某海賊漫画に転生したHERO好きな決闘者   作:タンの串焼き

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第11話シャボンディ諸島の斜陽、決意のターンエンド

シャボンディ諸島──巨木ヤルキマン・マングローブの根から放たれる特殊な天然樹脂のシャボン玉が、至る所でキラキラと宙を舞う、一見すればおとぎ話のように幻想的で美しい島。

 

だが、その美しさは剥製に塗られた安っぽい絵の具のようなものだ。一歩街に足を踏み入れ、鍛え上げた『見聞色の覇気』をほんの少し広げただけで、俺の脳内には島全体に渦巻く悍ましい「悪意」や、虐げられた者たちの「恐怖」「絶望」の感情が、濁流となって容赦なく流れ込んできた。

 

ここは、世界政府の闇が最も色濃く、生々しく形となって現れる場所。

 

政府非加盟国の人間や魚人族が商品として売り捌かれる「人間オークション」が公然と開かれ、差別と略奪、そしてあらゆる理不尽が『法』の裏側で平然と見逃されている無法地帯。それが、この島の本当の姿だった。

 

「おい、そこをどけ! 聖なるお方がお通りだ! 全員跪け(ひざまずけ)っ!!」

 

突如、それまでざわついていた街の喧騒が、まるで時間が凍りついたかのように一瞬で静まり返った。

 

周囲の買い物客や旅行者たちが、青ざめた顔でパニックになりながら、何かに怯えるように一斉に地面へ平伏していく。

 

カツン、カツンと、静まり返った通りに不遜な足音が響く。

 

そこに現れたのは、頭に奇妙なガラスの宇宙服のようなマスクを被り、傲慢な足取りで歩く者たち──世界の創造主の末裔であり、この世界の神を自称する絶対権力者、『天竜人』だった。

 

彼らは、ただ機嫌が悪いというだけの理由で、道端に平伏していた民間人の老婆を虫ケラのように力任せに蹴り飛ばした。老婆が悲鳴を上げて転がっても、誰も助けようとはしない。それどころか、天竜人はその隣にいた若い女性を値踏みするような目で一瞥すると、「お前、私の奴隷になれ」と平然と首輪を嵌めようとした。

 

「……っ!」

 

俺の身体が、怒りのあまり勝手に動きそうになった。

 

だが、その一歩を踏み出す前に、俺の視界にある光景が飛び込んできた。

 

天竜人のすぐ後ろを歩き、彼らが犯すあまりにも理不尽な暴挙を、止めるどころか、深く頭を下げて黙認し、むしろ周囲の人間が反抗しないように銃を構えて護衛している者たち──。

 

それは、俺と同じ白いコートを羽織った、海軍本部の海兵たちだった。

 

「これが……世界政府のトップ。俺たちが命を懸けて、正義の名の下に守っているものの正体なのかよ……」

 

頭を鉄槌で強く殴られたような、激しい衝撃と眩暈が俺を襲った。

 

地方の海軍支部がやっていた汚職や海賊との癒着なんて、この世界を支配する巨大な構造の、ほんの些細な一端に過ぎなかったんだ。

 

海軍という組織は、民の涙を拭う正義の味方なんかじゃない。

 

この腐りきった世界政府のシステムを維持し、天竜人という絶対的な巨悪が傷つけられるのを防ぐために、上から都合よく使われているだけの「都合の良い盾」だった。俺の背負う『大佐』という階級も、この悪行の片棒を担ぐための証明書でしかなかったんだ。

 

胸のポケットの奥、魂のデッキが、カードたち自身の悲しみと、烈火のごとき怒りで激しく震えるのがはっきりと分かった。

 

HEROは、誰かを虐げ、他人の明日を奪って嘲笑う者のために戦う存在じゃない。

 

遊城十代の、そして結城大雅の正義は、こんな汚い力に加担するためにあるんじゃない。

 

「……決めたぜ」

 

俺は平伏する群衆の中でただ一人、真っ直ぐに立ち尽くしたまま、胸に光る海軍大佐の階級章を静かに、だけど力強く見つめた。

 

もう、これ以上自分自身の魂に嘘をつき続けるのは、完全にターンエンドだ。

 

海軍を辞める。

 

これからはこの窮屈で薄汚れた正義の制服を脱ぎ捨て、誰の命令でもなく、俺自身の意志で、本当の「HERO」としてこの狂った世界と向き合ってやる。例えそれが、世界政府という巨大な敵に一人で立ち向かうことを意味するとしても。

 

天竜人の行列が通り過ぎ、人々が怯えながら立ち上がる中、俺は自分の背負っていた海軍の白いコートを静かに脱ぎ捨て、シャボンディ諸島の地面へと落とした。

 

水平線を見つめる俺の瞳から、それまでの迷いは完全に消え去っていた。ジャケットのポケットの中で、ネオスをはじめとする仲間たちのカードが、俺の新たな決意を祝福するように熱く背中を押してくれた。

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