海軍本部の軍艦の揺れは、思っていたよりも心地よかった。
港町での騒動から数日。俺──遊城十代の姿となった結城大雅は、ガープおじいさんの軍艦に乗せられ、偉大なる航路(グランドライン)を進んでいた。
「おい十代! ワシの煎餅を勝手に食うなと言うとろうが!」
「ケチケチすんなって、おじいさん! 1枚くらい減ったってバレないって!」
「バカモン! 残りの枚数は完璧に把握しとるわい! 『拳骨(ゲンコツ)』を喰らいたいか!」
「うわっ、それはマジで勘弁!」
船上での日常は、思っていたよりも賑やかで、そして騒がしかった。
ガープおじいさんはとにかく豪快でフリーダムだ。でも、その一方で、船の海兵たちは俺の能力に興味津々だった。退屈な航海の合間、俺が『E・HERO バブルマン』を呼び出して甲板の掃除を手伝わせたり、『クレイマン』と海兵たちが力比べの相撲をしたりすると、船内は大盛り上がりだった。
「本当に不思議な能力じゃな……。悪魔の実でもないのに、これほど多様な『兵士』を呼び出せるとは」
夕暮れ時。赤く染まる海を見つめながら、ガープおじいさんが珍しく真面目なトーンで呟いた。ボリボリと煎餅を齧る手が止まっている。
「十代。お前、海軍に入ることに迷いはなかったんか?」
「ん? なんで? 行くアテもなかったし、おじいさんの特訓で強くなれるなら最高じゃん」
俺が手すりに背を預けながら軽く答えると、おじいさんは鋭い目をこちらに向けた。
「海軍という組織はな、大きな『正義』を背負っとる。だが、その中には色々な形の正義がある。時にはお前の常識とは違う、冷酷な正義を突きつけられることもあるかもしれん。お前自身には、背負うべき『正義』の覚悟はあるんか?」
重い問いかけだった。
海軍の闇、そして『絶対的な正義』。原作を知っている俺だからこそ、その言葉の裏にある重圧がよく分かる。
俺はポケットから、相棒である『E・HERO フレイム・ウィングマン』のカードを取り出し、夕日に透かして見つめた。
「世界を救うとか、組織の秩序を守るとか、そういう難しいことは俺にはよく分かんないよ」
すう、と息を吸い、俺はおじいさんの目を真っ直ぐに見据えた。
「でもさ、俺のHEROたちはみんな、 仲間の笑顔や、楽しい明日を守るために戦う戦士なんだ。だから、俺の正義もそれと同じ。誰かが泣いてたら真っ先に駆けつけて盾になる。みんなが明日も笑っていられるように、邪魔する悪党は俺のHEROたちと一緒に全部ぶっ飛ばす。……俺を染められる色のカードなんて、この世にないぜ。俺の正義は、俺とHEROたちが決めるんだ」
十代としての、そして俺自身の芯を込めた言葉。
それを聞いたガープおじいさんは、一瞬だけ驚いたように目を見開いた。それから、嬉しそうに口元を歪める。
「ガハハハハ! 己の正義を、自分で決めるとのたまうか! よし、その意気やよしじゃ! お前がその青臭い正義をどこまで貫けるか、ワシが特等席で見届けてやるわい!」
バシバシと背中を叩かれ、俺は盛大にゲホゲホと咳き込んだ。相変わらず力が強すぎるって!
翌朝。
「十代、見えてきたぞ」という海兵の声に呼ばれて甲板に出ると、目の前には巨大な鉄の門──『正義の門』がそびえ立っていた。海流に導かれ、門をくぐり抜けた先に現れたのは、半円形の巨大な湾と、圧倒的な威容を誇る城塞。
海軍本部、マリンフォード。
「すっげえ……本物だ……」
アニメや漫画で何度も見たその光景を前に、俺の心臓はドクドクと高鳴っていた。ついに、世界の中心に足を踏み入れたんだという実感が押し寄せてくる。
軍艦が港に着岸すると、ガープおじいさんは俺の首根っこを掴むようにして歩き出した。
「おい、どこ行くんだよおじいさん!」
「決まっておろう、元帥に挨拶じゃ。お前のような得体の知れん小僧を、ワシの独断だけで本部に置いておくわけにはいかんからのう」
連れて行かれたのは、城塞の最上階近くにある、これまたバカでかい執務室だった。
引き戸をガラガラと豪快に開けて、おじいさんが入っていく。
「センゴク! 休暇から戻ったぞ!」
「ガープ! 貴様、またノックもせずに……! それに休暇中に勝手に動いて、どこの海賊船を沈めてきた!?」
デスクの向こうで、アフロヘアーにヤギを従えた厳格そうな老人が、青筋を立てて怒鳴っていた。海軍本部元帥、センゴク。その圧倒的な覇気と威厳に、部屋の空気がピリリと張り詰める。
「ガハハ、細かいことは気にするな! それよりセンゴク、面白い手土産を連れてきたぞ。おい、十代、前へ出ろ」
おじいさんに背中を押され、俺は一歩前に出た。
センゴク元帥の鋭い視線が、俺の全身を品定めするように射抜く。
「……そこの小僧か。海兵の衣服を着ておらんようだが、何者だ?」
「遊城十代。まぁ、色々あってこのおじいさんに拾われた、ただの『HERO』さ」
俺が物怖じせずにニッと笑ってみせると、センゴク元帥は不審そうに眉をひそめた。
「ガープ、説明しろ。この少年がどうしたというのだ」
「こいつはな、悪魔の実の能力者ではない。だが、見たこともない強力な『戦士たち』を、何もない空間から一瞬で具現化して操る能力を持っとる。東の海の海賊を一瞬で壊滅させた腕前じゃ。ワシの直属として、ここで鍛え上げようと思って連れてきた」
「何だと……? 悪魔の実の呪いなしに、異能の兵力を操るだと……?」
センゴク元帥の目が、一瞬で鋭い軍人のものへと変わった。情報が何もない未知の力を持つ少年。元帥としての警戒心が跳ね上がったのが、空気の重さで伝わってくる。
「おじいさん、言葉で説明するより、見せた方が早いんじゃない?」
俺はポケットからカードを1枚抜き取ると、二人の英雄──伝説の海兵と海軍トップの目の前で、シュバッと鋭く突き出した。
「──来い、『E・HERO スパークマン』!」
大気をピキィンと引き裂くような放電現象と共に、眩い光の粒子が質量を持って固定化されていく。光が収まったそこに現れたのは、青と金の輝くスーツを纏い、全身からバチバチと電撃を放つ、端正な顔立ちの雷の戦士だった。
スパークマンは、目の前に立つセンゴク元帥とガープおじいさんの圧倒的な気配に怯むことなく、静かに俺の前に立ちはだかり、忠誠を示すように一礼した。
「な……ッ!?」
さしものセンゴク元帥も、目の前で起きた『無から質量が生み出される現象』、そしてスパークマンから放たれる本物の戦闘能力の気配に、驚愕を隠しきれずに目を見開いた。
「どうじゃセンゴク、面白い能力だろう? ガハハハ!」
豪快に笑うおじいさんの声が、静まり返った執務室に響く。
ここから、俺の海軍本部での、そしてこの世界での本当の戦いが始まるんだ。
なにか出してほしいHEROなどいればコメントなどでお知らせ下さい!とても嬉しいので!