翌日、俺は未だ寝ているアリスの隣で起きた。俺が寝ているのは怪我していた時に初めて入っていた籠である。ただし、アリスがわざわざタオルをふわふわの良い物に変えてくれた。
のそりと首を伸ばし、窓の外を見る。薄暗いいつもの森の風景が、今日に限って違う。紅いのだ。
もう少し細かく言うと、紅い霧で外が覆われているのだ。
一体これはなんぞや?
『おはよう、コウヤ。紅い霧なんて初めて見るね』
おはよう、薫。そうだな、こんな霧が早々あってたまりますか。あまり外飛べないし、洗濯物干したり出来ないし。
『後半がやけに生活感溢れているね』
主婦の皆さんが大変そうである。そろそろ時間だし、アリスを起こそうか。
本来魔法使いというものは睡眠も食事も要らないらしいが、アリスは元人間ということであり、今でも人間の必須行動を取っている。
俺も元人間なので共感できますよ。
籠から飛び降りて枕元に降り立つ。小さな寝息を立てながら寝ている姿はあどけなく、とても可愛らしい。何時見ても飽きないものだ。
…もし、カラスの中身が俺だと知ったら、アリスはどう思うだろうか。知らない男と寝食を共にしていると知ると怒るのではないだろうか。嫌われるのであろうか。
……………や~めた。思考をいつも通り放棄放棄っと。その時はその時でいいか。考えるの面倒いし。
嘴の尖っていない、湾曲してすべすべしている部分で軽めにほっぺを押す。二度、三度、同じ行為をすると小さく唸ってから目を開けた。
「んぅ……コウヤ?」
「カァ!」
「おはよう、コウヤ……ふぁ……」
眠そうにしながらも起き上がり、欠伸をしながら伸びをした。上海人形を操っていつもの服を持ってこさせて着替えだす。
その間、俺はちゃんと見ないように後ろを向いてるぞ?なんていうか、カラスであっても俺は見ちゃいけない気がするんだよ。
「おまたせ、コウヤ。相変わらず律儀ね。行きましょうか」
もう俺は飛べるのだ。飛んでアリスの肩に止まり、揺られながら寝室を出る。その間アリスも気付いた紅い霧のことを話していた。俺は話せないが。
どうやら異変というらしい。博麗の巫女がどうせ解決するから放っておいていいらしい。それでも気になるのが俺なのだ。
面白そうだから行く。
「気をつけなさいよ。絶対に怪我せず帰ってくること。いいわね?」
サーイエッサー。ということで腹ごしらえをした後に家を飛び出し、魔法の森を抜ける。
久々の風をきる感覚……最高である。折れていた翼も問題なく動き、力強く羽ばたいていく。羽根が一枚、後方に流されていった。
ただ……この紅い霧が邪魔で視界が悪い。ちょくちょく木に止まって今居るところが何処なのか確認しながらじゃないと危険だ。
『それに、あの天狗のこともでしょう?』
そう、あの腐れ天狗野郎にも注意である。ばったり出くわさないように確認しながら飛んでいる。決してフラグじゃない。現に出会ってないからな!
安心して霧の中を進むこと一時間。着いた場所は神社上空。……もう少し先かね?
『あ!? あの巫女が博麗の巫女ってことは、付いて行けば辿り着くんじゃないかな?』
薫の言葉に下を見てみると、博麗の巫女らしき人物が白黒少女と一緒に飛び立っている。
お~、すげ~……箒乗って飛ぶなんて初めて見た。それに巫女は何もなしで飛んでるし。人体の神秘?
『それは絶対に違うと思う……』
そうかね? それにしてもあいつら速いな。ま、伊達にあの天狗とやり合って逃げ果せてないさ。着いて行くくらい、どうって事はない。
二人の更に上空を飛び、気付かれないように後をつける。デッカイ湖を越えて、紅い館に着いた。
なにこれ、目に良くない色してるな。白黒が門番の相手をするらしいので、巫女の方に着いて行く……と言っても、もう館内に入るので別行動。ただ、メイドが居て凄い巫女と戦ってた。
その戦いの間、なにか身体に変化が生じた。なんて言うんだろうか……一瞬身体の制御が効かなくなる感じ?飛んでいたら何かに囚われて、気付いたらガクンッと身体がいきなり動く感じ?
あ~、もう自分で何言ってんのか分かんなくなってきたわ。何いってんの? 俺。
でも能力上、変化に敏感なんだ。
これは……時間操作系かね? 時間止められたけど、俺には効果が曖昧になるのか? だから囚われたような感覚に陥り、時間が進んだ時に誰かに引っ張られていたような感じが解けて、前に進めなかったのに急に進めるようになった、と……。
じゃ、能力で止まっても俺だけは効果が無いように変えるか。マジでチート、マジで便利! その気になれば、相手の姿を変えたり、世界を変えられるんじゃね? 別にしないかもしれないけど。
あ、俺も時間の進みを変えればいいんだ。進んでいる時間を変えて、止めてみるとか。これって所謂時間操作出来るんだから、時間操作系の能力きかないよな?
そう思った瞬間、世界が灰色になった。これが時間ストップですね? DIOか? ザ・ワールド?
ま、丁度いい、俺と誰かさんの二人だけの世界……誰にもバレずに飛び回れる! だからこの眼の前の怪しい扉を開けて入ってみようか!!
能力使って扉の形状を変える。俺が入れるくらいの大きさの穴を開けた。
失礼しま~す。