『竹取物語の二次創作のかぐや姫』の失敗作だったカグヤは本物のかぐや姫へとなった。そして、『竹取物語』を終えた平安時代でカグヤが出会ったのは『かぐや』を名乗るウミウシだった。
これは、物語を書き換えて本物へと至った失敗作が混ざったことで
※本作品はビジュアルアーツ様の偽りのアリスとのクロス作品となっています。
かぐや誕生日(偽)おめでとう。
端的に言うと偽りのアリスとは、イカれたツラのいい美少女と美少女が目的の為に殺し合う作品です。放置ゲーで現代っ子にはちょっと厳しいけど、ストーリーがめちゃ良いのでオススメ。
本作品の主人公?ポジのカグヤは作中ではかなりまともな部類の子です。まぁ、キャラストで殺した発言をしてますが。
物語。一口にそう言っても様々なカタチがある。『童話』や『御伽話』は勿論のこと、『神話』や『伝記』、『怪異譚』だって立派な物語の一つである。そんな物語は、この世の中に幾千幾万と溢れ返り、『本』や『絵本』に『マンガ』、『アニメ』など様々な形で世に出回っている。そんな物語達の影には常に幾つもの失敗作で溢れている。
例えば、継母に虐げられる自分の不幸に酔い、パーティーや王子との結婚などのチャンスを無視した『不幸酔いのシンデレラ』であったり、互いが互いを憎悪し殺し合う『憎悪に満ちたヘンゼルとグレーテル』。他にも『死体を人形のように使ってご主人様の邪魔をする人間を皆殺しにするモルジアナ』、『臆病であるが故に、ワンダーランド含めて怖いと感じたもの全てを破壊するアリス』。
物語の根幹をぶち壊してしまうが故に作者の手でゴミ箱へと棄てられ、終ぞ日の目を浴びることなく消え失せた失敗作達。そんな失敗作達が集められて現実と隔離された箱庭がある。様々な創作物の
その失敗作達の世界で彼女達は生きていく。誰にも見向きもされずひっそりと生きて、そして朽ちていく。作者に選ばれなかった失敗作にはそれしか道がないのだ。とある方法で本物になる以外には。
そのとある方法、失敗作達に唯一与えられた救いの道。それは、失敗作の世界で自分を皆殺しにすること。そんな救いの道に失敗作達は飛び付いた。失敗作達は自分を『
これから語るは一人の勝者が本物へと至るための『
「せんせぇ、アリスちゃん、私はグリムたんのシルシの力で本物になろうと思うんだ~」
失敗作達の本が納められた『深層図書館』の中には4つの人影があった。その4人の影のうち、桃色の髪にダボっとしたTシャツを着た少女――竹取物語の二次創作のアルター『カグヤ』が他の3人に向けて告げる。
――本気なんだね?
「うん。例え
短めに切った灰銀の髪をした中性的な容姿をした『先生』からの言葉にカグヤは頷きながら答える。
「カグヤが本物になりたいって思うようになったのはスゴく喜ばしいですし、応援したいんですが……。どう思いますか?先生」
紫紺の髪と瞳をし、白のウサミミが着いた帽子に魔法使いのローブのようなドレスを身に纏った少女――不思議の国のアリスのアルター『アリス』がカグヤを心配そうに見詰めながら先生に尋ねた。先生はアリスの言葉に一瞬眉を顰めると、視線をカグヤから残ったもう一人の少女へと目を向ける。
――何か企んでいるわけではないんだよね、グリム?
先生は『グリム』と呼んだ少女のルビーの瞳と目を合わせながら問い掛ける。その口調から伺わせる警戒心は少なく、どちらかと言えば確認に近いものだった。
「……幻体風情が分かったような口を利くな、腹立たしい。えぇ、偽りのアリスの懸念はほとほと的外れなものです。私はあのタルタロスの一件で大きく力を失っていますから『クロニカ・リコレクション』の儀式に茶々を入れることなんて出来ません。そもそも今までの妨害だって私ではなくバッドエンド信者のイカれ女……先々代司書のアンデルセンの介入を許してしまったが故のもの。……司書のクロニカ・リコレクションへの介入は私の理想とは余りにも大きく駆け離れている」
――だってよ、アリス。
「それならいいですけど……もしカグヤに何かしたら容赦しませんよ」
グリムの言葉に先生は頷き、アリスの方を向く。アリスはグリムの言葉に不承不承ながらも頷いた。
「不死の呪いが消えた貴女如きに私を殺せるとは到底思えませんが、覚えておきましょう」
嫌味を混ぜながらアリスへと告げると、グリムは手に持った杖をカグヤの手の甲へ沿わせるように近づける。
「失敗作、準備はいいですか?」
「うん、だいじょーぶ」
グリムの声掛けに答えたカグヤ。その言葉のすぐ後にグリムの杖の宝玉が光り、カグヤの手の甲にシルシが現れる。
そして、カグヤがシルシを通じて物語の再演を始めようとして、直後にふと動きが止まる。カグヤは一度自分以外の3人の顔を見回してから先生へと言葉を投げる。
「……あー、せんせぇ。クロニカ・リコレクションの登場人物にせんせぇの幻影を使いたいんだけど、借りてもいい?」
直前にしてカグヤは人手が足りないことに気付き、先生に助力を求める。この世界で先生だけが持つ空白の
——確かに4人だと流石に少ないか。構わないよ。カグヤに縁のあるアルター達を呼べばいいだろうか。
「うん、それでいいよ。ありがとねー」
カグヤの最後の頼みに頷いた先生は本を通じてアルターの幻影を生み出した。カグヤと仲の良い十二支のアルターを含む日本の物語を原典とするアルター達、先生とアリスと巡ったクロニカで出会ったアルター達、正月にカグヤが縁を紡ぎ仲良くなったアルター達が虚空からぽつぽつと現れる。それを見届けたカグヤは小さく微笑むと口を開く。
「それじゃー、始めるよ」
そうして、始まった最後のクロニカ・リコレクションはテンポよく進みあっさりと終わる——
「この私が手を貸し与えていると言うのに、なんですかこの鳥肌が立つほど気持ち悪い駄作は。やり直しです」
——なんてことはなく、何十回もの
——何がダメだったのか教えてくれるかな。
「そもそも、なぜ『竹取物語』なのに時代背景が現代であることに拘るのですか」
「いやだって私ってば月に帰らないで『ゲーム』とか『アニメ』とか娯楽を満喫する怠惰なニートの『かぐや姫』なんだよ?だったら現代を舞台にした方がいいじゃん」
「そこは『月の使者』と言う未知で圧倒的な存在がいるのですから、巧く活用するべきです。時代にそぐわない代物は全て月の技術によるものとしましょう。と言うわけで、時代設定は竹取物語が作られた『平安時代』でいきます」
「ほへぇー、流石はグリム先生。一人でグリム童話を
「私が編纂に携わっているにも関わらず、ただの二次創作で終わらせるのは私のプライドに関わりますから、死ぬ気で動いてもらいます」
などと、グリムはこのクロニカ・リコレクションにそれは多くの文句を述べた。グリム童話の作者としての意地とも呼べる創作者魂が妥協を許さなかったのだ。
だが、そのお陰で朧気で有耶無耶だったカグヤの物語に設定と言う確かな骨組みを立てるに至った。そして、その骨組みを元にカグヤ達はグリムの力を借りながら話に肉を付けていく。
「あー、私の幻影配達員さんとかも欲しいかも」
「でしたら、配達員を
——あの、何で私が翁の役を?
「わ、私もなんで媼の役なんでしょうか」
「幻体は白髪ですし、ボケボケな頭をしてますから、年寄り役としてぴったりかと思いまして。あ、ごめんなさい。貴方みたいなのと一緒にされるご老人がかわいそうでしたね」
——相変わらず言葉が鋭い……
「そんなことを言うならグリムだって髪の色が白いじゃないですか!言葉遣いとかもおば——」
「何かいいましたか?」
「ぴぃっ!?な、なんでもないです……」
そんなやり取りが数多くなされ、やがてカグヤはクロニカ・リコレクションを完遂して本物のかぐや姫になった。カグヤの物語の大筋は本家『竹取物語』と然して変わらない。
お爺さんが切った竹からかぐや姫が現れて、お爺さんとお婆さんの娘になる。五人の貴公子と御門がかぐや姫に求婚をする。そして、数年後には月からの使者が来て、御門と貴公子達がかぐや姫を迎えに来た月の使者と戦い敗北する。ここまでは、本家と変わらない。
本家と違うのは2つ。五人の貴公子と御門の求婚、そして月の使者の迎えに対してかぐや姫が出した条件。そして、結末であった。
かぐや姫は結婚、月への帰還の命令に対してこう答えた。
「私に何かして欲しいならゲームで私に勝ってみて?もし私に勝てたら何でも言うことを聞いてあげる。結婚でも、月に帰るでも、何でもね」
かぐや姫が出したその条件は、かの『五つの難題』よりも難しく、人類を凌駕する月の使者を以てしても終ぞ達成することのできなかった不可能の難題として、カグヤの
めでたしめでたし
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「いやー、まさかめでたしめでたしの後があるなんてね。まぁ、のんびりゲームできるし丁度いっか」
「せんせぇとアリスちゃんもハッピーエンドに行けたかなぁ。グリムたんと仲良くできてればいいんだけど……あ、確定演出!!よっしゃ!!ピックアップSSR二枚引きキター!!これで完突できる!!」
スマホにテレビ、テレビと繋がれたゲーム機に冷蔵庫とエアコン。到底、平安時代のものとは思えない快適空間で堕落の日々を過ごす。
「カグヤ、少し良いかい?」
「なにー、お爺さん」
「会わせたい方がいるんだ」
「ふーん?まぁ、お爺さんが言うなら、会うだけならいいよ」
そんなカグヤの日常は唐突に終わる。翁が連れてきた存在との出会いによって。カグヤはTシャツに念のためホットパンツだけ履いてカグヤの尋ね人と出会う。
「はいはーい、私が噂のかぐや姫ですよー。……んんっ??」
カグヤは客間に適当な挨拶と共に入ると目を見開いて驚いた。カグヤの視線の先には——
「思ってたのとちがーう!!こんなのかぐやの知ってるかぐや姫じゃない!!ただのニートじゃん!!」
「う、ウミウシがしゃべったっ!?」
『かぐや』と名乗る一匹のウミウシがいましたとさ。
「……と言うか、ニートで悪かったね。私はそういうかぐや姫なんだよ」
斯くして、ホンモノとニセモノのかぐや姫は出会う。この出会いが未来にどんな影響を及ぼすのかは未だ分からない。
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「ちなみにだけど、これに心当たりある?」
「ん?なんそれ」
東京都立川市のとあるボロアパートの一室。深夜にも関わらず照明の光が二人の少女を照らし出す。黒髪の少女——酒寄彩葉は、対面に座り自分の夜食であるタコライスをがっつりロックオンしている明るい茶髪の名も知らぬ少女に、『竹取物語』を開いたタブレットを手渡しながら問い掛ける。
「竹取物語。月からやって来た姫が竹の中から出てきて、翁が拾って育てて、五人の貴公子やら御門やらから結婚迫られたりとか色々あって……まあ、ごちゃごちゃあってめでたしめでたしな感じのお話。……あんた、もしかしてかぐや姫なの?」
彩葉の問い掛けに首を傾げながらも、ちゃっかりと彩葉のタコライスを奪い取って食らう少女。もはや、話を聞いているとは到底思えないその姿だが、どうやら話は聞いていたようで。
「んー?つまり、彩葉はこのお爺さんなわけ?」
「80年後の姿でも見えてるのかなー!?違うよー!?」
「ぬはは~!」
年齢どころか性別すらも間違える少女の適当な言葉に彩葉は額に青筋を立てながら反論する。しかし、少女は笑って誤魔化した。
「そんなことより、お話の続きは?」
「えーと、かぐや姫が求婚を断り続けてると、月から迎えが来て翁たちがかぐや姫を引き渡すまいと戦おうとするけどあっさり負けて、かぐや姫が月のお迎えをぼこぼこにしてお迎えは帰っていった。そんで、かぐや姫は翁と媼が死ぬまで幸せに暮らしましたとさ」
少女に急かされて『竹取物語』の続きをざっくりと読み聞かせる彩葉。
「おー……え、かぐや姫つよすぎじゃね?超パワータイプじゃん!」
「違う違う、かぐや姫は別になんでもかんでも暴力で解決する脳筋女じゃないから。かぐや姫は蹴鞠だの羽子板だの双六だのの所謂
「ほへ~、強気だ。で?で?その後は?お爺さんが死んじゃった後は?」
初めてのお伽噺に目を輝かせながら少女が彩葉へと続きをせがむ。彩葉はそんな少女の圧に押されるようにして再び語る。とは言ってもそんなに長くはないが。
「……分からない。『竹取物語』の終わり方って作品によって色々違うのよ。御門と結婚するだとか、自分から月に帰ってったとか。一番有力なのが確か……不老不死のかぐや姫は回りの人間との流れる時間の違いに嫌気がさして富士の樹海に姿を消した、だっけ。この本には載ってないみたいだけど」
そう言って話を締める彩葉。そして、『竹取物語』を初めて知った少女は不服そうな顔をする。
「えー!?何それ、超バッドエンドじゃん!一番頑張ったかぐや姫が独りぼっちになってるのは不憫だよ~!」
一見、よくあるちょっぴり苦めな
「別に全部の『竹取物語』がこの終わり方じゃないんだし、これはそういうお話なの」
彩葉は皿を片付けながらぶうたれる少女にそう言って宥める。
「バッドエンドやーだー!ハッピーなのがいーいー!!」
そう喚きながら転がる少女に彩葉は何度目かの重苦しいタメ息を吐いた。そうして、夜は更けていき、一つ前の輪廻とは少しだけズレた二人のお伽噺が幕を開けた。
カグヤ→『竹取物語の二次創作のかぐや姫』の失敗作。カグヤが本物になることで、『竹取物語の二次創作である超かぐや姫!!』の作中序盤でほんのちょびっと登場する『本物の竹取物語のかぐや姫』になった。
来週の日曜日に続きだす。