翌朝、木になっていた木の実を食べる。ちょっと霧が出ているが、直ぐに晴れるだろう。
そう思いながら飛び立ち、霧が出ていてバレにくい時に天狗の観察に行く。近くまで来たが、どうやら天狗は里を作って暮らしているらしい。
無駄に人間みたいなことをするよな。一本下駄を履き、翼を持っている以外何も分からなかった。ただ、ブーツや靴みたいなのの下に下駄の下の出っ張りを着けて今風にアレンジしてる奴も居た。
さて、お次はあの大きな建物にでも行きますか。
目指すは山の頂上付近にある里の更に上にある屋敷。その屋敷には門番や見張りなんかが居たが、居眠りしてやがる。サボりですか、コノヤロー。サボり厳禁だった俺の職場、そんなまじめに働いていた俺の前で羨ましいことしてんなよ、ハゲ天狗!
お陰でこんな場所にカラスが居るという、不思議な光景を見られなくてすんだけどな。ちょっと旋回して、屋敷全土を見渡す。
中々に大きくて立派だ。俺のボロアパートの何倍だよ……ぐすっ……な、泣いてなんか無いんだからね!
「クァ…(泣)」
あれ? なんでだ? 目の前が霞むよ……!!
あえなく不時着。丁度窓みたいなのが空いてたので入らせてもらう。
羽根を使って目を擦る……くっそ、貧乏なのがいけないんだ!!
やっとまともに見えるようになった、我がカラスのお目々様。悲しいことは面白く無いから考えるのは止めよう……。部屋を見渡すとかなり広くて、清潔感がある…と思ったら、デカイ羽根発見。しかも布団が敷きっぱなしだ。
ま、まあ朝だしな…起きてちょっとトイレ、なんてこともあるだろう。
羽根に近寄って咥えてみる。男のだったら嫌だな……次の瞬間、突然視界が光で埋め尽くされた。
これは経験したことがあるぞ!? 呪われた時と同じだ! ということは、また呪われ……!?
光が収まり、目を開けてみると、そこには咥えていた羽根が無くなっていた。
あれ? 何処に行ったんだ? キョロキョロと周りを見てみるが、無い。しかも身体に変化は無いので呪われていない。
………どゆこと?
不思議に思っていたら、ふと、頭の上から声がかけられて影が差した。
「あら、カラスですか?」
びっくりして飛び退きながら声の主を見てみる。そこには綺麗な着物を着た美女がいた。
黒の生地に金の糸で華を刺繍された着物で身を包み、長い黒髪と他の天狗より一際大きい翼を持ったスタイル抜群の美女。その目は俺を見ていて、可愛らしく首を傾げている。
……やっべ、逃げるか。
そう思って飛び立とうとしたら、残念なことの一瞬で捕まりました。こんなこと前にもなかったか?
「珍しいですね、私の部屋にカラスが居るなんて。それにしても大人しい…人懐っこい?」
違うわ、お前が両手で握りしめ……包み込んでいるからだ。
「触り心地がいいですね……」
なぜか俺を逃さずに体中を撫で始めるこの女。畳に敷かれた布団に座り、膝の上に俺を置いて愚痴り始める………愚痴り始める?
「まったく、私の部下は酷いんですよ?」
なぜ、前触れもなくカラスである俺に愚痴り始める? ストレス溜まってるのか?
「仕事もちゃんとしているのに、自由に行動させてくれないんですよ」
知らんがな。
「私だって自由に飛び回ってのんびり過ごしたいです。カラスである貴方が羨ましいです……」
お前なぁ……俺が何もわからないただのカラスだと思って愚痴ってるだろう。残念なことに俺ですよ、考えて喋ってくれよ! って、無理か。
「あ、煎餅食べます?」
それは貰います。小さく砕かれた煎餅を手から直接貰い、食べる。やっぱ目玉よりまともな食い物だよな。
うん、美味い。
「美味しいですか?」
「カア」
「返事した? 相当賢いですね…妖怪でも何でもないただのカラスの筈ですけど……」
不思議そうにしながらも、俺に煎餅をくれながら自分も食べている。
暫く食べていたらお腹いっぱいになった。ゴロンと暖かく柔らかい膝の上に寝転がらせてもらう。これは暫く経たないと飛べないわ。
「ふふ……可愛いですね」
微笑みながらお腹の部分なんかを撫でてくれる。あ~、これいいな。気持ちいいわ。こんな美人さんの脚の上で寝転んで撫でられる……これって最高のシチュじゃね?
自分の羽を弄っているためなのか、異様に上手い。お陰で眠くなってきた……次第に目が閉じられてくる。
「あら? 眠たいのですか? いいですよ、今日はお昼まで暇なので一緒にいましょうか」
そんな声が聞こえたが、俺は気にせずに寝てしまった。