まことしやかに世間では言われるが、
では実際、どの程度の家事を男性が行なっているのか?
気になっている人は少なくないはず。
そんな国民達の声を受け、政府は
「家事貢献度測定検査」
を公的機関にて作成、発表すると宣言する。
「ついに自分達の評価が公的に認められる!」
と色めき立つ妻達。
果たして、事の顛末は如何に!
夫の家事に満足しているか?
と妻側に訊ねると満足していると答える人は
たったの16.7%だと言う。
しかし、夫側に自らの家事を評価させると
86%の夫が高評価をつけた。
この妻と夫の格差を埋めようと、
政府機関が一つの指標が提示すると発表する。
当初、公的に正式な家事貢献度が判定できると聞いた
妻達は諸手で賛成し、測定方法の公表されるのを今か今かと
待ち望んでいた。
しかし、
「家事貢献度測定検査」
と名付けられたそれの一部が何者かの手によって、
ネット上に流出されられるや否や、
妻側からの大ブーイングの嵐が巻き起こることになった。
何故ブーイングを受けたか?
それは測定検査の一番初めの項目に理由があった。
「家計における夫、妻双方の経済的負担はそれぞれ何%ですか?」
いの一番経済負担について聞く設問に、
妻側は発狂でもしたかの様に噛みついた。
「家事への貢献を査定するのに金銭の負担は関係ない」
噛みついた人々の意見をまとめるとそう言った内容だったが、
「家事はタダでは出来ない。食材も洗剤も家電製品だって、何なら家にだって家賃やらローンやら払う必要がある。全ては負担する者がいてこそ成り立つ」
と家事において原資となる金銭の負担を取り上げるのは当然と一蹴される。
もちろん、そこまで言われても不満を述べる女性たちは
多かったが、今では多数派となっている
「共働き」世帯の妻側が
「経済的視点も大事」
との主張を始めた事により、専業主婦世帯の妻側も
渋々折れる事になった。
しかし、その後も少しずつネットに流出される
「家事貢献度測定検査」の内容が、
「保険の支払い主はどっち?」
「家電が壊れた際の修理費用は誰が払うのか?」
「学費の支払いは?」
等々、延々と経済関係の設問が続いている事に妻達は戦々恐々となる。
そんな妻達の気持ちとは裏腹についに最も、
妻達が触れてほしく無い設問が含まれている事を判明する。
それは、
「家族用の貯蓄の名義は?引き出しや額の確認はお互いが確認できるのか?」
と言う設問だった。
この設問の存在が知れ渡ると再度女性達は猛抗議した。
日本の夫は70%以上が妻の貯蓄額を知らないほど、
妻への信頼度が高い上、家族の貯蓄は妻名義でされる事が大半だった。
要するに、多くの家庭で、貯蓄に関しては女性が独占していたのだ。
猛抗議はその既得権に踏み込まれたく無い者が多かった事の証左であった。
そんな妻側の心理を踏まえた上で、
「共有財産である貯蓄を一方のみが自由にできると言うのは、共有財産とは言えない」
との説明がなされる。
反発は自らの後ろ暗さの裏返しの証明になってしまうと、
渋々、妻達は家族の貯蓄を夫に開示する様になり、
この動きは全国に広がった。
その後、日本は騒然とする。
「稼ぎが少ないのだから仕方が無い」
「人生100年時代、老後の備えは必要」
と僅かな小遣いで忍耐を強いられていた夫達に、
缶コーヒー一つ買うのも渋る様な日常だった彼らに、
突如として、まとまった額の資産が現れたのだ。
夫婦の共有資産なのだから半分は自分に権利がある。
それは、夫達にとっては、最早、埋蔵金だった。
その額を見た夫達の反応を一人一人は追えなかったが、
その日の翌日を境に離婚する夫婦が急増した事が、
その答えの一つでは無いだろうか?
話が逸れた。
離婚した者たちの話はひとまず傍に置いておいて、
「家事貢献度測定検査」に話を戻そう。
さて、次々と経済関係の設問が続いていたが、
先ほどの口座の名義についての問いが最後だった様だ。
次に流出した設問は家事そのものについての設問だった。
「やっと自分達が評価される番だ!」
と色めき立つ妻達。
しかし、設問を実際に見た妻達の反応は微妙だった。
何が?と言うわけでは無いが、
何と言うか、設問の内容が細かすぎるのだ。
妻達のイメージだと、
「夕飯の支度をするのは妻か?夫か?」
程度の感覚だったものが、
食事だけでも、
献立の検討から始まり、
材料の買い出し、
下ごしらえ、調理、配膳など全部で10項目に分かれており、
しかも、月曜から日曜日まで1日ずつ、
しっかりと朝、昼、晩の3つそれぞれ分けて答える様になっていた。
食器洗いも別項目で、食器の回収から洗浄、
乾かして棚にしまう所までみっちり8項目もあった。
もちろん曜日別で3食毎に分けられて。
一体、何が妻達の反応を悪くしているのかと言うと、
例えば昼食。給食や夫が外で食べている場合は、
自分の仕事にカウント出来ないのだ。
さらに週末だけ夫が食事を作ったりする家では、
1週間のうち、2日は夫の分担が多くなってしまう。
それどころか、週末にまとめて夫と買い出しをする家は
買い物の担当は夫婦50:50となってしまう。
しかも、毎日の風呂掃除や外出時の車の運転など、
比較的夫がやりがちな項目までふんだんに盛り込まれている。
要するに今まで、ざっくりと
「家事は私ばかりがやらされている」
と主張していた妻側にとって、
夫の分担割合が数値化されるという事態は、
何でもかんでも妻側がやっていた訳では無い事が可視化されて
しまうという事と同意である事に気付いてしまったのだ。
しかし、気付くのが遅過ぎた。
妻達が慌てて「家事貢献度測定検査」の公表を差し止める様、
政府に訴えかけようと集まった時には、
既に検査の全設問がネットに流出してしまった後だった。
流出された検査の結果が次々とSNS上に報告される。
それらのデータを集計する者が現れ、
これらのデータの平均値がまとめられる。
「家事貢献度平均、夫…49%、妻…46%、その他…5%」
経済関係の設問が効いたのか、夫側の方が僅差ではあったが、
貢献度が高いという結果になった。
この検査結果はメディアにも取り上げられ、
連日、その話で持ちきりとなった。
この結果に、状況に妻側は激怒した。
ネット上に上がったこのデータ結果に、噛みつき、
削除依頼を乱発し、炎上させた。
しかし、消させても、消させても再びアップされる。
消せば増えるの法則がテキメンだった。
次に妻達は女性団体をけしかけ、「家事貢献度測定検査」の
話題を取り上げない様に各メディアに圧力をかける。
しかし、いつもなら女性たちの意見を最大限聞いてくれる
メディアが、
「今回ばかりは力になれない」
と協力を拒んだのだ。
理由を尋ねても、
「上からの指示なので何とも…」
と歯切れの悪い返事しか返って来ない。
腹の虫が治らない妻達は、
「真に我々、婦人の苦労と頑張りを評価出来る、正しき測定検査を作ろう!」
と結集して、新たに
「真・家事貢献度測定検査」
を作り上げて公表する。
だが、結果は散々で、誰も見向きはしなかった。
それも当然だ。経済的要素を全て無くし、設問自体も
「どちらが主にやっているか?」
とざっくりとした設問に、先の測定検査で精密な検査をしってしまった
人々を納得出来るはずがないのだ。
かくして、長年に渡り、夫婦間の不和の素となっていた
「夫が家事をしない」論争に幕が降りたのであった。
さて、今回の「家事貢献度測定検査」によって発生した
多くの離婚者達についても触れておこう。
彼らは銀行から資金が次々と引き出した。
名義が妻の名義なのだから当たり前と言えば当たり前だが、
妻の口座から自分の金を取り戻した夫達は、
その金を銀行にある自分の口座に入れはしなかった。
著しいインフレが巻き起こっている中で、
年々サービスの質が下がっている上、あらゆる事に
手数料をつけようする銀行に金を預けるメリットがないと
判断されたのだ。
では、その金はどこに行ったのか?
資産運用である。
時には物に、時には技術に、会社そのものに投資をする。
投資が社会を上手く活気づかせてくれた。
銀行は悲鳴を上げていたが、経済は回ったのだ。
数年後、
ニュースでは
「政府は長く続くこの度の好景気を家事検査景気と名付けると発表しました」
と報道している。
その報道を見ながら、
室内に高級な調度品が置かれた部屋で恰幅の良い男性が、
「いやあ、上手くいきましたね総理」
と誰かに話しかけている。
その問いかけに、
「本当に。全くマスコミからの影響を受けにくい現役世代の男性に資金を持たせる為の作戦でしたが、上手くいって良かったですね」
と凛とした笑顔で答える女性。
「この景気と総理の実績。これからも総理の政権は長く続きそうですな」
と言った後、ガハハハと高らかに笑う男性。
「あらあら、これからも一歩一歩国民の為に働くだけですよ」
と言い、オホホと笑う女性。
総理執務室からは2人の大きな笑い声が響いていた。