V.V.がクソみたいなギアスの使い道を考える話 作:紫乃華まこ
みんなが見たいのはこっち……!
時系列は大体1期のどこかだよ
STAGE:1 Y談のルルーシュ
ここはアッシュフォード学園。
エリア11屈指の名門校の一つであり、中等部、高等部、大学部を擁するマンモス校だ。
名前の通りブリタニア貴族であるアッシュフォード家のお膝元だが校風は非常にオープンで、様々な人種の人々を受け入れている。
そのため、非常に
歳と服装さえ合っていれば、どんな者が潜り込んでいても気にも止めない。
さて、楽しいアフタヌーンティーにしようじゃないか。
世にY談の光あれ。
◆◆◆◆
昼下がりのクラブハウスの一室。
いつもは騒がしいアッシュフォード学園生徒会室に、珍しく穏やかな時間が流れていた。
黒髪の青年が書類を整理し、付記を記し、隣の金髪の少女に手渡す。
少女はしばし書類に目を通し、内容に判子で是非を示す。
筆記具が紙を擦る音、指が紙を捲る音、朱肉が潰れる音、象牙が紙に押しつけられる音。
周りが静まり返っているが故に、普段聞こえないその音たちが鼓膜をくすぐる。
青年は、そんな時間が嫌いではなかった。
少女は、そんな空気に安らいでいた。
だが安らぎとは退屈を呼ぶものでもある。
そしてこの少女は、そんな退屈が大の苦手だった。
静かな空気を破却せんがため、少女ーーミレイ・アッシュフォードは隣の青年、ルルーシュ・ランペルージに語りかける。
「ねぇルルーシュ、面白い話してよ」
「会長、それは本当に暇な時の無茶振りなんですよ」
いいでしょ会長命令よ、と生徒会会長の権力を振りかざすミレイに、ルルーシュはため息をついた。
しかしそこは面倒見のいい男ルルーシュ、その明晰な頭脳を以てミレイの退屈を満たす話を紡ぎ上げようとする。
そんな時だった。
「ルルーシュ!会長!大変なんだ!」
ドアを騒々しく開き、青髪の青年ーーリヴァル・カルデモンドが姿を現した。彼の慌てる姿に、「どうしたリヴァル!」と素早くルルーシュが聞き返す。
そしてリヴァルは状況を説明する。
「同じカジュアルルックで教師とお天気お姉さんって言われたら、どっちがエロいと思う!?」
ルルーシュはフリーズした。
そんなルルーシュに、リヴァルはさらに説明を重ねる。
「デニール数の低い黒ストッキングなら断然お天気お姉さんなんだけど、網ストッキングなら……教師シチュの方なんだ!もちろんスカートは短め!お前ならわかってくれるよな、ルルーシュ!」
ミレイは爆笑した。
そしてちょっと後ろに下がった。
ルルーシュはフリーズから復帰し、必死に頭を回した。
そしてその優秀な頭が導き出した結論をミレイに伝える。
「待ってください会長、これは何らかの
「お天気お姉さんを通して何を伝えろっていうのよ!でも面白いからよし!」
そのミレイの言を聞いてリヴァルは膝をついた。
さもあろう、思い人には言葉の真意が伝わらず、面白いと一蹴されたのだから。
その時だった。
リヴァルが開け放った扉から、彼らにとって見知らぬ男がぬぅと姿を現した。
その男は黄色を基調とした近隣の他校の制服を身に纏っており、ルルーシュ達とさして歳の変わらないように見えた。
プラチナブロンドの髪を撫で付けた彼はその顔に不敵なニヤケ面を貼り付け、彼ら生徒会の面々を愉快そうに睨め付ける。
「あ、アソコ……!」とリヴァルが男のデリケートゾーンに指を刺そうとしたその時、男は自身のチョーカーの飾りに指を当てた。
触れられた飾りが分かれるように変形すると共に、男の両目が怪しく輝く。
その瞳に浮かんだ翼の如き紋様にルルーシュは心当たりがあった。
ギアス。自身が持つ超常の力。
相手と目を合わせることで相手に絶対遵守を強制するもの。
相手が自分と全く同じ力を持っているとは限らないが、その力を一旦自分の持つ物と似た物であると仮定し……咄嗟にミレイを男の視線を遮るように庇った。
「波ァ!」
黄色の男が裂帛の意気を込めて叫んだ時には、ルルーシュはすでに彼の方を見ていなかった。
そして袖に仕込んでいた鏡を取り出し、素早く鏡越しに男の顔に視線を通す。
(詳細不明の乱入者。俺と同じギアス能力者。狙いはなんだ?いや、まずは制圧が先だ。そのための最善手は……俺のギアスをかけて操り人形にしてしまう事か。だが、今は会長やリヴァルがいる。二人に不信感は抱いてほしくない。ならば、言葉は慎重に選ばなければならない……)
この間わずか一秒。
予期せぬアクシデントに対するカバーリングに定評のあるルルーシュの脳はこの場の最適解を導き出し、それを即座に実行せんとする。
ルルーシュの左目が黄色の男と同じ彩に輝いた。
「
「えっ」
「あっ」
瞳の翼が飛び立ち、黄色い男の脳に眼窩を通じて入り込む。
脳の回路が書き換わり、ルルーシュの言葉は彼の脳裏に刻まれた。
「うんうん、それは確かにいいものだ」
「
静かに同意を示す彼に、愕然として動揺を隠せないルルーシュ。
ミレイ、本日二度目の大爆笑。
今度は後ずさらなかった。
「ふっふっふ、君もすでに我が術中……」と、制服を翻して黄色の男は告げる。
「我が名はY談お兄さん!」
「Y談お兄さん!?」
その場の全員が声を揃えてその名を口にした。
「私の催眠術にかかった相手はY談しか話せなくなる。性癖をぶちまけて慌てる人々を見るのが私の趣味でね」
「めっちゃどうしようもないわね」と呆れるミレイの言葉に合わせ、リヴァルが凄む。
「てめぇ!俺はズボラ系教師のお姉さんに甘やかされて生きてたいんだ!」
「こっちは年上シチュが好きな人だし……って、あれ?私、普通に喋れてない?」
ミレイが首を傾げる。
「君とは同類の匂いがしたからね、催眠術を加減した」
「えっ私あなたと同類扱い??」
Y談お兄さんはウインクした。
そんな彼を横目に、怒り心頭のプライドの星からやってきたプライド星人ルルーシュは抑えきれぬ言葉を放つ。
「
だが哀れにも、ルルーシュが切った啖呵は性癖の暴露と化してしまう。
「無論、思ってないさ」
しかし、その言葉の裏を理解しているかのようにY談お兄さんは答える。
そして背を向け、「ので逃げる!」とアスリート顔負けのフォームで走り出した。
「くっ、
「追うわよ!」
Y談お兄さんを追ってルルーシュとミレイは駆け出した。
生徒会室を出たところで、ルルーシュの目の先にはこちらに向かって歩いてくるブリタニア人離れした容姿の栗毛の青年ーー枢木スザクの姿が見えた。
しめた、とルルーシュは思った。
今の位置関係なら挟み撃ちにできる。
きっと親友のスザクなら、こちらの意図を汲み取ってくれるだろう……!
「スザク!
「えっ何て???」
当然意味が伝わるはずもなく。
切羽詰まった時に親友のことを無条件で信じてしまうのがルルーシュの悪い癖だ。
困惑するスザク。
そんな彼の横をすり抜けたY談お兄さんは、すれ違いざま「波ァ!」とスザクにギアスをかけて走り去っていった。
スザクが首を傾げていると、スザクの元まで息を切らしながらルルーシュが辿り着いた。
その尋常でない様子に、スザクは声をかける。
「
自らの口から出た言葉に、思わず口を押さえるスザク。
「ぜぇ、はぁ……
息を整えがてら、ルルーシュはジェスチャーで意思疎通を図る事を試みることにした。
まず拍手を一つ。
「パン」
次にピースを作る。
「ツー」
手を筒状にする。
「まる」
その手を覗き込む。
「見え」
ルルーシュは撃沈した。
ジェスチャーすらダメなのか……!?
そういえば、と着いてきていたはずのミレイの存在を思い出す。
彼女であればこの状況の説明はできるはずだ。
そう思って後ろを見れば、ミレイは口を押さえて横たわっていた。
体はビクビクと痙攣し、押さえた口から吐息が漏れている。
そして、手にした携帯はこちらにカメラを向けていた。
「無理……笑い死ぬ……でもこれは残しとかないと……記録……!」
「
ルルーシュの怒号が、生徒会室前に響き渡った。