの誕生日パーティは、結局ユカリトーナメントとほぼ変わらなかった。バトルを行い、MSBC会員がユカリを讃え。そうしてパーティは終わりを迎えた。

 

 

「うふふ、素晴らしいパーティでしたわ♡……さあ、ハルジオ、カズミ?わたくしへのプレゼント、ちゃあんと用意できているのかしら?」

 

「……はい」

 

「はい」

 

「それではカズミ、プレゼントをちょうだい?」

 

「オレの用意したプレゼントは……これです」

 

 

カズミが手渡したのは……花柄の小さな封筒。それを開くと、カズミの拙い字で書かれた手紙が入っていた。

 

 

「あらあら、まあまあ……」

 

「オレは、ユカリさまに出会ってからずっと幸せ。だから……その気持ちというか、お礼を書きました。」

 

「…………」

 

 

ユカリは静かに、カズミの手紙を読み進める。そうして読み終えると……

 

 

「カズミ!!!」

 

「うわっ」

 

 

カズミを抱きしめた。むぎゅーという音が聞こえてきそうなほどに強く。

 

 

「ああ、なんて素敵なの!!カズミ、あなたは最高です!!わたくしの望むものをこんな形でくれるだなんて!!やっぱりあなたはわたくしに忠実で、誠実で、素直で!!そして何よりかわいい!!素敵!!ファビュラス!!なんてマーベラス!!よ〜しよしよし!!」

 

「ユ、ユカリさま……」

 

「うふふ、すぐに額縁を手配して飾らないと!ああでもそうすれば読み返せない……悩ましいわ!!」

 

「……よかったな、カズミ」

 

「……うん」

 

 

そのあとはテンション上がりまくりのユカリにハルジオがボコボコにされたりしたが、ユカリの誕生日は無事に終わりを迎えた。

 

それから数日。今日も今日とてユカリトーナメントは開催されていた。

 

 

「さあ、ユカリトーナメントを始めましょう!!最初の対戦はこの2人!!」

 

 

「ZAロワイヤル最強にしてミアレの英雄!セイカさま!そして……」

 

 

「わたくしの愛しき番犬!!」

 

 

「カズミですわ〜〜!!」

 

 

Fin




カズミ
ユカリさまの犬。ユカリさま大好き。

ユカリ
超絶わがままお嬢様。フェアリー使いじゃなくてフェアリータイプそのもの。


これにて完結です。もしかしたらまた更新するかもね。

感想・お気に入り登録お願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

とあるリオレウスの異種族ハーレム物語(作者:元洋菓子職人II)(原作:モンスターハンター)

 若きリオレウスは番を探していた。なんてことない普通の生態系の一つでしかなかった。▼ 「どうしてこうなった…」▼ 頭を抱え、目の前を見ればそこにいるのはリオレイアだけではない。他の飛竜種の雌達がリオレウスの前で眠りについている。全員、彼の番である。▼ これはとあるリオレウスがとんでもない異種族ハーレムを形成し、生態系をめちゃくちゃにする物語である。


総合評価:4349/評価:8.78/連載:31話/更新日時:2026年10月03日(土) 12:00 小説情報

貞操観念ぎゃくてん・ざ・ろっく!(作者:テト)(原作:ぼっち・ざ・ろっく!)

貞操観念逆転ぼざろ世界で結束バンドのマネージャーやるお話です。


総合評価:2813/評価:8.11/連載:11話/更新日時:2026年09月18日(金) 12:57 小説情報

映像機画版携帯獣世界転生物語(作者:こうすけ増田劇場版)(原作:ポケットモンスター)

なんか知らんがアニポケの世界に転生してた。


総合評価:2664/評価:7.42/連載:33話/更新日時:2026年09月06日(日) 00:05 小説情報

ケロロ軍曹 転生して早々記憶喪失!? であります!(作者:リボーン2期待ってます)(原作:ケロロ軍曹)

転生してからの14年分の記憶がスッポリ消えた転生者の話。あらすじは後で考えます。


総合評価:4635/評価:8.75/連載:21話/更新日時:2026年10月01日(木) 06:00 小説情報

死ぬ気で戦ったら宿儺に親友認定された件(作者:雨天)(原作:呪術廻戦)

▼ 呪術廻戦のファンだったオリ主が平安時代に転生し、生まれ持った強さから両面宿儺討伐に参加することになり、仲間達がやられても戦い続けたら宿儺に親友と呼ばれるようになった話。▼ 活動報告はXで行っています。▼ → https://x.com/uten80▼タグは随時追加


総合評価:3445/評価:7.62/連載:6話/更新日時:2026年07月19日(日) 02:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>