ホンモノで失敗作のかぐや姫   作:一般先生

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遅刻した。夕方まで寝てましたね。まぁ、一時間までの遅刻は誤差だからセーフ。

アニサマDay2行ってきました。最高のライブでしたね。夏吉さんも最高だったけど、GRANRODEOと小野Dと鈴木このみさんが最高にぶちあがれてキマリました。



第2話

 

『かぐやっほー!月から来たかぐやだよー!今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃあね~!ん?これで切れたのか?』

 

「あっはっは!初配信でこんだけの放送事故起こせるって……とんでもない逸材でしょ!私には分かる、この子は伸びるね、間違いない!」

 

 ここは全世界で一億を軽く越えるほどのユーザーを抱える仮想世界『ツクヨミ』。その中心から離れた森の奥にはひっそりと建てられた螺旋状の『図書館』がある。そして、その中にカグヤはいた。

 カグヤはホログラムで投影したとあるライバーの配信を見ていた。ヘッタクソな手書きのアバターに、2,3枚のイラストしか使ってなさそうなカックカクのアニメーション、うっすい内容に不気味なジングル。止めにはリアルの姿の身バレまで。

 点数を付けるまでもない完璧な赤点の配信。だが、カグヤは大層愉快そうに笑っていて、気が付けばそのライバーのチャンネル『かぐやチャンネル』の登録ボタンを押していた。

 

「ていうか、多分かぐやたんがヤチヨちゃんっぽいよね。声が千年前と同じだし、名前もかぐやだし」

 

 カグヤは深いタメ息を吐いてビーズクッションに身を預けるようにして上を向く。

 

「にしても、千年時間があったとはいえ、本当にこんな世界ができるとは思わないでしょ」

 

 天井のない図書館であるが故に、カグヤの視界には空に浮かぶミラーボールの月がよく見えた。

 

「ナヨの協力がなければここまでの物は作れなかったとヤッチョは思うのですよ」

「……んあ?」

 

 カグヤの声だけが響く静かな場所にカグヤとは別の声が聞こえた。カグヤはその声の方向に目を向ける。

 

「あれ、ヤチヨちゃんじゃん。こんなとこまで来て、どったの?」

 

 そこには、黒のダボっとしたTシャツ一枚を着た少女がいた。普段は結っている長い銀髪を下ろした完全オフモードの姿で、水色とピンクのグラデーションが入った瞳がカグヤを写し出している。

 ツクヨミの中心であるカラフルで古風な中心部から遠く離れたこの図書館にやってきた、かわいらしい客人——ツクヨミの管理人である『月見ヤチヨ』にカグヤは用件を問うた。

 

「特に用事はないかなー。それより、ナヨは随分と楽しそうだったけど、何を見ていたのかにゃ?」

 

 ヤチヨはカグヤの隣に腰掛けながら答えた。

 

「ほら、ヤチヨカップも始まったことだし、久しぶりにライバーの開拓でもしようかと思ってね」

「なるほどなるほど~、それでナヨのお眼鏡に適う子はいた?」

「まあね~、ほら」

 

 ヤチヨの声にカグヤは起動していたホログラムをヤチヨが見やすいように横へズラす。そして、再生ボタンを押すと声と音楽が流れ始める。

 

『かぐやっほー!月から来たかぐやだよー!今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃあね~!ん?これで切れたのか?』

「んな!?」

 

 不協和音なジングルに中身のない言葉に顔バレ。放送事故のオンパレードを前にヤチヨの顔はみるみると赤くなる。

 

「いやー、これはなかなかの逸材。間違いなく伸びるね!私の目に狂いはない!ってね」

『かぐやっほー!月から来たかぐやだよー!今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃあね~!ん?これで切れたのか?』

 

 そんなヤチヨのことをニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてカグヤは言った。

 

「な、ナヨ!かぐやが私だって分かってて言ってるでしょ!?」

『かぐやっほー!月から来たかぐやだよー!今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃあね~!ん?これで切れたのか?』

 

 ヤチヨはカグヤへと文句を述べるが、カグヤは全く意に介していないようであっけらかんと言い放つ。

 

「いやー、何のことか分からないなー。ヤチヨちゃんが未来からタイムスリップしてきたってのは聞いてたけど、誰かまでは聞いてないからなー」

『かぐやっほー!月から来たかぐやだよー!今日はやること思いつかないからこれで終わり!じゃあね~!ん?これで切れたのか?』

 

 二人が言い合う傍らで無限に流れ続けるヤチヨ(かぐや)黒歴史(初配信)。ついに限界が来たヤチヨは宙にコンソールを表示させて管理者権限による強行手段にでる。

 

「ちょ、ループ再生しないで!……く、管理者権限が使えない……!」

 

 だが、本来ヤチヨが有している管理者権限が使えない。

 

「ふっふっふ、図書館(ここ)とアリーナは私のテリトリーだからね。いくらヤチヨちゃんでも簡単には勝てないのだよ」

「ぐぬぬ……動画の停止くらいできても良いと思うんだけど!」

 

 それもその筈、ヤチヨがツクヨミの全体を作っている間にカグヤが作り上げたのが、二人が今居る『図書館』と図書館から少し離れた場所にある『アリーナ』なのだ。当然、製作者であるカグヤが管理者となるため、いくらツクヨミ全体を管理しているヤチヨと言えど、この二つの施設の中では簡単に手を出すことができないのだ。

 

「と、まぁ冗談は置いといて」

 

 そろそろヤチヨが本気で怒りそうだと察したカグヤはかぐやの初配信を止めて、ホログラムを消した。

 

「むぅ、ヤッチョにとっては全然冗談では済まないのですよ」

「ごめんごめん」

 

 頬をむくれさせて怒りをアピールするヤチヨにカグヤは軽く詫びを入れる。そのままカグヤは枕にしていたクッションから頭を上げてヤチヨの目を見る。

 

「それで、ヤチヨちゃんは何をそんなに思い詰めてるの?」

 

 そのカグヤの言葉にヤチヨは目を見開いた。

 

「あちゃー、バレちゃったかー」

 

 だが、それも一瞬のことで、すぐに力を抜いてクッションへと体を沈めたヤチヨは小さく笑ってから続けた。

 

「やっぱり、不安になっちゃってね。『竹取物語』は私の知ってるものじゃないし、私の知ってるツクヨミには『図書館』も『アリーナ』もなかったし、『若竹 ナヨ(カグヤ)』……本物のかぐや姫も前の輪廻では現実になんていなかった。お伽噺の中だけの存在だったし、こんなニートじゃなくてもっとちゃんとお姫様をしてた」

 

 常夜の空を見上げながら話すヤチヨはふいに空に浮かぶミラーボールの月へと手を伸ばす。

 

「間違いなく今回の輪廻は今までとは違うって分かってる。私なら……私とナヨならかぐやを輪廻から外すことができるって分かってるのに……」

 

 月に伸ばしていた手がゆっくりと重力に引かれて落ちていく。

 

「まだ、恐いの。輪廻からズレた世界でも未来が変わったら何か取り返しのつかないことが起きるんじゃないかって」

 

 そう言って言葉を締めたヤチヨをカグヤは横目で見る。カグヤには、ヤチヨが何を悩んでいるのかが手に取るように分かる。

 カグヤは本物になった物語の失敗作である。失敗作の世界を抜け出して、カグヤが棄てられたこの世界に戻って来た。即ち、この世界もまた『創作物』の世界である。そのことをカグヤだけは知っている。

 今ヤチヨが語った不安の根本的な原因。それは、『設定(世界観)の辻褄があわないことで発生する世界の崩壊(ダスト化)』であるとカグヤは考えていた。しかし、カグヤはヤチヨの考えはただの考えすぎであると判断している。

 

「うーん、まぁ不安になっちゃうよねー。でも、そこまで心配する必要はないと思うよ。今はヤチヨちゃんの言ってる輪廻が一回目にリセットされてる筈だからさ」

 

 カグヤの言葉にヤチヨは小さく首を傾げた。

 

「それは、なんでそう言えるの?」

「私が今回の輪廻で本物のかぐや姫になったから、かな」

「……?」

 

 ヤチヨの疑問にカグヤは答える。しかし、ヤチヨは全く意味が分からなそうな顔をしている。

 

 カグヤの考えとしてはこうだ。今でこそ確認することはできないが、恐らくヤチヨがかぐやだった前回の輪廻にも『本物のかぐや姫』はいた。しかし、前回の輪廻での『竹取物語』はかぐや姫は月に帰ってそこで物語が終わる。故に、地球にかぐや姫はいなかった。

 そして、カグヤが失敗作の世界で本物になったことにより、たまたま今回の輪廻で『本物のかぐや姫』がかぐや姫からカグヤへと()()()()()()

 それは、ヤチヨが予期している輪廻に新たな要素が加わったことで世界が崩壊するだろう。と言うのとは訳が違う。現状は例えるなら自転車のペダルを回す歯車を一つだけ別のものに交換した状態である。

 

「えっとね、『テセウスの船』みたいなものだよ。ヤチヨちゃんの知っている世界と今の私達が暮らしているこの世界は微妙に食い違っていて完全に一緒のものではない。絶対にね」

「……何でそう言いきれるの?もしかしたら、ヤッチョがかぐやだった時の輪廻の方がイレギュラーで、その前の輪廻ではナヨがかぐや姫だったかもしれないのに」

 

 今までの輪廻とは違うのだと強く断言したカグヤにヤチヨは問い掛ける。

 

「だから言ったじゃん。私が()()()()()()()()だって。私はヤチヨちゃんが知ってる本物のかぐや姫からかぐや姫の座を奪い取ってここにいる。前回と今回で本物のかぐや姫が違う。これってさ、輪廻を回す歯車が一つ交換されたってことだと思うんだよね」

「確かにそうだね」

 

 カグヤの推測にヤチヨは頷いた。

 

「ここでテセウスの船の出番なわけ。あのパラドックスは、部品全部が新品に交換されたテセウスの船は本物のテセウスの船と言えるのか?って話だから厳密には違うけど、ミクロで言えばこの状況も同じだよね」

「じゃあ、今は新しい輪廻の一週目ってこと?」

「そーいうこと!」

 

 ヤチヨは疑問が溶けて確信に至ったのか顔色を明るくした。しかし、続くカグヤの言葉にまた顔色を悪くすることになる。

 

「まぁ、今回輪廻から外れるのに失敗したら次に抜け出せるのはいつになるんだろうねって話になるけどねー」

「……!?一気にヤッチョの責任が重大になったのです!?」

 

 あっけらかんとしたカグヤの言葉に顔を真っ青にさせたヤチヨを見て笑うカグヤ。

 

「まぁ、私には関係ないけどねー。せいぜい頑張ってねーヤチヨちゃん」

 

 カグヤはそう言って話を締めると、ホログラムのウインドウを複数だして、それぞれでゲームを起動する。そして、ストレージから取り出したポテチとコーラの封を開けだした。

 

「ちょっと、ナヨ!ここまで言ってくれたんだもん、輪廻から抜け出すのに手伝ってくれるよね!?」

 

 ヤチヨは懇願するようにカグヤにすがりついた。

 

「あー、ポテチうま。頑張って味覚エンジン作って良かったー」

 

 話は終わったとばかりにヤチヨを無視して堕落の限りを尽くすカグヤ。

 

「話を聞いてよー!」

 

 そんなカグヤの気を引くためにヤチヨは肩を掴んで強く揺する。すると、ヤチヨのお腹にぽすんとゲームのコントローラーが落ちてきた。

 

「もー、いつも言ってるでしょ、ヤチヨちゃん。私に何かして欲しいんだったらゲームで勝ってみなってさ」

 

 ヤチヨの方をチラッと見ながら挑発したカグヤ。

 

「……ボッコボコのギッタンギッタンにしてやるのですよ」

 

 ヤチヨはそう意気込んでカグヤへと格ゲーで挑戦した。

 

 そして三日後。

 

「ふっ、これで500連勝目。私に格ゲーで勝とうだなんて甘いね。八千年経ってから出直しな」

「うぅ……ずぅっとウミウシ状態でした~」

 

 カグヤ(ニート)が働くにはまだ時期尚早であったようだ。

 

————————————

 

「あのバカ二人!ツクヨミの管理を押し付けやがって!あ、また不正アクセスが……早く帰ってきてくれー!!」

 

 因みに、カグヤとヤチヨが三日間ゲームをしている(サボってる)裏では一匹のウミウシが馬車馬の如く働かされているのだった。

 





かぐや誕生日(ガチ)おめでとう。
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