フーシャ村に到着した翌日。
俺──17歳になった遊城十代(結城大雅)は、ガープじいさんに首根っこを掴まれ、うっそうと茂る「コルボ山」の山道を歩かされていた。
「じいちゃん、今日はどこ行くんだよ? おれ、十代とあいつ(クレイマン)と早く遊びてぇのに!」
麦わら帽子を揺らしながら不満そうに歩く10歳のルフィを横目に、俺は周囲の油断ならない気配を察知していた。本部の演習場とは違う、本物の大自然の、そして野生の殺気。
「ガハハ! ルフィ、今日はお前を『ダダン』のところに預けにいくんじゃ。十代、お前もついて来い。山賊どもの根性を少し叩き直してやるわい」
「山賊ねぇ……。海軍の中将が山賊の家に身内を預けるって、やっぱり普通じゃないよな、おじいさん」
俺が苦笑いしていると、前方の茂みが激しく揺れた。
「おい、そこを動くな!」
飛び出してきたのは、2人の少年だった。
1人は、そばかす顔に不敵な笑みを浮かべ、鉄パイプを構えた少年。──ポートガス・D・エース(13歳)。
もう1人は、シルクハットを被り、同じく鉄パイプを握りしめた少年。──サボ(13歳)。
2人ともまだ子供だが、その眼光は野生の獣そのものだ。ガープじいさんの姿を見るなり、あからさまに嫌そうな顔をした。
「ちっ、クソじじい……また来やがったか」
「ん? エース、隣にいる奴は見ない顔だな。じじいの部下か?」
サボの視線が、17歳の俺に向けられる。13歳の彼らからすれば、4歳上の俺はそれなりに体格のいい「大人の海兵」に見えるのだろう。
「おい、エース! サボ! こいつは十代だ! すげぇ面白い奴なんだぞ!」
ルフィが能天気に見当違いな紹介をする中、エースは俺の赤いジャケットを睨みつけ、鉄パイプを突き出してきた。
「海軍の回し者が何しに来やがった。ここはお前らみたいな公務員がノロノロ歩く場所じゃねぇんだよ。……おい、そこの赤ジャケット。強そうに見えるが、おれと勝負しろ!」
13歳のエースのトゲトゲしさは半端じゃない。だけど、その奥にある「負けたくない」という強い意志は、どこか俺の知っているデュエリストたちの熱さに似ていた。
「いいぜ、売られた喧嘩をターンエンドにするわけにはいかないからな」
俺はニッと笑い、ポケットから1枚のカードをスマートに抜き出した。
「ただし、俺が生身で相手をすると年齢差(4歳差)でズルになっちゃうからさ。俺の代わりに、こいつと遊んでくれよ。──現れろ、『E・HERO スパークマン』!」
バチバチバチッ!!
眩い青い電撃と共に、全身を青いボディスーツと白いアーマーで包んだ輝く戦士──スパークマンが、一瞬にして俺の前に立ちはだかった。
「なっ……!?」
「何だあいつ!? どこから出てきた!?」
エースとサボの顔が驚愕に染まる。ルフィは後ろで「出たーーー! 電気のヒーロー!!」と大はしゃぎだ。
「おいサボ、油断するな! 悪魔の実の能力者か何かだ!」
「ああ、いくぞエース!」
2人は息の合ったコンビネーションで、一斉にスパークマンへと飛びかかった。鉄パイプが鋭く空を切り、スパークマンの装甲を狙う。
だが、スパークマンは俺の指示を待つまでもなく、最小限の動きでその一撃を華麗にステップで回避。さらに、鉄パイプの先端を指先で軽く弾き、バチッと微弱な静電気を流した。
「あつっ!?」
「手が痺れる……!」
2人が距離を取ったところで、俺は手を叩いてスパークマンをカードへと戻した。
「そこまで! これ以上やると、お互い怪我しちゃうからね。どうだ? 俺の相棒、強かったろ?」
エースは痺れる手を握り締め、悔しそうに俺を睨みつけた。だが、その目からは先ほどまでの「拒絶」ではなく、「こいつは何者なんだ」という強い好奇心が滲み出ていた。サボもまた、感心したようにハットの縁を触っている。
「……へん、手品みたいな真似しやがって。だけど、お前自身は戦わねぇのかよ」
「俺の戦い方はこれなんだ。仲間(HERO)を信じて、一緒に勝利を掴む。それが俺のスタイルだからさ」
17歳の俺が胸を張って言うと、それまで黙って見ていたガープじいさんが、ガシガシと俺の頭を大きな手で 揺らしてきた。
「ガハハハ! 見たか悪童ども! 十代は本部でもワシの特訓に耐え抜いた男じゃ! お前たちもこれくらい骨のある男になれ!」
「うるせぇ、クソじじい!」
そんな騒ぎを聞きつけたのか、山道の奥から、巨大な体躯をしたオレンジ髪の女性がドタドタと走ってきた。
「おいガープ! また勝手にガキを連れてきやがって……って、誰だいその派手な赤ジャケットの男は!」
コルボ山の山賊、カーリー・ダダン。彼女は俺の姿を見るなり、海軍の新手かと思って身構えた。
「ダダン、こいつも数日間ここに泊める。飯を多めに用意しておけい」
「はぁあ!? ふざけないどくれ! うちの財政はもう火の車なんだよ!」
ダダンがギャーギャーと怒鳴り散らす中、俺はルフィ、エース、サボの3人を見渡した。
海軍と山賊、そして未来の大海賊たち。普通なら絶対に交わらないはずの線が、このコルボ山で奇妙に絡み合っている。
「(エースにサボ、それにダダンか……。あいつら、口は悪いけど、根はすげぇ良い奴らじゃん。よし、滞在中の数日間、こいつらとも思いっきり『楽しんで』いこうぜ!)」
俺はポケットのカードたちに語りかけるようにそっと触れ、これから始まる嵐のような毎日に、17歳の十代らしく、不敵な笑みを浮かべるのだった。