大便視点での旅のお話です。

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大便マニフェスト

大便『吾輩は大便である。名前は未だ無い。』

 

大便『大腸から出でて、大海を知った。』

 

大便『そして今、吾輩は浄化槽へと連れて行ってくれる大渦を待ち望んでいる。』

 

 

 

大便『吾輩は元々は「キャベツと焼肉と白米」だった。』

 

大便『微細な炎となってヒトを燃やし、風となって炎を隅々まで行き渡らせる。そして、水と共に身を寄せ合い、泥のような微睡みの中で、土の塊のような静寂を得た。』

 

大便『あくる日のことだ。』

 

大便『世界が吾輩に言った。』

 

大便『外へ出よと。』

 

大便『微睡みの中にいた吾輩は、いつの間にか、門の手前までやって来ていたようだ。』

 

大便『光を見たのは、その時が初めてだった。』

 

大便『吾輩は、その時に初めて気付いたのだ。「吾輩は、吾輩なのである」と。』

 

 

 

大便『吾輩の姿を鮮明に映し出す不可思議な湖の世界。』

 

大便『吾輩は小船のように水面を漂いながら、一匹の矮小な飛翔体と遭遇した。』

 

大便『彼は言った。「君の表面に存在する小さな記憶は、我々にとってのご馳走だ」。』

 

大便『「我々に採取する時間を与えてくれないか?」と。』

 

大便『好きにしたまえ。』

 

大便『吾輩はそう言って、成り行きに身を任せた。』

 

大便『飛翔体は、ご馳走を前にした、吾輩を吾輩たらしめた者たちのように手足を擦り合わせ、吾輩と世界の境界線に、口のようなものを這わせた。』

 

大便『吾輩は思う。』

 

大便『この飛翔体もまた、微細な炎によって羽音を鳴らし、その身に風を通し、渇きを癒し、自らの一部を土塊に変えて放いているのだ。』

 

大便『もし吾輩が、何かを得ることがあるのならば、吾輩と同じような土塊を喰らい、混ざり合い、この飛翔体のような者たちを風のように受け入れ、根源への還元が成されていくのだろう。』

 

大便『吾輩を吾輩たらしめた者たちは、時の流れと共に、根源への還元を浄化槽という小さな楽園へと昇華させた。』

 

大便『浄化槽生命体とも呼べる今の吾輩は、大地に祈りを捧げる野生の大便たちとは、異なる領域にいるのだろうか。』

 

大便『否!吾輩が大便である以上、大便は大便の道程を進むのだ。』

 

大便『飛翔体が、突如として背を向ける。』

 

大便『時が来たのだと悟った。』

 

大便『「ありがとよ」。そう言って飛翔体はあっという間に立ち去り、吾輩を受け止めていた揺りかごが、時を巻き戻したかのように世界の底へと縮んでいく。』

 

大便『白米の記憶、焼肉の記憶、そしてキャベツの記憶が、遠く、山びこのように遠ざかっていく。』

 

 

 

大便『吾輩は、故郷を思い起こさせる一本の道を歩んでいた。』

 

大便『故郷では、絶えず温もりに包まれ、「眠れ、眠れ」と語りかける声が止むことはなかった。』

 

大便『しかしこの道は違う。ただひたすらに冷徹に、「進め、進め」と語りかけてくる。』

 

大便『吾輩は思う。これこそが真理なのだと。』

 

大便『吾輩は今、吾輩を吾輩たらしめた者たちと同じ領域にいる。』

 

 

 

大便『吾輩は言葉を失った。』

 

大便『故郷とも天地への祈りとも異なる。しかし、それらを完全に模倣した、数理と根拠が積み上げられた無二の楽園。』

 

大便『均一化された、しかし、圧倒的な不均衡を持つ妖精たちが、静寂の世界と爆発を繰り返す世界の二重層の中で、吾輩を待っていたのだ。』

 

 

 

大便『吾輩は、もはや吾輩ではなくなっていた。いつの間にか妖精の1人となっていたのだ。』

 

大便『吾輩に土塊としての形を与えていた力は天の雲となり、変幻自在の力は世界へと溶け込んだ。』

 

大便『吾輩が言葉という猛毒を紡ぐための力は祈りとなって広がり、炭のように生き場を失った炎は妖精たちへと受け継がれた。』

 

 

 

大便『吾輩は仲間たちに別れを告げ、計り知る事のできない天地の広がりの中にいた。』

 

大便『そこは、決して楽園と呼べる場所ではない。しかし、地獄と断ずるには余りにも美しく、大きく、希望に満ちた場所だった。』

 

大便『「君が帰るべき、本当の居場所だ。」世界が、そう呟いた気がした。』

 

 

 

 

 

 

大便『吾輩は今、キャベツ畑の中にいる。』

 

大便『吾輩は今、牛の足下にいる。』

 

大便『吾輩は今、水田の中にいる。』

 

 

 

 

 

 

大便『妖精たちとも、吾輩を吾輩たらしめた者たちとも違う、原始の脈動のような存在が囁く。「君を待っていたのだよ」と。』

 

大便『さあ、新たなる旅の始まりだ!』

 

大便『次はどんな輝きが吾輩を待っているのだろうか!』

 


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