東方憑鴉録   作:きりがる

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第8話 カラス、不幸な目に遭う

 朝に天魔が起きたので俺も起きた。

 

「あ、起こしちゃいましたか?」

 

 いや、いつもこれくらいに起きてたしな。それから天魔は朝飯を食べに行った。あ~、俺もまともな料理が食べたい。

 

 最後に食ったのって、死ぬ前に天音が作ってくれた夕飯じゃね? その月の日は金がなくて飯も食えなかったんだよ。それを聞いた天音がありがたいことに飯食わせてくれたんだ。

 

 天音の家に行ったんだが、何故か天音の家族が俺達を見てニマニマしてたし、お兄さんが睨んでくるし、意味がわからなかった。飯は美味かったけど。

 

『ふぁ~…おはよ、コウヤ』

 

 お、起きたか。おはよう薫。

 

『うん。あれ? 天魔さんは?』

 

 あいつなら朝飯食いに行った。俺達のぶんは多分だが、持ってきてくれるんじゃないだろうかと思っている。

 

 あいつはどこか抜けていて可愛いところもあるが、根本的に優しいし、俺のことは忘れないだろう……多分。きっと。そう信じたいよな。

 

『……はっきりしないね』

 

 はっきり言えないからな。何ぶん、会って間もないですから。信じていいのやら……。

 

「ただいま。コウヤの分の朝ごはんも持ってきましたよ」

 

 やっふー! 信じてたぞ、我が最愛の友よ!!

 

『さっきと言ってることが違う!?』

 

 さっき? 俺何か言ってたっけ? 知らないね。

 それより飯である。天魔がしゃがんで目の前に置いてくれたのは、小さな皿に乗った炊き込みご飯。

 

 おお! お焦げもある! さっすが俺の親、わかってる!

 

『親?』

 

 名付け親だから親。

 

『さすがにそれはどうかと……』

 

 ま、どうでもいいって。一応、カラスボイスでお礼を言ってから食べてみる。

 うむ、美味い。目玉より断然美味い。

 

『あ~、あれは美味しくなかったね』

 

 そうでもなかったが……あんな肉食うくらいならこの炊き込みご飯に入っている小さな肉を食った方がいい。

 

「どうです? 美味しいですか?」

「カァ!」

「それは良かったです。持ってくるときに怪しまれて聞かれましたが、コウヤに持っていくと言ったら驚かれたんですけど、なんででしょう?」

 

 わからないように首を傾げる天魔だが、どうせあれだろ、偉い立場だし美人だから求婚に来る奴らも多いはず。でも一緒に過ごして居て分かったが、男との何かとかはありそうにない。ってことは断ってるんだろ?

 

 それなのに男ものの名前出したら驚くんじゃないか?詳しくは知らないが。

 

『でも、案外あってそうだよね。妖怪でもそう言ったことがあるって里に居た妖怪が言ってたし』

 

 ん? 人間の里に妖怪が居るのか?

 

『うん。買い物とかに来るんだ。九尾の狐の人とか』

 

 めっちゃ大物やん。あ~、それより美味かった、ご馳走さん。久し振りにいいもの食ったよ。

 皿を嘴で押し返し、ひと鳴き。

 

「もういいですか? それじゃあ、私は仕事がありますけどコウヤはどうします?」

 

 そうか、仕事があるのか。じゃあ俺は少し遠出でもしますかね。

 ということで窓から飛び去る。

 

 行き先など決まっていないがこの山と人間の里以外のところだ。あ、そうだ薫はどっか行きたい所ある?

 

『僕? いいの?』

 

 いいんだよ。お前のためなら何処にでも行くさ。で、どこ?

 

『ありがとうコウヤ! 実はね、僕って行ってみたいところが沢山あったんだ! でもそこは人間が行くと危なかったり、不幸の僕が少し遠出すれば危険だったしね』

 

 それは…なんていうか、ドンマイ。

 

『どんまい? でも、カラスの身…というかコウヤの一部である今なら関係ないからさ。早速だけど、誰も参拝に行かなくて閑散としている神社があるんだって』

 

 へぇ、神社のくせにねぇ…こういった古い考えの人達は信じやすい奴が多いだろ?神社ってものはそういう奴らにとっては有り難い物だと思うんだがな。

 

『妖怪神社って言われてるから。えっと…博麗神社っていって、そこは最強の巫女が居るってさ。幻想郷縁起見せてもらった時に書いてあった』

 

 妖怪神社って……。それより幻想郷縁起? たしか稗田阿求ってのが持ってたな。

 

『うん。僕って結構仲良かったからさ、見せてもらってたんだ』

 

 ふ~ん、まあいいや。じゃ、早速だが行こうか。神社ね……何処にあるかわからないが、適当に飛べば大丈夫だろ。

 今も飛んでいるが、このまま前に進んでみますか。

 

 暫く飛んでいたんだが、赤い鳥居みたいなのを上空から見つけた。あれがそうなのだろうか。だが、ここで問題発生……俺も不幸なのだろうか?

 

『コウヤ! あの天狗が来た!』

 

 わかってるよ、真横じゃないか!

 

「あ! あの時のカラス! 今度こそ捕まえます!」

 

 そう言って手を伸ばしてくるが、ぎりぎり下降して躱す。ていうかしつこいぞ! 俺に何の恨みがあるんだ!

 

 下降した時に目に見えたのは、こちらを見ている四人の女。酒を飲んでいる捻れた大きな角を持つ幼女と、脇を露出させた巫女。白黒の魔法使いみたいな格好をした少女に、紫色の胡散臭いおばさ………

 

「誰が胡散臭いババアですって!!?」

 

 そんな声が聞こえたと同時に何か光の球みたいなのが一瞬で飛んできた。それをギリギリ、エルロンロールで回避する。

 ていうかババアなんて言ってないぞ!?

 

 俺の横を通り過ぎた光の球は、なんと……

 

「ふぎゃっ!?」

 

 真後ろに居た天狗の顔にヒットした。俺のせいで見えなかったんだろうな。振り向いてみると、何か涙目で俺を睨んでいた。

… ……俺、関係ないよな?

 

「………もう許しません!」

 

 ゾクッと、背筋が凍るような感覚を受ける。俺はとっさに薫に叫んだ。

 

 薫! 共有してる感覚切っておけ!

 

『え!? う、うん! わかった!』

 

 薫が言った瞬間、背後から凄まじい力を受けて身動きがとれなくなる。これは……風に、押されているのか!?

 

 そのままグングンと押されて目の前には驚いている四人。それを通りすぎて魔法少使い? みたいな子の隣の神社の壁に激突した。

 

 ゴシャッ!! という音と共にボキッという嫌な音も聞こえる。それと同時に脚に激痛と体全体にとんでも無い衝撃が走る。

 

「あ!? しまった!」

 

 そんな言葉も聞こえるが、もう俺はそれどころじゃない。なにこれ…脚が滅茶苦茶痛いんだが!? 呼吸がまともに出来ないほど身体が痛む!!!

 

 もう羽をまき散らしながらバサバサと暴れまくる。口からは知らず知らずギャーギャーと声が出ていた。

 

「ちょっと、あんた! 何やってるのよ!!」

「おいおい、ただのカラスだぜ!? 血吐いてるぞ!!」

「あらら~、脚が変な方向に曲がってるね~……」

「見てたけど、このカラスは何もしてないわよね?」

 

 確かに神社には着いたけど、この仕打はないだろ! マジで痛い!

 

『コウヤ!? 大丈夫!?』

 

 うん…なんであの高さから落ちたのに死んでないのかが気になるわ。

 

「あややや…………ついつい頭にきて…カラスが妖力弾撃てるはず無いのに……」

 

 あ! あの天狗が来やがった! 逃げるぞ薫!

 

『う、うん!』

 

 激痛で動かない体に鞭打って片足で立ち上がる。

 

「ちょ、ちょっと!」

「何やってんだ!? 動くなって!!」

 

 心配してくれるのもわかるけど、俺が此処にいたら…羽を毟られて、丸焼きにされて、食べられる可能性大!! ぎゃー!! 逃 げ ろ !!!!

 

 

 もうがむしゃらに翼を動かして木の上すれすれの低空飛行で飛んで逃げる。場所? どこでもいい! とにかく遠くだ!

 

 もう飛べないってくらい飛んで、俺は力尽きてどこかの森で墜落した。

 最後に見たのは変な形の生きたキノコだった。

 

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