Fate/Scapegoat   作:KMST

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11話目です。
ここまで読んでくださりありがとうございます。

黎明のアベンジャーオルタが出てくるまでに何があったかを書いてみました。


第十一章 必要悪の対立

冬木市。

 

街は静かだった。

 

静かすぎるほどに。

 

その静寂は、

これから始まる最後の嵐を予感させていた。

 

聖杯は、もうすぐ姿を現そうとしていた。

 

アベンジャーは夜空を見上げる。

 

月。

 

少しだけ欠けた白い月。

 

「……ああ。」

 

「ここからは一人倒れるたびに世界が変わる。」

 

「誰も退けなくなる。」

 

 

 

その時だった。

 

空気が裂ける。

 

魔力。

 

いや──

 

剣気。

 

セイバー。

 

彼は一人で現れた。

 

鎧には無数の傷。

 

だが立ち姿は少しも揺らがない。

 

「……来たか。」

 

アベンジャーは前へ出る。

 

 

 

「貴公とは、もう一度話してみたかった。」

 

セイバーは静かに言う。

 

「復讐者。」

 

「いや。」

 

「守護者よ。」

 

アベンジャーは苦笑した。

 

「その呼び方は少し照れる。」

 

「私は復讐者だ。」

 

セイバーは首を振る。

 

「違う。」

 

「貴公は自らを盾にしている。」

 

「盾は守る者だ。」

 

「それは復讐ではない。」

 

 

 

アベンジャーは静かに目を閉じた。

 

「……そうかもしれない。」

 

「だが私は憎んでいる。」

 

「理不尽を。」

 

「絶望を。」

 

「人を壊す環境を。」

 

セイバーは頷く。

 

「知っている。」

 

「だから問おう。」

 

 

「その憎しみは。」

 

「勝利の後も残るのか?」

 

沈黙。

 

風だけが吹く。

 

マスターも答えを待った。

 

アベンジャーはゆっくりと言葉を探す。

 

「……消えない。」

 

「多分、一生。」

 

「傷は消えない。」

 

「朝になると怖い日もある。」

 

「吐き気がする日もある。」

 

「何気ない一言で昔へ戻る日もある。」

 

「全部、残る。」

 

「だから私は。」

 

彼は空を見た。

 

「忘れない。」

 

セイバーは目を細める。

 

「なるほど。」

 

「つまり。」

 

「傷を抱えたまま歩く。」

 

「それがお前か。」

 

「……ああ。」

 

セイバーは笑った。

 

ほんの少しだけ。

 

「ならば安心した。」

 

「貴公は最後まで人間だ。」

 

「私は。」

 

「英雄ではない。」

 

アベンジャーは答える。

 

「英雄になりたいとも思わない。」

 

「救える人数にも限界がある。」

 

「それでも。」

 

「目の前だけは護る。」

 

「それで十分だ。」

 

セイバーは剣を抜く。

 

「ならば。」

 

「その信念。」

 

「この剣で量ろう。」

 

黄金の光。

 

大地が震える。

 

「来る!」

 

マスターが叫ぶ。

 

戦闘開始。

 

セイバーの剣は速い。

 

速すぎる。

 

アベンジャーは真正面から受ける。

 

轟音。

 

地面が割れる。

 

「ぐっ!」

 

腕が痺れる。

 

「筋力では敵わない!」

 

マスターが叫ぶ。

 

「分かっている!」

 

セイバーは休まない。

 

二撃。

 

三撃。

 

四撃。

 

剣が雨のように降る。

 

アベンジャーは一歩も退かない。

 

全て受ける。

 

全て。

 

スキル発動

 

「俺が苦しむことで誰かが救われるのなら──!」

 

『身代わりの苦難(スケープゴート・シールド)』

 

巨大な盾。

 

結界。

 

光。

 

セイバーの斬撃が全てアベンジャーへ集まる。

 

「……!」

 

マスターは息を呑む。

 

「全部受けてる!」

 

ダメージ。

 

累積。

 

一万。

 

二万。

 

三万。

 

五万。

 

七万。

 

アベンジャーは笑った。

 

「まだ耐えられる。」

 

「あと少し。」

 

「もう少し。」

 

セイバーが止まる。

 

「……何故笑う。」

 

「痛いだろう。」

 

アベンジャーは答える。

 

「痛いさ。」

 

「でも。」

 

「この痛みは。」

 

「知っている痛みだから。」

 

セイバーは目を見開いた。

 

その瞬間。

 

彼は理解した。

 

この男は。

 

肉体ではなく。

 

心で耐えてきた。

 

セイバーの宝具。

 

「ならば。」

 

「これで終わらせる。」

 

世界が白く染まる。

 

黄金。

 

星。

 

剣。

 

「集え。」

 

「我が理想。」

 

「我が王道。」

 

光柱。

 

「エクス・カリバー!!」

 

マスターが叫ぶ。

 

「来るぞ!」

 

アベンジャーは静かだった。

 

「ありがとう。」

 

「ここまで私を信じてくれて。」

 

マスターは頷く。

 

「当然だ。」

 

「君は。」

 

「絶対に立ち上がる。」

 

アベンジャーは笑う。

 

「そうだな。」

 

「私は。」

 

「何度でも。」

 

「耐える……この一秒を!」

 

『耐え難きを耐え(グラデュエーション・ホープ)』

 

五重ガッツ。

 

魔力が溢れる。

 

黄金の奔流。

 

冬木が揺れる。

 

爆発。

 

轟音。

 

光。

 

そして──

 

静寂。

 

 

 

煙が晴れる。

 

そこには。

 

膝をつく男。

 

血まみれ。

 

何度も死に。

 

何度も立ち上がった男。

 

アベンジャー。

 

「……まだ。」

 

「終われない。」

 

ガッツが一つ。

 

消える。

 

二つ。

 

三つ。

 

四つ。

 

最後の一つだけが残る。

 

マスターは涙を流していた。

 

「何で。」

 

「何でそこまで……」

 

アベンジャーは笑った。

 

「私は。」

 

「こういう生き方しか。」

 

「知らないんだ。」

 

 

累積ダメージ。

 

108,460

 

観測者が静かに呟く。

 

「……条件達成。」

 

空間が震えた。

 

マスター達やサーバント達が振り向く。

 

「何?」

 

観測者は月を見る。

 

「終幕条件。」

 

「累積被害十万。」

 

「NP二百。」

 

「揃った。」

 

 

アベンジャーの霊基が軋む。

 

黒い炎。

 

銀の光。

 

月光。

 

そして。

 

誰も聞いたことのない鼓動。

 

 

 

観測者は初めて微笑んだ。

 

「さあ。」

 

「復讐者。」

 

「君は。」

 

「どちらを選ぶ?」

 

「必要悪か。」

 

「あるいは──」

 

「もう一人の自分か。」

 

 

 

アベンジャーの瞳が揺れる。

 

その瞳に映ったのは、一瞬だけ現れた"もう一人"。

 

黒い炎を纏い、憎悪だけを宿した自分。

 

黎明のアベンジャー〔オルタ〕。

 

「……お前は。」

 

その影は笑う。

 

「ようやくここまで来たか。」

 

「甘い俺。」

 

「その力、本当に守るためだけに使い切れるか?」

 

黒い影は、月明かりの中で静かに手を広げた。

 

「終幕は近い。」

 

「選べ。」

 

「世界を護るか。」

 

「世界を壊すか。」

 

 




前回と整合性が無いかもしれないけど、オルタが生まれる条件や観測者が狙っていたこと等々、補足出来たと思います。
次回もお楽しみに。

【毎日17時更新 / 全17話+α・7月23日完結予定】
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