V.V.がクソみたいなギアスの使い道を考える話   作:紫乃華まこ

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 なんで評価に赤バーがついてるんですか…!?

 今更ながら、この話の元ネタは「吸血鬼すぐ死ぬ」235話「クソ能力学会」です。


赤っ恥だけは足りてる

 ビキニという水着の語源は、地名が元になっている。

 

 数十年前、ブリタニアが内部で皇族同士骨肉の争いを繰り広げていた時のことだ。

ある王族を擁立していた貴族の一派が強大な軍事力を得るべく、流体サクラダイトをふんだんに使った戦術兵器ーーいや、それはもはや戦略兵器と呼ばれる代物の走りだったーーの開発を行なっていた。

 そして、開発したからには試さなければその兵器の全容を知ることはできない。即ち、起爆実験だ。

実験場所に選ばれたのはブリタニアから遠く離れたミクロネシアに浮かぶサンゴ礁でできた島々、その名をビキニ環礁。

そして新型爆弾は無事その猛威を示し、地図すら書き換える威力を世界に見せつけた。

 

 まぁ流体サクラダイトなんて高額なものを大量に使うだけ使って爆発させてポイな兵器だった以上量産なんてできないし、その貴族も直後当時の敵対候補だったシャルルに粛清されちゃったから日の目を見ることもなかった、いわゆる残念な兵器だったのだけど。

 しかし、その力はしっかり周辺諸国に示され、インパクトを与えた。

ビキニ環礁という名前はその末路とともに、世界に確かに残されたのだ。

 

 それから十数年後、ある国でとてもキワどい水着が発売された。

それはもうキワどかった。布面積とかほんとなかった。

 そのインパクトになぞらえて、不謹慎なことにその水着にはビキニの名前がつけられた。なんで???

 

 

 ……そんなことを思い出していたのは、何故だろうか。

いや、理由なんてわかっている。

目の前で発表している男が、白衣の下に通常のビキニより際どいビキニ……マイクロビキニを着ていたからに他ならないだろう。

 

 

「こちらの検体BT-396に発現したギアスは、思考を汚染するものでーー」

 

 

 大体わかった。

どうせマイクロビキニを着せることにしか使えないんだろう。

もう慣れてきた。

なんでお題目を聞けばこんなに心浮立つのに、内容がしょうもないギアスばかりなんだ。

 

「このギアスを受けた者には思考の中に『マイクロビキニを着る』『マイクロビキニを見せる』などの選択肢が挿入され、平均8時間ほどで自発的にマイクロビキニを着るようになりーー」

 

 ほら見たことか。ほら見たことか!

揃いも揃ってクソばかり!

そんなギアスを自分で試そうとするな研究者たち!

そして、なんで野郎が着る用のマイクロビキニが響団内にあるんだ!

 

 ……思わず噴き上がってしまった。反省だ。

しかし内容はともかく、強力な能力には違いない。

 

「相手の服装に干渉できるんだ。何より見せたがるようになるってのはいいね。為政者や有名人の名声を落とすのに使える」

 

 数回使ったらそれ以上は使い辛くなるだろうが、こうして使い道が浮かぶ分にはまだマシだ。うん。

……かなり感覚が麻痺してきた気がする。

 

 頭を下げてマイクロビキニの男が着席すると、次の発表者が準備を始める。

スライドに資料を表示しながら、発表者は語り始める。

 

 

「我が班で検証したのは、対象の自認をセンソーマンのレゼィにするギアスです。効果の説明に入る前に、まずセンソーマンに関する解説を……」

 

 

 スライドにはセンソーマンなる漫画作品についてのプレゼンが流れている。それらをガン無視しながら、僕は考えてみることにした。

 

 

そもそも、クソみたいに使えないギアス……クソギアスと呼ぼう。

そういったものがなぜ生まれるのか。

 

 前提として、ギアスの効果には持ち主の思いや願い、そういったものが反映される傾向が強いとされている。

これが一つ。

また、ギアスには素質がある。

素質に優れないものがギアス能力を得る場合、そもそも発現しないか、あるいは力が弱まることがある。

これが二つ。

 

 持ち主の意思、素質の弱さ。

これらの要因が合わさった場合、ギアスは持ち主の願いを叶えようとした結果、そのギアスは汎用性を失いごく限られた領域にしか干渉できなくなるのではないか。

 

 

 相手に自分を知ってもらいたいと思えば、自分の乳首の位置を絶えず表示し続けるギアスが。

 相手に愛されたいと思いながらおじコンであれば、えっちなおじさんを周囲に集めるギアスが。

 相手の裸を見たいとかいう思春期真っ盛りの性癖には、相手にマイクロビキニを着せるギアスが。

 

 そんな思いを抱えながら、その思いを貧しい資質が受け止めようとした時。

そんなギアスがそれぞれ発現したのかもしれない。

 

 

 ……つまり一番必要なのは、被検体のメンタルケアだった?

しかも性癖の矯正とかそっちの方?

それさえ正常なら出力されるギアスがもうちょっとマシになるはず……?

気が遠くなりそうだ。

むしろ素質の方を後天的に弄れないだろうか。いや、すぐには手が出せない……やはり、カウンセリングから始めないといけないのか……?

 

 

 自分の中で一先ずの結論を出し、スライドに目を向ければなんと二周目が始まっていた。

「デンジロウ君の知らないこと、全部教えてあげる」などと宣う研究者にブリタニア真券奥義ペンドラゴン仕込みドロップキックを叩き込み、会議室から強制的に排出する。

 

 どうせこいつもギアスを受けた口だ。

しばらく外で頭を冷やしてもらおう。

 

 そう思いながら次の発表を促す。

すると、一人の男が起立した。

しかしよく見れば、隣の女性に白衣を掴まれ着席させられようとしている。

 

 順番でも抜かされたか?

いや、席順を見るにそういうわけでもなさそうだ。

 そのうち男は女性を振り払うと、マイクに声を入れた。

 

「それでは、首筋と鎖骨の間にできるくぼみについての発表を行います」

 

「座れ!!!」

 反射的に叫んでしまった。

出てけ!と叫ばなかったのは理性が間に合った結果だろうか。

 

 男はしょんぼりしながら着席する。

身振り手振りで何かをこちらに伝えようとしているようだが、どう見ても親指と人差し指を輪っかにしてもう片方の人差し指を抜き差ししているようにしか見えない。

 

 先程隣で男に着席を促していた女性が代わりに起立し、マイクを奪い取って話し始めた。

 

 

「私たちの班で検証したのは、対象が()談しかできなくなるギアスです。効果のほどは、うちの班長の姿を見ていただければ……」

 

 

 そんなことだろうな、と思った。

そして先ほどまでの例に漏れず、こいつは自分の身を使って検証したらしい。

あまりに馬鹿馬鹿しくなったので、他の響団員に向けても警告する意味で苦言を呈すことにした。

 

「まったく揃いも揃って自分を使って検証するなんて、いくら危機感がないとは言えあまりにも愚かだよ。わかっているのかい」と嗜める。

 

「いいえ!」

しかし、それに対して班長と呼ばれた男は食い下がった。

おやと首を傾げてみれば、男はすぐさま二の句を継ぐ。

 

「むやみやたらに脱げばいいというものではありません!肩まで裂けた黒インナーで体が隠れていればこそ、首筋の艶やかさが映えるというもの!」

 

 隣からハリセンが飛んだ。無言で。

男が頭を押さえて机に沈み込むと、ハリセンを持った隣の女性が話を引き継ぐ。

 

「我々は他班のように自分の身で検証を行ってはいませんでした。しかし、被験体はどうやら我々の管理下を抜け出して会議直前の彼にギアスをかけたようです」

 

 ほう、と感嘆する。

「なるほど、それでその被験体はどうしたんだい?」

 

「ひとしきり笑い転げて、満足したら自ら進んで収容されたとのことです。……会議が始まる前、猥談を必死に解読するのは骨が折れました」

 

 女性はため息をついた。

「大勢で無理やりもイイ!」と、男が横から補足を入れる。

「他にも多数の被害が出ているとのことです。……あってます?」

すかさず、しかし不安げな翻訳も入る。

合っているとばかりに男性はYES/NO枕をYESの面で見せた。

 

 では検証結果を発表しますね、と話を戻す。

「このギアスは使用時、視線を介さず周囲半径5mの円状に効果を及ぼします。対象は話す内容がすべて猥談に置換されます。それどころか筆談さえも猥談になり、意思の疎通はすべて猥談を介したものとなります」

 

 頭が痛くなってきた。

やっていることはすごいのに、出力された結果があんまりすぎる。

 

「また、こちらをご覧ください」

 そう言って、発表者が手元の端末を操作するとスライドに動画が映し出される。

内容は検証の様子だ。

ギアスを受けた三人の対象に、表示された文章を読み上げさせる簡単なテストを行なっている。

 

「では、この文章を読み上げてください。『トムは魚が大好きな猫です』」

 

「僕はパツパツのスーツが大好きなネコです」

「トムがタレ目かつ攻めなら推せる」

「汗で張り付いたワイシャツに透ける乳首はいい」

 

 三者三様の答え。

どれ一つとして同じ文字列のないそれが、同一の意味を持った言葉ということが信じられない。

 

「はい、それでは次……」と、試験者が言ったところで動画が止まる。

 

「この様に、猥談は対象の性知識や性癖に準じたものになります。同じ内容の物事を伝える際に差異が発生しています」

 なおギアスユーザー自身はこうして変換された言葉の意味を理解できるようです、などと補足を入れながら発表は続く。

 

 そんな発表を最後まで聞いたところで、僕は深く頷いた。

 

「幹部候補として育成しよう。いずれ僕の側近にしてもいいかもしれない」

 

「えっ」

 

 唖然とする女性に対し、僕は考えうるメリットを口にする。

 

「少なくとも彼がいれば、音声入力が必要なタイプのギアスはほぼ無効化できる。対ギアスユーザーにおいてこれほど有用なものもない」

これが一つ、と指を立てる。

 続けて、「彼自身のスペックの高さも窺える」とさらに指を立てる。

対ギアスユーザーの研究とその管理に長ける響団員を出し抜き、ギアスを使うその手腕は驚くべきものだ。

 ……他にも思いついた使い道はあるが、口にするのはここまでだ。

これ以上は組織の円滑な運営に差し障るかもしれない。

 

「磨けば光るかもしれない。性悪なのも僕としては好みだ。速やかに手順を策定したら、彼の育成を始めようか」

 ははっと頭を下げる女性を軽く労い、心の内で舌なめずりをする。

 

 手は多い方がいい。

指を動かすなら尚更だ。

僕はまだまだ続くこのクソギアス学会に、ほんの少し期待が持てる様になった。




後日、EUではマイクロビキニを着て猥談を国営放送で垂れ流した国家元首が現れたという。
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