東方憑鴉録   作:きりがる

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第19話 カラス、食われかける

 

 

 

 天魔のところを飛び出して竹林に突っ込んでから一時間。

 

 そして俺ことカラスのコウヤは、今、喰われそうになっている。

 

 ああ、そうさ、喰われそうになっているのだ! ヘルプ薫!

 

『無理かな! ちょっと外出て見てみたけど、すっかり嵌っちゃってるもん!』

 

 そこを引っ張るとかさ!

 

『実体のない状態の僕に何求めてるの?』

 

 助け。

 

『ですよね~』

 

 そう言う薫の声はすっかり諦めモードだ。で、今俺は上半身……カラスに上半身があるのかどうかは知らないけど、身体の半分が暗く熱いヌルヌルした空間の中にすっぽり嵌ってる。

 

『あ、ウサ耳の子が顔真っ青になってる』

 

 窒息しそうなんですね分かります。

 

 そう、俺はとある女性の口の中に嵌って身動きができないのだ。羽が唇に挟まれて動かせない。

 そして飛び込んだ時に驚いて叫んでしまった時に、この子の舌が嘴の間に入り込んで口の中で暴れまわっている。ディープキスですか?

 

 カラスとするなんて大変だな。いや、余裕そうに見えるだろ? 喉の奥まで舌が来て息できないし、出来たとしても身動き取れないのでどうにも出来ない。

 

 なんでこうなったかを簡単に説明すると、竹林に入ったんだけど、羽休めのために降りたんだよ。そしたら竹林の奥からウサ耳の子が歩いてきたんだけど、なんか罠? にかかったんだよな。

 

 その後ろにはロリ兎。笑ってやがる。

 

 で、俺はそのウサ耳の子が罠にかかったところの側に居たわけだ。そう…巻き込まれたんだよ! 

 

 とっさに飛んで逃げようと思ったけど、なんか下から縄が来て弾かれて、上からは脚を縄に取られたウサ耳が転けて顔が迫ってくる。叫んだんだろうな。口開けた時に俺を食いやがった。

 

 後は今までどおり。そして継続中! さっさと引っ張り出せよ! 身体がヌルヌルして気持ち悪いんじゃ!

 

 あ、いや、超美少女の涎と考えたら…なんとか……

 

『出来るの?』

 

 出来ないな、うん。息しづらい、グロッキーや。はよ取り出してーな。俺も窒息して気絶しそう。この子の吐く二酸化炭素しか吸ってない。吐かれる呼吸は酸素のほうが多いんだが、それでもキツイ。

 

 足で押し返すと爪で顎とか唇とか傷つけちゃいそうで怖いから出来ない。病気にでもなったらどうするのだという話だ。

 

 それにしてもちび兎はどうしてる? 

 

『カラス咥えて真っ青になって暴れてる姿を笑ってる。あ、繋がってるロープ切った』

 

 ものすごい衝撃が!? 痛い! 噛みちぎられる!!!

 

『下に落とし穴!? 頭打って気絶したよ!!?』

 

 罠の二段重ねだと!? こやつ…出来る!! 

 

 あ、もう駄目だわ。薫、ちょっと落ちる。

 

『え? あ、うん……これはしょうがないよ』

 

 だよな。ということでグッナイ。

 落ちる瞬間、咥えてる奴の意識も落ちたようだ。

 

 

◇◇◇

 

 

「クァ!?」

 

 目を覚ましたら注射針がありました。……………拷問ですか? 

 思わず飛び起きて転がって回避。そして立ち上がって飛び上がって辻斬り! 右の翼で見事注射器を叩き割ってやった。

 

 ふっ……またつまらぬ物を斬ってしまった……。帽子みたいなのも叩き落としちゃったが。

 

『初めてじゃない』

 

 それは言わないお約束だぜ!

 

 それよりなんで注射器? 俺もしかして危ない悪役とかに改造されそうだったの? ゾンビの大進化が如く、化け物になるところだったの? 

 そして銃で撃たれるんでしょ、あたい知ってるもん。かゆうま日記書かなきゃな。

 

『いや、違うから。あれ栄養剤みたいなものだったから』

 

 うん? 栄養剤?

 

『うん。あれから三日、コウヤは起きなかったんだよ? 僕は予め偶に寝すぎて三日は寝るというコウヤの特性?を知ってたけど、この人たちは知らないから。異常はないから、とりあ

 

えず栄養剤射っておこう、的な? 鳥だけに!』

 

 うん、ドヤ顔でそこそこ大きい胸張って言い切ってるようで悪いけど、上手くないから。つまんねーから。

 

『ガーンッ!』

 

 項垂れてしまってそのまま俺の側を浮遊してる薫。放っておくのが一番です。

 

 さてさて、赤青の服着た銀髪美女が何やらプルプル震えているがどうしたのだろうか。俺はやわらかな銀髪の上にちょこんと座っていて首を傾げる。

 あ、鏡同士で目があった。ちょっと怖くない?

 

「なんで……私の頭に座ってるのかしら?」

 

 ふむ…強いていうなら、そこに良い頭があったから! あ、賢いとかそういう意味じゃないから。座り心地の良さそうな頭って意味だから。

 

 事実、ふわふわの髪の毛は絹糸のように細く柔らかく、とてもいい匂いがする。フィット感が半端無く、このまま此処を巣にしてしまおうかというくらいだ。

 

 でも、この女性はどこか知的クール美人なので、このような格好は嫌なのかもしれない。まあ、止めないがな!

 

 女性の手が俺を捕らえようとするので頭を引っ込めて躱す。身体を掴んでこようとしたので飛び上がって躱し、躱した後にポフッと着地して座る。

 頭を振って落とそうとしてくるので、俺もそれに合わせて体を動かして落ちないようにする。

 頭を下に下げたので、後頭部に移動して、元に戻るに連れてつむじらへんに座る。

 

 ………一ついいか? 

 

 この人、見かけによらずめちゃくちゃ可愛い! 美人がこういうちょっとした動作をすると可愛く見えるんだな! 付き合ってください! カラスだけど。

 

「な、なんて芸達者というか、器用というか……やるわね、このカラス」

「カァ~」

「………何か馬鹿にされてるような気がするわね」

「バカァ~」

「今絶対に馬鹿って言った! 誰もが羨む頭脳に対して、初めて馬鹿って言われた! というか、本当にカラスよね!?」

「…………クァ」

「…………はぁ、所詮鳥だもの。よく分からなくて当然よね。久しぶりにわけがわからないわ……」

 

 カラスかと聞かれた時に意味がわからないというように翼を嘴で手入れし始めると、溜め息尽きながらおでこに手を当てていた。

 とりあえず、なんかお疲れさん? 

 

 そんな感じで翼で撫でたり、嘴の尖ってないところで撫でてやる。

 

「原因は貴方だけどね……」

 

 反省もしてないし、後悔もしてない! する意味がわからない!

 

「もういいわ……卵産まないでよ? って、オスだったわね」

「カー」

 

 オスでも口から卵出すやつだって居るんだ、俺にだって頑張れば卵の一つや二つ、出てくるはずだ! 

 口から? 無理無理、穴からに決まってるじゃん。出したら怒られそうだからしないけど。焼き鳥は嫌だ!

 

 




いつの日か…永琳の頭は巣になって……焼き鳥にされそう!w
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