東方憑鴉録   作:きりがる

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第9話 カラス、人形遣いに会う

 知らない天井だ……天井? あれ、なんで建物の中にいるんだ? 薫、説明プリーズ。

 

『…コウヤ? ……コウヤ! 良かった! 気がついたんだね!』

 

 ああ、ついさっきな。それで此処は何処なんだ?

 

『ごめんね…僕が神社に行きたいなんて言うからコウヤが怪我しちゃって……』

 

 あ~~、別にいいって。どうせ別の場所であっても追いかけられてたって。

 

 起き上がってみようとするが、やっぱり折れていた。リングの付いていない脚と、多分墜落したときにでも折れたのか、右の翼。

 

 今俺が居るのは、タオルが敷かれた籠の中。折れた所に包帯が巻いてあることから誰かに助けられたのだと分かる。

 

 あ~あ、俺も大概不幸だよな。連続で痛いことばかりあうなんてさ。

 

『実はね、森に落ちたらしいんだけどそこは瘴気みたいなのがあって、ただのカラスのコウヤの身体に悪影響を及ぼすっぽかったんだ』

 

 瘴気? 危なくないか? それ。

 

『うん。しかもヘンテコな茸が胞子出してたから直ぐ様コウヤに憑依する形で能力を使ったんだ。身体に害のあるものを無害に変える、という風に』

 

 お、ありがとな薫。助かるよ。

 

『ううん、こっちこそごめんね。僕が……』

 

 ストップ。もういいから。別にお前のせいじゃないって! な?

 

『……ありがとう、コウヤ』

 

 いいって。別になんとも思ってないよ。

 

 暫く薫のすすり泣く声が聞こえたが、俺が考えていたのは精神体でも泣けるんだなと、なんで能力使わなかったんだよ俺のバカ、ってこと。

 

 やっぱり親しみのなかった能力なんてとっさには使えないよな。少しずつ慣れていこう。

 

 そんなことを考えていたら、ガチャっと部屋の扉が開き、浮いた人形を連れた金髪美少女が、トレーを持って入ってきた。

 

 そういえば、この部屋には異様に人形の数が多い。ミシンみたいなのもある。でも日本人形じゃなくってよかった。もしくは不気味な西洋人形。

 此処の人形は可愛いし。

 

「あ、起きたのね。よかった、身体は大丈夫?」

 

 俺に気付いたようで、トレーを机に置いてからこちらによってきて俺の身体を見始める。

 

「森に普通のカラスがいるなんてびっくりしたわ。しかも怪我してるし……何があったの? って聞いてもカラスだからわからないわよね」

 

 その少女は俺が入った籠ごと持ち上げて、机の上に置いた。どうやらトレーに入っているのは、紅茶とクッキーらしい。いい匂いがする。

 

 それより人形である。興味深そうに? 籠の縁にへばりついて俺を見てくるこの人形……なんで動いてんの?

 

「シャンハーイ?」

 

 喋った!? この人形しゃべりましたよ奥さん!!

 

『奥さんじゃないんだけど………確か魔法使いじゃないかな? アリス・マーガトロイド。里に人形劇しに来てたよ』

 

 へぇ~、魔法使いで人形遣いか。アリスね、わかった。そのアリスはクッキー食べてる。美味しいのかね?一口くださいよ。

 

 それと人形、羽引っ張んな。痛くないけど擽ったいだろうが。

 

「あ、こら上海! ごめんなさいね、そう言えばリングにコウヤって彫ってあったけど…コウヤでいいのかしら?」

「カア」

 

 一応、肯定の意味で鳴いておく。

 

「へぇ…賢いのね。しかも全然騒がないから大人しいし……それじゃあコウヤって呼ぶわね」

 

 ん…アリスは案外優しそうだ。それに…なんで幻想郷の奴らって顔面偏差値高いの? 美少女か美女しか見てないんだけど。目の前のアリスも人形より人形らしくて可愛いんだけど?

 

「コウヤ、怪我が治るまでここにいるといいわ。私も鳥の世話なんてしたこと無いけど世話してあげるから」

 

 なんかツンデレっぽい気がする。でもしたこと無いのにしてあげるって…大丈夫か? まあ、別に世話されなくても大丈夫。能力使って治せばいいし。

 

『でもさ、コウヤ。コウヤって能力持ってても普通のカラスとしか認識されないでしょ? 怪しまれない?』

 

 あ、それもそうだな。しょうがない、自然に治るまで待つか……一ヶ月かかるんじゃない? そんなに経ってたらすっかりアリスのペットじゃん。

 

 そんなアリスさんったら俺のこと知らないから砕いたクッキーなんか口先に持ってくるし……頂くがな!!

 

「ふふっ、ほら、おいしい?」

 

 指先から食べさせてもらったクッキー……ええ、二つの意味で美味しいですとも。クッキーとお前の笑顔という意味で。

 

 こんな美少女の笑顔なんて、そうそう見られるものじゃない。人間だった頃のテレビに出ていたアイドルより可愛くない?

 

 これはもう暫くお世話になるしか無いな。

 

『……現金だね』

 

 男ならしょうがないだろ? 薫もそれでも男なんだ、そう思わないか?

 

『確かに男だけど……なんかコウヤが女の人と触れ合ったりそんなこと思ってると…こう、もやもやするんだよね』

 

 どうした? 風邪か? ていうか、精神体も風邪って引くのか? 俺がならない限り引かない気がするんだが。

 

『違うよ。もういい……』

 

 あれ? なんか不貞腐れた。よくわからんやつだ。

 

 もう一欠片啄んだところで、その綺麗な指の横から人形の手がやってきた。嘴に触れるか触れないかの距離まで来た時、俺から突っついてやることに。

 

 ちょっと驚いたようにしてる人形と、俺達を見て微笑むアリス。これから楽しく過ごせるか?

 

 面白くないことには興味ないからな。そういえば………最近は人間の頃みたいな考えをすることが減ったな。カラスになったからか? この世界に来たからか?

 

 どちらにせよ、俺にとってはいい傾向にあるよな。

 

 

 

 

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