東方憑鴉録   作:きりがる

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第6話 カラス、天狗に追われる

 幸運のおかげもあって、無事能力を得られた俺。ついでに薫という精神体にも憑かれた。カラスに憑いた俺に憑いた薫………ある意味凄えな。

 

 あの後、薫に死んだ原因を聞いてみたら、不幸にも通り魔に襲われたらしい。女だと思って襲われたらしいけど、男だとわかった瞬間に殺されたんだとさ。二重の不幸だな。

 

 で、今は薫がもっと飛んでる感じを味わいたいと言ってきたので空を飛んでいる。あ、薫は俺の中にいるぞ? 感覚を共有できるらしい。

 

『凄いね! 気持ちいいよ!』

 

 だろう? 何時飛んでもそれは俺も思うわ。マジでチートも得たし、テンション高く行くぜ!

 

 バサッと羽ばたきスピードを上げる。だが、予想外のことが起きた。

 

 全く辺りに見えなかったのに、いきなり目の前に天狗が現れたのだ。どうやら飛んでいたらしいが……速すぎだろう。

 

「ひゃっ!?」

 

 目と目が一瞬交差する。カラスと天狗の禁断の恋が……今、始まる…。

 

『馬鹿なこと考えてなくていいから避けて!!』

 

 あ! そうだった!

 

 正面衝突になる瞬間、翼をたたみ、右斜下方向に体を捻り360度回転する。一回転して天狗の脇を通り抜けた俺は直ぐ様、翼をひろげて姿勢を戻す。

 

 あ~、ビックリした。

 

『凄い……こんな動きもできるんだ……』

 

 これは『Air Combat Manoeuvring』略して『ACM』……つまりは空中戦闘機動と呼ばれる技術だ。航空戦術ともいう。戦闘機などが空中戦するときに用いられる技術だ。

 

 今したのは、『エルロンロール』と言われている。よくないか? ゲームとかでミサイルを回転して回避するやつ。

 

 チラッと後ろを見てみると、カメラを首に下げた女の天狗がその場に止まり、あり得ないようなものを見た時みたいに大きく口と目を開けていた。

 

 ………退散するか。

 

『そうだね』

 

 今更だが、話し相手が居るっていいな。

 

「……あのカラス、なんかおかしい……捕まえてみようかな」

 

 そんな恐ろしい言葉が聞こえた気がする……き、気のせいだよね?

 

『気のせいじゃないよ! 後ろから来てるって! 逃げて!』

 

 マジで!? 焼き鳥にされる!!!! くっそ、今日は空中戦闘機動のオンパレードだ!

 

 瞬時に羽ばたき、トップスピードに入る。ギリギリ伸ばされた手をまたエルロンロールで回避する。

 

「また!?」

 

 驚いているようだが、捕まるわけにはいかんのだよ!!

 

 だが奴はかなり早い、直ぐ様追いつかれるが猛スピードで『ブレイク』をする。敵機を振り切るための急旋回ということだ。それでも追い付いてくる天狗。

 

 だから『シザーズ』という、ブレイクを左右不規則に連続でする実戦技術まで使う。

 

「おかしいでしょ!? このカラスなんなの!?」

 

 まだついてくるか……エルロンロールやブレイクを繰り返すが、そろそろ疲れてきた。逃げさせてもらおうか。

 

 『シャンデル』と『スライスバック』。シャンデルとは、水平飛行中から45度バンクし、そのまま斜めに上方宙返りし開始時と終了時で方位が180度変わるのだ。スライス バックとは、シャンデルの逆バージョンであり、上方が下方に変わるのだ。

 

 つまりは『∞』という感じに飛行したわけである。

 

「え? え!? ど、どこに……!?」

 

 キョロキョロしているが、俺は既に下にいる。翼をたたみ、垂直降下で弾丸のように木の葉を突き抜けて翼を広げ、ブレーキをかける。

 

 そのまま静かに木に止まる。

 

 俺はこの時を持って、カラスという……いや、鳥という域を超えて勝利したのであった。

 

『本当に凄いよ!! あんな飛行が出来るなんて思ってなかったもん!!』

 

 だろう? でもちょっと疲れたわ……。

 明日は筋肉痛かな?

 

 

 




翼じゃムリだろう。とか言うのは気にしちゃ駄目ですよ? あはは……。
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