東方憑鴉録   作:きりがる

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第10話 カラス、怪我が治る

 

 俺がアリスに拾われてから一ヶ月が経つ。脚の方は既に治ったが、翼の方はもうちょっとかな?

 

 アリスはちゃんと世話をしてくれた。結構、何でもそつなくこなすタイプのようだ。身体を洗ってくれたり、羽を綺麗にしてくれたり。

 

 薫も不貞腐れていたが、ちゃんと仲直りはしてある。

 

 今は最初にあった時のようにお茶を飲んでる。小さなカップに紅茶まで入れてくれて、小さなクッキーもある。

 

 一ヶ月一緒に過ごして、どうやらアリスも俺のことを理解してきたらしい。カラスなのにどこか人間らしい。とても賢く、言葉も行動も考えも理解している。それなのに妖力も何もないただのカラス。

 そう言われた。

 

 人形とも結構戯れたりしている。主に俺に憑依した薫が。それとなんか薫が女っぽくなってきたんだが…どういうこと? 考えるの面倒くて思考を放棄したが。

 

 それにしても紅茶って美味いんだなー。

 

「そういえば、コウヤって誰かに飼われてたの? リングがあるし」

 

 あ、このリングな。呪われて憑いた…じゃなくて付いた。ま、首を横に振っておこう。

 

 俺が鳴き声や行動で示すので簡単な会話が成立している。ここまで出来るのはアリスとだけかもしれん。

 

「そうなの。じゃあ、完全に治れば何処か行っちゃうのね?」

 

 どこか悲しそうな顔をしながら聞いてくるアリスだが、人形なんて完璧に涙がでるなら泣いているであろう顔をしている。芸達者だな。

 

 そうだな……どうしようか。薫はなんか考えある?

 

『そうだね…行きたいところに行って、帰りはここに帰って来るとかでどう?』

 

 なるほど、それもいいな。ちょっと遠ければ天魔の所で寝ればいいしな。そうするか。

 

 ということで、俺は『カエッテクル』とカタカナで簡単に羽先を紅茶に濡らしてテーブルに書く。

 

「帰ってくる……どこかに行っても帰ってきて此処で寝るってことね?」

「カア」

「そう、そうしたいなら別に私は構わないわ」

 

 よく言うぜ、あからさまにホッとしてるじゃないか。ツンデレさんめ。愛着でも湧いたか?

 

 羽先を振るって乾かし、クッキーを食べる。不意に、テーブルに伏せるような格好で凭れ掛かり、腕に顎を乗せてこちらを見ながら撫でてきた。

 

 撫でられながらも、俺は人形が両手で持ったクッキーを食べさせてくるのでそれを食べるのに忙しい。

 

「カラスも可愛いものね……いえ、コウヤだからそう思うのかしらね。今ではコウヤが居ないと不自然な感じだわ」

 

 おお、嬉しい事言ってくれるね。天涯孤独の身だった俺にしては、それは結構うれしいものだ。

 

『コウヤ? 僕も居るよ? もうこれから死ぬまでずっと一緒じゃないか。独りじゃないよ』

 

 ああ……そうだな。なにより薫も居るし、天魔もいるもんな。サンキュー、薫。

 

『もう…/// でも、結構コウヤが言ってることに慣れてきたよ、それは英語でありがとうって意味だよね?』

 

 その通りだ。これまで言葉選んでたけど、楽になるな。英語もバンバン使っていこう。って言っても、対してないだろうが。

 

 俺達の小さなお茶会が終わり、今日はアリスが壊れた上海人形を直すらしい。腕が千切れている。どっかに引っ掛けたのか?

 

 俺はまだ飛べないので、差し出された手から登り肩に止まる。サラサラの髪からいい匂いがし、羽を擦る。

 

 作業机に座り、壊れた人形を持って糸の付いた針を動かす。ついでに汚れている服も変えるようだ。

 

 何時見ても鮮やかな手際である。あっという間に腕が着いた。次は服であるが………

 

「カァ……」

「シャンハーイ!!」

 

 後ろから人形が手で目元を押さえてくる。別にいいだろうが、人形なんだから関係ないじゃん!

 

「ふふふっ、残念だったわね、コウヤ? 着せ替える所見えなくて」

 

 くすくす笑っているアリスだが、お前わかっていってるだろ!

 

「クァ……」

 

 人形になんか発情せんよ……。

 

『こういう時は確か……ドンマイって言うんだよね?』

 

 確かに合ってるが、今その言葉は不要だった…!! 俺が異常な変態に思われるだろうが!!

 

 くっそぉ……/(^o^)\ナンテコッタイ!

 

 項垂れていたら突然の浮遊感で、次に何処かに置かれる感覚……ここは、作業机!?俺も縫われるのか!?

 

 そんな馬鹿なことを思っていたら、翼を触られてから包帯が解かれた。

 

「うん…そろそろ良さそうね。もう固定するものはいらないかしら?」

 

 アリスが指で折れていた部分を軽く触ってくるが、大して痛くない。これは飛べるんじゃないか?

 

 そう思って翼を動かすが、痛くない。バサバサ動かして……一ヶ月ぶりに俺は空を飛んだ。

 

 部屋の中だから狭いが、少しなら大丈夫だ。

 

『久し振りだね。早く大空を飛びたいね!』

 

 ああ、そうだな。まだカラスになって間もないんだから沢山飛びたいよな!

 

「わぁ…コウヤが飛ぶ姿、初めて見たわね……」

 

 俺の隣には人形が一緒になって飛んでいる。あの天狗じゃないだけマシだよ。

 

 そういえばあいつから逃げてきたが、俺のことは死んだと思ってるのかな? 血も吐いていたらしいし。骨も折れていたなら自然界で生きていくには厳しいと思うのが普通だよな。

 

 いやぁ~、しかしこれでブレイクとかエルロンロールとかまた出来るな。まさかここまで空中戦闘機動が役に立つとは思わなかったわ。

 

 テレビなんかで見てたり、知識として知ってて良かった。だって、ゲームで回転してミサイル躱すのって滅茶苦茶格好良くないか?

 

 俺は凄い好きだったね。ロボットアニメで活躍する格好良いロボットくらい来た。ガンダム然り、マブラヴ然り。アーマードコアはカッコ良かった。

 

 おっと、そろそろ降りるか。室内だしな、自重しよう。

 

 今度はアリスの肩に止まり、羽休め。撫でられる感触とともに、俺は今度は何処に行こうか考えていた。

 

 どうせなら、アリスも外に出してやりたい。此処一ヶ月は俺と一緒に居たので外に出てないしな。

 

 

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